クリスマス。
 イエス・キリストの聖誕祭。

 でもね、そんな事関係ない。
 だって、キリスト教徒でもない俺にとって結局はお祭り行事の一つ。

 だからね、俺は俺なりにお祭りの準備をしなくっちゃって思ったんだ。



、何してるの?」
「うん、本読んでる」

 リビングで本を読んでいる俺に声を掛けてきたのは、双子の兄である綱吉。
 俺はそれに簡潔に返事を返して、じっと手元の本を真剣に見詰める。

「……本って、オレには絵本に見えるんだけど……」
「絵本も立派な本だから!」

 簡潔に返事をした俺に、ツナが訝しげに口を開いたそれに、きっぱりと返事を返した。
 だって、絵本だってれっきとした本だもん!

「た、確かにそうかもしれないけど……そんなに真剣に読むような……」
「読むような事なの!大事なんだからな!」
「……大事って、クリスマスまでの12日が?」

 きっぱりと返した俺にツナが更に言い辛そうに突っ込んできた事に、もう一度きっぱりと返せば、持っていたその本の題名をツナが口にする。

 そう、俺が持っている本は『クリスマスまでの12日』。

 中身を見ると、12日も必要ないように思うんだけど
 でも!ほら何となくその通りにしてみたいって思うよね?

「今日からクリスマスに向けて準備してみようかと思って……流石にこの本の通りには出来ないけどね」
「えっと、それはクリスマスをその絵本のようにしたいって事?」
「うん!だって、12日間で一日づつクリスマスの準備をするって楽しそうだから!」

 ニコニコと笑顔を見せながら言った言葉に、ツナが複雑な表情を見せる。
 俺、そんなに変なこと言ったっけ??

「……で、手始めに何をするの?」
「うんと、本では一日目はカード作り!今から作ろうと思ってたんだけど、ツナも一緒に作る?」

 ツナの質問に準備していた材料をテーブルの上に並べながら質問すれば、苦笑を零されてしまいました。

「いや、オレはいいよ。隣で見てるのはいい?」
「うん、良いよ」

 返されたのは否定の言葉だけど、続けて言われたそれに素直に頷いて返す。

 で、作業を始めた俺の隣でツナがじっと見てくるんだけど……

 本の説明にあるように、可愛い感じのクリスマスカードを作る。

 えっと、渡す相手は、ツナと母さん。リボーンにビアンキさん、山本に獄寺くん、京子ちゃんとハルちゃんにランボくんに京子ちゃんのお兄さん。後は、恭弥さん!
 11人分のクリスカードを作って、うん、満足!

 ツナは隣で見ていたから、渡した時の楽しみが減っちゃったかもしれないけど……

「別に良いよ、が作ってるの見れて楽しかったし」

 そう思ってツナに言えば、ニコニコと楽しそうな笑顔を返された。
 まぁ、見せたくないなら自室で作ればよかったんだけど、ここにで作業をしてしまった自分を恨むしかないよね。

 ツナは気にしないって言ってくれたんだけど……

 作ったカードは、部屋に置いて置く事にしよう。
 クリスマスのプレゼントに添えて渡すと可愛いよね。



 2日目は、本当はお休みって書いてあったんだけど、順番を考えてフルーツのラム酒づけを作る事にした。
 だって、3日以上置いた方が良いって書いてあったから、先に作っておく事にする。

 材料は簡単!
 レーズン、オレンジピール、ドレンチェリー、最後にラム酒。

 まずは下準備!レーズンはさっと洗って、水に5分くらい浸しておく。
 オレンジピーるは荒いみじん切り、ドレンチェリーは半分に切る。
 レーズンの水気を切り、小なべに入れてカラいりしてから、ラム酒を少し入れて少しだけいり煮。
 ビンに全部の材料を入れて出来上がり!時々上下をひっくり返して、使用するなら3日以上置く事!

