何時ものような毎日の中に、異例な事が起こると人はとっさに対処出来なくなってしまうのは、しかたのない事だと思う。
「で、フゥ太のヤツ、ずっとの周りをウロウロしてったって訳?」
学校の帰り道、疲れたため息をついた俺に、ツナから強制的に何があったのか聞かれてしまったので、正直に話せば、不機嫌な声でツナが聞き返してくる。
それに、コクリと頷くことしか出来ないのは、仕方ないだろう。
『兄』と慕ってくれるのは、本当に嬉しいんだけど、学校にまで来ているのには本当に驚いた。
気が付いたら、後ろから声を掛けらるのだから、驚くなと言う方が無理な注文だ。
驚かせてくれた張本人には、何度も学校に居ちゃダメだって言ったんだけど、聞いてもらえなかった上に、あの捨てられた子犬みたいな目で見られたら、怒る事も出来ない。
「………あいつ、絶対分かってやってるな」
思い出して、ため息をついた瞬間、ボソリとツナが何かを言うのが聞こえてきた。
でも、声が余りにも小さ過ぎて、何を言ったのか分からない。
「ツナ、何か言った?」
「なんでもないよ。でも、じゃ怒れないだろうから、オレからキツク叱っておくよ」
「いや、あのそんなにキツク言わなくてもいいよ。ただ、学校に遊びに来るのをやめさせたいんだ。フゥ太くんってマフィアに狙われているって言ってたから、心配で……」
そう、外に遊びに行きたいのは、子供なんだから当然だと思う。
ましてや、俺やツナが居る学校に来たいのも、遊んでもらいたいからだ。
だけど、フゥ太くんはマフィアに狙われている。
そんなに堂々と外に出たりして、大丈夫なのかが心配なのだ。
そりゃ、並盛は、風紀委員が見回りしているから、比較的安全だと思うし、ツナが居ればもっと大丈夫だと思うんだけど、俺しか傍に居ない時に襲われたりしたら、絶対に助けられない自信がある。
「確かに、それはちょっと気を付けてもらわないとだよね」
内心で、そんな事を心配していた俺に、ツナの低い声が聞こえて来て、ちょっとビックリしてしまった。
えっ、何でツナ、そんなに不機嫌なの??
「あいつ、を巻き込みやがったら、追い出す」
「えっ?!いや、まだ、巻き込まれてないから、大丈夫だから、追い出すのは待って?!」
ボソリと言われた言葉が余りにも物騒だったから、慌てて待ったを掛ける。
いや、だって、本当に巻き込まれてないから、何か今のツナは、巻き込まれてなくてもフゥ太くんの事を追い出してしまいそうだ。
「心配しなくても、まだ追い出したりしないよ」
慌てて止めた俺に、ツナが笑顔で返してくれる。
………だけど、なんで、まだって言う言葉が強調されてるいのか、怖くて聞けないんだけど
「まぁ、それは置いとくとして、何か雨降りそうだから、早く帰ろうか」
言われて空を見上げれば、確かにどんよりとした曇り空が広がっている。
これは間違いなく、雨が降るだろう。
まぁ、ここから家までは、そんなに距離も離れてはいないから、それまではもってくれるかな?
言われた内容に頷いて、家へと急ぐ。
「ただいま」
ツナと声を合わせて、家へと入り『ただいま』と声を掛けた。
雨は、まだ降っていない。
でも、何時降っても可笑しくないかなぁ?
