「、危ない!!」
突然名前を呼ばれて、ツナに庇われるように引き寄せられてその体を抱き締められる。
「ツナ?!」
状況も分からないままに、俺は驚いてツナを見ようと視線を向けた瞬間白い煙に包まれてしまった。
「ツナ、ツナ!!」
白い煙が辺りを包む前に聞こえた爆発音、それが気になる。
もしかしなくっても、俺はツナに庇ってもらった状態なのだろうか?
でも、こんな危険な夢は見てない。
だから、ツナの命が危なくなる事は絶対に有り得ないはずなのに……
「ツナ!!」
でも、夢は万能じゃない。
もしも、俺が夢を見れなかっただけだとしたら?
「ツナ、返事して!!」
「……ゲホゲホ……、心配しなくっても、大丈夫だよ……多分……」
「ツナ」
焦って名前を呼んだ俺に、咳込みながら漸くツナが返事を返してくれた。
それにホッとして名前を呼べば、立ち込めてきた煙がひいていき俺の目にもツナの姿を確認……
「ツ、ツナ??」
出来たと思ったんだけど、目の前に居たのは小さな子供。
その姿は、数年前の綱吉の姿。
「……やっぱり、10年バズーカが壊れてたみたいだね……」
ビックリして名前を呼んだ俺に、子供の姿をした綱吉が大人びた態度で盛大なため息をつく。
えっと、何でそんなに落ち着いてられるんだろう……だって、ツナ子供になってるんだけど
「ツ、ツナだよね?」
「そうだよ。オレ以外の誰に見えるの?」
信じられなくって恐る恐る質問した俺に、ツナが逆に質問で返してくる。
いや、ツナ以外の誰にも見えないんだけどね、だけど、普通直ぐには信じられないと思うんだ。
「えっと、何がどうなって綱吉が子供に!」
「簡単だよ。ランボの馬鹿が壊れたバズーカを振り回してくれたのが原因だから」
俺の疑問に、あっさりとツナが返事をくれる。
えっと、見た目は子供なのに、中身は何時もの綱吉なんだ……何か、違和感ありまくりなんだけど……
「本当に、大丈夫なの?」
「心配ない。それよりも、は大丈夫?」
「お、俺は、ツナが庇ってくれたから……」
「そう、良かった」
心配で思わず質問した事に、あっさりと返事を返して、逆に俺の事を心配してくるツナに返事を返せば、本当に安心したと言うようにツナが笑った。
その笑顔に、思わず胸がキュンとしてしまっても仕方ないと思うんだけど
だって、3・4歳の姿でにっこりと笑った姿は本当に可愛くって
「ツナ!カワイイ!!!」
思わず、抱き締めてしまいたくなるくらいだ。
って、我慢できずに抱き締めちゃったけど
「って、急にどうしたの?」
「だって、すっごくカワイイ!!俺が、抱き上げられるんだよ!!!」
急に抱きついた俺に、ツナが驚いたように質問してくるけど、それに返せたのはちょっとだけ興奮してツナを抱き上げながらの返事。
「!ちょっと、オレを抱き上げちゃダメだよ」
「うん?大丈夫だよ、今のツナ軽いから!」
抱き上げた俺に、綱吉が慌てたように言うけど、それを軽く無視して歩く。
確かに、ちょっと重いけどこれぐらいなら問題ある訳じゃない。
「だからって!」
「だって、俺がツナの事を抱き上げる事なんて、普通ならありえない事なんだよ!こんな機会でもない限り!!」
それでも俺に抱き上げられているのが心配なのか文句を言おうとしたツナの言葉を遮って、力説してしまう。
だって、俺は良くツナに抱き上げられてるけど、俺がツナを抱き上げる事なんて出来る訳ない。
足の問題もそうだけど、体力的にも不可能だ。
「………そうかもしれないけど……」
俺の力説したその言葉に、ツナが複雑な表情を見せるけど気にしない。
だってこんな事、もうないかもしれないから
「それに、ツナがすっごくカワイイ!!」
ぎゅっとして思わす頬をすり寄せてしまうぐらいには、可愛い。
「……あんまり嬉しくないんだけどね……」
ぎゅっとして頬をすり寄せた俺に、ボソリとツナが言うけど聞こえないフリ。
だって、折角こんなに可愛いのに、可愛くない事は聞きたくない。
「さきからうるせーぞダメ……って、その腕の中に居るのは……ツナか?」
はしゃいでいた俺に、その声を聞き付けてきたのだろうリボーンが俺の腕の中の存在に気付いて、信じられないというような表情で質問。
やっぱり、信じられないよね、ツナがランボの10年バズーカに撃たれるなんて……
「うん、俺を庇って壊れた10年バズーカに撃たれちゃったんだ」
