「んで、何があったんだ?」
帰り道、突然質問されたそれに、俺は思わず山本を見上げてしまった。
その前まで、本当に普通に話しをしていたのに、何で急にそんな事質問してくるんだろう。
「山本?」
「本当は聞くつもりなかったんだけどな、その顔見てたら聞かなきゃいけねぇように思ってさ」
何処か困ったように言われる山本の言葉に、俺は視線を山本から地面へと向ける。
俺、そんなに情けない顔していたのかな?
自分では精一杯普通にしていたつもりだったのに……
「山本は、ツナの好きな人って知ってる?」
本当は、こんな事聞きたくない。
もう、俺だって知っているのに、ツナが誰を好きなのかを……
「あ〜っ、まぁ……多分っていう奴の事は……」
俺の質問が余りにも突然すぎたのか、山本が複雑な表情で答えてくれる。
でも、その答えから、山本にも話していない事を知って、ちょっとだけ笑ってしまった。
ツナらしいね、誰にも相談していないところ……
「そっか、山本は知ってたんだ……でも、俺は知らなかったんだ。ツナに好きな人が居るって事だけは噂で知っていたんだけど、その相手が誰なのかを……」
「って、知っちまったのか?!」
俺の言葉に、山本が驚いたように声を上げる。
俺が知った事が、そんなにびっくりするような事なんだろうか?
「うん、ツナが告白しているところ、聞いちゃったから……」
ツナが、委員長さんに告白しているところ……本当は、聞きたくなかったんだけど、聞いちゃったから……
「聞いた?って、直接告白されたんじゃねぇのか?」
意外だと言うように質問してくる山本のその言葉に思わず首を傾げてしまう。あれ?なんで、そんな所で不思議がるんだろう??
「直接、告白してたよ」
ちゃんと委員長さんに告白していたのに、なんでそんなに驚くんだろうか?
それに、委員長さんもツナと同じ気持ちだって返事していたし……
ああ、思い出したら、また泣きそうになってくる。
「いや、だから、告白されたんじゃねぇのか?」
恐る恐るというように質問してくる山本に、もう一度首をかしげてしまう。
告白される?誰が、誰に??
「山本?」
「いや、ちょっと待ってくれよ……ツナが、誰に告白してたんだ?」
意味が分からないというように山本の名前を呼べば、山本も混乱しているらしく、再度質問してきた。
その質問に、俺は一瞬言葉を失う。
本当は言いたくないけど、言わなきゃ山本には分からない。
「……ツナが、委員長さんに………」
「はぁ?」
意を決して口を開いた俺に、山本が素っ頓狂な声を上げる。
あれ?何でそんなに驚いているんだろう。だって、山本は、ツナの好きな人を何となく知ってるって言ってたのに……
「山本?」
そんなに驚くって事は、もしかしてその考えていた人とは一致していなかったのか?
すごく旨く隠してたんだな、ツナ。
「絶対ありえねぇだろう!!」
そして、続けて言われたのは否定の言葉。
だけど、俺はしっかりと聞いてしまったから、間違いなんかじゃない。
「でも……」
「雲雀を嫌う事はあっても、好きな訳ねぇっだろう!」
それを否定しようと口を開きかけた俺の言葉は、山本のきっぱりとした口調によって遮られてしまう。
何で、そんな風に言い切れるんだろう。
だって、俺はツナが委員長さんに告白する所を聞いたんだから、間違いじゃない。
「だけど……」
「聞き間違いじゃねぇのか?」
真剣に質問されたそれに、言葉を失う。
前にも、同じような事があった……確かに、あの時は誤解だったけど、今回は俺は自分の耳で聞いた事なんだから、間違うはずがない。
聞き違うはずなんかない。俺は、ただ山本の質問に小さく首を振って返した。
そんな俺に、山本は一瞬考えるような素振りを見せる。
俺は、必死で泣き出しそうになる自分と格闘するしか出来ない。
「……なぁ、は、何て家に連絡したんだ?」
「えっ?普通に、山本の家に行くって……夕飯をご馳走になるって……なんで、急に?」
そして、何かを考えていた山本が口を開いたのは不思議な質問。突然質問されたそれに、意味が分からないながらも返事を返す。
一体、どうしてそんな質問をされたのか分からなくって、山本を見るとただ楽しそうな顔で笑われてしまった。
意味が分からなくって質問しようと口を開きかけた瞬間、山本の携帯が着信の音を奏でる。
「あ〜っ、ナイスタイミングだな」
山本は、携帯の相手が誰だか分かっているのだろう楽しそうに笑いながら、鳴り出したそれをポケットから取り出す。