家に入る前に見た空を思い出して、小さく息を吐く。
雨が嫌いな訳じゃないけど、やっぱりちょっとだけ気温が下がるから、古傷には余り良くなんだよね。
率直に言えば、何時もよりも足が痛くなるのだ。
まぁ、天気予報にもなってくれるから、助かってはいるんだけどね。
「おかえり」
バタバタと賑やかな音がして、フゥ太くんが階段を駆け下りてくる。
どうやら、ツナの部屋に居たのだろう。
その後ろから、ゆっくりとした足取りで、リボーンも階段を下りて来た。
「ちゃおっス」
そして何時もの挨拶一つ。
それに笑顔で返事を返す俺と違って、その隣に居るツナは不機嫌そうな顔をしたままだ。
「ツナ兄、どうしたの?」
「フゥ太、お前今日、の周りをウロウロしてたんだって?」
そんなツナに、不思議そうにフゥ太くんが声を掛ければ、逆にツナが聞き返す。
それは、俺が帰りに話をしていたことで、まさか帰って直ぐに注意するとは思っていなかった俺は、かなり焦った。
「ツ、ツナ、取り合えず、部屋に入ってから……」
「だ、だって!僕、兄と一緒に居たかったんだもん!!」
「お前一人が、と一緒に居たい訳じゃない。それに、もっと自分の置かれている立場を理解しろ!もしも、を巻き込んだりしたら、絶対にお前を許さないぞ」
真剣に言われえるツナの言葉に、何も言えなくなる。
それは、本気で俺を心配してくれているのと同時に、フゥ太くんの事も心配しているのだと分かるからだ。
少しキツイ言い方だけど、ツナがもうフゥ太くんの事を、認めていると言う証拠。
「うん、分かった」
ツナの言葉に、しっかりとフゥ太くんが頷く。
それがなんだか、兄の忠告に素直に頷いている弟のように見えて、俺は思わず笑ってしまった。
「……、何笑てるの」
「ううん、何かいいなぁと思って」
年が離れているからこその、ちゃんとした信頼関係。
フゥ太くんも、ツナの事を尊敬しているのだと、分かるから、見ていて微笑ましい。
「ダメ、何ニヤニヤしてやがる。さっさとツナの部屋に行きやがれ!客が来たぞ」
そんな二人を見て笑っていた俺に、リボーンが酷い事を言う。
でも、続けて言われたその言葉に、俺は首を傾げた。
「客?」
「……あぁ、また面倒が来たみたいだね」
分からなくて、首を傾げた俺に続いて、ツナが面倒だと言うようにため息をついた瞬間、俺を片手で簡単に抱き上げると当然のように階段を上り始めた。
フゥ太くんも、ツナに続いて階段を上り始める。
抱え上げられた俺は後ろを向いているから、ニコニコと笑っているフゥ太くんに見られて、ちょっと恥ずかしいんだけど
「は、取り合えずベッドに座ってて」
抱え上げたまま自分の部屋に入ったツナは、俺をベッドに下ろすと持っていた鞄を机の上へと置く。
その瞬間、玄関が急に賑やかになった。
どたどたと階段を上ってくる足音は、複数人の来客を告げている。
これがリボーンの言っていたお客様なのかなぁと、ぼんやりと考えてしまった。
「よお、ツナに!元気にしてたか?」
そして、当然のように部屋に入ってきたのは、ディーノさんとその部下の人達。
勝手したるなんとやらで、家の中へと入って来たみたいで、ちょっと驚いた。
と言うか、リボーンやツナは、ディーノさんが家に入ってくる前から気付いてたんだから、凄いよね。
「こんにちは、ディーノさん」
「ああ、っと、まちがいねぇ!こいつは、正真正銘のランキングフゥ太だ。いざ、探そーったって、しっぽすらつかめねー、星の王子様だ」
「こんにちは、跳ね馬ディーノ」
入って来たディーノさんに、挨拶の言葉を口に出せば、軽く片手を振って答えてから、ツナの直ぐ傍に居るフゥ太くんを見て、感心したように頷いている。
そんなディーノさんに、フゥ太くんが笑顔で挨拶した。
「よろしくな、しかし、こいつに慕われるたあ、たいしたもんだぜ」
感心したように言われる言葉に、思わず首を傾げてしまう。
確かに、フゥ太くんが、マフィアに狙われているのは知っているんだけど、ここに居る事がそんなに凄い事だって言うのは、良く分からない。
「早速で悪いんだが、商談だ」
不思議に思いながら見守っていると、ディーノさんが突然真剣な表情になった。
それは、間違いなくマフィアのボスである大人の顔。
「今日来たのは、ワケがあってな、フゥ太、あるマフィアのランキングを売ってほしい」
真剣な表情をしたディーノさんが、そのままフゥ太くんに商談を持ち掛ける。
ツナは、話に加わる事なく、その様子を黙って見て居るだけだ。
それだけ、真剣な話だと分かるから、俺も何も言わずに黙って様子を見守る事しか出来ない。
