久し振りに、すっきりと目が覚めた。
ツナに全部話しをして、安心できたからだと思う。
「こんな事なら、もっと早く話せば良かった……」
「おはよう、。ゆっくり眠れた?」
ポツリと呟いた瞬間、ドアが開いてツナが部屋に入ってくる。
「おはよう、ツナ。うん、久し振りにゆっくりと眠れた。ツナのお陰だね、有難う」
「オレは何もしてないよ。それに、まだ解決した訳じゃないからね。大丈夫、さっさと解決するから、は何も心配する事はないから」
すっきり眠れて、気分も良くなったから、笑顔でお礼を言った俺に、ツナがサラリと怖い事を口に出す。
えっと、さっさと解決するって、そんなに簡単に解決できるものなのかな?
しかも、犯人を捕まえてどうするの、ツナ!!
「か、解決するって……」
「とりあえず、の携帯はオレが持つから、はオレの携帯使って」
「えっ?でも、そうするとツナが困るんじゃ」
「困らないよ。にしか連絡する事は無いからね」
いや、そんなにキッパリと……
まぁ、俺も似たようなもんなんだけど
と言うより、ツナ以外からの電話って受けた事無いかも
あれ?そう考えると、悲しくなってくるんだけど
一応、アドレスにはツナ以外にもちゃんと登録されてはいるんだよ。
山本とか獄寺くんとか、リボーンに京子ちゃん、ハルちゃん、もちろんビアンキさんのもちゃんと登録してあります。
「分かった、ならツナの携帯借りておくね」
「うん、もう鞄の中に入れてあるから」
言われた事に納得して口を開けば、当然と言うように返事が返される。
えっと、手渡しで交換されるんじゃなくて、事後承諾だったんですね。
いや、別にいいんだけど
「それから、写真に関してはもう解決したから心配しなくていいよ」
ちょっとだけ複雑な気持ちになっていた俺に、サラリと信じられない内容が聞こえてきたんですけど
あ、あれ?なんか、写真の事は解決したって聞こえて来たんだけど……
「ツ、ツナ?」
「写真と無言電話は別件みたいだったから、全部を一気に解決できなくてごめんね」
信じられなくて恐る恐る名前を呼べば、謝罪の言葉が返されてしまった。
「えっ、何でツナが謝るのかが分からないんだけど!それどころか、一日で解決したって、有り得ないんですが……」
それに慌てて首を振って返し、正直な自分の気持ちを口に出す。
いや、だってツナに話したのは昨日の事なんですけど、解決したってどう言う事なんですか?!
そっちの方が、信じられないんですけど
「まぁ、向こうが直ぐに行動を起こしてくれたから早期解決できたんだけどね。電話の方も今日相手から電話が掛かってくれば解決できると思うんだ」
俺が信じられないと言うように呟いたその言葉に、ツナがため息をつきながら返してくれる。
いや、電話が掛かってきたら直ぐに解決するって、何をするつもりなんですか、お兄様!!
普通、電話が掛かってきても、どうにかなる問題じゃないと思うんです。
警察じゃないんだから、逆探知出来る訳……ツ、ツナなら、それぐらい簡単にやってのけそうなんですが……
「えっと、それは凄く有難いんだけど、無茶だけはしないでね?」
「心配しなくても大丈夫だよ。にこんなマネした事を死ぬ方がマシだと思える程に後悔させてあげるから」
いやいや、それは望んでいませんから!