「うん、2日目も順調!!」
「あら?ちゃん、何か作ってるの?」

 キッチンで満足気に頷いていれば、後ろから声を掛けられて振り返る。
 声の主は母さんで、俺は素直にこれからの予定の事を説明した。

「楽しそうね、母さんも手伝うわよ」
「ううん、大丈夫だよ。それよりも、クリスマスぐらいゆっくりして欲しいから」

 料理を作るのが大好きだって知ってるけど、毎日俺達においしいご飯を食ってくれているんだから、一日ぐらいじゃあんまり変わらないかもしれないけど、ゆっくりと休んでもらいたい。

ちゃんって、本当にいい子よね。有難う、その言葉に甘えるわね」

 少しだけテレながら言った俺の言葉に、母さんがガバリと俺に抱き付いてくる。
 感動したというように言われたその言葉に、俺は思わず苦笑をこぼしてしまった。

 と言う訳で、俺のクリスマス計画は後には引けなくなってしまいました。
 うん、やめるつもりないから、いいんだけどね。



 3日目は、テーブルクロスとナプキンに模様を作成!

 まずは無地のテーブルクロスの準備。
 カラーは白。それに、緑と赤でヒイラギの模様を飾り付けしていく。
 作業自体は本当に単純だけど、これが布が大きいから結構大変だった。

 それが終った後に、家の人数分のナプキンも準備。
 カラーは水色と白にしてみたんだけど、母さんには大好評だったので、エプロンも作ってみました。

 とっても喜んでもらえた。うん、頑張った甲斐があります。



 4日目は、松ぼっくりでミニツリー作成。

 なんだけど、松の木が近くになくって本当に困った。
 学校の帰りにどうしようかと思ってこの辺で松がある所を聞いたら、海の近くって事で並盛海岸に行く事に

 学校終ってそのまま並盛駅へと直行!

 並盛海岸に着いてから思い出したけど、俺誰にも何も言ってなかったなぁなんて思いながら、形のいい松ぼっくりを探す。
 えっと、確かキャンドルたてやオーナメント、更にラッピングにも使えるみたいだから袋一杯は必要かな?
 余ったら他にも何かに使えるかもしれないけど、足りないのは困るよね。
 そう思いながら松林を探して綺麗なモノを見付けては手持ちの袋に入れていく。袋が一杯になった時には、夕日が沈みかけていました。

 あう、こんなに時間掛かると思ってなかったから、連絡入れてなかったんだけど……それに、流石に寒くなってきた。
 寒くなると、古傷が痛む訳で……

「早く帰らないと、ツナに怒られるかな?」

 ポツリと呟いた瞬間、着信を告げる携帯の音。
 その音に、びっくりしてビクッと体が大きく震えてしまった。
 だって、本当にビックリしたんだもん!

 携帯を取り出して相手を確認すれば、予想通りの相手で……

「で、出たくないかも……」

 でも、出ない訳にはいかないと、意を決して電話に出る。

「もしもし?」
!今何処に居るの?!!』

 出た瞬間、聞こえて来たのは何か前にも聞いた事があるような台詞なんですが……

「えっと、ここは並盛海岸です」
『なんでそんな所に居るの?!』

 何でって聞かれても……

「えっと、松ぼっくりを探しに……」

 そう答えるしかありませんので、素直にそう言うと、沈黙。

「……ツナ?」
『それならどうしてオレに言わなかったの?!』

 不安になって名前を呼べば、大きな声で返事が返ってきた。
 も、もしかして、その理由を考えてたから沈黙だったんだろうか?

「えっと、思い付いたのが放課後だったから……」

 声を掛けるタイミングを逃してしまいました。
 と続ければ、あきれたような盛大なため息。
 そこって、呆れるところなんでしょうか??

「ツナ?」
『もう良いから早く帰って来る事!今日寒いけど、足大丈夫?』

 心配になって問い掛けるように呼べば、逆に心配そうに質問された。

「うん、大丈夫」

 ちょっと痛いけど、そんなに大した事ないから、大丈夫。
 素直に頷いて返せば、またしてもため息をつかれてしまった。

 まぁ、その後は急いで帰りましたとも!

 帰った俺に待っていたのは、ツナの説教と暖かいお風呂。
 どうやら、バレバレだったみたいで、速攻でお風呂に連行されて、お風呂に入りながら説教されてた俺って……

 何とか許してもらって、しっかりと松ぼっくりでミニツリーを作りました。



 5日目は中休みって事で、パンケーキとレモネードを作って皆で食べた。

 クリスマスソングを聴きながらのお茶会は、ちょっとホッとできる時間で安らぐ事が出来ましたよ。                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                              



 6日目は、キャンドル作り。

 胡桃の殻に入れたろうそくに、準備しておいた松ぼっくりのキャンドル立て、真っ赤に色付けした蝋燭で、うん、結構一杯出来たよな。



 7日目は、リース作り。

 針金ハンガーが役に立った。
 力作業な所もあったけど、これも何とか無事に出来上がり!

