夢を見た。
例のアノ夢。
どうしてその夢を見たのか分からない。
でも、夢を見たからには何かがあるという事、だから俺は行動する。
誰かを守れるんだって、そう分かっているから……
お昼は何時ものように母さんが作ってくれたソーメン。
ツナが飽きたってぼやいていたけど、別に俺は嫌いじゃないから、いいんだけど
ツルツルと素麺を食べながら、チラリと時計を確認。
まだ、夢で見た時間よりも間がある事を確認して、そっと息を吐き出す。
「さっきから時間を気にしてるけど、どうかしたの?」
隣で、素麺を食べていたツナが、俺の態度に不思議に思ったのか質問してくる。
でも、それになんて返していいのか分からずに、俺はただ曖昧な笑みを返す。
「えっと、久しぶりに皆とお昼食べてるんだなぁって、そう考えちゃって……」
曖昧な言葉を返すけど、それは本当の事。
だって、休みの日って言えば何時もの俺なら、まだ寝てるもん、絶対。
「そう言えば、今日は早かったね。何か悪い夢でも見たの?」
俺の言葉に、ツナが心配そうに質問してきたその内容に、ピクリと反応してしまう。
悪い夢。
確かに、悪い夢といえば悪い夢なのかもしれない。
だって、アノ夢を見る時は、俺の大切な人が傷付くという事だから……
でも、夢に出てきたのは知らない男の子。
良く分からないけど、その子がランボくんを連れて家に来る夢だった。
何て事はない普通の夢なのにそれが例の夢だと分かったのは、何時ものように日捲りカレンダーと時間がしっかりとあったから
「?」
何も返事を返せない俺に、ツナが心配そうに名前を呼ぶ声が聞こえて来て慌ててしまう。
「な、何でもない!今日も、暑いなぁって考えてて……」
「ダメ、全然誤魔化せてねぇぞ」
名前を呼ばれて慌てて言い訳した俺に、呆れたようにリボーンが会話に割り込んでくる。
じ、自分でも分かってるから、きっぱりと言われたくないんだけど……
「本当に、誤魔化したとかそう言うんじゃなくて……」
「ちゃんも、ソーメンばっかりで、イヤだと思ってたのかしら?」
リボーンに言われて、焦って何とか言葉を考えようとした俺に、心配そうに母さんが質問してくる。
そんなに、ツナに毎日ソーメンだと言われてたのを気にしてたんだろうか?
「そんな事、思ってないから!」
心配そうに質問してくる母さんに、返事を返す。
だって、俺は別に食べ物に執着ってないし、作って貰えるだけ有難いと、素直に思っているぐらいだ。
「オレは、ママンのつくったソーメン好きだぞ」
「私も好きよ」
心配そうに俺の見詰めてくる母さんに返事を返せば、続けて言われるリボーンとビアンキさんの言葉。
「まあ、ありがとう。さすがリボーンちゃん、ビアンキちゃん!」
二人の言葉に母さんが、感激したようにお礼を言う。
「はいはい、オレが一人で悪者だって言いたんだろう」
「そんな事言ってないわよ!それに、もう一人ソーメン好きがいるのよ」
二人の言葉に、ツナが拗ねたように言葉を返す。
別に誰も責めてはないんだけど、ツナ以外は皆ソーメンでも気にしてないって事は、確かにツナだけが悪者になるって事で……
そして、母さんが言ったその内容と共に、扉が開く音が聞こえる。
「ほら、きた」
その音に、母さんが嬉しそうな笑顔を見せた。
そして聞こえてくるのは、『ガハハハハハ!』と言う笑い声。
「……このバカな、登場は……」
誰かなんて、確認しなくっても分かってしまう。
「オレっちだよ!ランボだよ!!」
って、自己紹介しながら入ってきたのは、牛柄の服を着たモジャモジャ頭のランボくん。
「角ぐらいちゃんとつけてからこい!」
だけどその姿は、角の位置が明らかにおかしくって、即効でツナが突っ込む。
ツナに突っ込まれて、漸くおかしいことに気付いたのか、ランボくんが慌てて角の位置を直す。
「わざとだもんね、一応直すけど」
って、言いながら……
えっと、わざとには、どう見ても見えなかったんだけど……
「本当に、わざとだもんね!!リボーン死ね――!!」
疑問に思っている中、顔を真っ赤にしてランボくんが何処から取り出したのか武器を手にそれを撃った。
照れ隠しで、攻撃するってどうなの?!
