帰り、何時ものようにと一緒に帰ろうと待っていれば、明らかに疲れた顔をしたが校舎から出てきた。
 疲れてため息をついているを見れば、何かあったんだろうと簡単に予想がつく。
 だから、半ば強引に聞き出した。

「で、フゥ太のヤツ、ずっとの周りをウロウロしてったって訳?」

 聞いた内容を確認するように問い掛ければ、コクリとが頷いて返してくる。
 きっと、が強く言わないのをいい事に甘えているのだろう。

「………あいつ、絶対分かってやってるな」

 再度疲れたようにため息をついたを見て、ボソリと小さく呟く。
 フゥ太のヤツ、絶対にが怒らないし、拒絶できないのを分かっているから、周りをウロウロしていたんだろう。

「ツナ、何か言った?」
「なんでもないよ。でも、じゃ怒れないだろうから、オレからキツク叱っておくよ」
「いや、あのそんなにキツク言わなくてもいいよ。ただ、学校に遊びに来るのをやめさせたいんだ。フゥ太くんってマフィアに狙われているって言ってたから、心配で……」

 だけど、は、そんな事気付いても居ないんだろうね。
 オレが何を言ったのか聞き逃したのだろうが、不思議そうに問い掛けてくるのに首を振って返し、の変わりにフゥ太を叱ると言えば、ちょっと困ったように言われた言葉。
 そこで、フゥ太の心配をする所が、のいい所でもあるんだけど、自分の事を考えていないのは、やっぱり問題だと思う。

「確かに、それはちょっと気を付けてもらわないとだよね」

 がフゥ太の巻き添えなんて食らったら、オレはあいつを絶対に許さない。
 考えただけで、殺気立ってしまうのは止められない。

「あいつ、を巻き込みやがったら、追い出す」
「えっ?!いや、まだ、巻き込まれてないから、大丈夫だから、追い出すのは待って?!」

 ボソリと本音を漏らしたオレに、が慌てたようにそれを止める。
 慌てている事を考えても、オレが即効に追い出すと思っているようだ。
 まぁ、まだ巻き込んでないんではないから、直ぐに追い出す事なんてしないけど

「心配しなくても、まだ追い出したりしないよ」

 慌てているを安心させるように、笑顔で返す。
 あくまでも、今はまだ、だけどね。
 もし、を巻き込むようなことがあったら、即刻追い出すけどね。

「まぁ、それは置いとくとして、何か雨降りそうだから、早く帰ろうか」

 何処か不安そうに見詰めてくるに、早く帰るように促す。
 早く帰らなければ、今にも雨が降ってきてしまう。
 オレが濡れるのは気にしないけど、が濡れるのは、絶対にダメだ。
 オレの言葉に、は空を見上げて頷くと、素直に家に向けて歩き出した。

「ただいま」

 何とか雨が降る前に家に帰ることが出来て、二人同時に家に入り同時に声を掛ける。

「おかえり」

 その声を聞き付けたのだろう、バタバタと賑やかな音をさせてフゥ太が階段を駆け下りて来た。
 勝手にオレの部屋に居たんだろう、まぁ、別にいいんだけど
 フゥ太の後ろから、偽赤ん坊も一緒に降りてくるんだから、きっと一緒に部屋に居たんだろう。

「ちゃおっス」

 そして、何時もの言葉。
 それに対して、は笑顔で返事を返すから、余計に面白くない。

「ツナ兄、どうしたの?」
「フゥ太、お前今日、の周りをウロウロしてたんだって?」

 不機嫌なオレに、心配そうにフゥ太が声を掛けてくるのに、チラリと視線を向けて逆に確認するように聞き返す。

「ツ、ツナ、取り合えず、部屋に入ってから……」
「だ、だって!僕、兄と一緒に居たかったんだもん!!」
「お前一人が、と一緒に居たい訳じゃない。それに、もっと自分の置かれている立場を理解しろ!もしも、を巻き込んだりしたら、絶対にお前を許さないぞ」

 そんなオレに、が慌てて止めようとするけど、それは聞かない。
 そして、フゥ太から言われた言葉に、オレは真剣に言い聞かせるようにしっかりと伝えた。
 そう、オレにとってはこれだけは、絶対なんだ。
 に、もしもの事があったら、オレは絶対にそいつの事を許せないだろう。