「なら納得だな。10年バズーカで撃たれたんなら、その内戻るだろう。ダメがツナの面倒は見るみたいだしな」
俺が今状況を説明すれば、納得したリボーンがニヤリと笑って言う。
うん、そんなにすんなりと納得しなくっても良いと思うんだけど……そりゃ、俺が足手まといなのは否定出来ないんだけど……
「俺が面倒見るのは問題ないんだけど、母さんにはどう説明すれば……」
今は出掛けてるから大丈夫なんだけど、壊れた10年バズーカは5分と言う時間が全く通用しなくなってしまうから、何時戻るのか分からない。
母さんが戻ってくるまでにツナが戻らないのは流石に不味い。
いや、あの母さんなら、『あらあら、ツっくんにそっくりな子ね』で、ニコニコと笑顔で認めちゃいそうなんだけど……
「心配しなくても、直ぐに戻ると思うよ」
本気でありえそうな事を考えていたら、小さなため息と共に聞こえて来た声。
それは、確信持って言われた言葉。
それはそれで、ちょっと悲しいんだけど……
「そりゃ、超直感か?」
「ただの勘って言うよりも、願望。この状況は流石にオレも不本意だからね」
ツナの確信持ったその言葉に、リボーンが質問するけど、ツナは再度ため息をついてあっさりと言葉を返した。
えっと、この状況って、俺がツナを抱き上げてる状況の事だろうか?
「たまには良いんじゃねぇのか?」
「……になら抱き締められるのも嫌じゃないけどね、オレを抱き上げるのにはちょっとハラハラするんだけど」
って、そんな深々とため息つかなくっても良いと思うんですけど!
そりゃ、重いもの持って立ってたら足に負担かかるかもしれないけど、そんなに弱くないから。俺!いや、うん、弱くないと思うけど……
「相変わらず過保護だな」
「限定だけどね」
って、そこ二人で会話進めないでください!
俺も、話に加わりたいけど、加われる雰囲気じゃないし……ツナとリボーンの間で火花が見えるような気がするのはきっと気の所為だよね?
「えっと、取り合えず、お茶でも……えっと、リボーンも飲む?」
なので、俺に出来るのは、ここに来た当初の目的を口にする事だった。
俺、喉が渇いて部屋から出てきたのに、何してるんだろう……って、ツナを抱き上げてるんだけどね。
「エスプスレッソ」
質問した俺に、サラリと言われる飲み物の名前。
うわ〜っ、また時間が掛かるものを……最近、リボーンの為に家庭で簡単に作れるようにちゃんと専用機器買ったし……
だから、別にいいんだけどね。
「なら、オレは下ろして」
了承の意を込めて頷いた俺に、ツナが声を掛けてくる。
「ああ、うん……ツナは、何飲む?」
「コーヒー」
それに少しだけ残念だったんだけど、俺は素直にツナを下に下ろして、質問すればあっさりと何時もの飲み物が口に出された。
いや、分かってたんだけど、今は子供の姿してるのに、コーヒーを飲ましても良いんだろうか?
「……分かった」
内心複雑な気持ちを隠せないまま頷いて、キッチンへと向かう。
うん、ツナのはせめてカフェオレぐらいにしておこう。
リボーンのエスプレッソを作るのに、牛乳沸かすからちょうど良いや。
何て考えながら、さっさと準備をしていく。
勿論、その間ツナとリボーンがどんな会話をしていたかなんて知らない。
「……、これカフェオレなんだけど……」
『はい』って、リボーンとツナに飲み物を渡した瞬間、複雑な表情でツナが口にしたそれに俺は何も聞かなかったと言うように自分用に作って来たミルクティを口にする、
だって、子供にコーヒーなんて体に悪すぎるし……いや、前にリボーンに出した事あるんだけど、何かツナ相手だと出来ないって言うか……
「子供にはコーヒーは早ぇつーことだろうな」
って、優雅にエスプレッソ飲みながら言わないでくださいリボーン!
それは、間違ってないけど、今のツナにはなんていうか禁句……
「そうなの、?」
「いや、だって、今のツナの格好は子供の姿だから、何時ものブラックコーヒーは体に悪いって言うか……だから、せめてカフェオレに……でも、砂糖は入れてないから!」
リボーンのその言葉に、当然のように不機嫌そのままに質問してくるツナに、必死で言い訳。
うん、本当はちょっと甘くしたかったんだけど、流石にそれは必死で抑えたんだから、許して欲しい。
言い訳した俺に、ツナはため息をついて、カフェオレを飲み始める。
う〜っ、子供の姿なのに、何でこんなにも迫力あるんだろうツナって……昔からこんなに迫力あったんだっけ??
