「潤い欲しいよなぁ……」

「はぁ?」

 ポツリと呟かれたその言葉に、思わず声を上げてしまう。
 いや、別にそれを言ったのが目の前の相手じゃなかったら僕としても普通でいられたかもしれないけど、それを言った相手が相手だから、思わずそんな風に返してしまっても仕方ないと思う。

「なんだよ、星馬」

 僕の声に、不機嫌そうなの声。

「いや、だって、が潤いって、どう言う意味の潤い??」

「えっ?潤いって言ったら、潤いじゃねぇかよ」

 嫌、意味は分かるんだけど、どんな潤いが欲しいのかが疑問なんだけど……。
 例えば、目の潤いなら、綺麗な人とかを見るとか、充実した時間が欲しいとか、お金もそうだし、兎に角潤いなんて人それぞれだと思う。

「だから、の言う潤いはどんな潤い?」

 埒があかないと、率直に尋ねてみる。

「決まってんだろう!男としての潤い!」

 僕の質問に、キッパリと返された言葉に、更に驚きを隠せない。

 お、男としての潤い!!が???
 いや、まぁ、高校生の男子としては普通かもしれないけど、絶対に有り得ないと思った相手からの言葉だけに、僕にとって衝撃は隠せない。

「好きな子でも出来たの?!」

「はぁ??」

 だから思わず驚き過ぎて、そのまま尋ねてしまう。
 だって、男としての潤いが欲しいって事は、彼女が欲しいって事だよね、普通。

 だったら、やっぱりその、好きな子が出来たと思うのが普通だと思うんだけど、返ってきたのは意味が分からないというような素っ頓狂な声だった。

「どっから、そんな考えが出てきたんだ???」

 そして続いて質問された事に、僕は訳が分からずに首を傾げてしまう。

「えっ、だって、男としての潤いが欲しいって……」

 だから、てっきり好きな子が出来て、彼女にしたいんだとそう解釈しても仕方ないと思うんだけど……。

「ああ?男の潤いって言ったら!甘いお菓子!!」

「はぁ??」

「菓子作って、こうのんびりとお茶してぇと思わねぇ?」

 力説状態で言われた言葉に、思わず間抜けな声を出してしまう。

 って、甘いお菓子??
 しかも、お菓子作って、お茶したいって……。

「いや、それは、絶対男としての潤いだとは思わないよ……って言うか、めちゃくちゃ紛らわしいから!!!」

「どこが?」

「分かってないのが、問題なんだよ!」

 思わず、怒鳴っても許されるだろう。

 全く、このと言う人間は、どうしてこう謎なんだろう。

 まぁ、確かに日常に潤いが欲しいと思うけど、こんな風に人を疲れさせることはしないで欲しいと切実に思う日だった。