「うん、分かった」

 オレの言葉に、しっかりとフゥ太が頷く。
 真剣に頷くフゥ太に、オレも満足して頷いた。

「……、何笑てるの」
「ううん、何かいいなぁと思って」

 そんなオレ達を見て、が嬉しそうに笑っているのに気付いて、問い掛ければ、良く意味の分からない返事が帰って来る。
 何が、いいのか分からないんだけど……
 意味の分からない事を言うに、それを確認したかったんだけど、どうやらそれには邪魔が入ったようだ。

「ダメ、何ニヤニヤしてやがる。さっさとツナの部屋に行きやがれ!客が来たぞ」

 当然偽赤ん坊も気付いたんだろう、まだ笑っているを促す。
 言われたその言葉に、が不思議そうに首を傾げた。

「客?」
「……あぁ、また面倒が来たみたいだね」

 不思議そうに問い掛けるに、オレもため息をつき、偽赤ん坊に従うのは癪に障るんだけど、ここに居る訳にも行かないので、を抱えて自分の部屋へと連れて行く。

は、取り合えずベッドに座ってて」

 部屋に入って直ぐに、オレのベッドにを下ろして、持っていた鞄を机の上に置いた。
 それと同時に、玄関から大量の人の気配。
 遠慮なく階段を上ってくるのは、間違いなく良く知った気配だ。
 その気配を感じながら、再度ため息をついてしまうのは仕方ないだろう。
 は、ただ不思議そうに首を傾げながら、階段の方を見ている。
 その事からも分かるけど、誰が来たのか分かっていないのだろう。

「よお、ツナに!元気にしてたか?」

 そんなの様子を見詰めていれば、勝手したる状態で部屋に入ってきたのは、面倒事しか持ち込まないキャバローネファミリー10代目ボスのディーノさんとその部下達。

「こんにちは、ディーノさん」
「ああ、っと、まちがいねぇ!こいつは、正真正銘のランキングフゥ太だ。いざ、探そーったって、しっぽすらつかめねー、星の王子様だ」
「こんにちは、跳ね馬ディーノ」

 入って来たディーノさんに、が挨拶の言葉を伝えるが、それに短く返事はするものの、その興味は目の前に居る小さな子供へと向けられている。
 フゥ太も、そんなディーノさんに笑顔で挨拶の言葉を口にした。

「よろしくな、しかし、こいつに慕われるたあ、たいしたもんだぜ」

 そして、感心したように言われる言葉の意味が分からない。
 大体、こんな子供に好かれても嬉しくない。
 どちらかと言えば、邪魔なだけだ。

「早速で悪いんだが、商談だ」

 言われた言葉に、そんな事を考えていると、突然ディーノさんが真剣な表情をする。
 それは、滅多に見せないマフィアのボスの表情。

「今日来たのは、ワケがあってな、フゥ太、あるマフィアのランキングを売ってほしい」

 そして持ち掛けられるのは、商談。
 そう言えば、フゥ太は、ランキングと言う情報屋でもあったんだっけ
 その所為で、マフィアに狙われているらしいけど、やっぱり、オレにとっては迷惑以外の何者でもない。

「実は、うちのシマにチンピラ共に、銃を横流しして、一般人をまきこみ治安を乱すゴスペラファミリーが活動を始めた。そいつらを黙って見過ごすわけにはいかね。やつらが持っている武器庫の規模ランキングが欲しいんだ。頼めるか?」

 真剣な表情で言われた内容に、眉間にシワが寄るのが分かる。
 本気で、そんな内容のものを、ウチに持ち込まないで欲しいんだけど
 こんな話を聞いたら優しいは、絶対に自分の事のように傷付いた顔をしてしまう。
 そう思ってそっとを見れば、やっぱり心配だと言うように、ディーノさんを見ている。

「もちろん、金は用意した」

 だけど続けて言われたその言葉と同時に、ディーノさんの部下の一人がアタッシュケースを差し出して、それを開き中を見せた。
 その中身は、ギッシリと詰め込まれている金。
 まぁ、商談に来ているんだから、当然の内容物だとは思うんだけど、本気で人の部屋で勝手に取引を始めないで欲しいんだけど

