目に付いたのは、カレンダー。
 それを見た瞬間思い出した事がある。

 そう、リボーンがここに来て一年が経つんだと言う事を



 それを思い出したら、やっぱりお祝いしなくっちゃいけないのかなぁと思って、キッチンに直行。
 冷蔵庫にあるモノを勝手に物色する。

 母さんマメだから、材料は豊富だよね。
 でも、料理は母さんが作るだろうから、俺はお菓子でも作ろうかなぁ……
 今から作れば、3時までには間に合うだろうし
 今日は、自分にしてはすっごく早起きしたから、余裕だろう、うん。

 えっと、お祝いって言ったら、やっぱりケーキだろうか?

「コーヒーシフォン、モカケーキ、ロールケーキ、パウンドケーキ……何がいいかな?」

 ケーキの種類を口にしながら、やっぱり作るケーキはコーヒーが入ってる方がいいよね、リボーンが好きだから……

?何してるの?」

 考え込んでいると、突然声を掛けられて驚いて振り返る。

 あれ?珍しいね、ツナがキッチンに顔出すなんて……

「ケーキを作ろうと思って……ツナは、何か用事?」

「喉が渇いたから、何か貰おうと思って……何のケーキ作るの?」

 キッチンの中に入って来て、ツナは迷う事無く冷蔵庫を開けると中から麦茶を取りそれをコップに注ぎながら質問してくる。

「コーヒーが入ったケーキなのは決まってるんだけど、何ケーキで作るかを迷ってる」
「コーヒー?珍しいね、はあんまり好きじゃないのに、誰かに頼まれたの?」

 コップに注いだそれを一口飲んで、質問に答えた俺に更に不思議そうにツナが質問してきた。

 確かに、俺はあんまりコーヒーは好きじゃないから、質問されても仕方ないかもしれないけど

「頼まれた訳じゃないんだけど……ほら!リボーンがここに来て一年になるから、お祝いしようかと思って!」
「……必要ないんじゃない」

 それに返事を返して、理由を話したら不機嫌な表情で返されてしまった。

 いや、必要ないって……

「でも、家族が増えたのを」
「必要ないから!」

 返されたそれに、何とか言葉を返そうとしたら、遮られてキッパリと言われてしまう。
 そんなにキッパリと、否定しなくってもいいと思うんだけど……

「あんな疫病神来ない方が良かったんだけど」

 ブツブツと文句を言いながら、ツナが注いでいるコップの中身を飲み干す。
 そんなツナの様子に、俺は思わず苦笑を零した。

 確かに、リボーンが来てから、波乱万丈な人生を迎えているように思うのは、気の所為じゃないだろう。
 でも、それと同時に、楽しい事も一杯あったから、それを全て否定する事なんてできない。
 何よりも、家の中が賑やかになったのは、本当の事だし……近所迷惑になっているって言うのは、この際置いておくとしてもだ。

「失礼なヤツだな。誰が疫病神だ」
「リボーン」

 どうやってツナに納得してもらおうかと必死に考えている中、新たな声が聞こえて来て俺は驚いてその声の主の名前を呼ぶ。


 本当に、神出鬼没だよね、リボーンって……

「お前に決まってるだろう!」

 そこで、何でそんな返事返すの、ツナは?!

 突然のリボーンの登場に驚いていた俺だけど、綱吉はキッパリとした口調でリボーンに返している。
 お願いだから、そこで殺気を出すのだけはやめてください!
 睨み合っている二人に、俺は正直言って逃げ出したいくらいなんだけど

「あ、あのさぁ、リボーンは、何か食べたいケーキってある?」

 何とかその空気を軽くしようと必死で、話題変更!
 でも、それを言うだけでも、かなり勇気がいりました。
 この二人が睨み合うと、本気で怖いんだって!!

「ケーキ?別に、ダメが作るなら、何でもいいぞ」

 勇気を振り絞って質問した俺に、リボーンが綱吉から視線を外して答えてくれる。
 でも、質問内容に対しては、なんていうか俺の欲しい言葉じゃないんですけど
 
 それは、俺を信用しているのかもしれないけど、一番困る答えです。

「何でもいいって……シフォンとか、ロールケーキとか言って貰えると……」
「何でもいいぞ」

 『楽なんだけど』と続けようとした言葉が遮られて、同じ言葉を返されてしまった。

 そりゃ、難しいのとか言われなくっていいかもしれないけど、考え付かないから質問したのにこれじゃ意味がない。

「う〜っ、なら、ツナは、何か食べたいのある?」
「……あいつを祝うのなら、何も食べたくない」

 仕方ないから、直ぐ傍にいるツナに質問すれば、不機嫌な声で返されてしまった。

 そりゃ、確かにリボーンがここに来て一年になるお祝いだって言ったけど、そんなに拒否しなくってもいいと思うんだけど

「祝う?何を祝うんだ?」

 だけど、ツナのその言葉にリボーンが反応して質問して来た。
 そう言えば、途中から話に加わったのだから、分かる訳ないよね。

「リボーンがここに来て一年になるから、お祝いにケーキでも作ろうかと思って」

 素直にリボーンの質問に答えれば、一瞬驚いたような表情をされてしまう。
 あれ?俺、何か変な事言ったっけ??

「……Grazie.」

 だけどそれは一瞬の事で、直ぐに俯いてその表情が帽子で隠されてしまう。
 それから、小さく言われた言葉が聞き取れなかったんだけど

「何?」
「何でもねぇぞ……なら、エスプレッソとモカケーキを注文してやる」

 聞き取れなかった言葉を聞き返せば、返されたのは注文の品。
 でも、何かを注文してもらった方が作り易いので、問題なし!

「了解!んじゃ、今から作れば、3時のお茶には十分間に合うかな?」

 注文貰ったから、速攻作る事に決める。
 本当、難しいのとか言われなくって良かった!!

 リボーンが何かを言った言葉はちょっと気になるけど、それを忘れて作業に取り掛かる。

「……素直じゃないよね」
「うるせーぞ」

 作業を始めた俺には、後ろでツナとリボーンがそんな会話をしていた事なんて気付きもしなかった。

 それからツナは、ずっと不機嫌だったけど、機嫌をとるために、今度はツナがリクエストしてくれたお菓子を作る事で何とか許してもらった。
 そんなにリボーンが来た事のお祝いするのが嫌だったんだろうか?
 
 まぁ、簡単にツナの機嫌が直ってくれたのは嬉しいけど……
 来週の休みの日も、お菓子作るのは確定しちゃった。
 別に、お菓子作るの嫌いじゃないからいいんだけどね。
 



 そんなこんなで、リボーンが来て一年。

 これからも波乱万丈な毎日が続くのだろう。
 ちょっとだけ、平穏が欲しいとそう思うのは贅沢な願いなんでしょうか??