 そうそう、今更なんだけど、こうして毎日一つづつ作ってるクリスマスグッズは、一つ一つとリビングを飾っていってます。
 一日一日と、クリスマスの色が濃くなって行くのは、気持ちをわくわくさせてくれる。



 8日目は、クリスマスで食べる料理の下ごしらえ。

 この日作ったのは、日持ちのするパウンドケーキとライト・ピクルス。
 この時に、2日目に作ったフルーツのラム酒づけが登場!
 たっぷりとパウンドケーキに入れれば、ちょっと大人の味覚のパウンドケーキの出来上がり!

 焼きあがるまでにピクルスを作れば、今日の準備は終了!

「今日は、何作ったの?」

 最近の日課としては、作業が終ったらお茶をする事。
 タイミングよく準備が終った瞬間に後ろから声を掛けられて、振り返る。

「今日は、パウンドケーキとピクルス。ちょうど良かった!作業終了したから、ツナもお茶飲む?」
「うん、貰おうかな」

 俺の質問に笑顔で返事を返してきたツナに笑い返して、お茶の準備。
 でも、寝る前にカフェイン取るのはどうかと思うので、最近俺のお気に入りであるゆず茶を入れる。
 ビタミンCたっぷりで、ツナにはちょっと甘いかもしれないけど、甘酸っぱくって美味しいんだよね。

「有難う。えっと、今日で何日目だっけ?」
「今日で8日目!」

 カップを渡せば、ツナが質問してくるそれに元気良く返す。

 今日で8日目だから、後3日。

 うん、順調、順調。

 学校もあるけど、ちゃんと毎日何か一つ作業をしてる。
 まぁ、お休みなんかもあるから、どうかとは思うけど、ちゃんと本と同じって訳には行かないけど、準備としては順調だよね。

「あんまり無理だけはしないでよ」
「うん、分かってる。お休み、ツナ」

 ツナに挨拶して、その日は終了。



 9日目は、ジンジャークッキーを作る。

 これって、ジンジャーって言うんだから、生姜入りって事なんだよね?
 深く考えた事ないんだけど、すっごく健康の事も考えてたんだね、クリスマスって奥が深い。

 風邪ひかないような工夫って事なのかな??
 昔の人の知恵って凄いよね、本当。



 10日目は、プレゼントの準備。

 本当はクリスマスカード配って、お客様にパーティーに来てもらうのが本当なんだろうけど、俺はプレゼントにカードを添える事にしてみた。
 大した物は準備できなかったけど、俺なんかと友達になってくれた皆に何かをプレゼントしたかったから……

 ツナには最新の医療書。
 うん、何でクリスマスにって思うかもしれないけど、これしか思い付かなかったから……
 でも、医療書って高いんだね。本気でビックリしたんだけど……

 母さんには、お料理セット。フライパンに、おなべ大中小のセットを
 最近、結構くたびれてきたって嘆いていたから、ちょうど良いかなぁって思って

 リボーンには、エスプレッソマシン。
 多分使うのは俺になるような気がするんだけど、コーヒーでも特にエスプレッソが好きだって言ってたから、家でも簡単に作れるように準備してみました。

 ランボくんには、アメの詰め合わせを

 ビアンキさん、京子ちゃん、ハルちゃんにはハンカチとマフラーのセット。
 ごめん、ありふれた物しか浮かばなくって、これが妥当だったんだよ!