勿論、撃たれたリボーンはその撃たれた弾を箸でキャッチ。
それって、ミサイル弾に見えるのって、俺の気の所為?そうだよね??
そのままランボくんに投げ返してしまった。
ランボくんはと言えば、開いてる窓から外に飛んでいく。
「あ、あの、飛んでっちゃったんだけど……」
思わず母さんと一緒にランボくんが飛んで行った方を見送ってしまったけど、その姿を探すことは出来なかった。
何処まで飛んでったんだろう、一体……。
飛んでいったランボくんは全く無視で、リボーンもビアンキさん、ツナまでもが何もなかったようにソーメンを食べ続けていることだけが、凄いと正直に思った事は内緒。
俺は、どう考えても、こんな日常に慣れそうもありません。
取り合えず、食欲をなくしてしまったのでお昼はそこそこで、表に出る。
門のところで待っていれば、アノ夢の男の子に会えると分かっているから……
照り付ける日差しが強くて、ちょっとだけクラクラするけど、気にしない。
「、そんな所で突っ立てどうしたの?」
「ビアンキさんは、日光浴ですか?」
門の前に立っている俺に、庭で寛いでいたビアンキさんが近付いてきて声を掛けてくるのに、質問で返した。
「ええ、いい天気ですもの、リゾート気分を少しでもあじわってみたくなったのよ」
俺の質問に、ビアンキさんが嬉しそうに答えてくれる。
嬉しそうなのは、リボーンが一緒に居てくれるからだろう。
でも、テレビまで出してるって、ちょっと凄いんだけど……
「そんなことより、あなたは暑いのが苦手なんでしょ?そんなところに突っ立っていてはまた倒れてしまうわよ」
俺の事を心配して言われた言葉に、ただ苦笑を零す。
俺が暑いの苦手なのは本当の事だから、否定できない。
でもね、また倒れるって言われちゃうと、反論できるんだけど……
だって、俺は、まだ一度も倒れた事ないと思うんだけど、ビアンキさんがここに来てから
「えっと、ほら、ランボくんが戻ってこないから、心配で……」
「あんなバカ牛気にする必要はないわ。あなたが倒れたら、ボンゴレが煩いわよ」
嘘じゃないけど、気になる事を正直に言えば、すんなりと返される言葉。
あー、うん、ツナに怒られるのは分かってるけど、どうしても無視できないって言うか、何と言うか……
だって、俺が見たのは、お告げの夢だから
「あ、あの……」
返事に困っている中、小さな声が聞こえて来て振り返る。
「ここに、さわだりぼーんさんが……」
「あなた誰?リボーンを殺しにきたの?」
そこに立っていたのは、ランボくんを背負った眼鏡を掛けた男の子。
俺の夢の中に出てきた彼と同じ相手。
ボソボソと言われたそれに、ビアンキさんがカッと目を見開いて威嚇する。
「まっ、待ってビアンキさん!」
「どーしたんだ、ビアンキ?」
そんなビアンキさんを慌てて止めようと口を開けば、続けて聞こえてくるリボーンの声。
「リボーン」
その声に、ビアンキさんが嬉しそうにその名前を呼ぶ。
って、子供がビール飲んでいいと思ってるんだろうか?
アロハシャツ着て、片手にビール缶を持ってる子供って……
リボーンを見て、目の前の男の子は固まっちゃってるし
「何だ?」
じっとリボーンを見詰めるその子に、リボーンがビールを飲みながら質問する。
「え…あの…この…」
突然リボーンに声を掛けられた相手は、慌ててランボくんを指差して何かを口にしようとしてるんだけど、何を言いたいのちょっと分からないんだけど……
でも、このままじゃ不味いと思って、俺は慌てて口を開く。
「ランボくんを送って来てくれたんだよね。有難う」
「あっ、はい……それから、これ」
って、差し出されたのは、木箱。何かマークがあるんだけど……何のマーク?
「あっ!リボーン!!ランボさんの角は時として強力な武器となるのだ!!」
疑問に思っている中、背負われていたランボくんが目を覚まして、自分の角を手に取る。
「死にさらせ、リボーン!!」
そして、何時ものようにリボーンに向けてそれを投げた。
ああ、コレで丸く収まると思っていたのに、何でそこで目を覚ましちゃうの、ランボくん!