「実は、うちのシマにチンピラ共に、銃を横流しして、一般人をまきこみ治安を乱すゴスペラファミリーが活動を始めた。そいつらを黙って見過ごすわけにはいかね。やつらが持っている武器庫の規模ランキングが欲しいんだ。頼めるか?」
説明された内容は、確かに放って置く事なんて出来ない内容だ。
一般人を巻き込むなんて、そんなの酷過ぎる。
同じように思ったのか、ツナの表情も厳しいものだ。
「もちろん、金は用意した」
そして、続けて言われた言葉に、ディーノさんの直ぐ後ろに居た部下が、アタッシュケースの蓋を開けて、中身を見せた。
その中には、ぎっしりと万札が詰められている。
……俺、こんなのドラマでしか見た事ないんだけど
でも、ドラマの場合は、上だけが本物で、後は新聞紙とだって聞いた事があるから、こんなに大量に詰められたお金を見たのは、生まれて初めてだ。
「………それだけ、情報が必要って事なんだ……」
一般人を巻き込むなんて、最低な行為だから、ディーノさんが何とかしたいと言う気持ちも良く分かる。
だからこそ、こんなにもお金を準備して来たんだろう。
だけど、ここでそんな商談をして欲しくない。
相手は、こんな小さな子供なのに
「お金はいらない。ディーノは住民を大事にしているランキングで、8万2千263人中堂々の1位だからね!そーゆーボスは好きさ」
何となく複雑な気持ちになっていた俺に、きっぱりとした口調で、フゥ太くんが首を横に振って答えた、
そして、言われた言葉と同時に、ニッコリと笑顔。
「それに、ツナ兄や兄の兄キ分ってことは、僕の兄キ分でもあるってことだろ?ディーノ兄は」
笑顔のままで言いながら、あの大きな本を取り出して、開いているフゥ太くんの言葉に、ちょっとディーノさんが驚いた表情を見せる。
それから、ニッと何時もの笑顔を見せてくれた。
「オレはいい弟分をもって、幸せだぜ。感謝するぜ、フゥ太」
「じゃあ、これ、ランキングのコピーね」
早速開いたページから、紙にそれを書き写してディーノさんへと渡す。
「サンキュー、それじゃ悪いが急いでるんで、またな!」
それを貰ったディーノさんは、本当に急いでいたんだろう、一緒に来ていた部下達とあっと言う間に出て行ってしまった。
部下を引き連れて帰って行くディーノさんに、フゥ太くんが感動して目をきらきらさせて見送っていたのが印象的だ。
「ふぅん、一応、役には立つみたいだな」
ディーノさんに慕われていたフゥ太くんに、ツナが感心したように呟く。
確かに、ランキングを占えば、100発100中なんだから、欲しい人には喉から手が出るほどの情報になるんだろう。
「折角だ、お前等もランキングしてもらえばいーんじゃねーか」
「えっ?俺達?」
「うん、いいよ」
「面白そーです!!新手の占いですか?」
感心していた俺に、リボーンが提案した内容に、思わず聞き返してしまえば、フゥ太くんが笑顔で頷いてくれる。
それに続けて、新たな声が聞こえてちょっとビックリした。
「ハルちゃん」
ドアの所から中の様子を伺うように顔を出したハルちゃんを見つけて、驚いてその名前を呼ぶ。
ディーノさんに引き続き、ハルちゃんまでもが、勝手に家に入って来るって、家の防犯って問題あるんじゃ……
「おまえは、何でいつも勝手に上がってくるんだ?」
「雨が降り出しそうだったから、ツナさんちの洗濯物を取り込んだんです」
そう思ったのは俺だけじゃなく、ツナも同じようで、呆れたようにハルちゃんに質問する。
それに返されたのは、何て言うのか、迷惑掛けてごめんなさいと言う内容のものだった。
「ありがとう、ハルちゃん。本当なら、俺達がやらないといけないのに」
「いえいえ、気にしないでください。お役に立てて、嬉しいですから!そんな事よりも、ハルも占ってください!!」
「いいよ、ツナ兄や兄の友達だもんね」
「はひっ!ツナ兄や兄って…まさか!ツナさん達の隠し弟ですか?!」
「フゥ太って言うんだ」
フゥ太くんの言葉に、驚いたように声を上げたハルちゃんに照れたようにフゥ太くんが自分の名前を言う。
って、どうしてそこで照れるのか分からないし、隠し弟って何?!
「何言ってるんだ。こいつは、家で預かっているだけだ。オレの弟はただ一人だよ」
そんなハルちゃんに、ツナが呆れたように説明する。
そして最後に言われた言葉は、なんて言うかちょっと嬉しかったかもしれない。
「そうだったんですか、それじゃ、納得できたところで、ハルが占ってもらいたいのは……」
ツナの言葉で納得したハルちゃんが早速、話を元に戻す。
でも、占いって、フゥ太くんのは、占いじゃなくって、ランキングなんだけど、大丈夫なのかなぁ?
