?」


 聞こえて来た声は、今よりもずっと幼く子供特有の高い声。

 あれ?一体何があったんだろう、確かリビングに入った瞬間…………ああ、またランボくんの10年バズーカーか……
 でも、10年後にしては、ここは普通に家の中みたいなんだけど

 キョロキョロと辺りを見回していれば、何か、色々懐かしいものが見えるんだけど、気の所為?


「誰?をどうしたの!」


 首を傾げた瞬間、聞こえて来た声に意識が引き戻される。
 声の方へと視線を向ければ、ミニマムの綱吉の姿が!!


「懐かしい!ツナの小さい時だ!!」


 俺の事を睨んでくる小さなツナに、感極まって抱き付いてしまう。
 だって、だって、本当に小さいツナってば可愛いんだもん!!


「なっ!離せ!」
「あっ、ごめんね。俺はだよって言っても、信じられない?」


 俺に抱き締められた事でツナが暴れてしまったので、その腕を離して自分の顔がツナに見えるように屈んでニッコリと笑顔を見せる。
 俺のその言葉に、ツナが一瞬驚いたように、じーっと見詰めてくるけど、目は逸らさずに見詰め続ければ、納得してくれたのかツナが小さく息を吐き出した。


「なんで、そんなに大きくなってるの?」
「えっと、事故って言うか何と言うか……多分、10年バズーカーが壊れてたんだと思う」


 ああ、思い出した。
 このリビングって、小さい頃の家なんだ、だから懐かしいって思えたんだね。
 って、事は俺は10年前に来てるって事だろうか?

 不機嫌そうに質問してきたツナに、多分だろうという事を説明する。

 だって、俺的には自信がないから……


「で、本当のは?」
「えっと、本当って言うか、この時代のは、俺と入れ替わって10年後かな?」


 俺の言葉に頭のいいツナは何かを感じ取ったのだろう、しっかりと質問を返してきた。
 それに、またしても頼りない返事を返す。

 いや、俺としては、それが精一杯ですから
 しかも、俺も一応本物のです!

 その言葉に、またしてもツナが盛大なため息をつく。
 それは、呆れられてるって事なんだろうか?

 お、俺、こんな小さなツナにさえ呆れられるってどうなの!?


「事故って、に危険があるって事?」


 オロオロしながら綱吉を見詰めていたら、真っ直ぐな視線が俺を射抜いてきた。
 うわ、綱吉って、この頃からこんな目が出来たんだ……真剣に、俺のことを思ってくれていると分かる瞳。


「大丈夫だよ、10年後も俺にはツナが居てくれるからね」


 そんな綱吉を前にして、小さくってもツナなんだなぁと感心してしまったのは秘密。
 だって、どう考えても、ツナはツナだもんな。


「そう、ならの言う事を信じるよ」


 俺の言葉を信じてくれて、諦めたようにため息をつきながら言われたその言葉にニッコリと笑顔を見せる。


「……その笑顔は、何年経っても変わらないんだね……」


 その瞬間、ボソリと呟かれた綱吉の言葉。
 それは本当に小さくって、俺には聞き取る事が出来なかった。


「何?何か言った?」


 だから、不思議に思って問い掛ければチラリと俺の事を見てまたため息をついちゃいました。
 そんな小さい頃からため息ばっかりついてると、一杯幸せが逃げちゃうんだからな!


「……何でもない。は、何年経ってもだって思っただけだよ」


 ちょっとだけ拗ねたようにツナを見れば、諦めてくれたのか再度ため息をついて口を開いてくれた。

 えっと、それは喜んでいいところなんだろうか?


「……ちょっと複雑なんだけど、いい方向に考えるね。でも、この頃のツナが家に居るのって珍しい、どうしたの?」
「今日は外が雨だから、母さんがと一緒に居ろって……自分は、買い物に出掛けちゃったんだよ」


 何とか自分を納得させて疑問に思った事をツナに質問すれば、何処か不機嫌そうに質問に答えてくれた。
 その言葉に視線を外へと向ければ、確かに天気は雨。

 この頃のツナは外で遊ぶのが当然になっていたから、雨の日は不機嫌になっていた事を思い出だして思わず苦笑してしまう。


「そうか……時間的にはおやつの時間だね……何か作ろうか?」
「作れるの?」
「一応ね。何時帰れるか分からないから、大したものは作れないけど、母さんの事を考えたら何でも作れると思うよ。簡単な所でホットケーキかな?」