当然のように、投げた角はバットに変形したレオンによって打ち返されて、綺麗にランボくんの額に刺さってしまう。
「あ…………っ!!…し、失礼しました!!」
背負っていた子供が角を額に刺して力なくブラーンとなってしまった事に、その子は顔を真っ青にして走り去ってしまう。
「ま、待って!」
慌てて引き止めようと声を掛けたけど、慌てている相手に聞こえるはずもない。
そのまま走り去っていく背中を見送ることしか出来なかった。
「おい、ダメ。あいつがどうかしたのか?」
引き止められなかった事にため息をついた瞬間、リボーンが声を掛けてくる。
「……例の夢に、あの子が出てきたんだ」
リボーンは、俺の夢の事を知っているから話しても問題ないかなぁと、一瞬だけ考えて、正直にそれを口に出す。
そうすれば、一瞬驚いたようにリボーンが俺を見詰めてきた。
「どんな夢だったんだ?」
「……分からないけど、あの子が家に来る夢……でもね、持ってきた箱を置いて行かずにそのまま帰る夢だった。だから、俺はあの箱を受け取らないといけないような気がして……」
素直にリボーンの問いに答えれば、考えるような素振りを見せるリボーン。
そりゃ変だよね。
俺は、この夢を見るのは、自分にとって大切な人が傷付く時にしか見ないって言ったんだから……
だから、俺も可笑しいと思ったんだ。
だって、見たことも無い相手しか出てこない夢なんて……
でも、夢に出てきた男の子が、確かに家に来た。
だから、あの夢には、何か意味があるという事。
「……それだけじゃ、流石に分からねぇな……お前が言うように、あいつからあの荷物を受け取れば、何かが変わるのかもしれねぇぞ」
「うん……俺、ちょっとその辺を見てくるね」
俺の言葉にリボーンが考えて同意してくれる。
それに俺は頷いて、あの子を探そうと一歩前に踏み出した瞬間、クラリと眩暈を感じてしまった。
「どうした?」
足を止め門に体を預けるようにした俺に、リボーンが声を掛けてくる。
「な、何でもない……」
「んな訳ねぇだろう!お前、そうじゃなくても、夏バテ起こしてやがるのに、こんな炎天下の中で外に居やがるから……」
「だ、大丈夫だから……」
「ランボさんは、ガマンの子――!!」
何とか体制を整えようとした瞬間、聞こえて来た声にギョッとする。
上を見れば、木に登って手榴弾を両手一杯に持っているランボくんの姿が……
「今度こそおまえなんかドガーンだ!ドガン、ドダン、ドガーンだ!!バガァ!!」
訳の分からない事を言いながら、リボーンに向かって手榴弾を投げた。
って、俺、直ぐ傍に居るんだけど……
逃げられないと思って、ギュッと目を瞑って出来るだけ衝撃に備えようとした瞬間、派手な爆発音が……
あれ?痛くないし、何かちょっと離れた場所から音が
「だれだよ、爆破したのは!!変な噂が立つと迷惑するってあれほど……」
音がした瞬間、中からツナの声が聞こえてくる。
うん、確かに近所迷惑の何者でもないけど、そう言う問題じゃないような……
「バカ牛よ」
ツナの声にビアンキさんが、簡潔に返す。
「って、なんてかっこうしてんだよ!ご近所に頭が可笑しいと思われるだろう!!」
リゾート気分を味わっているビアンキさんの姿に、ツナが怒鳴り声を上げる。
いや、別にそこまで思われる事はないと思うんだけど……
「も!そんな所に突っ立て!!顔色が悪くなってるし!リボーン、お前の所為じゃないだろうな!!」
「ちげーぞ」
目敏く俺の事を見つけたツナが、慌てたように俺の方へと近付いてくる。
その言葉に、短くリボーンが否定した。
「お前の事だから、に無茶な事だって平気でさせるんだか……」
「本当に、違うから!俺は大丈夫……それより」
否定したりボーンの言葉なんて全く気にした様子もなく、文句を言い始めたツナを止める為に口を開こうとしたそれは、またしても聞こえて来た爆発音で遮られてしまう。
「やれやれ、また10年前に呼び出されてしまったようだな……お久し振りです、若きボンゴレ10代目とさん」
「やっぱり、今の爆発音は、お前か!!」
って、ツナの突込みが……
でも、今10年後のランボくんが出てきたりしたら……
「やれやれ……今日のところはこれで…」
「心配しなくっても、一応ビアンキには説明しておいたよ。もっとも信じてるかどうかは分からないけどね」
ビアンキさんの姿を見つけて、慌ててその場を去ろうとするランボくんに、ツナがため息をつきながら言葉を伝える。
どんな説明したんだろう?
