突然の煙に、ケホケホと咳き込んでしまっても仕方ないと思う。
衝撃と煙。
一体何が起こったんだろう??
「!」
そして、聞こえて来た声に顔を上げる。
「ちゅな」
そして、自分は普通に名前を呼んだつもりだった。
そう、『ツナ』ってそう呼んだつもりなのに、自分の口から出たのは舌足らずな小さな子供のような声。
「?」
漸く煙が晴れてきて落ち着いてきた中、信じられないと言うようなツナの声で顔を上げる。
えっと、ツナがすっごく大きいんですけど……見た目は変わってないのに、なんでそんなに大きくなってるの??
「ちゅな……おれ……」
そうしてもう一度出した声は、やっぱり舌足らずで、小さな小さな子供のような声だった。
「懐かしい!!!!」
信じられないと言うように自分の口に手を当てて、不安一杯でツナを見上げた瞬間、そう言って抱き締められる。
な、懐かしい?
一体どういう意味なんだろう。
「ちゅな?」
「そうそう、この頃のって、オレの名前がちゃんと言えなかったんだよね。でも、必死で名前呼んで、オレの服を掴んで離れなかった」
ぎゅっと抱き締められて、更に膝抱っこ状態。
そこで漸く気付いた、もしかしなくっても、ツナが大きくなったんじゃなくって、俺が小さくなったのか?!
一体どうしてこうなったのか全く分かってない俺に気付かずに、ただ嬉しそうに見詰めてくるツナに目で訴えかけた。
「んっ?ああ、もしかして状況が分かってない?」
オレの視線に気付いたツナが質問してくれた内容に、素直にコクリと頷いて返す。
「は、ジャンニーニが改造した10年バズーカに当たっちゃたんだよ。前に獄寺が被害受けたんだけどね……本当、が無事でよかった」
状況を説明してくれたツナがそう言って、ぎゅっと俺を抱き締める。
ああ、どうやら俺はまたツナに心配を掛けてしまったみたいだ。
でも、前に獄寺くんが被害にあったって、何時の事だろう?俺、全然知らないんだけど、それに前にもジャンニーニさんてここに来た事あったんだ。
それさえも、知らなかったんだけど……
「それで、には今までの記憶がある?それとも、10年前の?大人しくオレに抱かれてるって事は、今のの記憶があるって勝手に理解しちゃってるから説明したんだけど……それに、は自分の事を『おれ』って言ってたからね」
そんな事を考えていた俺に、ツナがニッコリと笑顔を見せながら質問なのか確認なのかを口にする。
そう言えば、10年バズーカって、10年後の自分と入れ替わるんだったっけ?
だったら、改良された10年バズーカって、どうなんだろう?
どう考えても、今までのツナの言葉から考えると、俺は10年後の自分と入れ替わってるようには思えない。
舌足らずな言葉、それにツナに軽々と抱き上げられて漸く視線が合うって事は……姿が10年前の子供の姿になってるって事だろう。
だから、ツナは懐かしいと言ったんじゃ……確かに、この頃の俺って、ツナの事ちゃんと呼べなかったし……
「きおく、あるよ……いまのおれ、だよ」
だから、確認するように言われたツナのそれに、コクリと頷いて必死で言葉にして返した。
そんな俺に、ツナはまた嬉しそうに笑う。
「うん、答えてくれてありがとう……この頃のは、まだ元気に走れるんだよね?」
「えっ?んっ、たぶん……」
俺にお礼を言ってから、続けて質問されたそれに、コクリと頷いて返す。
そう言えば、今は事故に遭う前の自分だから、自由に動く事が出来る……と、思うんだけど……
「1日だけだけど、が元気に動ける姿が見れるんだね」
って、俺1日もこの姿なのか?!
そ、そう言えば、獄寺くんにそっくりの子供を母さんが預かったって嬉しそうに話してくれた事が……俺、あの時年に一度の精密検査の為に入院してたや!