しかも、それは笑顔で言う事じゃありません。
「で、出来れば、穏便に……ほら、俺が相手に何か悪い事をしちゃったのかもしれないし……」
「それは、有り得ないから!」
俺としては穏便に済ましてもらいたいから言った言葉に、きっぱりと否定の言葉が返される。
でもね、それは兄弟の欲目だと思うんですけど
そうじゃなくても、俺はみんなに迷惑しかけてないんだから
それに、ほら、ツナを好きな女の子達から見れば、俺は邪魔な存在でしかないのは、小学生の時に嫌と言うほど味わった経験でもあるのだ。
「とにかく、今日は行きも帰りもオレが一緒だから心配しなくても大丈夫だよ。本当は、学校を休むのが一番いいんだろうけど、それはが嫌がるの分かっているから諦めるとしても、学校の中では絶対に一人にならないでね」
「う、うん。でも、ツナはリボーンとの修行……」
「一通りは終わったらしいから心配ないよ」
どこか納得できない瞳でツナを見ていたら、そのまま話が続けられてしまった。
行き帰り一緒なのは嬉しいんだけど、リボーンの修行が心配だったから質問した俺に、ツナがにっこりと笑顔で返してくれる。
それにホッとして、俺もツナに笑顔を返した。
「久し振りだね。ツナと一緒に学校行くの」
「本当に、ね。その間にはストーカーに狙われているし、迷惑な話なんだけど」
「ス、ストーカーって……違うと思うんだけど」
笑顔で言った俺の言葉に、盛大なため息をついて返されたそれに、慌ててしまう。
俺、ストーカーに狙われた覚えなんてないんですだけど、今されているのはただの嫌がらせだと思うんですが
「……気付いてないのは、だけだろうね……」
ツナの言葉を否定したらまたしてもため息をつかれて、ボソリと何か言ったみたいなんだけどあまりにも小さすぎて俺には聞こえなかった。
「何?」
「何でもないよ。そろそろ準備しないと遅刻になるよ」
「えっ?」
聞こえなかった言葉を聞き返せば否定されて、続けて言われた内容に驚いて時計を見れば確かにのんびりしていていい時間ではなくなっている。
「遅刻!!!!」
時計を見た瞬間、俺は慌てて行動を起こす。
だから、その後またツナが疲れたようにため息をついたのには、全く気付く事が出来なかった。
だって、まさかツナが徹夜していたなんて、そんな素振り見せなかったんだから分かるはずが無い。
その事実を知ったのは、リボーンからこっそりと教えてもらったから
多分、話してもらわなければ、気付けなかったと思う。
久し振りにツナと一緒に登校。
ツナが一緒だと、自然と獄寺くんも一緒になって、本当に久し振りに賑やかな登校になった。
「、何度も言ったけど、絶対に一人になっちゃダメだからね!」
学校に着いてツナは俺のクラスまで一緒に来てくれて、別れる間際に言われた言葉は何度も聞かされた内容で、俺は素直に頷いて返す。
だって、流石に何度も何度も言われた内容だし、それだけツナに心配させてしまった事が分かっているので、これ以上の心配は掛けたくないから
俺が頷いた事で一先ずは安心したのか、それでも心配そうなツナに『大丈夫だから』と言えば、何でか余計にため息をついかれてしまった。
失礼なんだけど……
「とにかく、休み時間毎に様子を見に来るから!」
「えっ、いや、そこまでしなくても……」
「何?」
「いえ、何でもないです……」
ちょっとだけ複雑な気持ちになった俺に、ツナが駄目押しというように言った内容には、流石に拒否しようと口を開きかければ、それを許さない勢いで返されて否定する事も出来ない状態だ。
いや、黙っていた俺が悪いんだけど、だからって、休み時間毎に様子見に来るのはツナが大変だと思うんだけど……
「怪我した時のように、ずっと一緒に居るでもいいんだけど、オレは」
ツナに迷惑が掛かると言うのが顔に出ていたのか、小さくため息をつきながら言われた内容に、ブンブンと大きく首を振って返す。
流石に、授業中もずっとツナが隣に居るのは、辛いです。
ええ、周りの人達の視線が、とにかく痛かったので……
特に女子の、ね、ツナを見る目が凄くて、大変だったから二度と味わいたくないんです。
「だったら、ちゃんと約束は守ってね」
ブンブンと首を振って返した俺に、ツナがにっこりと笑顔で言ったその言葉に、今度はコクコクと大きく頷いて返した。
その時見せたツナの笑顔は、ちょっと怖かったです。
それから、ツナは毎時間の休み時間に獄寺くんと山本を連れて来てくれた。
いや、山本と獄寺くんは毎時間じゃなかったんけど、ツナは、ちゃんと毎時間来てくれたんだよね。
しかも、チャイムが鳴る前から廊下で待ってたんだけど……なんであんなに早く来れるんだろう?