「………それだけ、情報が必要って事なんだ……」

 うんざりしてため息をついたオレの隣で、ボソリと呟かれたのはの声。
 その声に、視線を向ければ、複雑な表情をしたが居た。

「お金はいらない。ディーノは住民を大事にしているランキングで、8万2千263人中堂々の1位だからね!そーゆーボスは好きさ」

 だけど、続けて言われたフゥ太の言葉に、ホッとしたような表情になる。
 まぁ、確かに、マフィアのボスで、住民を大切にしているディーノさんなら、フゥ太もキライにはなれないだろう。
 しかも、部下が居る時は、確かに頼れる兄貴だと認められるのだから

「それに、ツナ兄や兄の兄キ分ってことは、僕の兄キ分でもあるってことだろ?ディーノ兄は」

 だけど続けて言われたその言葉で、ディーノさんが驚きの表情を見せる。
 いや、オレはお前の事を弟分に認めてないし、ディーノさんの事も、当然兄貴分としては認めていない。
 尊敬できるところはあるかもしれないが、それはあくまでもほんの一握りだけだ。

「オレはいい弟分をもって、幸せだぜ。感謝するぜ、フゥ太」
「じゃあ、これ、ランキングのコピーね」

 複雑な気持ちになったオレに気付く筈もなく、開いたページから紙にそれを書き写してディーノさんへと差し出す。

「サンキュー、それじゃ悪いが急いでるんで、またな!」

 その紙を受け取ったディーノさんは、それだけが目的だったようで、本当にあっさりと部屋から出て行ってしまった。
 それを見送るフゥ太は、至極満足そうだ。
 でも、目の前で行われた事を見れば、この子供が少なくとも役に立ったのは間違いない。

「ふぅん、一応、役には立つみたいだな」

 思わず感心して呟いたオレの言葉に、がチラリと視線を向けてくるのに気付く。
 まぁ、オレが誰かを褒めるような事は少ないから、驚いているのかもしれない。
 子供は嫌いだけど、ランボみたいにうざくないのならまだ許せる。

「折角だ、お前等もランキングしてもらえばいーんじゃねーか」
「えっ?俺達?」
「うん、いいよ」
「面白そーです!!新手の占いですか?」

 少しだけ感心していたオレ達に、偽赤ん坊が提案した内容にが驚いたように聞き返す。
 それにフゥ太が笑顔で頷くのに続いて聞こえて来たのは、賑やかなハルの声。

「ハルちゃん」

 その声にが驚いたようにその名前を呼ぶ。
 ドアから中の様子を伺うようなハルは、本気で勝手したる状態だ。
 家の防犯管理、もっと徹底した方がいいかもしれない。

「おまえは、何でいつも勝手に上がってくるんだ?」
「雨が降り出しそうだったから、ツナさんちの洗濯物を取り込んだんです」

 そんな事を思いながら呆れたように問い掛ければ、少し拗ねたように返される。

 ああ、洗濯物ね。
 母さん、洗濯物片付けずに出掛けたんだ、確かにそのままにして置けば雨に降られてしまっただろう。

「ありがとう、ハルちゃん。本当なら、俺達がやらないといけないのに」
「いえいえ、気にしないでください。お役に立てて、嬉しいですから!そんな事よりも、ハルも占ってください!!」
「いいよ、ツナ兄や兄の友達だもんね」
「はひっ!ツナ兄や兄って…まさか!ツナさん達の隠し弟ですか?!」
「フゥ太って言うんだ」

 ハルに言われて、が素直に感謝の言葉を口にする。
 それに対して満足そうに返してから、ハルがフゥ太に占いを頼む。
 って、何時からランキングは占いになったんだ?
 それに続けて言われた言葉に、思わず突っ込んでしまう。