信じるかどうかって、そんなの……
「生きていたのね、ロメオ…」
簡単に、信じるような内容じゃ……
予想通りランボくんの姿を見た瞬間、ポイズンクッキングを取り出すビアンキさん。
「あ〜っ、やっぱり信じなかったか……」
って、ツナは当然のように呟いてるけど、そんな問題じゃない!
慌てて逃げるランボくんを追い掛けるように、ビアンキさんも走り出す。
しかも、何処から出したのか分からないけどライフル銃まで持ってるんですが……
「わっ!」
ビアンキさんが撃った瞬間、弾がこっちに飛んでくる。
「!」
俺の声にツナが反応して、こちらに走り寄ってこようとするけど、どうした訳か、さっきから流れ弾が……
「ビアンキの射撃の腕は最悪だからな、どこに飛んでくるかわかんないぞ」
「なんて迷惑な!!」
ツナの突っ込みの声が聞こえて来るんだけど、俺はそれよりも気になった事が、先の男の子が直ぐ傍で座り込んでいる姿が
「危ない!」
「!!」
そして、飛んでくる銃弾を避けることも出来ないその子に気付いて、俺は庇うようにその子に抱き付いた。
後ろから聞こえてくるツナの切羽詰ったような声と同時に、幾つもの銃弾が俺の服に当たるのが分かる。
助かったことに、それは俺自身を傷付ける事はなくって、ホッとした。
「大丈夫だった?」
「あっ、はい……でも」
「ここ、傷付いてる。本当に大丈夫?」
慌てて庇ったけど、庇いきれなかったみたいで、男の子の頬に傷が付いているのに気付いてそっと手を伸ばして再度質問。
コトリと首を傾げて質問すれば、男の子の顔が真っ赤になる。
「あ、あの……」
「ああ、今日も暑いから、熱中症とかになってない?」
それに気付いて、心配して額に手を伸ばせば、慌てて男の子に避けられてしまった。
俺って、そんなに怪しく見えるのかな??
「大丈夫です!!あの、僕は、この荷物を!!」
「うん、態々届けてくれたんだよね、有難う」
慌てて立ち上がって、男の子がずっと大事に抱えていた木箱を差し出してきたのに頷いて笑顔でお礼を言えば、ますます男の子の顔が真っ赤になった。
俺も人の事言えないけど、熱中症とか本当に怖いんだよ。
日射病だってバカにしちゃだめなんだからね!
「大丈夫?家で、冷たい物でも飲んで……」
「!知らない人を家に誘っちゃダメだってあれほど!!」
「いえ、本当に大丈夫だから!!用事も終わったし、僕は帰ります!!」
「えっ、でも……」
いろいろあって疲れてるだろうからと、冷たいものでも飲んで落ち着いてもらおうと申し出たその言葉は、後ろから俺の事を抱き締めてきたツナによって遮られてしまった。
ツナに睨まれて、男の子が慌てたように首を振って踵を返す。
それを引き止めようとした瞬間、ギュッとツナに強く抱き締められる。
「ツナ?」
「帰るって言うのを、無理に引き止める必要はないよ」
不思議に思ってツナを見れば、不機嫌そうな瞳とかち合ってしまった。
あれ?何でツナは、こんなに不機嫌なんだろう??
「それじゃ、失礼します!!」
「あっ!」
慌てて走り去ってしまった男の子を呼び止めようとしたけれど後の祭りで、凄いスピードでその子の姿は見えなくなってしまった。
「、どういう事なの?」
「えっと、俺も良く分からないって言うか……」
何がなんだか分からないまま、夢のお告げ通り男の子から荷物を預かる事が出来たのは良かったんだけど、その後またしても眩暈を起こしてしまいベットから出してもらえなくなったのは、仕方ないと諦めた方がいいのか……。
結局、あの男の子が何だったのか、俺には分からないままなんだけど……
今までの夢の中で、一番不思議な夢だったんだけど、何時かその理由が分かるのかな?