今年も、綱吉の生まれた日が近付いてきた。
あっ、その前にリボーン先生の生まれた日ももう直ぐだ。

去年は、リボーン先生に教えて貰った方法でお祝いをしたんだけど、去年のボクと違って、今年のボクはちょっと違う。
だって、去年と違って、ちゃんと誕生日に生まれてきた事をお祝いするって知っているから!
それからね、隼人から教えて貰ったんだけど、誕生日には、プレゼントって言うのを渡すのが一般的なんだって
去年、リボーン先生はそんな事は教えてくれなかったんだけど、こっそりと隼人が教えてくれたから、今年は頑張ってプレゼントを用意しようと思ってるんだけど
何をプレゼントしたらいいのか分からなくて、途方に暮れてしまった。

だってね、リボーン先生の誕生日もあるのに、リボーン先生に教えて貰う事は出来ないし、隼人も武も最近忙しいのか姿を見ない。
当然それは、了平やランボも一緒。

恭弥は、元からこの屋敷に住んで居るわけじゃないので、余り見かけないし、骸にいたっては、今何処に居るのかさえボクは知らない。

「プレゼントって、何をあげればいいのかなぁ」

クリスマスに、綱吉はボクにプレゼントをくれた。
クリスマスと言うものも初めて知ったけど、プレゼントを誰かから貰ったのも初めての事。

綱吉は、ボクに大きな花壇を用意してくれた。
好きなモノを植えていいと言われたから、ボクの友達に色々な種を貰ってそこに植えた。
でも、正直言うと、何の種なのかボクも知らないので、大きくなるのがとっても楽しみだ。

でも、ボクには綱吉に贈れそうなものなんて、何一つ持っていない。

「武が教えてくれたのは、プレゼントって、気持ちを贈るんだったよね?」

えっと、気持ちって、どうやって贈るんだろう???

そもそも、気持ちって、どんなモノ?

分からずに首を傾げた瞬間、窓の外から名前を呼ばれて顔を上げる。
窓の外で呼んでいるのは、ボクの自由な友達。

「こんにちは」

窓を開けてみんなに挨拶をすれば、一斉に返事が返ってくる。
それに対して、自然と笑みが浮かぶようになったのは、何時からだろう。

「ねぇ、みんな、気持ちを、ね、大好きな人にプレゼントしたいんだけど、どうしたらいいと思う?」

ボクの質問に、みんなが分からないと言うように首を傾げる。

あれ?前にも同じ様な質問をした事があるような……。
しかも、その後

「何を小鳥に相談してやがるんだ、(セツ)?」

何となく思い出していた中、同じように誰かの声が聞こえて来てボクの相談相手がみんな飛び立ってしまった。

「リボーン先生」

振り返れば、そこに居るのは予想通りの人で、何時かとまったく同じ状況が出来上がっている。

「また、ダメツナへの祝いを考えていたのか?」

困ったようにリボーン先生を見れば、楽しそうに笑われてしまった。

ボクは、本当に困っているのに、リボーン先生は何でこんなにも楽しそうにしているんだろう?

「……綱吉のだけ、じゃない、です……」

だから、質問された内容に、素直に答えれば、またしてもリボーン先生は嬉しそうに笑った。

「そうか、なら楽しみにしているぞ」

そしてボクの言葉を聞いたリボーン先生は満足したようにそう言って部屋から出て行ってしまう。
えっと、楽しみにしているって……ボク、もしかしなくても、失敗しちゃったかも?!