「何言ってるんだ。こいつは、家で預かっているだけだ。オレの弟はただ一人だよ」

 オレの弟は、生涯ただ一人だ。
 もっとも、弟じゃなければ、こんなに悩む事はなかったのかもしれないけど

「そうだったんですか、それじゃ、納得できたところで、ハルが占ってもらいたいのは……」

 オレの突っ込みで納得したのはいいが、まるでそんなことは気にしないとばかりに、フゥ太へと声を掛ける。
 もう完全に、ハルの中でフゥ太は占い師になっているようだ。

「ハルのチャームポイントは何でしょう?」

 だが質問された内容は、どう考えても占い師に質問する内容ではなかった。
 って、なんだ、その質問。

「お前、それは占いじゃないだろう」

 そんなハルに呆れて思わず突っ込んでしまうのは止められない。
 どうやらも同じように思ったのだろう、小さく頷いているのが見える。

「ハルは占いとか信じやすいんで、最初にこうやって占いし師さんが万能じゃないってわかりたいんです」

 だがハルから返されたのは、納得出来るような納得できないようななんとも居えない微妙なものだった。
 それって、占い師に分かるような質問なのか?
 どう考えても、超能力者とか特殊能力でも持ってない限り無理だと思うぞ。

「また、お前は訳分かんねぇことを……」
「いいよ、じゃあハルさんのチャームポイントランキングだね」

 それに対して、思わず呆れたように返したオレに続いて、フゥ太は全く気にした様子もなく頷いてみせる。
 まぁ、確かに、フゥ太は占い師ではなくランキングをするのだから、ハルがした質問にも、答えられるのだろう。
 と言うか、答えやすい質問なのか?

「いくよ」

 ボソリとフゥ太が言った瞬間、ガタリと音がして部屋の中の物が浮かび上がる。

「えっ」

 そして、驚いたような声が聞こえて視線を向ければの体が浮かび上がっているのが目に入った。

!」

 驚いてその名前を呼び、の傍へと移動する。

「す、すごい演出です〜っ」
「こちらフゥ太、聞こえるよランキングの星」

 フワフワと部屋の家具が浮かび上がる中、同じようにの体もフワフワと浮かんでいるのは、なんとも言えない。
 そんな状態なのに、ハルは感動したように声を上げ、フゥ太は訳の分からない事を言う。

「何言ってんだよ!が浮いちゃってるんだぞ!!」
「言っただろ?星と交信してるって」
「そんなオカルト信じられるか!そんなことより、早くを下ろせよ!!」

 そんなに暢気な状態では明らかにない事に文句を言えば、偽赤ん坊から訳の分からない事を返される。
 それに突っ込んで言っても状況は改善されない。
 同じように、偽赤ん坊も浮かんでいる状態だ。
 フワフワとバランスが取れなくなっているに、手を伸ばせば慌ててその手を掴んで来た。

「ロマンチックです」

 だが、それに対して、ウットリと呟かれたハルの言葉は聞かなかった事にしよう。
 この状況でなんで、そんな言葉が出てくのか、本気で信じられない。

「ハルさんのチャームポイントランキング、全8パーツ中第1位は…つむじだね」
「な、何で知ってるんですか?!」

 そんな中、ランキングと交信が終了したのか、フゥ太がキッパリとランキングの発表をした。
 どうやらそれは正解らしく、ハルが驚きの声を上げる。

「さては、ツナさんが…」
「オレが、お前の一番のチャームポイントなんて知る訳ないだろう!」

 そして正解された事に驚いて教えたんじゃないかと疑われるが、オレがそんな事知る訳ないだろう。
 の体を抱き寄せるように支えながら、突っ込みを入れてしまうのは、もはや悲しい条件反射だ。

「え、じゃあ…はひー!フゥ太君すごいです!!天才占い師ですー!!」

 オレの言葉で、ハルが驚きの声を上げる。
 いや、こいつは占い師じゃないぞ。
 言った所で納得しないのは分かっているので、疲れたようにため息をついてしまうのは仕方ないだろう。

「じゃあ、ハルのツナさんの好きなとこランキングベストスリーを教えてください!」
「わかった…ハル姉がツナ兄の好きなところランキング第3位は…強いところ、第2位は、やさしいところ、そして、第1位は、一途に想っているところ」
「聞きました!?あんな事言ってますよー!!」
「お前、ランキングの使い方間違ってるぞ!!」

 そんなオレの心情など気付く筈もなく、またしても間違ったランキングを依頼するハルに、フゥ太があっさりと頷いてサラリと順位を発表していく。
 それに対して照れたように言うハルに対して、またしても突っ込んでしまった。
 って、一々自分が知っている事を発表して貰ってどうするんだよ!
 折角ランキングしてもらうんなら、自分が知りたい事を教えてもらえばいいのに
 そう、例えば本当に好きな相手の心とか……
 チラリと、自分の腕で支えているを見る。
 オレが知りたいのは、の……