 獄寺くんには、シルバーアクセ。好みは自信ないけど、うん、獄寺くんに似合いそうなカッコいいペンダント見つけたから。

 山本には、何にしようか迷って迷って、包丁を一つ。
 いや、意味はなかったんだけど、そのお父さんの後を継いで寿司職人を目指してるって言ってたから、いいかなぁと思って……
 うん、クリスマスには向かないプレゼントだってちゃんと分かってます。
 でもね、本当に何も浮かばなかったんだもん。
 包丁だって、そんなに高いモノは買えなかったから、安物でこんなの職人さんが使うようなものじゃないって分かってるけど、練習用にはいいかなぁって

 京子ちゃんのお兄さんには、スポーツマンって事で、タオルを準備してみました。
 いや、安いって言わないで
 だって、他に思い付かなかったんだもん。

 最後に恭弥さんに準備をしたのは……
 何をやれば良いのか分からなかったので、紅茶のセットにしてみました。
 紅茶のセットって言っても、茶葉セットだからね!
 茶器は本当に良いのしかもってないから、俺が好きな紅茶の葉をプレゼントする事にしました。
 うん、恭弥さん、紅茶好きみたいだからな、いいかなぁって

 以上が、今日の準備したモノになります。

 それを綺麗にラッピングして、一つづつに名前を書いたクリスマスカードを添える。
 結構大変な作業だったけど、皆がどんな顔して受け取ってくれるかを考えるとすっごく楽しかった。



 11日目は、クリスマスツリーを飾りつけ。

 もみの木は、毎年使っているクリスマスツリーを使って、飾り付けは市販のモノを使ったんじゃ面白くないので、本にあるように簡単シンプルな飾り付けを
 手作りのハート型のオーナメントの中にアメを入れて、飾る。
 後は、松ぼっくりのオーナメントにジンジャークッキーを飾り、綿の雪をかざって、天辺に星を付ければ準備OK。

「へぇ、シンプルな飾りだね」
「でしょ、でも何となく味のあるクリスマスツリーの完成!」

 でも、入れてるアメは何時まで持つかな?
 クリスマスまであればいいんだけど……ランボくんが喜んで食べちゃいそうだよね。

「でも、ちょっと物足りないかしら?ちゃん、これも付けてみたら?」

 そんな事を考えていた俺に、母さんが声を掛けてくる。
 そして渡されたのは、真っ赤な一本のリボン。

 確かに、母さんの言うように物足りないかなぁとは思ってたんだけど、その渡されたリボンを付けたら、可愛くまとまりました。
 うん、本当に可愛くなっちゃったよ。

「明日は、クリスマス本番ね。ちゃんは何を作ってくれるのかしら?」

 出来上がったツリーを満足気に見ていれば、母さんが楽しそうに質問してきた。

 そう、明日で12日になる。
 つまりは、クリスマス本番だ。

「それは、お楽しみに!頑張って、準備するから楽しみにしててね」

 ニッコリと笑って言えば、母さんが楽しそうに笑ってくれた。
 うん、頑張って皆に喜んでもらえるようなモノを作るからね!



 最後の12日目は、朝から大変だった。

 だって、皆で食べられるようにクリスマスの準備をしなきゃいけないから……

 母さんには手伝わなくっても良いなんて言ったくせに、流石に一人で準備できないと悟った俺は、結局手伝ってもらう事にしたんだけど
 母さんは、笑いながらも快く手伝いをしてくれる事になりました。

 準備する料理は、ミートローフにフルーツポンチ。ブッシュドノエルにスティックサラダと三色ディップ。
 でも、これだけじゃきっと足りないだろうと、母さんが特別にサンドイッチにから揚げ、ポテトサラダまで作ってくれた。

 さぁ、これで準備は万端!
 クリスマスパーティの始まり。


「メリークリスマス!」

 終業式の日に声を掛けたら、皆直ぐに返事を返してくれて、全員参加してくれた。

「これ全部、が準備したんだよな、すごいのな」

 料理に関しては、母さんにも手伝ってもらったけど、準備は殆ど一人でやったので、褒められるのはちょっと照れ臭いけど嬉しい。

「ツリーの飾りつけは、ツナも手伝ってくれたし、料理に関しては母さんが手伝ってくれたから……」

 なんだかんだ言っても、一人でなんて無理で準備をするのには結構手伝ってもらった。
 だけど、こうして皆で楽しい時間を過ごせるのなら、こう言うのもいいなぁって思える。

くん、お誘い有難う」
「ハルも、呼んで貰えって嬉しいです!」

「そう言ってもらえると、準備した甲斐があるかも……こちらこそ、来てくれて有難うね」

 可愛い格好でパーティに来てくれたハルちゃんと京子ちゃんの言葉に、嬉しくって笑顔を返せば更に笑顔を返してくれる。

 後は、獄寺くんが何か良く分からない事を言ってたんだけど、一応褒めてくれたって事なんだよね、きっと……
 京子ちゃんのお兄さんは、相変わらず熱い人だったし、リボーンもビアンキさんも楽しんでくれてるようだった。