思い出した事実に、ちょっとだけ遠い目をしてしまう。
そりゃ、知るわけないよ、俺……
ツナって、マフィアが関わってる事もそうだけど、基本俺に何も話してくれない。
俺自身も、そんなに話す方じゃないって言うか、俺が話さなくってもツナが知ってるっていうか……そんな訳だから、話をしなくってもいいので、基本何も話さなくても問題なくすむ。
うん、問い詰められる事は良くあるんだけどね……
「か、かーしゃんに、どうせつめい……」
でも、だからってこんな俺の姿を母さんに見せる訳にいかない。
いや、あの人の事だから、深く追求せずに嬉しそうに抱き付かれちゃうような気がするんだけど、うん。
『可愛い!!!』とか何とか言いながら……
想像が出来るだけに、嫌過ぎる!
「大丈夫だよ、母さんがそんな細かい事気にする訳ないよ!」
って、ツナまであっけらかんと返してくれた。いや、そうかもしれないけど、俺は嫌だ!!!
「ツナ〜!そいつ誰だってば?」
打ちひしがれていた俺に、突然の声が聞こえて来てビクリと震えてしまった。
勿論、声を掛けてきたのは、この状況を作り出したあのバズーカの持ち主。
う〜っ、今の姿でランボくんの相手は俺には出来ないぞ!中学生の自分でも大変な相手なのに……あれ?そう言えばイーピンちゃんも居るんだっけ?
「勿論、オレの大切な人だよ」
ランボくんの質問に、ツナが俺を抱き締めたままニッコリと笑顔でサラリと言葉を返した。
えっと、大切な人って、俺の事だよね?そりゃ、確かに俺たち双子でお互いが一番大切だと思っているからそれに間違いはないんだけど……
だからって、小さな子供相手に
「ツナの大切なヤツなのか?」
って、ランボくんがツナの言葉に近付いて来て俺の事を見ようと覗き込んできた。
その瞬間、座って俺を抱き上げていたツナがスクッて立ち上がる。
「そう。だから、お前には見せてあげないよ」
って、ツナさん!何処の意地悪な子供なんですか?!
俺の事を見せまいとしているツナに思わず心の中で突っ込んでしまった。
う〜ん、俺なんて見せても減らないと思うんだけどなぁ……つーか!ランボくんは俺の事知ってる訳だから、これって意味あるのか??
「昔のを見せるなんて、勿体無いからね」
いや、だから、何が勿体無いんですか!お兄様!!
「いいもん、ツナが見せてくれないんなら、ランボさんが無理やり見てやるんだってば!!」
って、そこでランボくんも乗ってこないでください、お願いだから……
「おい、何を騒いでやがる……って、またか……」
どうしたものかと考えていた俺の耳に、新たな声がしてツナに抱き上げられている俺のを見付けた瞬間盛大にため息つかれました!!
お、俺が悪いんじゃないんですけど……だって、今回はランボくんを庇ってないし、部屋のドアを開けた瞬間に衝撃受けちゃったんだからな!不可抗力だ!!
「うっうっ、おれ、わるく、ないもん……」
リビングでバズーカ撃つ方が悪いんだもん!
「うん、まぁ、確かに今回は不可抗力と言うかなんと言うか……でも、オレとしてはこんな可愛いを久し振りに見れて幸せなんだけどね」
か、可愛い?!いや、確かに子供は問答無用で可愛いとは思うんですけど、中身が14歳なんだから嬉しくないし!!
