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24時間営業なんて当たり前。
今では、無くてはならない、コンビニエンスストアー。
お菓子や飲み物から惣菜は当然の事、服に化粧品、下着に入浴材。チケットに電池にテープ。何でも揃う便利なお店。
一度も行った事が無いと言う奴は、居ないだろう程、お年寄りから若い奴まで、幅広く愛用されている。
だが、悪いけど、俺は一度も行った事がない。ファミレスは、行った事があるけど、コンビニには、用事ねぇもんな。
「、本気で言っているの?」
俺の言葉に、星馬が驚いたように聞き返してくる。
本気もなにも、そんなモンで受け狙っても仕方ねぇと思うんだけどな。
「ああ、行った事ねぇぜ」
サラリと返した返事に、更に星馬が驚きの声を上げる。
「普通、高校生なら、毎日だって行っていても可笑しくないんだよ!!」
「いや、毎日行く奴なんていねぇだろう、普通」
声を大にして言われた事に、小さく突っ込みを入れるが、どうやら聞こえなかったらしい。
「それなのに、どうして行った事無いなんて……」
「用事ねぇからな」
別に、コンビニに行かなくっても、死にはしない。しかも、用も無いのに、行く必要が何処にあるというんだ。
「仕事している人間には、ボクなんかよりも、用があると思うけど」
俺の言葉に、反論するように星馬が口を開く。
確かに、何処にでもあるコンビニは、モノを買うには便利と言えば便利だ。
だけど、聞いたんだよな、昔人から。
「ってもな。コンビニって、高いんだろう?」
「はぁ?」
「スーパーとかよりも、モノの値段が高いんだろう」
「えっと、??」
本当の理由はそれ。飲み物なんかも、自販機よりは安いかもしれないけど、スーパーとかで買うよりは、高いって話しだ。
他のモノも、大体同じ。スーパーとかに比べると、高いのだそうだ。それを聞いてから、俺は絶対にコンビニには行かないと心に誓った。少しでも安く仕上げて、その分で何かを買った方が断然お得だしな。
「……君って、主婦?」
「まぁ、一応自分で仕事して金を持っている身だから、無駄遣いはしたくねぇんだ。それに、元からジュースとかは飲まねぇし、飲み物は自分で準備する。食いモンだって、自分で作るから、コンビニには用事は無い」
「主婦の鏡だな」
きっぱりと言った俺に、星馬が感心したように呟く。そう言うけど、店で売っている菓子なんて、何が入っているか分からないのに、食いたくねぇよ。飲み物だって同じだ、砂糖や添加物がいっぱい入ったモノは飲みたくねぇ。
「そんな訳だから、俺はコンビニに用事ねぇの」
「……言われると、必要ないのかも……」
「まぁ、それを他の奴に強制するつもりはねぇけどな。俺は俺。他の奴は、他の奴。俺には、コンビニとかは合わないって事だな」
夜中まで開いているのは、確かに魅力ではあるけど、それだって、夜に行動する奴の為だもんな。
でも、俺は、夜は寝るためにあると思っているから、別に夜中に営業していようが関係無い。
仕事で、夜中に出掛ける事になる時は、家で準備してから出掛けるし、時間を潰すのなら、ファミレスがある。
だから、コンビニに行った事が無くっても、おかしい事は無いだろう。
まぁ、世の中いろいろ、俺だけじゃなくって、他にも同じように考える奴が居るかもしれない。
それはそれだ、人それぞれ。
あまり納得できていないような、星馬を前に、思わず苦笑を零した。
「ほら、深く考えてないで、紅茶飲めよ。今日は俺オリジナルのブレンドティ」
複雑な表情をしている星馬に紅茶を差し出す。それを素直に受け取って、口を付けて、納得したように頷いた。
「確かに、これだけのモノが作れれば、コンビニなんて必要無いかもね」
それは、誉められているのだろうか?
何にしても、納得してくれたようだから、良しとするか。
「さて、休憩終了。さっさと仕事しないと、副会長に文句言われちまうぞ」
「……君も、副会長じゃなかったけ?」
「まぁ、俺はお手伝いだからな。さっさと働けよ、会長」
冗談混じりに言えば、苦笑交じりに言葉が返される。
確かに、俺も副会長に間違い無い。でも、俺が言ったのは、女子の副会長の方。
俺は、ただの雑用副会長だからな。
「了解!そうだ、今日にでもコンビニに行ってみる?」
まだ、コンビニに拘っているのか、こいつは!
「遠慮。まぁ、コンビニの肉まんには興味引かれるけどな」
「なんだ、興味が無い訳じゃないんだ」
「コンビニで売られる肉まんだけだぜ、興味があるのは」
正直に言えば、少しだけ考えるように、星馬が沈黙する。
「よし、冬には、肉まんを差入れしてやるよ。何時もご馳走になっているからね」
「おう、期待しているぜ」
嬉しそうに笑う星馬に俺も笑顔を返す。
興味があったモノを、差し入れしてもらえるのは嬉しいものだ。
まぁ、自分で行ってもいいんだけど、どうしても行く気がしないんだよな。
そんな訳だから、コンビニで興味が出たものは、星馬に頼もう。
きっと、喜んで買ってきてくれるだろう。
それは、弟も同じかな?
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