 質問した俺に対して、質問で返されたそれに笑みを浮かべて返す。
 更に聞き返すように言った俺の言葉に、綱吉の目がキラキラと輝いているのがすっごく印象的だった。

 この頃の綱吉は、今の綱吉と違って甘いの大丈夫だったんだよな、うん。

 期待の篭った瞳で見詰めたれたのが答えととって、キッチンへと移動する。
 母さんの事だから、マメに買い置きしてるからホットケーキの材料ならバッチリのはず。

 予想通り小麦粉も卵、牛乳にベーキングパウダーもしっかりとあった。
 トッピングに生クリームと果物つけたら、立派なケーキが出来そうだ。

 キッチンに移動して来た俺の後を、トコトコとツナが付いてくる。
 それがなんかすっごく可愛くって、微笑ましいんだけど


「って、のんびりしてたら、作らずに帰る事になりそう!急いで作らないと!!」


 という事なので、速攻で作業を始めた。

 小麦粉とベーキングパウダーを泡だて器でかき混ぜて、砂糖と少量の塩を入れて更にかき混ぜ、卵と牛乳入れてまたまたかき混ぜる。
 ホットケーキって、ひたすらかき混ぜるだけなんだよね、後は、タネが出来たらフライパンで焼いちゃおう。


「直ぐ焼けるから、そこに座ってていいよ。飲み物、何がいい?」
「うん、ホットミルク」


 ホットケーキを焼きながら綱吉に声を掛ければ、俺の言葉に素直に従って椅子に座って返事を返してきた。


「了解」


 今の綱吉からは絶対に聞けないその言葉にちょっとだけ笑って、返事を返し開いている方のガスレンジを使って牛乳をミルクパンで温める。

 えっと、一応自分の分も作ろうかな、もしかしたら、小さい俺が帰って来た時なかったら可哀想だし

 一瞬考えて、二人分。
 子供の頃使っていたカップを取り出す。
 その頃には、ホットケーキも一枚焼き上がったので、しっかりとトッピングして、出来上がったホットミルクと一緒に綱吉に差し出した。


「お待たせ」


 コトンとツナの前にホットケーキの乗ったお皿と、ホットミルクの入ったカップを置く。
 それにコクンと小さく頷いて、ツナがフォークを持ってホットキーキを食べ始めた。
 それを横目で見ながら、俺は二枚目のホットケーキを焼く。


「おいしい」


 パクンと音がしそうな勢いでツナがそれを口に入れてから、言われた言葉にまたしても顔が綻んでしまうのを止められない。


「そっか、良かった。ちゃんと後片付けしないと、母さんに悪いよなぁ……」


 二枚目も直ぐに焼き上がって、俺はそれも綺麗にトッピングしてから片付けを始める。

 あ〜っ、ホットミルクって時間経つと膜出来るんだよな……でも、まぁ、仕方ないか……


は、食べないの?」
「うん、これは小さい俺の分。多分、直ぐに戻ってくると思うから」


 洗い物はそんなにないから、片付けは直ぐに終った。
 そんな俺に、ツナが不思議そうに質問してくる。
 それに俺は振り返って、返事を返した。

 これは俺の勘が働いてるのか、多分直ぐに帰れるって確信してるんだよね。


「それって、の勘?」


 確認を持っていった俺のそれに、ツナが信じられない事を聞いてきた。

 あれ?この頃のツナって、俺の勘が鋭いのって知ってたっけ?


「どうしてそう思うんだ?」
はね、良くそう言う事を言うから……が言った事って、すっごく良く当たるのも知ってる……」
「そっか……」


 必死で説明するように言われたツナの言葉に、思わず笑ってしまった。

 ああ、やっぱり昔からツナは変わらないんだな……ずっと、俺の事を見ててくれる。


「有難う、ツナ」
「……どうして、がお礼を言うのか、分からない」
「んっ?言いたくなったから」
「なんで……」


 笑顔で返した俺に、ツナが何かを言いかけた瞬間、ボワンと言う最近聞き慣れてきてしまったような音が聞こえて来て視界を煙が遮った。


「あ、あれ?小さなツナは??」


 行き成りの状況に付いていけずに、俺は思わず辺りを見回してしまう。
 確かに、直ぐに帰れるとは思っていたけど、何もこんなに突然でなくてもいいと思うんだけど


 もう少し可愛いツナを堪能したかったのに!!


「ツ、ツナ、何かあったのか?」

 そんな事を考えていた俺は、突然ツナに抱き付かれて、驚いて声を掛ける。


 い、一体何があったんだろう?
 えっと、もしかして10年前の俺がツナに何かしたとか?!


「おかえり、


 心配してオロオロしていた俺の耳に届いたのは、ツナからの意外な言葉だった。
 一瞬何を言われたのか分からなくなったのは、仕方ないと思う。


「えっと、良く分からないんだけど、ただいま、ツナ」


 だから、俺に返せたのは、それだけだ。
 うん、ちゃんと笑顔を見せれたのは、俺にしてはかなりの及第点だろう。
 だって、本当に意味が分からない状況だったから


 でも、そのお陰か、ツナも笑顔を返してくれたからホッとした。


 それから、ツナに10年後の俺が可愛かったのだと、話を聞かされたのでそのお返しと言うように、俺も10年前のツナの話をしたのは別の話。

 でもね、その後ちょっとだけツナの機嫌が悪くなったのは、なんでだろう?


 そう言えば作ったホットケーキ、ちゃんと10年前の俺が食べてくれてるといいなぁなんて、それだけが少しだけ気になる所だったりして