「イーピンちゃん、ランボちゃん!!」

 まるで、オレの考えを遮るように聞こえてきたハルの声に、視線をそちらへ向ければ、と同じように浮かんでいるイーピンと馬鹿牛の姿があった。
 それを見ると、どう考えても体重が軽いものが浮かんでいるのが分かる。
 どうやら、一定の重さがないと浮いてしまうようだ。

「どうやら、軽いと勝手に浮いちゃうみたいだな」
「えっ?!でも、俺そんなに軽くないから!!」

 それに納得して呟いたオレの言葉に、即効でが否定する。
 いい加減、自分の体重が一般の男子中学生の中で極端に軽いんだって事、認めればいいんだけどね。

「がーん、ハルは、さんよりも重いって事なんですか?!」

 だけど、そんなオレの言葉で、ハルがショックを受けたように声を上げる。
 確かに、今の話から言うと、ハルは確実によりも重いと言うことだ。
 正直、がハルや京子ちゃんぐらい食べてくれればこんなにも心配しなくてもすむんだけど

「イーピンの箇子時限超爆は、大技ランキング816技中、38位の一級品だね」

 そんな事を考えている中でも、フゥ太のランキングはまだまだ続いてるようで、現れたイーピンへと標的がうつされた。
 確かに、箇子時限超爆の威力はかなりのものである。
 だからこそ、そのランキングも納得出来ると言うものだ。

「それだけじゃない。餃子拳は、中距離技ランキングでも520技中116位と高性能だし、この年でこの成績なら文句ないよ!現にイーピンは、将来有望な殺し屋ランキング5万2千262人中3位のスーパーホープなんだ」
「へぇ、こいつ、そんなに凄かったんだ」

 そして続けられるランキングに感心して、イーピンを見る。
 でも、こいつって、10年後殺し屋から足を洗ってるんだよな?
 なんと言うか、無駄な能力なんじゃないのか?

「ランボさんは?ランボさんも何かやって!」

 イーピンのランキングが良かったものだから、当然馬鹿牛が張り合うように自分を主張する。
 まぁ、馬鹿牛はどう考えてもいいランキング結果など出ないだろう。

「ランボは、うざいマフィアランキング8万2千266人中ぶっちぎりで1位だよ」
「ぐびゃ」

 そして告げられたランキングに、馬鹿牛が打撃を受けたような声を出す。
 と言うか、予想通りのランキングだな。

「まんまのランキングだな」
「殺して座布団にしたいランキングでも1位さ」

 余りにも納得出来る結果に、思わず笑ってしまう。
 まぁ、なんと言うかこいつの為のランキング結果だな。

「10代目〜!!」

 予想通りのランキング結果に納得していたオレの耳に、余り聞きたくない声が聞こえてきた。
 そして、勢い良く人の部屋のドアを開けて飛び込んできたのは、ランボと同じぐらい時々うざいと考えてしまう獄寺の姿と、その後ろに山本も居る。

「なんでオレに教えてくれなかったんスか!?ランキング小僧がきてるって!」
「獄寺に、山本!何で、お前等が?!」
「そこで偶然会ってな、面白そーだから、オレもきたぜ」

 まさかこの二人が揃って来るとは思わなかったので、問い掛けたオレに山本が説明してくれた。
 と言っても、そのまんまの内容だったけど
 まぁ、山本は獄寺で遊んでるのは否めないので、その理由は納得出来る。

「前から、ランキング小僧に聞いてみたいことがあったんです。オレの聞きたいことは、ただ一つ…10代目の右腕にふさわしいランキングで、オレは何位なのか!!」

 そんな山本に気付く筈もなく、真剣に言われた内容はオレにとってはどうでもいい事だった。
 大体、それはフゥ太に聞くんじゃなく、オレに聞くべきじゃないのか?
 もっとも、獄寺を右腕とは認められないけど

「できるのか、ランキング小僧」
「カンタンだよ。ツナ兄の右腕にふさわしいランキングでしょー。いくよ、ハヤト兄の順位は……圏外」

 真剣な表情で問い掛ける獄寺に、フゥ太が告げた内容はちょっと意外だった。
 いや、確かに、オレとしても、今の獄寺を右腕とは認められないけど、まさか圏外と言う結果が出てくるとは思いもしなかったのだ。