「ハルのチャームポイントは何でしょう?」
そして言われた内容は、どう聞いても占いじゃなくって、クイズだよね。
それって、ハルちゃんにしか答えが分からないんじゃないのかな……。
「お前、それは占いじゃないだろう」
ツナも、ハルちゃんの言葉に呆れたようにため息をついている。
うん、絶対、それって占いじゃないよね。
「ハルは占いとか信じやすいんで、最初にこうやって占いし師さんが万能じゃないってわかりたいんです」
呆れているツナに、ハルちゃんが笑いながら、その理由を教えてくれる。
確かに、それって、凄い万能な占い師でも、なかなか分かる内容じゃないよね。
「また、お前は訳分かんねぇことを……」
「いいよ、じゃあハルさんのチャームポイントランキングだね」
でも、フゥ太くんは占いじゃなくて、ランキングだらか、ハルちゃんの言葉に笑顔で頷く。
って、俺さっきから何も口に出してないけど、存在忘れられてるかも……
「いくよ」
そう思った瞬間、フワリと体が浮いた。
「えっ」
驚いて、思わず声が出てしまう。
その声に、ツナが振り返る。
「!」
ツナが驚いた声でオレの名前を呼ぶのを聞いて見れば、俺の体が宙に浮いていた。
しかも、ツナの部屋にある家具もフワフワと浮かび上がっている。
「す、すごい演出です〜っ」
「こちらフゥ太、聞こえるよランキングの星」
体がフワフワして、変な感じなんだけど
まるで無重力の中に居るみたいだ。
「何言ってんだよ!が浮いちゃってるんだぞ!!」
「言っただろ?星と交信してるって」
「そんなオカルト信じられるか!そんなことより、早くを下ろせよ!!」
フワフワする体のバランスをとろうとするけど、うまく出来ない。
ツナが手を伸ばしてくれたのに、慌てて掴まって何とかなったけど……
でも、ツナやハルちゃんは浮かんでないのに、何で俺やリボーンとかは浮かんじゃってるんだろう。
「ロマンチックです」
リボーンの言葉に、ハルちゃんがウットリしてるけど、内容的には信じられない内容だよね、星と交信してるなんて
どう考えても、そんな話簡単には信じられない。
「ハルさんのチャームポイントランキング、全8パーツ中第1位は…つむじだね」
「な、何で知ってるんですか?!」
キッパリと言われたその言葉に、ハルちゃんが驚きの声を上げる。
へぇ、ハルやんのチャームポイントって、つむじだったんだ。
って、感心してる場合じゃないんだけど?!
「さては、ツナさんが…」
「オレが、お前の一番のチャームポイントなんて知る訳ないだろう!」
自分の頭を触りながら言われたハルちゃんの言葉に、俺を片手で抱き寄せるように支えてくれているツナがそれを否定する。
うん、ツナは絶対に知らなかったと思うよ。
だって、ハルちゃんはずっとポニーテールしてるから、つむじなんて見えるはずないし
「え、じゃあ…はひー!フゥ太君すごいです!!天才占い師ですー!!」
ツナの言葉で、ハルちゃんがランキングが正解している事を知らせる。
感動するように言われた言葉に、フゥ太くんが少し照れたように笑った。
でも、ランキングが終わっても、俺は降りられないんだけど
「じゃあ、ハルのツナさんの好きなとこランキングベストスリーを教えてください!」
「わかった…ハル姉がツナ兄の好きなところランキング第3位は…強いところ、第2位は、やさしいところ、そして、第1位は、一途に想っているところ」
「聞きました!?あんな事言ってますよー!!」
「お前、ランキングの使い方間違ってるぞ!!」
照れたように言うハルちゃんに、ツナが突っ込んでいる。
うん、確かにハルちゃんのランキングの使い方は間違っていると思う。
だって、それって全部、自分の中で分かってる事なんだから、誰かに確認する必要ないと思うんだよね。
でも、1位のツナが一途なところって言うのは、ちょっと意外だったかもしれない。
そう言えば、ハルちゃんは、ツナの好きな人を知ってるんだった。
ずっと、その人の事を想っていても、それでもツナの事が好きなんだって、そう言っていた。
「イーピンちゃん、ランボちゃん!!」
ハルちゃんがツナの事を好きだって一番に言える一途に相手を想っているんだと言う事を考えていた俺の耳に、突然驚いたようにハルちゃんが呼んだ二人の名前が聞こえてきて、意識を引き戻される。
その声に視線を向ければ、俺よりも上に浮かんでいる、イーピンちゃんとランボくんの姿が……
「どうやら、軽いと勝手に浮いちゃうみたいだな」
「えっ?!でも、俺そんなに軽くないから!!」
フワフワ浮いてるイーピンちゃんとランボくんは、本当に楽しそうだけど、俺はすっごく困っているのだ。
だけど、そんな二人を見て、ツナが一つ納得したみたいに呟いたその言葉に、思わず突っ込んでしまう。
だって、体重元に戻ったんだから、そんなに軽くないよね??