「よっ、ツナ」
そして呼ばれた名前に、ビクリと肩が震えてしまった。
何で、山本の携帯に、ツナが連絡してるんだろう。
困惑して山本を見れば、ただ笑顔をが向けられる。
「ああ、今家に帰ってる途中だぜ……んな事する訳ねぇって……ああ、分かった、伝えとく」
ツナにいくつか返事をして、最後にそう言ってから、山本が電話を切り携帯をポケットへと戻す。
俺は、その動作をただ見守る事しか出来なくって、ただ不安気に山本をみる。
「、飯食ったら連絡しろって、ツナが迎えに来るってよ」
そんな俺に、何処か楽しそうに言われた言葉で思わず複雑な表情をしてしまった。
どうして、そんな話になってるんだろう。
俺は今、ツナには会いたくないのに……
「一人で、大丈夫なのに……」
「それだけ、ツナにはおまえが大切って事なんだぜ」
ポツリとつぶやいた俺の言葉に、当然と言うように山本が言葉を返してくる。
「だから、あいつが雲雀を好きだなんて事、有り得ないんだ」
「えっ?」
そして、続けられたその言葉。
どうして、そんなにも確信を持って言えるんだろうか。
しかも、すっごく嬉しそうに……
「もしツナにその事を言ってみろよ、あいつマジで怒るだろうぜ」
楽しそうな笑みで言われた言葉に、何でだろう、自分の方が間違っているような気がしてきた。
俺は、自分で聞いたのに、ツナが委員長さんに言っていたその言葉を……
「多分、全部聞いてなかったんじゃねぇのか、?」
確信を持ったその言葉に、俺は思い出す。
そう言えば、俺が行く前から、ツナは何かを委員長さんと話しているみたいだった。
そして、俺が聞いたその前にも、確かに何かを言っていたような……
「ツナ、委員長さんに『…しか、好きじゃない』って……」
「ああ、やっぱり全部聞いてねぇじゃん」
確かに、俺は全部の言葉を聞いたわけじゃない。
でも、そう言ったって事は、その前には特定の言葉が入るのが普通。
だから、俺は目の前に居た委員長さんに向けて言ったんだろうと思ってしまったのだ。
「俺、委員長さんの事だと……委員長さんも、綱吉と同じだって……二人は両想いだと思ったのに……」
全部、俺の勘違い?
だったら、二人が話していた相手って、一体誰の事を話していたんだろう??
二人が好きな相手って、一体……
「残念だけど、帰るか?」
「山本?」
真剣に考えていた俺に、山本が質問してくる。
「今日は、帰った方がいいだろう?」
再度質問されたその言葉に、俺は山本を見上げて、コクリと頷いて返す。
ちゃんと、ツナに確認しないといけない。
だって、もう勘違いだって山本に言われて分かったんだから……
「今日は残念だけど、今度はツナと一緒に来てくれよな」
「うん、有難う、山本!家の人には、謝っておいてね」
折角誘ってくれたのに、悪いと分かっていても、今直ぐにツナに会って確かめたい。
「気にすんなって!おい、!走るなよ!!」
踵を返して急いで家へと帰ろうとした俺に、山本が慌てて声を掛けてくる。
今は、走れない事がこんなにももどかしい。
山本に手を振って返してから、俺は自分で歩ける精一杯のスピードで家へと急いだ。
本当に俺って全然進歩してない。
「!何でそんなに急いでるの?!」
勝手に勘違いして、一人で悩んで本当に馬鹿みたいだ。
本当に気になるんなら、ツナに聞けばいいのに……そんな、勇気もなくって
「ツナ?」
早く帰ろうと急いでいた俺の耳に、良く知った声が聞こえてきて驚いてその足を止める。
少しだけ無理した所為か、足が痛むけどそんな事今は気にしていられない。
「どうして……?」
「山本が連絡してくれたんだよ。がもう帰ったって……夕飯ご馳走になるんじゃなかったの?」
連絡してくれたんだ、山本……でも、それにしてもツナが来るのが早いような……
「うん、でも、ツナに会いたくなったから……」
「オレに?それは嬉しいんだけど、どうしたの、何かあった?」
走って俺の傍に来たツナが、心配そうに質問してくる。
ああ、もしかしてツナは、俺の事を迎えに来てくれていたのかもしれない。
夕飯を食べたらって言っていたけど、きっと山本の家の前で待つつもりだったんだ。だから、こんなに早く山本の連絡で対応できたんだと思う。
「ツナ、今日委員長さんと何を話してたんだ?」
「えっ?も、もしかして、話、聞いてたの、?」
意を決して質問した俺に、ツナが動揺をみせる。
ああ、やっぱり、俺には聞かせたくない話だったのかな?