「ちゅなの、ばかぁ……」
可愛いと言われて、恨めし気にツナを見ても、『その顔も可愛い!!』って相手にしてもらえませんでした。
「で、こいつってば誰なんだってば?」
ぎゅって抱き締められてちょっと苦しいんですけど……で、まだ俺の事が分かってないランボくんがしきりに質問してくる。
いや、リボーンの言葉とツナの言葉で察してくださいって言っても、6歳の子供には無理か……
「おれは、だよ、りゃんぼくん」
俺は何とかツナの腕のなっからモゾモゾと動いて後ろを振り返るようにして自分の名前を口にした。
良かった。自分の名前は普通に言える。
でも、ランボくんの名前はやっぱり上手く言えなかった……。
「だってば?でも、はそんなに小さくないぞ!!それにオレってば、りゃんぼじゃなくって、ランボさんだもんね!!」
名前を名乗ったのに信じてもらえませんでした。
しかも、俺が言えなかった名前を突っ込まれたし……ごめんなさい、俺はちゃんとランボくんって言ったつもりだったんだけど
「しっかり幼児小言葉になってやがるみてーだな……記憶はあるみてーだが、全くジャンニーニのヤツまた厄介な事していきやがって……」
「まぁ、一日で戻るんだし、問題ないんじゃないの?」
「本当にそう思ってるのか?前回と同じだと思ってると痛い目を見るぞ」
俺の舌足らずな言葉に、赤ん坊なのに流暢な言葉でリボーンが舌打ちしたのが聞こえて来た。
うっ、うっ、俺の方が年上のはずなのに、この姿でも……
呆れたようなリボーンの言葉に、ツナが慰めるように口を開いたけど続けて言われた言葉は、俺にとっては衝撃的な言葉だった。
「お、おれ、このままもどりゃないの?」
それは嫌だ。
だって、俺は14歳で、本当ならツナと同じ年なのに、一人だけこんな小さい子供で居るなんて……
「う〜ん、戻らなかったら、このままを育てるって言うのもいいような気がするんだけど……流石に、そう言う訳にはいかないよね」
「ちゅな!!」
俺の不安一杯の気持ちを複雑な表情で返してツナが言ったそれに反論の意を唱えるように名前を呼んだけど、舌っ足らずな今の声じゃ迫力に欠ける。
って、元から迫力なんてないんだけど……
「だって、このまま育てれば、は足を怪我してないまま育つ事が出来るんだよ!」
「あっ!」
咎めるように名前を呼んだ俺に、ツナがどうしてそんな事を言ったのか素直に理由を口にされて言葉に詰まった。
確かに、このまま成長すれば、あの事故はなかった事になる。
俺の怪我を気にしているツナにとって、それはとっても喜ばしいことなのかもしれない。
「でも、でも、おれは……」
怪我の事は全然気にしてないし、あれは俺にとって、ツナを助けられたっていう勲章でもあるのに……
「うん、がね、後悔してない事は知ってるよ、でもね、オレが嫌なんだよ、が無茶する度にハラハラしちゃうんだ……またが、動けなくなってしまうんじゃないかって……」
「ちゅな」
俺も知ってるよ。
ツナが、本当に俺の事を本当に大切にしてくれてる事。
無茶しちゃった時に、すっごく不安そうな顔をする事を……でも、俺は、足の悪い俺が今の自分だって知ってるから、過去からやり直したとしても、同じ事をするって分かってるから……
「でも、おれは、おれだよ、ちゃな」
ツナに心配掛けると分かっていても無茶な事をしてしまうのが、俺。
だからね、今から育て直されても、それは変わらないんだよ。
「そうだろうね……」
俺の言葉に、ツナが何処か寂しそうな笑顔を見せて頷く。
ねぇ、どうしてそんな寂しそうな顔をしてるの?