「がーん、ハルは、さんよりも重いって事なんですか?!」
ツナの言葉に、ハルちゃんが落ち込んでしまった。
えっと、それには、俺、慰める言葉が何も思い付かないんだけど
た、多分、ハルちゃんだって、そんなに重いようには見えないから、心配しなくても大丈夫だとは思うんだけどね。
女の子にとっては、大事な事なんだと思うから、何も言えるはずない。
「イーピンの箇子時限超爆は、大技ランキング816技中、38位の一級品だね」
どうしたものかと考える中、まだまだフゥ太くんのランキングが続いている。
イーピンちゃんのあの技って、そんなに凄いんだ。
って事は、あれをまともに食らっていたら、俺達本当にヤバかったって事だよね。
「それだけじゃない。餃子拳は、中距離技ランキングでも520技中116位と高性能だし、この年でこの成績なら文句ないよ!現にイーピンは、将来有望な殺し屋ランキング5万2千262人中3位のスーパーホープなんだ」
「へぇ、こいつ、そんなに凄かったんだ」
イーピンちゃんのランキング内容に、流石のツナも感心したようにイーピンちゃんを見る。
でも、10年後には、イーピンちゃんは殺し屋から足を洗って、ラーメン屋でバイトしてたんじゃなかったっけ?
殺し屋よりはいいような気がするけど、期待のホープなのに、勿体無いんじゃ……
「ランボさんは?ランボさんも何かやって!」
イーピンちゃんのランキングが余りにも良かったから、張り合うようにランボくんがフワフワ泳ぐように、フゥ太くんの前に移動してくる。
そして、自分を主張してランボくんは、キラキラした目でフゥ太くんにお願いしている。
「ランボは、うざいマフィアランキング8万2千266人中ぶっちぎりで1位だよ」
「ぐびゃ」
自分を主張したランボくんに、フゥ太くんが淡々とした口調で、ランキングを伝える。
うざいマフィアランキングって……
「まんまのランキングだな」
「殺して座布団にしたいランキングでも1位さ」
ランキングを聞いてショックを受けているランボくんに、ツナが笑う。
それに続いて言われたランキングは、なんて言うか、気の毒としか言えない内容なんだけど
そんなランキング、一体何の役に立つんだろう。
ツナの腕に掴まったまま、まだ浮いたままの上体で、チラリと窓の外へと視線を向ける。
あっ、もしかしたら、雨が降ってきたかも
「10代目〜!!」
窓に水滴が当たっているのを確認した瞬間、バンと派手な音をさせて部屋に飛び込んできたのは、獄寺くんだった。
その後ろには、当然のように山本も居る。
「なんでオレに教えてくれなかったんスか!?ランキング小僧がきてるって!」
「獄寺に、山本!何で、お前等が?!」
「そこで偶然会ってな、面白そーだから、オレもきたぜ」
勝手に部屋に入って来たのは、獄寺くんと山本で、本当、この家のセキュリティが心配だ。
って言うか、何で皆、当然のように勝手に家に入ってくるんだろう。
不法侵入だって言うのに、本気で誰も気にしてないみたいだし、何よりも、当然と言うように入ってくる。
別に、もう今更だから、何を言っても聞いてもらえないような気がするんだけど
「前から、ランキング小僧に聞いてみたいことがあったんです。オレの聞きたいことは、ただ一つ…10代目の右腕にふさわしいランキングで、オレは何位なのか!!」
真剣な顔で言われた内容は、なんて言うか、うん、獄寺くんにとってはとっても大事な事なんだろう。
だけど、それって、今この状況で確認しなきゃいけない事なのかな?
