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何時も、思うのだ。
このパワーは、一体何処からくるのだろう。
「星馬先輩!」
黄色い声と共に聞えてきた名前。いや、正確に言うと、苗字か……。そんな細かい事はどうでもいい!何が悲しくって、こんな煩い場所に居なきゃいけないんだ!!
「ごめんね、今大事な話をしているところだから、後にしてもらえるかな」
ニッコリ笑顔で、言われた言葉に、女子生徒達が、少しだけ文句を言うのが聞えて来た。
っつか、分かれよ、それぐらい!!!
「ごめんね、君」
本当にそう思っているのか疑わしいところだが、星馬が、一応謝罪の言葉を掛けてくる。
「き、気にしないで、それより、みんなの事、待たせるのは悪いから、ボクの事は気にしなくっても大丈夫だよ」
それに、何とか引き攣り笑いを浮かべて、一刻も早くこの場所を離れたいと意思表示しても、許されるだろう。
「そう言う訳にはいかないよ。君一人に、生徒会の仕事押し付ける訳にはいかないからね」
ニッコリと笑顔で優しい言葉を口にする、星馬。
でも、俺には『一人だけ逃げようなんて、そんな事許さないよ』と聞えたのは、こいつの本性を知っているからだろうか?
そして、その逆もまた然り。こいつも俺の本性を知っているから、俺が本気で嫌がっている事を知っているのだろう。お互い、心の内を隠すように、その顔には、鮮やかな笑顔を絶やさない。
「…………そ、それなら、せめて、生徒会室に移動した方が、いいと思うんだけど………」
だから、これが俺の言える精一杯の言葉。.これ以上、この場所に居たら、猫なんて被っていられない自信があるから……。
「あーっ、疲れた」
生徒会室に移動して、女子生徒達を部屋の外で見送り大きくため息をつく星馬を前に、複雑な気持ちを隠せない。
と言うよりも、何でさっさと場所を移動しなかったんだよ、こいつ。
「本当に、女の子達のパワーには、負けるね」
ニッコリと笑顔で言われた言葉に、返事を返せない。
「そう思わない、」
返事を返さない俺に、今度は直接質問される。
それに、俺は盛大なため息をついた。
「そう思うのなら、俺を巻き込まないでくれ……」
「巻き込むだなんて、人聞きの悪い事言わないで欲しいな」
ニッコリとこれ以上ないほどの笑顔で言われたそれに、再度ため息。
「何にしても、、何時もの紅茶お願いね」
俺がため息をついたのと同時に、星馬がニッコリ笑顔で言った言葉に、もう一度ため息をつく。
………星馬弟の気持ちが、嫌と言うほど良く分かる。あいつは、こんな兄を持って、苦労してるんだろうなぁ……。
そう思っても、許される事だろうか。
いや、それよりも、俺がそう思う程、こいつが凄いのか?
「何にしても、紅茶入れるか」
考えても分からない事に、素直に紅茶を入れる準備。
気分的に落ち着けるカモミールを入れたのが、俺の心情を表しているのではないだろうか。
「やっぱり、の入れてくれた紅茶が一番安心できるね」
入れたばかりの紅茶を差し出せば、幸せそうな笑顔と共に、そんな言葉を聞かされる。
それは、正直に喜んでもいいのだろうか?複雑な気分だぞ。
「それじゃ、落ち着いたし、仕事に取り掛かろうか」
そして、俺が自分用に紅茶をカップに入れたのを確認した瞬間、星馬が本題に入った。
どうして,こんなに切り替えが早いんだ、こいつは!
いや、『昼』辺りが居たら、どっちも変わらないと冷たく言われそうだけど、絶対に、俺はこいつとなんて似てないからな!!
「、仕事」
「……仕事なら、殆ど終っている。お前の机の上にある書類は、お前が目を通さないといけないモノだから、しっかりと目を通してくれ」
疲れたようにソファに座り、自分の入れた紅茶を飲む。
この時が、俺にとってもっとも安心できる時間。
ああ、なんかお茶菓子用意すればよかった。そうすれば、もっと幸せになれたかも……。
「了解。そうだ、冷蔵庫にケーキ入れてあるから食べていいよ」
ソファに座り込んだ俺を横目に、星馬が冷蔵庫を指差す。
その言われた言葉に、俺は首を傾げた。
「何時も、美味しい紅茶やお菓子をご馳走になっているから、そのお礼」
パチンとウインク付きで言われた言葉に、目を見張る。
いや、だって、本当にお礼なんて、貰えるとも思わなかったから……。
こう言う時に思うのだ、星馬には、敵わないんじゃないだろうかと。
「あっ!ボクの分も数に入っているから、用意してくれると助かるかも」
だが、続けて言われた言葉に、苦笑を零す。
今日の女子高生だって、彼にはきっと敵わないだろう。そんな風に思える相手は、きっと目の前に居る人物だけ。
「仰せのままに、生徒会長様」
優雅に一礼して、言われた通り冷蔵庫からケーキを取り出す。
幾つか入っているケーキを皿に取り、星馬に手渡した。
「あら、いいところに来たのかしら?」
その瞬間、ドアが開いて、声が掛けられる。
「副会長?!」
思わず、星馬と声が重なってしまうのは、仕方ないだろう。まさか、本日は来ないと思っていた人物が、目の前に居るのだ、驚くなと言う方が無理な話である。
「私にもいただけるかしら、くん」
ニッコリと笑顔を見せる女子副会長に、俺は頷いて返す。
な、何にしても、俺が猫被ってない状態の時じゃなくって、良かったと正直思えばいいのだろうか?
「今日は、仕事無かった筈だけど……どうしたの?」
「ちょっと、忘れ物をとりに来たの。でも、お陰で、いいタイミングだったわ」
眼鏡を掛けた女子副会長が、その眼鏡を掛け直しながら語った言葉に、俺は複雑な気持ちを隠せない。
眼鏡外さなくって、良かった。
「それじゃ、お菓子も頂いたし。美味しい紅茶もご馳走になったから、帰るわね。ご馳走様」
俺が安堵のため息をついている中、用事を済ませた副会長がそのまま部屋を出て行くところで、我に返る。
「あっ!お疲れ様」
「何もしてないわよ、私」
慌てて声を掛ければ、振り返って苦笑を零す。
「何にしても、二人の意外な一面も見れたから、感謝した方がいいのかしら?」
「えっ?」
「猫かぶり、二人とも、天才的ね」
ドアを開いて出て行く瞬間、言われた言葉に、言葉を無くす。
い、一体、何時から居たんだ、彼女は!!!
「………恐るべし、女子高生」
「まぁ、彼女なら、誰かに話したりしないと思うけど……侮れないね、本当」
だよなぁ。
まぁ、ばれたモノは仕方が無い。
やはり、女子高生のパワーには、俺たちは勝てないと言う事なのだろうか?
侮り難し、女子高生、だな。
そんなこんなで、俺と星馬の猫かぶりは、生徒会女子副会長にまで、バレた。
深く追求しそうに無い、彼女なら、問題無いということで、あっさりと解決したのだが……。
やっぱり、怖いよな、女子高生。
そう思わずには、居られない俺だった。
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