「全部は聞いてないけど……ツナの、好きな人の事、話してたんだよね?」
そっとツナの様子を伺いながら質問。
本当は、かなり胸がドキドキしてるんだけど……
「何言ってるの、オレ達が話していたのはの事だよ」
だけどあっさりと返された答え。
あれ?二人が話していたのって、俺の事だったのか??
「俺の、事?」
「オレがの事意外で、ヒバリさんと話す事があると思ってるの?」
意外過ぎて思わず質問するように呟いた俺の言葉に、逆にツナが質問してくる。
えっと、そう言われても、俺の事で一体どんな話があるのか、逆に分からないんだけど……
それに、二人が話していた内容って、確か誰かの事を好きって話だったような……俺、委員長さんに嫌われてなかったんだ。
ツナも、俺の事を好きって……
そんな事を考えて、ホッと息を吐き出す。
「……本当に、全部、俺の勘違いだったんだ……」
「?」
安心したら、何だから力が抜けてきて、今頃なって足がすごく痛い事に気が付く。
ああ、やばい、俺、そんなに無茶しちゃったんだ……
「どうしたの?」
「えっと、ちょっと足が……」
ズキズキと痛む足に、思わず座り込んでしまった俺に気付いて、ツナが慌てて声を掛けてくる。
右足を擦るように触れながら言えば、やばいツナに怒られる……
ツナの方を見れば、ブルブルと手が震えてるのが見える。
「!何で、そんな無茶するの!!」
あう、やっぱり怒られた……でもね、無茶してでも直ぐに確かめたかったんだよ。
俺の勝手な勘違いだって、直ぐに確認したかったんだから
そりゃ、確かに勝手に勘違いして無茶した俺が全部悪いんだから、怒られるのは仕方ないかもしれないけど……
「ごめんね、ツナ」
本気で俺の事を怒ってくれるのは、俺の事を大切に思ってくれているから
素直に謝罪した俺に、ツナが諦めたようにため息を付く。
「いいよ、オレに早く会いたいって思ってくれたんだよね?」
そして、何処か嬉しそうに質問された事に、コクリと頷けば優しく微笑んでくれる。
「だったら、特別に許してあげるよ」
そう言って、ツナが優しく笑ってくれたから、俺も笑い返した。
そして、座り込んでしまった俺を、ゆっくりとした動作で抱き上げる。
「ツ、ツナ!」
突然の事に名前を呼べば、笑い声で返されてしまった。
「は、まだご飯食べてないんだよね?だったら、早く帰らないとでしょ」
言われた言葉に納得して、頷く。
そう言えば、お腹すいたかも……
現金なもので、安心したら、お腹がすいた。
ツナに抱き抱えられた状態で、そんな事を考える。
「……オレが好きなのは、だけだよ……」
その瞬間聞こえて来た声は、余りにも小さすぎて何を言ったのか分からなかった。
「ツナ、何か言った?」
「何も言ってないよ。アキは、そのまま大人しくしてて、勿論家に戻ったらマッサージしてあげるから」
聞き取れなかったその言葉を質問すれば、何時もと変わらないツナの声が言葉を返してくる。
「……宜しく、お願いいたします」
その言われた内容に、俺は素直にお願いする事しか出来なかった。
ここで反論すれば、確実にツナのお小言を貰う事になるから……
返事を返した俺に、ツナが笑う。
ねぇ、まだ俺だけのツナで居てくれますか?
俺も、ツナが居てくれれば、それだけで十分だから……
これから先のことなんて全然分からないけど、そう本気で思える。
俺が、兄離れ出来るまででいいから……