カレンダーを前に考える。
今年も、君とオレが生まれた日がやってくる。
ねぇ、君に何をプレゼントすれば、オレの気持ちが君に伝わるんだろう。
君は何も欲しがらない。
でも、何をプレゼントしても喜んでくれるから、だからこそ毎年プレゼントに頭を悩ませてるって事、君はきっと知らないだろう。
への誕生日プレゼントを買って、満足して戻った家で待っていたのは、にんまりと嫌な笑みを浮かべているリボーンだった。
って、何でこいつに出迎えてもらわないといけないんだ?
「何?」
思わず不機嫌な声で質問すれば、またしてもニヤリと笑みを見せる。
それに思わず眉間に皺が寄るのは仕方ない事だろう。
「ダメへの誕生日プレゼントか?」
そして、自分の質問を無視して逆に質問された事に小さくため息をつく。
「お前には関係ないだろう」
「まぁ、そうだけどな。一応、お前にも教えておいてやろうと思って待っていたんだぞ」
ポケットに入れてあるへのプレゼントが見えないように隠しながら言えば、訳の分からない事を言うリボーンに思わず眉間に皺が寄るのが分かった。
一体何をオレに教えようと言うんだ?
「別に知りたくないんだけど」
疑問には思ったが、興味はなくって素直にそう言えばまた嫌な笑みを見せる。
「そうか?オレは一応伝えようとしたからな」
だが、予想に反してあっさりと引き下がって家の中へと入って行く。
その後姿を見送って、オレもリボーンに続くのは癪に障ったんだけど素直に家の中へと入った。
「お帰り、ツナ」
家の中に入った瞬間、今度はが笑顔で出迎えてくれる。
リボーンに出迎えてもらうのとは、天と地の差があるぐらい華やかなんだけど
「ただいま、。料理でもしてたの?」
そんな事を思いながら、エプロンをつけて出迎えてくれたに、不思議に思って問い掛ける。
まぁ、珍しい事じゃないんだけどね。
「うん、明日リボーンの誕生日だって言うから、モカケーキを作ってたんだ」
オレの問い掛けに返って来たのは笑顔なのに、とんでもない内容だった。
えっと、明日、リボーンの誕生日?
って、もしかしてさっき何か言いたそうだったのって、この事?
「明日、あいつの誕生日な訳?オレ達と、一日違い??」
「あれ?ツナも知らなかったんだ。俺も2日前に聞いてビックリしたんだよね。だから、慌ててお祝いの準備してたんだ」
信じられないというように口を開けば、ニコニコと笑顔でが説明してくれる。
いや、そんな内容を笑顔で聞きたくなかったんだけど
あいつの誕生日って事は、またとんでもない事が起きるんじゃ……
「ツナ?」
不思議そうにオレの事を見上げてくるに、思わずため息をつく。
きっと、に言っても分からないだろう。
ただ単純に、誕生日を祝おうとしているんだから……
明日の事を考えて、もう一度盛大なため息をついてしまったのは仕方ない事だろう。
予想通り、はちゃめちゃに終ったリボーンの誕生日。
オレ達の誕生日の事は獄寺以外は知らなかったらしく、かなり驚かれはしたけどリボーンの誕生日と一緒に祝われた。
いや、別に祝ってもらったのはどうでもいい。
知らなかったと言うのなら、そのまま知らないままでも問題はないと思う。
だって、オレはだけに祝ってもらいたいんだから……
「なんだか、良く分からない一日だったんだけど……」
「そうだね。でも、一緒に俺達の誕生日も祝ってもらったんだから、ちょっと嬉しかったかも……」
今日の事を振り返ってため息をつきながら言ったオレの言葉に、何処か照れたような笑みを浮かべ、それでも嬉しそうに言われたの言葉に複雑な表情をしてしまう。
祝ってもらった事がないって言うけど、本当なら、沢山の人に祝って貰う事だって出来るのに
ただ、誰もの誕生日を知らないから、祝って貰えないだけなのだ。
きっと知られたら、学校でもプレゼントを一杯渡されるだろう。
本人は知らないだろうけど、は学校のアイドル的存在なんだから
そんな事を考えながら、何とか当たり障りのない会話をと続ける。
ビアンキの所為で、散らかってしまった部屋をと一緒に片付けているからなんだけどね。
「そうだ!ちょっと早いけど、誕生日プレゼント!」
「ねぇ、。それは、明日、貰っちゃダメ?」
大分部屋の片付けが終りかけた時、思い出したというようにから言われた言葉にオレは思わず問い掛けるように言葉を返す。
だって、オレ達の生まれた日は、明日。