ど、どうしよう、楽しみにしているって言われちゃったんだけど……
ボク、どうしたらいいんだろう。

「みんなに相談しても、ダメだし、誰に相談したらいいんだろう……」

隼人か武が居れば、相談できるのに
了平かランボなら、一緒に考えてくれるのに

でも、みんな忙しくてとても相談出来ない。

もちろん当人である綱吉にだって、相談できる訳ないよね。
どうすれば、いいんだろう……。

「雪、どうしたの?」

あれからずっと考えていて、ボクは突然心配そうに名前を呼ばれてビックリしてしまった。
何時の間にか部屋に戻ってきた綱吉が、考え込んでいたボクに声を掛けてきたのだと気付く。

「な、何でもないの!」

心配そうにボクを見詰めてくる綱吉に、ボクは慌てて首を振って返す。

「そう?でも、何か考えているみたいだったけど?」

慌てて首を振ったボクに、納得できないと言うように綱吉が再度質問してくる。
でも、綱吉に何を考えていたかなんて言える筈もない。

「ううん、ちょっとボーっとしていただけだから、心配しないで」

だからボクに出来るのは、笑って綱吉に心配を掛けないようにすることだけで精一杯だった。
でも、勘の鋭い綱吉はやっぱり納得出来ないって表情でボクを見てくる。

「綱吉、もう、夕飯の時間だよね?」
「ああ、そうだね」

必死で考えて、チラリと時計を見てから、慌てて話を誤魔化すように質問すれば、綱吉が頷いてくれた。

「それじゃ、一緒に夕飯食べよう」

だからこそ、笑顔で言った言葉に綱吉が同意してくれて本当に良かったと思う。
だって、ボクには綱吉にこれ以上隠し事を続ける事は出来ないと分かっているから





その夜は何とか綱吉を誤魔化す事が出来たけど、ボクの悩みがなくなった訳じゃない。
どうしたらいいのか分からなくて、綱吉から貰った花壇の前に座り込んで考える。

プレゼントって、何を渡せばいいんだろう。
自由で、ボクなんかよりも色々な事を知っている友達に聞いたけど、知らないって返されてしまった。

屋敷に居るのは綱吉とリボーン先生、使用人さん達で、綱吉とリボーン先生には聞けないし、使用人さんに、僕なんかが話し掛けるなんて出来るはずもない。

だから、誰にも聞けなくて、ボクは大きなため息をついてしまう。

「何、そんな所でため息なんてついているの?」

その瞬間、誰かの声が聞こえてきた。

少し冷たいとも取れる声だけど、でもその声の主が本当は優しい人だってボクは知っている。
不器用で、でも優しい人。

「恭弥」
「うん、で、なにそんな所でため息なんてついているの。誰かに、怒られでもしたのかい」

振り返った先に居たのは、予想通りの相手で、ポンとボクの頭に手を乗せて質問してくる。
ボクは、それに笑って首を横に振って返す。

「ううん、誰にも怒られてないよ。ここの人達はみんな優しいから……」
「なら、どうして、ため息なんてついていたの?」

否定したボクに、恭弥が再度質問してくる。
それにボクは、一瞬困ったような表情をしてしまった。

「何、僕には話せないの?」

そんなボクに、恭弥が不機嫌な声で質問してくる。
それにボクは慌てて大きく首を振って返した。
恭弥に相談に乗ってもらえるのなら、凄く助かるから

「あ、あの、ね」
「うん」
「もう直ぐ、リボーン先生と綱吉の誕生日、なの」
「ああ、だから最近忠犬がそれまでに全ての任務を終わらせるって、頑張っているんだ」

だから、オズオズと、口を開いたボクに、恭弥は頷いてため息をついた。
忠犬って、多分、隼人の事だよね?時々、リボーン先生も、同じように言う事があるから、間違いないと思う。
えっと、誕生日までに任務を終わらせるために、忙しくて、姿が見えなかったんだ。

「それで、どうして君がため息をついているの?」

隼人達の姿が見えなかった、理由が漸く分かって一人頷くボクに、恭弥が再度問い掛けてくる。

「あの、プレゼント、贈りたいんだけど、プレゼントって、気持ちを贈るものなんだって、武が教えてくれたんだけど、ボクには気持ちがどんなものなのか分からなくて……」
「ああ、そう言う事」

必死で説明しようとしたボクの言葉を最後まで聞くことなく、恭弥は納得したと言うように大きく頷く。

「だから、赤ん坊が僕を呼んだ訳だ」

全てを理解したと言うように頷いた恭弥に、ボクは意味が分からなくて思わず首を傾げて恭弥を見上げた。
恭弥は、誰かに呼ばれてここに来たの?