 そして、やっぱりオーナメントに飾っていたアメは、すっかり無くなっていたんだけど……
 まぁ、帰る時に皆に配ろうと思ってただけだから、別にいいんだけどね。
 渡すのは、ジンジャークッキーだけになっちゃったな。

 うん、ランボくんに食べるなって言っても無駄だって事は分かってたんだけどね。

「やっぱり、恭弥さんは来ないのかな?」

 だけど、一応声は掛けたんだけど、一人だけ今ここに居ない人が居る。
 『気が向いたら』何て言ってたけど、あの恭弥さんが明らかに群れているこの中に来る事なんてまず無理な話だよね。

?どうしたの?」

 はーっと、ため息をついた瞬間、心配そうな声に名前を呼ばれて顔を上げる。

「な、何でもない……あっ!」
?」
「ごめん、ちょっと外に出てくるね」

 慌てて首を振って返した瞬間、窓の外にその姿を見つけて、俺は一つのプレゼントを手に持って慌てて部屋を飛び出した。
 後ろから聞こえてくるツナの声を聞きながら

「恭弥さん!」
「やぁ、気が向いたから来て上げたよ。でも、まさかボクにあの中に入れだなんて言わないでよね、問答無用で咬み殺すよ」
「いえ、言うつもりはありませんから……でも、来てくれて有難うございます」

 帰ろうとするように踵を返したその後姿に呼びかければ、笑顔を見せてくれるけど、言われている内容は物騒です。
 それに慌てて首を振って返し、それでも今ここに来てくれたことに素直にお礼の言葉を口にする。

「それからこれは、大したものじゃないんですけど、俺からのクリスマスプレゼントとジンジャークッキーです」
「ふーん。ボクからのプレゼントは、あそこに置いてあるから、勝手にもって行っていいよ」
「えっ?」

 それから慌てて自分が持ってきたそれを恭弥さんへと差し出せば、興味なさそうな声で受け取ってから、後ろを指差された。
 言われたように振り替えれば、玄関に置かれているモノがある。

「あ、有難うございます!」
「気が向いたって言ったはずだよ。それに、君には楽しい思いをさせてもらったお礼。それじゃね」

 もう一度お礼を言って頭を上げれば、もう一度同じ事が言われて、そのまま踵を返すと手を上げて歩いて行く。

、何時までそこに居るつもり?そんな格好でそんな所に居ると風邪ひくよ」

 恭弥さんの後姿を見送っていれば、不機嫌そうな声が聞こえてくる。

「ツナ?」
「……本当、気に入らないんだけど……」
「何が?」

 何で不機嫌なのか分からなくって名前を呼べば、ボソリと聞こえて来たそれに、更に意味が分からないで聞き返せば、盛大なため息をつかれてしまった。
 えっ?!俺、そんなに変な質問したんだろうか??

「何でもないよ。主催者がこんな所に何時までも居る事ないでしょ、ほら、中に入って」
「あっ、うん。そうだよね」

 ああ、そう言えば、今日の主催者って俺だった。
 勝手に皆楽しんでくれてるけど、何時までも部屋を抜け出して置く訳にも行かないよね。

「……気に入らないよね……」

 慌てて部屋に戻ろうとした時に、恭弥さんが残していったそれを手に持って中に入った俺に、ポツリとツナが同じ言葉を口にしていたなんで全く気付かなかった。
 なんで、そんなに不機嫌なんだろう、ツナ??
 
 それから、お開きになるまで結構楽しくすごせたと思う。

 うん、頑張って企画した甲斐がありました。

 皆が帰る時に、プレゼントと用意しておいたジンジャークッキーを渡して、逆に皆からもプレゼントを貰って、逆に驚かされちゃったんだけど……
 だって、ツナや母さん以外からプレゼント貰った事なんてなかったから

「有難う」

 だから最後に、みんなに笑顔でお礼を言う。
 また来年もこんな時間がもてれば良いねって、そう言う思いを込めて……



 メリー・クリスマス。
 聖なる夜が、皆にとって素敵な夜でありますように……