正確に言えば、後2時間後。
「ダ、ダメじゃない!!うん、そうだよね。だって、俺達が生まれたのは、今日じゃなくって明日なんだもん。ちゃんとその日にお祝いしなくっちゃだよね」
「有難う、」
申し訳なく言ったオレの言葉に、がブンブンと激しく首を振って返してくる。
そんなが可愛くって、オレの気持ちを間違う事無く受け取ってくれた事が嬉しくって、思わず礼の言葉を返した。
「もう大分片付いたから、は休んでもいいよ。階段は下ろしてあげるから」
お礼を返したオレに、が不思議そうに首を傾げるけど、それに気付かないフリをして更に声を掛ける。
が手伝ってくれたお陰で、何とか見られるようになった部屋を見て、小さくため息をついた。
本当に、あいつが関わると碌な事がないよな。
「ああ、うん……ねぇ、ツナ久し振りに一緒にお風呂に入らない?」
「はぁ?」
もっとも、壊された物に関してはしっかりと弁償してもらうように交渉済みだ。
何処から金が出されるのか知らないが、人の部屋を壊したんだから当然だろう。
そんな事を考えていたから、一瞬が何を言ったのか理解するのに時間が掛かってしまった。
えっと、一緒にお風呂に入るって……
すっごく嬉しいんだけど、でもどうして急にそんな事……
「えっと、い、今のは、その……」
「別にいいんだけど、珍しいね、がそんな事言うなんて」
驚いてを見た瞬間、少しだけ顔を赤くしたが慌てて何かを言おうと口を開いたのを遮って返事を返す。
きっと、の事だから冗談で済ませようとしたんだと分かっていたから、先に先手を打った。
折角のの申し出を断るなんて、そんな勿体無い事をオレがする訳ないでしょう。
「えっと、なんて言うか、久し振りに一緒に入りたいなぁなんて思って……」
ニッコリと笑顔で返したオレに、が顔を赤くしながら必死に言い訳のように口にした言葉に、思わず口元を手で隠してしまった。
何でそんなに可愛い顔して言うの、この子は?!
頬を赤く染めて、俯きながら言われた言葉に、自分の顔が赤くなるのが分かる。
「それじゃ、着替え準備するから、はそこで待てて」
「あっ、うん」
しかも、嬉しい事を言われて顔がにやけそうになるのを着替えを取りに行くという事で誤魔化してに背を向けた。
ああ、戻る時までに元に戻らないと、に変な顔見せられないし……
引き出しから着替えを取り出して、必死に平常心を取り戻してから待たせているを振り返れば、何か決意を新たにしている姿が
「お待たせ。って、どうしたの、?」
決意したと思ったら、落ち込んだように力を抜いたの行動に不思議に思って声を掛ければ、ビクッと大きく肩が震える。
「ううん、なんでもない!」
それから、オレの質問に返すように大きく首を振って返してきた。
その表情にはこれ以上聞いて欲しくないって言うのがアリアリと浮かんでいたので、訝しげには思ったけど、それ以上聞く事はしない。
まぁ、悪い事を考えているって言う表情じゃないから、聞かなかっただけだけど
「それじゃ、下に行こうか」
「うん、お願いします」
だからすんなりと話題を変えるように声を掛ければ、コクリと頷いて素直にお願いされた。
これは、凄い進歩なんだけど
だって最近は、素直にオレに階段の上り下りを任せているんだから
漸くも諦めたんだって嬉しくなるよね。
「?」
下まで降りれば、何時もは直ぐに下ろして欲しいって言うが、今日は何も言わずにオレに抱き付いたままで何かを考えているのに、不思議に思って名前を呼ぶ。
オレにとっては嬉しいんだけど
「ご、ごめん」
名前を呼べば、我に返ったが慌ててオレに抱き付いていた手を離す。
それが、ちょっとだけ残念なんだけど
「別に謝る事はないんだけど、それにしてもサービスがいいね」
「へ?」
慌てて謝罪してくるに、思わず笑いながら本心がポロリと零れてしまう。
だって、こんな事ってあんまりない事だから
明日が誕生日だって言うから、これがからの嬉しいプレゼントという事だろうか?
「これで一緒に寝ようって言ってくれれば、すっごく嬉しいんだけど」
「……そ、そんな事で、嬉しいの、ツナ?」
だから、もう一つ贅沢を言えば、恐る恐ると言ったようにがオレを見上げてくる。
それから続けて言われたその質問に、オレはちょっとだけ驚いてを見てしまった。
だって、はオレが喜ぶと思ってしてくれてたんじゃないんだろうか??