山本と獄寺くんは、毎時間教室に来るツナに、また心配掛けたんだろうって、苦笑された(獄寺くんは怒っていた)けど、何があったかまでは聞かれなかったのでちょっとだけホッとする。
別に、話してもいいんだけど、やはり嫌がらせを受けた事なんて、そんなに人に話したいとは思わない無いから……
お昼休みは、ツナに連れられて屋上で一緒にお弁当を食べたんだけど、天気が良くて最近塞ぎ込んでいた気分を吹き飛ばしてもらったように思う。
それから、あっと言う間に放課後。
ツナが既に廊下で待っていて、HRが終わった瞬間に教室へと入って来る。
更にその後教室に入ってきたのは
「ねぇ、ちょっといい?」
ザワザワと教室の中が騒がしくなるどころか、その人の声が聞こえた瞬間教室の中がシーンと静まり返った。
「……なんで、あなたが来るんですか?」
「別に、ちょっと聞きたい事があったんだよ、そこの君にね」
「お、俺ですか?」
不機嫌なツナの声が突然現れた相手へと質問すれば、その視線が俺へと向けられて思わず聞き返してしまう。
俺に聞きたい事って、何だろう?
想像も付かなくて首を傾げてしまうのは、仕方ないだろう。
「君、この男を知っている?」
疑問に思って聞き返した俺に、恭弥さんが質問してくる。
この男と言われても、誰の事だか分からなくて再度首を傾げれば、後ろから草壁さんが知らない男の人を引き連れて教室に入ってきた。
その姿が、ボロボロになっているように見えるのは、気の所為じゃないだろう。
も、もしかしなくても、恭弥さんに咬み殺された人なんだろうか?
ズイっと、草壁さんが俺に見えるように相手を突き出してくるけど、その顔に見覚えは無い。
「いえ、知りませんけど……」
なんでそんな事を質問されるのかが分からなかったけど、その人の事を知らないから首を振って返せば『やはり』と言う様に恭弥さんがため息をついた。
「あの、この人が何か?」
分からないと言うように質問すれば、チラリと恭弥さんがツナへと視線を向る。
「へぇ、珍しく役に立ってくれたんですね」
何でそこでツナを見るのかが分からなかったけど、見られたツナにはその意図が分かったようで感心したように、それからちょっとバカにしたように恭弥さんへと返す。
役に立つ?一体、なんの話??
本気で訳が分からない俺を他所に、ツナの視線が険しいものへと変わり草壁さんが捕まえている相手を睨み付けた。
「オレも、こいつの事は流石に知らないんですが、何者なんですか?」
「3週間前から、2ヶ月間の研修に来ている教員見習い。こんな奴が教員になるなんて、許せないから全ての道は塞いでおくよ、並盛にも二度と入る事は許さない」
ツナの質問に、淡々とした口調で返してから恭弥さんが手に力を込めた瞬間、バキリと言う音が聞こえてくる。
何の音だろうと思って、首を傾げながらそれを見れば、多分携帯だったのだろう残骸が恭弥さんの手から床に落とされるのが見えた。
えっと、本気で俺には意味が分からないんだけど、なんでツナも恭弥さんもこんなに怒っているんだろう。
教室に居るクラスメート達が、恐怖を感じるぐらいに二人からは殺気が……
「どうやら、問題は解決したみてぇだな」
意味が分からずにオロオロしている俺の耳に、新たな声が聞こえてきて視線をそちらへと向ければ、満足そうな笑みを浮かべているリボーンの姿が
「リボーン!一体、何がどうなっているのか俺には分からないんだけど……」
突然現れたにもかかわらず、リボーンも状況を理解している事が分かって、救いを求めるように問い掛ければ呆れたような視線で見られてしまった。
ど、どうせ俺はバカですよ!
一人だけ、状況が理解できてないんだから、仕方ないじゃないか!!
「だから、おめぇはダメダメなんだぞ。こいつが、お前の携帯に無言電話を掛けていた犯人だ」
「はぁ?」
呆れたような視線で見られて、少しだけ落ち込んでいた俺に、リボーンがしっかりとバカにしてから説明してくれる。
だけど、言われた内容が信じられないものだったから、思わず聞き返すような声を上げてしまったのは仕方ないだろう。
だって、俺はこの人を知らないのに、何でそんな人から嫌がらせされていたのかが分からない。
「俺、この人のことを知らないんですけど!?」
思わず、疑問に思った事が口から出てしまう。
俺、知らない人から嫌がらせを受けていたの?!
も、もしかして、俺の見た目からして許せないって事で嫌がらせを……
でも、見た目に関しては、流石に持って生まれたものだから改善はできないんだけど
「そんなに、俺の容姿って嫌われ要素持っていたの?!」
いや、流石に万人から好かれる容姿をしているとは思ってなかったんだけど、ごくごく普通の目立たない容姿だと自負していたのに……
そりゃ、ちょっと瞳の色が他の人とは違うかもしれないけど、こればかりは仕方ないし、何よりも生まれ持った容姿だけは整形でもしない限りどうにもならないから、そんな事で嫌がらせ受けても困るから!!