「なにーっ!!!」
「ランキングに、圏外なんてあるの?」

 フゥ太の言葉を聞いて、驚きの声を上げる獄寺に対して、こっそりとが質問してくる。
 流石に質問された内容に答える事は出来なくて、何も言えないで居るオレに代わって、キッパリと口を開いたのは、ランキング小僧だった。

「ランキング圏外だなんて言ってないよ。大気圏外だ」

 どうやら、の声が聞こえていたらしい。
 でも、ランキング圏外じゃなくて、大気圏外って、本気で意味が分からないんだけど

「アハハハ、また面白ぇー奴だなー」

 ショックを受けている獄寺に、相変わらずの天然で場を読まず山本が楽しそうに笑う。
 まぁ、確かに面白いって言うのは、同意見ではあるんだけどね。

「でも、ハヤト兄、マフィアのファミリーの右腕だけが仕事じゃないよ。ハヤト兄は、保父さんに向いてるランキングでは、8万2千203人中1位なんだし」
「って、何時も馬鹿牛と喧嘩している獄寺が?!」
「保父さんですかー!!?」

 そんな複雑な状況などまったく気にした様子も見せず、続けられるランキングに思わず驚きの声を上げてしまった。
 それは、ハルも同意見だったらしく、思わず声が重なってしまう。
 流石に、そのランキングは、可笑し過ぎる。

「ハヤト兄は、子供好きランキングでも、8万2千203人中、2位なんだもん!ぴったりじゃないか」
「はがっ、オ、オレ…子供好きだったのか?」

 続けられるランキングに、獄寺が信じられないと言うように呟く。
 なんと言うか、明らかに可笑しいとは思うが、的中率100%ノランキングなのだから、否定する事もできない。

「ねぇ、ツナ、何か、可笑しくない?」

 そんな中、が小声で問い掛けてきた。
 どうやらも、このランキングが明らかに可笑しいと思っているようだ。

「確かに、可笑しいとは思うけど、もしかしたら、今まで表に出してなかったのかもしれないよ」

 オレも可笑しいとは思うが、もしかしたら、獄寺の隠された一面と言うことも否定できない。
 と言っても、分かりやすい獄寺に隠された一面なんてあるのかは疑問だけど

「さすがフゥ太だわ!見事なランキングさばき」

 が怪訝な顔をして考えている中、また別の声が聞こえてくる。
 気配で相手は分かっているが、一応振り返って確認すれば同じように振り返ったが明らかに強張った。
 まぁ、髪を流した状態で浮かんでいる姿は、まるで一種のホラーのようなのだから、仕方ないだろう。

「でも、大事なのは愛よ」

 やチビ達と同じように浮かんでいるのにも驚きはしたが、髪をなびかせて漂っている姿はにとっては恐怖以外の何者でもない。

「カッコイイですー!」
「いつも見せてくれるよなー」

 悲鳴を飲み込んだであろうと違って、ハルも山本も正直楽しんでいるようだ。
 本当、何がどう楽しいのかオレには分からないんだけど
 そんな事を考えているオレの腕に、が抱き付いてくる。
 どうやら、本気で怖がっているようだ。
 抱き付いてくれるのは本当に嬉しいんだけど、怯えた表情を誰かに見せるのなんて、勿体無い。

「ビアンキ、が怯えてるだろう。普通に登場してくれ」

 だからこそ、呆れながらビアンキに注意する。
 の表情一つだって、誰かに見せるのは勿体無いのだ。
 それが、怯えた表情なら、尚更。
 怯えているは、本当に守ってあげたくなるぐらい可愛いんだよね。

「って、獄寺くんが、ショックで石化しちゃってる!!」

 そんな事を考えていたオレの耳に、の驚いた声が聞こえてきた。
 その声に視線を獄寺へと向ければ、確かに白目をむいた状態で固まっている姿がある。
 ランキング圏外結果と、苦手なビアンキの姿は二重で獄寺にショックを与えたらしい。