「ちゅな……えっ、あれ?」
その瞬間ボワンと言う煙に包まれてしまう。
「!」
「わっ!!」
ツナに抱えられたままの状態で、突然体が元に戻ってしまい軽々と俺を抱き上げていたツナも流石に片手で俺を支えて居られなかったらしくバランスを崩す。
それに慌てて俺はツナの首に抱き付いた。
「っと、大丈夫??」
「う、うん、大丈夫。ツナは大丈夫?」
バランスを崩しても流石ツナだ、直ぐにバランスを戻して俺の腰の辺りを抱き締めたまま落とすなんて失態はしないでくれた。
俺は、ツナの首に抱き付いたままで、傍から見たらきっと熱烈な抱擁にしか見えないだろう。
「戻ったみてぇだな」
「そう言えば……一日も掛からなかったみたい」
「だね……、全然動けなかったし……」
うん、折角自由に動けたかもしっれなかったんだけど、ツナに抱き上げられたままで終わってしまった。
まぁ、それは別にいいんだけどね。
「あっ!だもんね!!」
その瞬間聞こえて来た声に、ビックリしてしまった。
そ、そう言えばここには、ランボくんもリボーンも居たんだっけ……
「ああ、ごめんねランボくん、ちゃんと名前呼んであげられなくって……って、ツナもう離しても大丈夫だよ」
「う〜ん、ダメ。オレがもうちょっと幸せを噛み締めていたいから……」
何それ、俺を抱えてれば、ツナは幸せなの??
すっごくお手軽な幸せなんですけど……
「何時も思うけど、ツナの幸せって、お手軽だよな」
「うん、が居てくれれば、それだけで幸せだからね」
思わず思った事を口に出せば、頷いて返されちゃいました。
うっ、そんな嬉しそうな顔で言われると、こっちの方が恥ずかしくなっちゃうんですけど……
「、顔真っ赤だよ」
って、そんな事耳元で言わないでくれ!
「ツナの所為だろ!、馬鹿……」
「うん、だから、嬉しい」
ポスンと顔を隠すようにツナの肩に額を預ければ、本当に嬉しそうなツナの声が返って来た。
って、馬鹿って言ってるのに、嬉しいって……ツナの気持ちが分かりません。
「なんにしてもだ、バカップルラブラブなのは見てて見苦しいぞ!」
「えっ?バカップルラブラブって、俺とツナの事?俺たち兄弟だから、その言葉って当てはまらないし……って、そこでそんなに呆れたようにため息つかないでよ!リボーン!!」
しかも、ツナがチッとかって舌打ちしたのが直ぐ傍に居たから聞こえてきたんですけど……
何でそこで舌打ちなの?
「ただいま」
意味が分からずに、問い掛けようとした瞬間聞こえて来た声に我に返った。
よ、良かった、母さんが帰ってくるまでに元に戻れて
「ちゃん、ツっくん、いないの?」
「居るよ!お帰り母さん」
内心かなりホッとしていたら、俺とツナを探す母さんの声が聞こえてきたので返事を返す。
って、ツナまだ俺を離してくれないんですけど……
「こっちに居たのね……あら?相変わらず仲良しね、二人とも」
って、それだけですか!お母様!!
「えっ、いや、母さん?」
「なんだか昔に戻ったみたいよ。小さい頃は二人とも何時もそうやってお互いに引っ付いていたものね」
クスクスと楽しそうに昔を懐かしむように言われて、思い出した。
確かに、小さい頃ずっとツナに引っ付いていたっけ。
だって、一人になってしまうのが怖かったから……ツナの傍に居ると、すっごく安心出来て俺の方が逆にツナの傍を離れなかったんだっけ……
「うん、そうだよね。懐かしかったな…あの頃の、……」
うわ、そんな昔を懐かしむように言わないでください。恥ずかしいです、本気で!
そんなこんなで、その日はツナが離してくれなかった。
うん、何でかは分からないけど、離してくれなかったんです。
なので、久し振りにツナに引っ付いて眠ったら、懐かしい夢を見た。
子供の頃の、そうまだ俺もツナも本当に子供だった時の夢を……
う〜ん、今度はツナが子供に戻ったりしないかな。絶対可愛いと思うんだけど……
そして、何故かツナが写真を取れなかった事をすっごく後悔していたんですけど、何でだろう?
子供の頃の写真一杯あるのに??