「嬉しいよ。オレはと一緒に居られる事が一番嬉しいから」
「ツナ……本当は、一緒に寝るって言うのも言うつもりだったんだけど、今言ってもいい?」
「勿論。ほら、は着替え取ってこないと行けないでしょ?早く取ってきなよ」
「うん!ツナは、先に入ってて!」
「分かったから!早くって言っても、走っちゃダメだよ!」
だからこそ、何も分かっていないに素直に言葉にして伝える。
だって、口にしなければ、君には伝わらない事をオレが一番良く知っているから
そう返せば、がおずおずと言うように質問してきた事に、ニッコリと笑顔で返事を返して、兎に角まずはに着替えを取ってくるように促す。
そうすればパッと笑顔を見せて、が自分の部屋へと歩き出した。
それを確認して慌てて注意すれば、から返事が帰ってくるけど、本当に分かってるのか怪しんだけど……
そんなを見送ってから、それでも嬉しくて顔が笑顔を作ってしまうのは止められなかった。
ねぇ、本当に嬉しかったんだ。
だって、君から誘ってくれた事は、オレが望んでいた事だからこそ
が来る前に、脱衣所で服を脱ぎ先にお風呂に入る事にする。
まぁ、もそんなに時間も掛からず来るだろうと思っていたんだけど、湯船で体を少し温めて体を洗い始めてから漸くの気配を感じたんだけど、中々入って来ない。
「?」
中に入って来ないに不思議に思って、その名前を呼ぶ。
それに良く分からない返事が帰ってきて数分して、ガラリと扉を開いてが入ってきた。
「お、遅くなってごめん……って、もう体洗ってたんだ!」
「えっ?うん、オレはそんなに長風呂じゃないからね」
中に入ってきたは、もう体を洗っているオレに驚いたのか謝罪した瞬間驚きの声を上げる。
それにちょっとだけ驚いたけど、オレはと違ってそんなに長風呂じゃないから、普通だと思うんだけど
「ツ、ツナ!背中洗ってあげる!」
「それはダメ。はまずお風呂に入って体を温めなきゃだよ」
素直に返事を返したオレに、何を思ったのかがとんでもない事を口にしてくれた。
それにあっさりと却下を出して、早く湯船に入る事を進める。
って言うか、に体を洗われたりなんかしたら、理性を保つ自信なんてないからね!!
「逆にオレがの体を洗ってあげるよ」
でも、しっかりと役得だけは逃さない。
だって、遠慮なくの体に触れるなんて、こんな事でもなければ次は何時あるから分からないから
「な、なら!俺が、ツナの髪を洗ってもいい?」
「いいよ、でも先にお風呂に入るようにね」
オレの言葉に交換条件とばかりにが申し出てきたそれに、今度は素直に頷いて返す。
まぁ、頭を洗ってもらうぐらいは大丈夫かな?
そう考えて、いまだにそこに立っているに早く湯船に入るように促す。
湯船に使った瞬間、が幸せそうな表情を見せたのに、思わず笑ってしまう。
本当に、お風呂とか入るのが好きだよね、は
「本当、は幸せそうにお風呂入るのは、昔から変わってないよね」
湯船の中でほんわかしているに、思わず笑いながら言えば意味が分からないというように不思議そうに首を傾げてオレの事を見詰めてくる。
「昔って、2年ぐらい前までは良く一緒に入ってたと思うんだけど……」
「そっ、だから昔」
それから考えるように言われたそれに、オレはもう一度笑いながら返事を返した。
2年前までは当然のように一緒に入っていたけど、今ではそれもなくって、だから懐かしいと思えるのだ。
そんなにも幸せそうなの顔が見られた事が
「それはそれで、複雑なんだけど……」
「大丈夫、大丈夫」
オレの言葉をどう捉えたのか、が複雑そうに呟いたそれに、ただ笑顔で返事を返す。
まぁ、きっとには説明しても分からないだろうね。
複雑な表情をしながら、じーっと体を洗っているオレの事を見詰めてくるの視線を感じて思わず苦笑をこぼしてしまうのを止められない。
何を考えているのかは大体分かるけど、そんなに見られると流石に理性が持たないんだけど
「、じーっと見てくれるのは嬉しいんだけど、さすがに理性……恥ずかしいんだけど」
見つめてくる視線に思わず素直に口にしようとしたその言葉を慌てて言い直して伝える。
いや、本気で恥ずかしいって言うのもあるけど、そう言う意味でが見てるんじゃないって言うのは分かっていても、期待しちゃいそうだから
「ご、ごめん……でも、ツナってすっごく鍛えられてたんだね。実は着やせするタイプ?」
オレの言葉に、素直にが謝罪の言葉を口にして、そして意外だと言うように言われた言葉にもう一度苦笑してしまう。
まぁ、期待なんてしてなかったんだけどね。
「着痩せするかどうか分からないけど、最近はリボーンの所為でますます鍛えられてるのは否定できないかもね」
の質問に、思わず盛大なため息をつきながら言葉を返す。
昔よりも、鍛えられているのは嘘じゃない。
まぁ、迷惑以外の何者でもないんだけど
「ツナ、修行してたんだな、俺、知らなかった」
「当たり前だよ。に情けない姿だけは見せたくないからね」
オレのそれに、が意外だと言うように呟いたのに、きっぱりと言葉を返す。
誰が、に情けない姿なんて見せるもんか!
