「100円なぁ……」
「何、行き成り、どうしたの?」

 突然呟かれたのその言葉に、思わず問い掛けてしまう。
 真剣に書類に目を通していたと言うのに、何でそんな言葉が出てきたのかが分からない。

「いや、会計から書類渡されちまったんだけど、100円計算が合わないらしい」
「えっ、それって問題なんじゃ……」

 渡された書類と電卓とを見比べながら呟かれたその言葉に、僕は思わず驚きの声を上げる。
 生徒会の予算が、合わないなんて大問題になるんじゃ……。

「まぁ、問題つーたら問題なんだけけど、今まではもっと合わない事もあったらしいから、今年は優秀な方だろう」
「いや、それってすっごく問題だと思うけど……」

 そう思って呟いた言葉に、が信じられない言葉をサラリと返してくれる。

 いや、今までの生徒会って……。
 頭脳が優秀な生徒しか入ってないはずなのに、そんないい加減な仕事していた訳、それって……。

「まぁ、生徒会メンバーがいい加減な訳じゃねぇぞ。顧問がいい加減なんだよ。あの先生、時々領収書無くしやがるんだ」

 信じられないと思わず心の中で呟いたそれに、が盛大なため息をついて事の真相を教えてくれる。

 って、そんないい加減なの、あの先生って……。
 まぁ、すっごく頼りないって言うのは、間違ってないかもしれないけど……。

「それじゃ、今年は優秀って事は、先生も大分……」
「あの先生に買い物を任せてねぇからな」

 『しっかりしてきたんだね』と続けようとした言葉は、の言葉によって遮られた。

 いや、えっと、??

「欲しい者がある時は、あの先生一人では絶対に行動させてねぇよ。一人で行くとしても、こっそりと『昼』に見張らさせているから、そんなミスはさせねぇ」

 キッパリト言われたの言葉に、思わず苦笑を零す事しか出来ない。

「それじゃ、100円合わないって言うのは?」
「多分、釣り銭間違いだな。誰かは分かんねぇけど、貰った金を確認せずに戻ってきたって所だろう。仕方ないから、これはこれで、報告するしかないな……会計も、初めての事で戸惑ってたから、書類作成とかは俺がしとくよ」
「そ、そう、それじゃお願いするね」

 キッパリと言い切ったの言葉に、僕はただそう返事をする事しか出来なかった。

 

 仕事は完璧にこなして、文句など付けようがない。
 しかし、その為に裏で涙ぐましい努力をしていると言う事を今日改めて知った日だった。