リボーン先生から、強制的な宿題を出されて、ボクはつなよしが居る執務室のドアの前でどうすればいいか悩んでいる。
ノックをすれば、優しいつなよしが入室許可をくれる事は分かっているけど、だけど、今のボクは正直言って素直に中に入りたくなかった。

でも、宿題をしないと、リボーン先生に怒られる。

ああ、でもあの人にそんな言葉を言うくらいなら、リボーン先生に怒られた方がいいのかもしれない。
その考えに至って、一人で頷いてその場所を去ろうとした瞬間、中から声が掛けられてしまう。

(セツ)、どうしたの?入って来ても大丈夫だよ」

心配そうなその声は、ボクの気配に気付いたつなよしが何時までもノックをしない事に不思議に思ったものだろう。
声を掛けられてしまったので、そのまま去る事も出来ずに、ボクは恐る恐る執務室のドアを開いた。

「ドアの前に気配があるのに、入って来ないからどうしたのかと思ったよ」

部屋の中に入れば、明らかに仕事をしていたと分かるつなよしが自分に笑い掛けてくれる。
その笑顔は、ボクの大好きな笑顔。

「お仕事の邪魔して、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。今はそんなに忙しくないからね。それで、どうしたの?」

優しくボクに笑ってくれたつなよしに、仕事の邪魔をしてしまった事を謝罪すれば、また優しい笑顔を見せてくれた。
それから、ボクが話し出すいようにと、問い掛けてくれる。

「えっと、あの……ごめんなさい!」

そんなつなよしに対して、ボクは頭を下げて謝った。
だって、他になんて言っていいのか分からなかったから

「えっ、突然どうしたの?」

行き成り謝罪したボクに対して、つなよしが驚いたように椅子から立ち上がってドアの傍に立っているボクの傍へと来てくれる。

そんなつなよしに対して、ボクは本当に申し訳ない気持ちで一杯だった。
だって、いくらリボーン先生の宿題だと言っても、今から言う言葉が相手を傷付けるモノだと分かっているから、謝らずにはいられなかったのだ。

「つ、つなよしの事、き、嫌い……」

先に謝っても、それでもつなよしの顔を見ながら言う事は出来なくて、ボクは俯いたままその言葉を口に出す。
言葉に詰まってしまうのは、言うのを躊躇った結果。

「な、何で急に?!オレ、雪に何かした??!」

その言葉を口に出した、ボクにつなよしが焦ったように質問してくる。
質問された内容に、ボクはフルフルと首を振って返した。

つなよしは、何もしてない。
だから、返事はNO。

「じゃ、何で急に!」

首を振って返したボクに、つなよしが更に質問してくる。

えっと、もう説明していいのかなぁ?
つなよしに、こんな不安そうな顔をさせていたくないから、宿題の事を説明しようと口を開きかけた瞬間、誰かの笑い声が聞こえてきた。

「リボーン、何笑ってるんだよ!雪が、オレの事嫌いって、言ったんだぞ!!」

その笑い声に、つなよしが文句を言う声が聞こえてきた。
あれ?リボーン先生、何時からそこに居たんだろう??
もしかして、ボクがちゃんと宿題が出来るかどうか確認してたんだろうか?

「…リボーン先生……」
「合格だぞ、雪」

つなよしに文句を言われても、全く気にした様子も見せないで、リボーン先生は笑いながら、ボクに合格の言葉をくれる。
えっと、それは、宿題はOKと言う事でいいのかなぁ?

「合格ってどう言う事だよ、リボーン!」
「だからお前はダメツナなんだぞ。今日が何の日か考えてみろ」

リボーン先生から合格を貰って、ホッと息を吐き出したボクの隣で、つなよしが質問した内容に、リボーン先生が呆れたように返す。

「今日……って、エープリルフール!」
「そうだぞ、だからお前に『嫌い』って言うのが今日の雪に出した宿題だ」
「って、お前が雪に言わせたのかよ!!」
「だから先に雪が謝ってただろうが」
「……あの謝罪は、そう言う意味だったんだ……雪、リボーンの宿題で、理不尽なものはしなくてもいいんだからね」

リボーン先生に言われた言葉で、つなよしは今日が何の日かを理解して口を開く。
それに対して、リボーン先生はボクがどうしてつなよしに『嫌い』って言ったのかを説明してくれた。
つなよしは、原因がリボーン先生だと分かって、盛大なため息をつくと、全てを納得したように頷いて、ボクの頭を優しく撫でてくれる。

撫でながら言われたその言葉に、ボクはなんと返していいのか分からなかった。
最初はボクも、自分が怒られる事を望んだ。

だけど、この部屋に入ってしまった事で、何もせずに去る事は出来なくて、仕方なく宿題を実行してしまった。
つなよしを傷付けると分かっている言葉を口に出すのは、本当に勇気が必要だったけど、でもボクに『嫌い』って言われて、つなよしがその理由を問い掛けてくれた事がとても嬉しい。

だって、それは、ボクの事を大切だと思ってくれている証拠だから

「ボク、つなよしの事、本当は大好きだよ」

だから、これは嘘偽りのない、ボクの気持ち。

「オレも雪の事、大好きだよ」

そうすれば、優しい笑顔と共に、ボクが欲しい言葉を返してくれる。

本当に、ボクはここに居られる事が、嬉しい。

それはね、ボクの嘘偽りない本当の気持ちなんだよ。