「情けないって、俺はそんな風には思わないけど……」
そりゃ、確かには情けないなんて思わないかもしれないけど、オレが見せたくないのだ。
だって、にはオレの事をかっこ良く思っていてもらいたいから
「ほら、次はの番だよ。そろそろ出ないと逆上せちゃうからね」
「あっ、うん」
ポツリと呟かれたのそれを聞かなかった事にして、今度は湯船から出る事を促す。
オレの言葉にが頷いて素直に立ち上がった瞬間、オレは慌てて顔をから背けた。
「……、せめてタオルで前を隠すとかした方がいいと思うんだけど」
入る時にはしっかりと巻かれていたタオルが今は外されていて、のそれがしっかりと目に飛び込んで来たのだ。
って、には何で恥じらいってもんがない訳!!
「兄弟だから別にいいかなぁって……ごめん。うん、ちゃんと隠したから!」
オレの注意に、が慌てて謝罪してきて言われたそれに、ホッとして視線を元に戻す。
ああ、本気で理性持たないかと思ったんだけど……
まさか、の全裸がまた見られるなんて、流石に想像もしてなかったから、ショックは予想以上のものだった。
「ツナ、もしかして逆上せちゃったのか?」
余りにも突然の事だったから、顔が赤くなってしまったそれを隠す事が出来なかったらしく、心配そうにが質問してくる事に慌てて言葉を返す。
「大丈夫だよ!ほら、の頭も体も洗ってあげるからここに座って!」
心配そうに質問してきたに、言葉を返せば不思議そうな表情で返された。
そうだろう、体を洗う事は話てたけど、頭を洗うって事は言ってなかったんだから
もっとも、オレは元からそのつもりだったんだけどね。
「ツ、ツナ?」
「ほら、早くしないとオレの体も冷えちゃうよ」
「あっ、そうだよね、ごめん」
何か理不尽だと言うようにオレの名前を呼ぶに、促すように言えば慌てて謝罪の言葉が返されて素直に言う通りオレの前に座る。
本当、って素直だよね。
オレだったら、そんなこと言われても謝るどころか可笑しな所を突っ込んじゃうのに
素直にオレの前に座ったに、そんな事を思いながら体と頭を洗ってあげる。
勿論、体は背中だけだからね!
そりゃ、前も洗いたいけど、流石にそれはが許してくれないだろうから……
の体と頭を洗ってあげた代わりと言うように、に頭を洗って貰ってもう一度湯船で体を温めてから風呂を出る。
うん、オレにしてはちょっと長風呂だったかもしれない。
「、髪乾かすから、そこに座ってくれる」
二人揃っての部屋に入り、タオルで髪を拭いているへと声を掛けた。
勿論座るように言っているそれは、の勉強机に付いている椅子。
「ツナの髪は俺がするから!」
「はい、はい」
ドライヤーを片手に言ったオレのそれに、しっかりとが主張してくるのに返事を返してのサラサラの髪を手で梳きながら乾かしていく。
暫くは、オレが手に持っているドライヤーの音しか聞こえないけど、この沈黙は嫌いじゃない。
の髪を乾かして終ったら、速攻で場所が交代されて、今度はがオレの髪を乾かし始める。
そして、やっぱりドライヤーの音だけが暫くその場に流れた。
「もう直ぐ、オレ達の誕生日だね」
お互いの髪を乾かし終われば、もう直ぐ日付が変わる時間。
チラリと見た時計の針に、ぽつりと言えばの視線も時計へと向けられる。
二人でじっと時計を見詰めて、その秒針が12時を指し示した瞬間、示し合わせていたようにお互いの顔を見合わせた。
「誕生日おめでとう、ツナ」
「誕生日おめでとう、」
そして、同時にお祝いの言葉を口にする。
オレとが生まれた日。
「それじゃ、もう寝ないと今日も普通に学校だからね」
「うん、プレゼントは朝に渡すね」
二人で同時にお祝いの言葉を口にし合って、ちょっとだけ照れ臭くって思わず笑い合ってから、勿体無いけど現実面を口にした。
今日も、普通に学校だからこのまま起きているのは、オレは大丈夫だけどにとってあんまり良くないからね。
オレの言葉にが素直に頷いて、続けて言われたそれにオレも頷く。
「そうだね、オレも朝に渡すよ」