「できるのか、ランキング小僧」
「カンタンだよ。ツナ兄の右腕にふさわしいランキングでしょー。いくよ、ハヤト兄の順位は……圏外」
ドキドキしている獄寺くんの前で、無常にもフゥ太くんが伝えたのは、ランキング圏外。
でも、ランキングに圏外なんてあるんだ、ちょっと意外だったかも
「なにーっ!!!」
「ランキングに、圏外なんてあるの?」
驚いている獄寺くんが、何となく気の毒で、俺はツナに掴まったままそっと質問してみる。
だって、流石に自称右腕を名乗っているのに、圏外なんてあるとは思わなかったから
「ランキング圏外だなんて言ってないよ。大気圏外だ」
フォローのために質問したのに、返されたのは更に、酷い回答だった。
大気圏外って、地球の外まで弾き出されてるって事?!
いや、流石に、何かこのランキング可笑しくない?!
「アハハハ、また面白ぇー奴だなー」
ショックを受けている獄寺くんを全く気にした様子もなく、場の空気を読まないように、山本が笑って口を開く。
って、そこ!笑うところじゃないと思うんだけど!!
「でも、ハヤト兄、マフィアのファミリーの右腕だけが仕事じゃないよ。ハヤト兄は、保父さんに向いてるランキングでは、8万2千203人中1位なんだし」
「って、何時も馬鹿牛と喧嘩している獄寺が?!」
「保父さんですかー!!?」
流石に、今度のランキングについては、ツナとハルちゃんが同時に驚きの声を上げた。
俺も、驚いて言葉が出ない。
うん、明らかに可笑しなランキング結果だよね。
「ハヤト兄は、子供好きランキングでも、8万2千203人中、2位なんだもん!ぴったりじゃないか」
「はがっ、オ、オレ…子供好きだったのか?」
フゥ太くんから言われたランキング結果に、獄寺くんが、信じられないと言うように呟く。
いや、それ、絶対に違うと思うんだけど
獄寺くん、自分の事なのに、何でそんなに半信半疑なの?
「ねぇ、ツナ、何か、可笑しくない?」
的中率100%だと言っていたけど、今のランキングは明らかに可笑しいと思う。
だって、どう考えても、あの獄寺くんが子供好きだなんて、想像もつかない内容だ。
「確かに、可笑しいとは思うけど、もしかしたら、今まで表に出してなかったのかもしれないよ」
ボソリとツナに質問した俺に、ツナも可笑しいと思っているみたいだけど、リボーンから的中率100%だと聞いているので、否定出来ないで居るみたいだ。
でも、どう考えても、あの獄寺くんの性格じゃ、そんなに隠し事が出来るとは思えないんだよね。
うん、悪い意味じゃなくて、馬鹿正直なんだよね、獄寺くんの行動って
「さすがフゥ太だわ!見事なランキングさばき」
楽しそうに笑っている山本はこの際置いておいて、どうしたものかと考えていた俺の耳に、また新たな声が聞こえてきた。
その声に視線を向けた瞬間、余りの状態に一瞬悲鳴を上げそうになる。
「でも、大事なのは愛よ」
そこに居たのは、長い髪をフワフワと流れさせたまま浮かんでいるビアンキさんの姿。
長い髪が天井一杯に流されている姿は、一種のホラー状態なんだけど
「カッコイイですー!」
「いつも見せてくれるよなー」
だけど、怯えている俺と違って、ハルちゃんと山本は、楽しそうにビアンキさんの登場を喜んでいる。
俺だけは、その登場に、かなりの恐怖を感じて、ギュッとツナの腕に抱き付いてしまった。
「ビアンキ、が怯えてるだろう。普通に登場してくれ」
それで全てを察してくれたのだろう、ツナが呆れたようにビアンキさんに、注意してくれる。
いや、まぁ、今のこの状態で浮かんでいるんだから、普通にって言うのは難しいと思うんだけど
でも、何でツナやハルちゃん達は浮かばないんだろう。
正直、俺は浮いていないで、ちゃんと地面に下りたいんだけど
「って、獄寺くんが、ショックで石化しちゃってる!!」
ため息をついて、自分を落ち着かせた瞬間、目に飛び込んできたのは、白目をむいたままの状態で固まっている獄寺くんの姿。
そう言えば、獄寺くんって、ビアンキさんを見ると体調不良になるんじゃなかったっけ?
