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この夢から覚めても、暖かな居場所は存在するのだろうか?
今、この時が、自分にとって全て夢でしかないのでは……。
そう思えるほど、今の自分は幸せだと思える。
「おっ、起きたみたいだな」
「本当、人が頑張って仕事しているって言うのに、熟睡なんていい性格してるよね」
目を開いた瞬間飛び込んできたのは、大好きなその人の顔。
今は眼鏡をかけているけど、それでも自分の大好きなその人が笑顔を見せてくれる。
それと同時にため息をつきながら言われたその言葉にそちらへと視線を向ければ、が入れたのであろう紅茶を飲みながら呆れたように自分を見ている奴がいた。
「まぁ、そう言うなって……ここ数日『昼』にも手伝ってもらうような仕事が続いてたからな。疲れてても仕方ねぇよ」
「って事は、その主人である君も同じか、それ以上に疲れているって事なんじゃないの?」
呆れたようなあいつの言葉に、が困ったように弁解する。
だけど、それでも納得は出来ず、呆れたように言ったあいつの言葉に、はただ苦笑を零す。
そう、オレはただ『手伝った』だけなのだ。
そんなオレよりも、の方がずっと疲れていると言うのは間違いじゃない。
『オレは疲れてなどいないぞ』
だから、反論とばかりに口を開いた。
でも、それは本当の事。
今は、猫の姿をしているけれど、オレは本物の猫じゃない。
だから、寝なくっても大丈夫なのだ。
今寝てしまったその理由は……。
「疲れてないと言っている割には、の膝の上で気持ちよさそうに寝ていたみたいだけど?」
反論したオレに、あいつが更に嫌味を返してくる。
確かに、今までの膝の上で寝ていたのは本当の事。
だからこそ、嫌味を言われても仕方ないとは思う。
「星馬、そんなに言うなって……んな事よりも、その書類さっさと終わらせねぇとこのままずっと帰れないぞ」
言葉に詰まったオレに、が小さく息を吐き出すとあいつへと仕事をするように促した。
「っと、そうだった!僕は、確かにこの書類を終わらせないと帰れないんだけど、は先に帰っても問題ないんだよ」
に言われて、あいつが慌てて書類に視線を戻す。
だけど、続けて言われたその言葉に、オレはへと視線を向けた。
「俺の事は気にすんな。それに、こんな時間にお前一人を残すのは危険過ぎだろうが」
あいつの言葉に、フワリと笑顔を見せながら言われたそれにオレは内心苦笑を零す。
こんな相手だからこそ、オレはこの傍に居る事に安心できるのだ。
温かなその気配を感じられて、また眠くなる。
「帰る時には起こすから、もうちょっと寝てていいぞ」
大きく欠伸をしたオレに、が優しく頭を撫でながら声を掛けてきた。
それに素直に従うように、オレの瞳はゆっくりと閉じていく。
「お休み」
聞えてきた声に、オレはまた夢の中へと逆戻りする。
夢の中でさえも、確かに存在しているその温もりを感じながら……。
そして、夢から覚めた時、また同じようにあいつが嫌味を言うんだろうとそう思いながら……。
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