「ふふ、隼人の事は気にしなくてもいいわよ。そんな事より、この際、愛のランキングをつくって、誰が誰を愛してるのか、ハッキリさせましょう」

 そんな獄寺を全く気にすることなく、ビアンキが楽しそうに一つの提案を出してくる。

 愛のランキングねぇ……
 オレがただ一人愛しているのは、ずっと直ぐ傍にいる相手だけだ。
 でも、その相手が自分の事をどう思っているのかは、分からない。

 分からないからこそ、知りたいと思う。

 嫌われていない事は、分かっているのだけれど、相手にとって、オレはただの家族でしかないのだとそう思い知らされるのは、正直言って怖い。

「面白そーだな、フゥ太やってくれ」

 そっと自分の腕に抱き付いている相手を見詰めた瞬間聞こえてきたのは、リボーンの声。
 少しだけ楽しそうに聞こえるのは、一体何を考えているのやら。

「じゃあまず、ツナ兄が愛してる人ランキングいくよ」

 リボーンから許可が出た瞬間、嬉しそうにフゥ太が頷いて言われた言葉にギョッとした。
 今更、思い人だけが知らないオレの愛している人をランキングする必要なんて、何処にあると言うのだろう。
 しかも、その知られて居ない本人の目の前でバラされる訳にはいかない。

「ツナ兄が愛している人ランキング、第1位は……」
「おい、フゥ太、勝手に人のをバラそうとするんじゃない!」

 慌ててそのランキングを止めようと声を出すが、時既に遅くオレの声など聞こえないかのようにフゥ太がその名前を口に出す。

「レオン」

 が、言われた名前に一瞬だけ思考が停止した。
 いや、ちょっと待て、何でここでリボーンのペットの名前が出てくるんだ?
 明らかに可笑しいだろう!
 流石に、ココまで来ると的中率100%だと言われているランキングでも、今言われた事がデタラメであると分かる。
 だが、言われた言葉を信じたのか、ハルが窓を開けて嘆いた。

「ハルは、とんだ伏兵に負けました。ハルのハートは、この空と同じ大雨です」
「雨?」

 言われたその言葉と同時に、直ぐ傍のの体が突然無重力状態からバランスを崩して落ちそうになるのが分かり、慌ててそれを抱き止める。

「大丈夫、?」

 を抱き締めると同時に、周りのモノも全部床に落ちて行く。
 それを横目に確認してから、抱き止めたへと心配して問い掛ける。
 落す様なヘマは当然していないけど、浮かんでいた事で気分でも悪くなっていたらと思うと心配せずには要られない。
 支えながら、ゆっくりとを床に下ろせば、どこかホッとしたような表情が見えた。

「うん、俺はツナが支えてくれたから、大丈夫。でも、どうして急に……フゥ太くん?!」

 それからオレの質問に答えて、不思議そうにフゥ太へと視線を向けて、驚いたようにその声を呼ぶ。
 その声にオレも視線を向ければ、明らかに気だるげな様子で床に倒れているフゥ太の姿があった。

「どうしたの?気分が悪い??!」
「だるい。僕、雨に弱いんだ…雨なんかキライだよ。ランキングの能力がデタラメになっちゃうし…」

 その姿に、オレの腕の中からがフゥ太の方へと移動してしまう。
 それを少しだけ残念に思いながらも、の質問に答えたフゥ太の言葉で全て納得できた。

「ふぅん、それじゃ、雨が降ってからのランキングは間違いって事だね」
「じゃあ、オレのランキングも…」
「んー」
「ランボさんも!」
「いつでしたっけ、雨降り出したの?」

 納得して頷いたオレに、安心したように獄寺が嬉しそうに問い掛けてくる。
 それにダルそうにフゥ太が頷いてから、ランボが嬉しそうに声を出す。
 自分のランキングが間違いだと分かって嬉しそうなランボに続いて、ハルが不思議そうに首を傾げる。
 オレも、ハッキリと何時から雨が降り出したのか分からないが、どう考えてもランボのランキングは間違ってないように思うんだけよな。

「ちなみに、雨が降ると能力が乱れるのは、ランキング星との交信が乱れるからって説があるんだ」
「説話は、もういいよ」


 そんな事を考えているオレに、リボーンがフゥ太の能力説明を追加する。
 もっとも、説だと言っているのだから、本当かどうかは分からないが、今となってはどうでもいい。

 兎に角、にオレの気持ちがバレなかったのだから、今は良しとしよう。