今の状態は、もしかして、獄寺くんにとっては、最悪な状態なんじゃ……
「ふふ、隼人の事は気にしなくてもいいわよ。そんな事より、この際、愛のランキングをつくって、誰が誰を愛してるのか、ハッキリさせましょう」
楽しそうに、言われたビアンキさんの言葉。
確かに、今の状態だと、獄寺くんを正気に戻す方が気の毒な気がするから、放って置く方がいいとは思う。
けど、愛のランキングって……
言われた内容に、俺は思わずツナの事を見てしまった。
だって、ツナには、ずっと好きな人が居るのだ。
それを、皆は知っているのに、俺だけが知らない。
もし、今ランキングしてもらったら、ツナの好きな人が分かるんだろうか?
「面白そーだな、フゥ太やってくれ」
そんな卑怯な事を考えていた俺の耳に、同じように宙に浮かんでいるリボーンが、勝手に許可を出す。
「じゃあまず、ツナ兄が愛してる人ランキングいくよ」
って、当然のようにツナの名前が出されて、ドキリとした。
皆が知っている、ツナの好きな人。
こんなの、本当はダメだと分かっていても、俺もツナが好きな人を知りたい。
「ツナ兄が愛している人ランキング、第1位は……」
「おい、フゥ太、勝手に人のをバラそうとするんじゃない!」
ドキドキとする中、ツナが珍しく慌てたようにフゥ太くんを咎める声がする。
だけど、それが聞こえていないかのように、フゥ太くんは、ツナの愛している人の名前を口に出した。
「レオン」
って、明らかに、人じゃないし!!!
言われた名前は、リボーンが連れているペットのレオン。
それって、人じゃないから!
言われた名前を聞いて、ツナが明らかにホッとした表情をする。
その表情から考えても、それが間違いだって分かるんだけど、何で的中率100%なのに、こんなデタラメなランキングになっているんだろう。
「ハルは、とんだ伏兵に負けました。ハルのハートは、この空と同じ大雨です」
「雨?」
言われた名前を聞いてショックを受けたのだろうハルちゃんが、窓辺に移動して嘆いた言葉と同時に、ふっと無重力状態だった体が急に重さを取り戻した。
落ちる、と思った瞬間俺を腕で支えてくれたツナに抱き止められる。
「大丈夫、?」
周りでも、同じように重力が戻ったのだろう皆床に落ちてしまっていた。
俺は、ツナに抱き止められたので、何とか体を打ち付ける事もなく、ゆっくりとツナに抱えられて足を床に下ろす。
心配そうにツナが質問してくるけど、ツナがしっかりと抱き止めてくれたから、何も問題はない。
「うん、俺はツナが支えてくれたから、大丈夫。でも、どうして急に……フゥ太くん?!」
何で急に元に戻ったのか理由が分からなくて、今までの原因だったフゥ太くんを見れば、床に倒れて明らかに具合が悪そうだ。
「どうしたの?気分が悪い??!」
「だるい。僕、雨に弱いんだ…雨なんかキライだよ。ランキングの能力がデタラメになっちゃうし…」
驚いて声を掛けた俺に、フゥ太くんが、返事を返してくれる。
そして言われた内容に、全てが納得出来た。
的中率100%と言われているけど、欠点があったみたいだ。
どうりで、途中から可笑しいと思ったんだよね。
「ふぅん、それじゃ、雨が降ってからのランキングは間違いって事だね」
「じゃあ、オレのランキングも…」
「んー」
「ランボさんも!」
「いつでしたっけ、雨降り出したの?」
だるそうに頷くフゥ太くんに続いて、ランボくんが、嬉しそうに聞き返す。
それに続いて、ハルちゃんが不思議そうに首を傾げた。
えっと、これって、何時から雨が降り出したのかは、教えない方がいいよね。
流石に、ランボくんが、気の毒すぎるから……
「ちなみに、雨が降ると能力が乱れるのは、ランキング星との交信が乱れるからって説があるんだ」
「説話は、もういいよ」
最後の落ちとばかりに言われたリボーンの言葉に、ツナが盛大なため息をついたのは、仕方ないと思う。
でも、俺は、ちょっとだけランキングの星に興味があるんだと言ったら、ツナに呆れられるかな?