今すぐに渡しても良かったけど、今はもう少しだけ今日と言う特別な日を味わっていたいから
オレの言葉にがニッコリと笑顔を返してくれるのが嬉しくって、そのままをベッドへと押し倒す。
「ツナ?」
突然のオレの行動に驚いたのか、名前を呼ぶをただギュッと抱き締めた。
何時までこうしていられるんだろうかって、そう思ったらを手放したくなくなったのだ。
「何でもないよ、お休み、」
には小さく返事を返して、ただ抱き締めたまま挨拶の言葉を返す。
そして、ポンポンとあやすように背中を撫でた。
自分の腕の中にある、確かな温もりを確かめるように
「?」
そうすれば、聞こえてくるのは安心したようなの寝息。
本当に、オレには無防備だよね。
「……相変わらず、寝ちゃうの早い……ねぇ、本当はお風呂に入るのも、こうやって一緒に寝るのも、ドキドキしてるって、は知らないんだよね」
それが嬉しくもあり、残酷だという事をはきっと知らないだろう。
こうやって抱き締めるだけで、幸せになれるのに、でも本当は、君の全てが欲しいと思っているなんて、知って欲しいけど、知られたくない。
「本当は、このままを自分のモノにしてしまいたいんだ……誰にも、を渡したくない」
矛盾した気持ちを抱えながらも、でもこれだけはハッキリしたオレの想い。
それを伝えるように、ギュッと強く抱き締める。
「好きだよ……ううん、愛してる。ずっと、だけを……」
君にはきっと、一生面と向かっては言えない言葉。
でも、今だけは、この時だけは伝えても許されるよね。
もしも、この声が夢の中でもいいから聞こえたなら、少しだけでもオレの気持ちに答えて欲しいと思うのは、贅沢な事だろうか?
−おまけ−
「改めて、誕生日おめでとう!これ、俺から綱吉への誕生日プレゼント」
「有難う、。それじゃ、オレからも、誕生日おめでとう、。これがオレからのプレゼントだよ」
何時ものようにを起こして、まずは朝の挨拶。
そして、何時もと違うのは、今日と言う日を祝う特別な言葉と渡されたのは、小さなプレゼント。
「有難う、開けてもいい?」
「勿論、オレも開けてもいいかな?」
「うん!」
毎年同じような遣り取りをしてるように思うけど、ついつい同じ事を今年もして元気よく返事を返してくれたの言葉に貰ったプレゼントの包装を剥がしていく。
そして中から出てきたのは、何処かで見たような箱。
「何か、オレが渡したヤツと同じ箱だね」
なんだか見た事のある箱に、思わず笑いながらその箱を取り出して中を確認する。
「クローバーのストラップ?」
そして中に入っていたそれを見て、正直かなり驚いてしまった。
だって、オレが渡した物も……
「芸がなくってごめん、他に思い付かなくって……」
「いいよ、オレ達、本当に似たもの同士だよね」
驚いたように呟いた俺の言葉に、が謝罪してくるのに、オレは思わず笑ってしまった。
どうして、こう言う所では似ているんだろうね、オレ達。
「開けてみれば分かるよ」
笑いながら言ったオレの言葉の意味が分からないというように見詰めてくるに、箱を開ける事を促す。
オレに言われてが箱を開ければ、中に入っているはクローバーのストラップ。
ねぇ、知っているのかな?
四葉のクローバーの意味。
真実の愛……だから、オレは君にそれを贈ったんだよ。
「オレも、に幸せになってもらいたくって、それを選んだんだけど」
きっとは、そこまで考えてはいなかったと思うけど、でも貰ったそれが嬉しくって、笑みを浮かべてしまう。
「有難う、大切にするね」
「うん、オレも大切にするよ」
本当の思いは隠して、言えば嬉しそうにからのお礼の言葉。
オレもそれに笑顔を返して、大切にすると返す。
今日は、オレ達が生まれた日。
本当は、プレゼントに思いを込めたけど、きっと君は気付かないだろう。
でも、君からも同じモノをもらえた。
それだけで、良しとしよう。
深い意味がないって事は、良く分かってるんだけどね。
その日から、お互いの携帯にはクローバーのストラップが付けられた。