「・・・・・・・あたま、いたい・・・・・・・・」


 次の日、見事なまでに、の記憶は抜け落ちている。

 まぁ、これが初めてじゃないから、驚きはしないんだけどね。
 頭を抱え込むようにしているを前に、苦笑を零す。


「大丈夫、?薬と水だよ」
「んっ、有難う、ツナ…………俺、またツナに迷惑掛けた?」


 そんなに薬と水を渡せば、素直に受け取って一気に飲み干してから、心配そうに質問してきた。


「迷惑なんて掛けてないよ。何時も通り甘えてくれただけ」


 心配そうに自分を見つめてくるに、ただ笑って返事を返す。

 本当に、迷惑だなんて思わない。
 だって、あの時の時間はオレにとって至福の時だったんだから


「う〜っ、それが迷惑掛けたって事なんじゃ……父さんが俺にお酒なんて飲ませるから……」
「それは、親父が差し出した物を何の疑いもなく飲むも問題だよ」


 本当に、学習能力を身につけて欲しいと切実に願ってしまうんだけど
 これで2度目なんだから、十分注意できたと思うんだよね、オレは!


「でも……」
「でもなんて、聞かない。今回はも悪いんだよ。あんなヤツの差し出したモノを疑いもせずに飲むんだから」


 あんな親父に勧められて、素直に飲むなんて

 悪戯好きの親父の事だ、どう考えてもまともな事をしてくれるとは思えない。


「ツナ、父さんの事、嫌い?」


 不機嫌な声で言ったオレに対して、が恐る恐る質問してくる。


 嫌いかだって、大嫌いに決まってるよ。


「嫌いだよ。母さんを悲しませるようなヤツだし、迷惑な事しか持ってこない」


 リボーンがここに来た事も、全部あいつが関係しているのだ。
 それに何よりも、が交通事故にあった時にさえ、あいつは戻って来なかった。

 が、あんなに辛い思いをしていた事だって、あいつは知りもしないのだ。


「……父さんは、父さんで大変なんだと思う。でも、母さんや俺達の事を想ってない訳じゃないよ」


 嫌いとはっきり返したオレに、少しだけ困ったようにが親父のフォローをする。
 それに対しては、多分よりもオレの方が親父の事を分かっていると思う。

 親父とオレは、同じ考え方の人間だ。
 愛した相手を、自分の命を掛けて護り抜くだろう。

 だからこそ、親父が母さんの事を心から愛しているのだとも分かっている。
 その子供である、オレ達の事も同じように大切に思っているだろう。

 だけど、あいつが仕事をしている場所が問題なんだよ。

 母さんやオレ達が大切なら、何であんな厄介な場所に居るんだ。
 しかも、子供まで巻き込みやがって


「ツ、ツナ?」


 親父への恨み言を心の中で繰り広げているオレに、が心配そうに声を掛けてくる。


「あいつが、家族を大切にしている事なんて、十分に分かってるよ。でも、それでも、オレはあいつが嫌いなんだ」


 心配気に見詰めてくるに、ため息をついてきっぱりとその言葉を口に出す。

 そう、あいつがオレ達の事を大切だと思っている事は、分かっている。
 だけど、あいつを嫌いなものはどうしようもない。

 大切にしているのなんて、分かっている。
 だからこそ、その守り方を間違えているあいつが、嫌いなのだ。


「ツナは、俺や母さんを、父さんの代わりに守ってくれてるんだもんな。父さんが居なくても、俺にはツナが居たから寂しくなかった。でも、母さんは、やっぱり父さんが居なくて寂しい思いをしていると思う。だから、ツナが怒るの分かるんだよ。みんなが父さんを許したら、誰も怒る人が居ないから」


 ギュッと拳を握り締めて、怒りに耐えていたオレをフワリとが後ろから抱き締めてくる。
 それと同時に言われる言葉に、オレは驚いて声を上げた。


「な、そんなんじゃ……」
「違わないよ。だって、ツナは俺達を何時も守ってくれているのを知ってる。有難う、俺は、そんなツナが大好きだよ」


 後ろから抱き付いたまま、ちゅっとオレの頬にキスが一つ。

 それは、まるで昨日の続きみたいで……


、まだ酔ってるの?」


 あまりにも自然だったから、思わず質問してしまったそれで、慌ててが俺から離れてしまった。
 それを少しだけ寂しく思いながら、後ろを振り返れば、頭を抱え込んでいるの姿が


「だ、大丈夫、?!」
「折角忘れてたのに、ツナのバカ、思い出しちゃったじゃないかぁ〜」


 それに驚いて声を掛ければ、文句を言われてしまう。
 どうやら、二日酔いを忘れていたらしい。

 そんなに、オレは思わず笑ってしまう。
 なんて言うか、それは、あのキスが素面でされたモノだと分かったから



 何だろう、なんて言うか、すっごく嬉しかったと言ったら、君はまたしてくれるだろうか?

 何度も交わした濃厚なキスよりも、君が覚えている時のキスの方が、何倍も嬉しいとそう思うのだから