だけど、思い出そうとしても、思い出せなかった。
何ていうか、守られていた記憶はあるんだけど、俺、もしかしてそんなにツナの事知らないのかもしれない……
「?」
考え込んでいた俺は、心配そうな表情で名前を呼んで自分を見上げてくるツナの視線に捕らえられてしまう。
ああ、そうだ。
何時も、この視線が俺には向けられていた。
あの事故から、何時もこの視線を見続けてきたんだ。
何処か我慢しているような、押し込めた表情。
それは、俺に心配を掛けないためのツナの優しさ。
そう思った瞬間、俺はぎゅっとツナを抱き締めていた。
もしかしたら、俺はずっツナに辛い思いをさせていたのかもしれない。
だって、俺の記憶にあるツナの表情は、心配そうな表情だけだった。
「ごめんね、ツナ」
「何で急に謝ってるの?」
謝ってすむ事じゃないけど、俺には謝る事しか出来ないから、謝罪を口にすれば、意味が分からないというようにツナが質問してくる。
そりゃ、行き成り謝られても、訳が分からないよね。
「色々と、俺、ツナに心配しか掛けてなかったから!!」
「そんなの今更だよ」
「へっ?」
だから、必死に理由を口にした瞬間返されたのは、当然と言うようなツナの言葉だった。
あんまりあっさり言われた言葉に、思わず頭が付いていかずに聞き返してしまうように、間抜けな声を上げてしまう。
「だからね、そんなの今更だよ。それに、それはオレが好きでしている事なんだから、が謝る必要なんてないよ」
ああ、どうしてこの人は俺をこんなにも大切にしてくれるんだろう?
この人が自分の双子の兄である事が、こんなにもすごい事なのだと改めて思わずには居られない。
「……それでも、それでもね。ツナに、心配ばっかり掛ける自分を、ダメだと思うから……」
「ダメじゃなよ。何でそこでそんな風に考えちゃう訳?は、らしくいてくれる事がオレにとっては、一番大事なことなんだからね」
どうしてツナは、俺をこんなにも自由で居させてくれるんだろう。
ツナに言われると、心が軽くなる。
何時だって、俺を支えてくれるのだ。
「……有難う」
ぎゅっとツナを抱き締めて、心から感謝の言葉を口に出す。
ツナは何時だって、俺の欲しいモノをくれるのに、俺は何も返す事が出来ない。
少しでも良いから、この人が幸せになる為の力が欲しいと思う。
「?」
「ツナが居てくれて、本当に良かったってそう思って……」
「それは、オレも同じだよ。オレはが居てくれるから、オレで居られる」
そっと心配そうに俺の名前を呼ぶツナに、ただただ気持ちを伝える事しか出来ない。
でも、俺の言葉に、ツナが同じ言葉を返してくれる。
俺も、ツナが居てくれるからこそ、俺で居られるんだよ。
「おい、見ててうっとうしいぞ、お前等」
二人でギュッと抱き合っていたら、呆れたような声が聞こえて来て、慌てて綱吉から離れる。
そ、そう言えば、リボーンが居たのをすっかり忘れてた。
「うっとうしいなら、気を利かせて出て行ってくれれば良いのに」
って、何でそこで喧嘩売るようなこと言うんですか、綱吉さん!!
「オレが何処で何をしてようが、お前等には関係ねーぞ」
ツナの嫌味に、当然のように返すリボーンに、思わず苦笑してしまう。
本当に、自由な人だよな、リボーンって……
何て感心してたら、隣からボワンって音が聞こえて来て驚いて視線を隣へと向ける。
「ツナ!」
視線を向けた瞬間、ツナが白い煙に包まれていた。
「大丈夫だよ、戻っただけ」
驚いて名前を呼べば、聞きなれた声が返事を返してくる。
煙が晴れれば、そこに居るのは見慣れたツナの姿で、それを見てちょっとだけ残念に思ったのは秘密。
だって、俺でもツナを抱き上げる事が出来るなんて、そうそう体験できる事じゃないし
「でも、戻って良かったよ。ちょっとに抱き上げられるのは、ね……」
って内心で思っていたら、苦笑交じりに言われてしまった。
それって、俺に抱き上げられた事がショックだったって事なんだろうか?
う〜ん、それはそれで俺もショックなんですけど……
そんな訳で、ちょっとの間だけでも懐かしい姿の綱吉と一緒に居られた。
昔のツナってあんなに可愛かったんだなぁ……
なんて思いながら、今からアルバムでも引っ張り出して見てみようと心に決めたのは内緒の話。