「……この子、バカなの?」
信じられない内容に思わず声を出していた俺に対して、呆れたような恭弥さんがツナへと質問する声で、漸く我に返る。
そ、そりゃツナや恭弥さんに比べればバカなのは認めるけど、そんな呆れたような目で見なくてもいいじゃないですか
「まぁ、ですから、仕方ありませんよ。それよりも、良くそいつの事が分かりましたね」
「このクラスが誰も居ない時にこの男が教室に入るのを偶々見かけてね。問い詰めれば、あっさりと話してくれたよ、無断でこの子の携帯番号を入手した事も含めてね」
ツナからまでも酷い扱いをされて落ち込んでいる俺は完全無視で、二人が話をしているのをただ黙って聞く。
えっと、それってつまり、この人が全部俺に嫌がらせをしていたことになるんだよね。
いや、確かにこの人が犯人だって、リボーンが言っていたから、それは間違いないとは思うんだけど
「俺だからまだいいけど、こんな酷い事を他の人にしたらダメだから!」
「?」
本当に落ち込んだんだからね、俺。
こんな嫌がらせ、絶対に人としてやっちゃダメなんだから!
突然怒った声を上げた俺に、ツナが驚いたように名前を呼んでくる。
だけど、俺はそれに返事を返さずに、草壁さんが捕まえているその人の傍へと行って、ペチリとその頬を叩いた。
「?!」
「こんな事したら、された相手は傷付くんだよ。すっごく不安になんだ。もう絶対にこんなことしちゃダメだから!」
俺が人を叩いた事に驚いたのか、ツナがまた名前を呼んでくる声が聞こえたけど、俺はただ真っ直ぐにその人の目を見てダメな事はダメだと主張する。
ジーっと相手を見詰めていれば、その視線がそっと伏せられた。
「……す、すまなかった……」
そして、ボソリと小さな声が謝罪の言葉を口に出す。
謝罪してくれたそれに、俺はただ満足気に頷いて笑みを浮かべた。
うん、謝ってくれたから、俺はもうそれで十分だ。
「……へぇ、あの子が誰かに手を上げるなんてね」
「オレも驚いたけど、多分、これが一番穏便に終わる事を本人は無意識に分かってやってるんです。そうじゃなければ、オレが死ぬ方がマシってほどの後悔を味あわせてやるところでしたから」
「そうだろうね、もっとも、僕はこれぐらいで許さないよ。並盛でこんなマネをしてくれた事は、絶対に許せないからね」
俺が満足している後ろで、ツナと恭弥さんがそんな会話をしていたなんて知るはずも無い。
俺から盗んだと言うものは、ちゃんと戻ってきたから、本当に良かった。
鞄に付けていたキーホルダーはツナから貰ったものなので、無くしたくなかったんだよね。
でも、戻ってきたそれらをツナが念入りに消毒すると言った理由が良く分からないんですが……
なんにしても、問題が解決してくれて本当に良かった。
安心したら、ご飯も美味しく食べられるようになったし、本当に良かった良かった。
「って、良くないよ!、教室に携帯置きぱなしにしていたって、どういうことなの!」
問題解決して安心したんだけど、えっと、やっぱり最後はツナに怒られた。
だって、携帯をポケットに入れるの、俺は好きじゃないんだもん!
他にも、色々無防備だとか、何だといっぱい怒られたんだけど、どれも理不尽だと思ったのは絶対に口には出せない。
だって、それを言ったりしたら絶対に説教が長くなる。
それは嫌だたからバレないように、気を付けないと……無駄なような気がしないでもないんだけどね。
でも、本気でツナに話したら一日で全て解決してしまった。
数週間悩んだ俺って、一体なんだったんだろう……ちょっとだけ、複雑な気分になったのは内緒の話。
そして、あの教育実習生の人がどうなったのか、俺には分からない。
恭弥さんに、酷い事されてなければいいんだけど……
それから、恭弥さんの名前が俺の携帯に登録されたのは、必然的な事だったのだろうか?
この曲で設定しておいてと送ってくれたので、勿論それが恭弥さんの曲。
うん、並盛校歌だったのには、ちょっとだけ驚いたんだけど……