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「なんで、私の良さが分からないのよ!!」
そんな声が聞こえてきて、オレは顔を上げた。
『、先程から聞こえてくるこの声は、一体何なんだ?』
だから、思わず珍しく机に向かって本を読んでいる自分の主へと声を掛けてしまう。
人が静かに休んでいるのに、迷惑な馬鹿妹の所為だな。
「ああ、気にすんな。また振られたんだろう」
だがオレの質問に、サラリと返されたのはそんな言葉である。
って、3日前ぐらいにも同じような事がなかったか??
『相手は、憧れのあいつか?』
「んな訳ねぇだろう。星馬は、高嶺の花だからって、脈ありそうな奴片っ端から声掛けてんだよ、あいつは」
た、高嶺の花?
た、確かに、あいつは興味は無さそうだが、そんなに振られているのに、どうして声を掛けるんだ??
「まぁ、あいつは我が妹ながら、本当に馬鹿だからな。あの性格が振られている原因だとは思ってねぇんだろうな」
……いや、あの妹だから、そんな事微塵も考える筈はないだろう。
それどころか、自分が振られる原因など、ないと思っているかもしれない。
いや、きっとそう思っているに決まっている。
『、時々、あれと血が繋がっている事を後悔しないか?』
「ああ?そんなの何時もだ。あっちも、同じように思っているから、学校で兄弟だと知っているのは、僅かだな。似てなくって良かったと思うぞ」
確かに、妹とは似ても似つかない。
ばーさんには、あんなに似ているのに、両親のどちらにも似てないのも事実だ。
時々、本当にこいつ等が同じ血が流れているのかを疑いたくなるのも、本当。
こいつだけが、日成の血を受け継いでいるのは、ばーさんにそっくりだから直ぐに分かる。
後は、赤の他人と言っても通じるな。
『お前達は、本当に正反対だな』
「ああ?どう言う意味だよ」
『だから、お前と妹が逆の性別だったら、さぞかしモテるだろうと言う事だ。もっとも、今の性別でもモテるのは変らないがな』
クスリと笑って、眼鏡もコンタクトもしていないの顔を見る。
深い紺色の瞳は、見ていれば落ち着ける。
そして、金の瞳は、何時だって自分を引き付ける色。
大好きなそれは、主と決めたモノが持つ確かな光。
「決めた!やっぱり私には、烈先輩しか居ないんだわ!!これは、神様が私に諦めるなって言ってるのね!!」
真っ直ぐに大好きな色を見詰める中聞こえてきたその言葉に、がっくりと力を落とす。
『……、あいつを何とかしてくれ……』
「無理。諦めろ」
『もっと己を知れ!』と、声を大にして言いたい。
きっとあいつも、こんな奴を見れば、そう思うに違いない。
女は強かと言うかもしれないが、それも度を越せば迷惑以外の何者でもないな。
聞こえてくる声をバックに、どんどんと不機嫌になっていくのを止められない。
頼むから、誰かあいつをどうにかしてくれ!!
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