「恭弥?」
「そんなの、簡単な事だよ」
「えっ?」

確認するように名前を呼べば、フッと楽しそうな笑みを浮かべる恭弥。
だけど、言われたその言葉の意味が分からなくて、ボクは再度首を傾げてしまう。

その後、恭弥はボクの耳元に、そっとリボーン先生と綱吉にどうやって気持ちをプレゼントすればいいのかを教えてくれた。
でも、教えてくれたのは、本当に簡単な事で、それが気持ちをプレゼントする事になるのかどうか、ボクには良く分からない。

「僕の言葉が信じられないの?兎に角、試してみるんだね」

不安気に恭弥を見上げれば、楽しそうに笑って返されてしまう。
確かに、今のボクには、恭弥の言葉を信じて行動するしか道が残されていない。

「ボク、恭弥の言うように、リボーン先生と綱吉に気持ちをプレゼントするね」
「群れるのは嫌いだけど、見届けてあげるよ」

 

 

恭弥に教えて貰って、まずはリボーン先生の誕生日の日に、ボクの精一杯の気持ちをプレゼントをしたら、綱吉がまたリボーン先生を怒っていた。
えっと、ボク、また何か間違ったのかなぁ?

リボーン先生には、『合格』を貰ったから、気持ちをプレゼンとしては、間違ってなかったんだと思うんだけど……

それで、次の日に綱吉にも同じことをしたら、ちょっと複雑そうな表情をされてしまった。

やっぱり、ボク、間違っちゃったのかと思って、心配そうに綱吉を見れば、

「リボーンに、先越されたのは悔しいけど、雪が、キスしてくれたのは、凄く嬉しい。でも、それを教えたのが、ヒバリさんだと思うと、複雑なんですけど……」

と、何かブツブツ言ってるのが聞こえて来たけど、よく意味が分からない。
えっと、悔しいのに、嬉しいの??
ああ、だから、複雑なのかなぁ?


良く分からない綱吉の呟きに、呆れたように恭弥とリボーン先生が、ため息をつく。

「素直に、喜べ、ダメツナが!」
「君、この子が不安そうに見てるの、分かってる?」

恭弥に言われて、綱吉がボクを見て、慌てたような表情になる。

「嬉しくないんじゃないよ!凄く、嬉しかったんだからね、雪!!」

ギュッと抱き締められて言われたその言葉は、綱吉の本心だと分かる。

だから、ボクは、もう一度綱吉の頬にそっと唇を触れさせた。

恭弥がボクに教えてくれたように、唇を頬に触れさせる事が、気持ちをプレゼントする事になるんだって
どういう意味があるのか、ボクには、まだ良く分からないけど、これがキスだって言うのも、恭弥が教えてくれた。

これが、どういう風に、気持ちをプレゼントした事になるのかは、分からないけど、リボーン先生も綱吉も喜んでくれたから、恭弥が教えてくれた事は間違いじゃないと思う。

でもね、綱吉がキスは、本当に好きな人にしかしちゃいけないんだって言っていたんだけど
ボク、リボーン先生も綱吉も、ここに居るみんなも大好きだから、みんなにキスしていいってことなのかなぁ?

そう質問したら、慌てて否定された。
えっと、大好きだけど、キスは簡単にしちゃいけないんだって

やっぱり、ボクには、難しくて、良く分からなかったんだけど
でも、綱吉には、してもいいんだって、うん、大好きな綱吉が喜んでくれるなら、一杯キスをしてみよう!