母さんに頼まれて物置の整理をする事になった。

 それは別に問題ないんだけど、掃除をしていただけのはずなのに、何でこんな事になったんだろう。
 誰か俺にも分かるように教えてください、切実です。





「うわ!」


 物置の整理をしていて、偶々足元に置いていた荷物に躓いてバランスを崩してしまったのが悪かったのかもしれない。

 ドシンと音をさせれば、埃が宙を舞う。
 それにゴホゴホと咳をしてしまうのは、仕方ないだろう。


!」


 その瞬間、多分俺の声を聞き付けたのだろう心配性の兄が勢い良く俺の名前を呼ぶ声が聞こえてる。
 だけど、名前を呼ばれても咳き込んでしまって、返事を返す事が出来なかった。


「大丈夫?」


 そんな俺にツナが心配そうに声を掛けてくるのに、何とかコクリと頷く事で返事を返す。

 自分のドジが招いた結果なので心配されるのは、なんていうか心苦しい。
 俺が頷いた事で、ツナの雰囲気が安心したモノへと変わるのが分かる。


「で、あんたは何処からそこに入ってきたわけ?」


 だけど、続けて言われたその言葉の意味が理解できなかった。

 だって、ここに居たのは俺一人だけだったはずなのに


「…ツ、ツナ、何言って……?」


 理解できなくて、漸く咳も落ち着いてきた俺はゆっくりと目を開いて固まった。

 確かに、狭い物置の中に俺以外の誰かが居る。
 し、しかも何か、格好が……


「そんな格好でここに居たら汚れちゃいますよ!」
「……、そう言う問題じゃないから!」


 マント羽織ってはいるけど、その下に着ている服は高そうなスーツ。
 その姿を見た瞬間、何でその人がここに居るとかと言う疑問よりも先に、こんな埃っぽい場所に居たら折角のスーツが汚れてしまうと思ってそれを口に出したら、ツナに突っ込まれてしまった。

 だって、服が汚れるって思ったら黙ってられなくて……


「……ここは、何処だ?」


 俺達の会話は全く気にした様子もなく、その人から言われた言葉は何て言うのか、どう返していいものか返答に困ってしまう。

 『ここは何処だ』と言う言葉が出てくるのは、自分でここに来た訳じゃないんだよね?
 そんな相手に、どう説明すれば混乱なく伝わるんだろう。


「えっと、取り合えず、ここは俺ん家の物置になります」


 そして、精一杯考えた末に返せた言葉はそんな言葉だった。

 俺、これでもかなり頑張ったんだけど……
 勿論、ツナには頭を抱えられても仕方ないとは思うんだけどね。


「後、ここに居る訳にもいきませんから、場所を移動しませんか?」
!」


 さらに続けて言ったその言葉に反応して、慌てたような声でツナが俺の名前を呼ぶ。

 でもね、本気でここに居たら服が汚れると思うし、ここが何処かも分からない相手をこんな狭い場所に居させるのもどうかと思うんだよね、俺は
 それに彼の事が他人とは思えないのです、だって、ツナにそっくりなんだよ、この人……。


「良いのか?私を簡単に信用しても」
「う〜ん、信用って言うのとはちょっと違うんですけど、どう考えても他人だとは思えませんから」
「……確かに、同じ顔されてちゃ無碍にも出来ないんだけどね……だからって、警戒もしないでそこで微笑まないでよ、


 俺が薦めたその言葉に反応してツナのそっくりさんが見詰めてくるのに、笑顔を向けて返せば、またしてもツナに呆れられてしまったんですけど……

 俺、そんなにさっきから変な事してるのかな?
 自覚がないって怒られるけど、本当に分からないんだけど

 でも、代わりにツナとかが警戒してくれるから、別にいいかなぁとか思ってしまうなんて言ったら、やっぱりそれでも怒られるのかな?


「確かに、同じ顔、同じ気配を持つ者など、そう居るものではないな……」
「えっ?」


 思わず考えている中ツナにそっくりな人が口にしたその言葉に、驚いて顔を上げる。

 同じ気配?
 一体どう言う意味なんだろう……


「おめぇら、さっきから何をしてやがるんだ?」


 意味の分からなかったそれを確認しようと顔を上げた瞬間、聞こえてきたのは新たな声。


「また、お前の仕業?」
「何の事だ?第一、綱吉と同じ気配がしてやがるそいつは誰なんだ?」


 不機嫌そのままにリボーンを睨みつけるツナに、リボーンがまた同じ事を口にした。

 えっと、同じ気配?
 だって、気配が同じだなんて、普通ならば考えられない。

 呆然としてツナに似た人を見れば、その瞳が真っ直ぐに俺を捉える。


「お前の名は?」
「えっ?あっ、すみません、名前も言っていませんでしたね。俺は沢田って言います」
「お前からはどこか、懐かしい気配がする」


 そして質問された内容に、慌てて名前を名乗った。
 それに対して、初めてその人の瞳が少しだけ和らいだように思う。

 でも、俺から懐かしい気配って、どんな気配?


「って!なんでそこで簡単に自己紹介なんてしてるの!!」
「だって、聞かれたから?」


 疑問に思って首を傾げた瞬間、ツナの突っ込みが入ってしまう。
 それに、疑問系で返事を返せば、またしても盛大なため息をつかれてしまった。


「ツナ?」
「……に何を言っても無駄だとは分かってはいるんだけど、聞かれたからって素直に答えるなんて、命知らずな事だよ」


 そんなツナを心配して声を掛ければ、真っ直ぐに真剣な目で見詰められて、しっかりと叱られたんだよね、多分?


「でも、この人は、大丈夫だと思えるから……」


 ツナが俺の事を心配してくれているのは知っている。だからこそ、俺も真剣に言葉を返す。

 俺だって、そんなにバカじゃないつもりだよ、そりゃ、ツナに比べたら全然かもしれないんだけどね。
 でも、人を見る目はあるつもりなんだけど……


「超直感か……綱吉、確かにこいつの言うように心配はいらねぇぞ。なにせ、そこに居るのはボンゴレ・プリーモだぞ」
「ボンゴレ、プリーモ?ってことは、オレ達のご先祖って事?」
「そう言う事になるな」


 俺が呟いたその言葉に、リボーンが満足そうな笑みを見せながら続けて言われたその言葉に、ツナが信じられないと言うように質問する。
 ツナの質問に、リボーンはしっかりと頷いた。

 えっと、プリーモって何?俺一人だけ、状況を理解できないんだけど……


「お前達は、ボンゴレの事を知っているのか?」
「知っているぞ。オレは、ここに居るこいつ等をボンゴレ・デーチモとして教育している世界最強のヒットマンだからな」
「デーチモ……そうか、ここは……」


 信じられないと言うように綱吉に似た人がリボーンに質問すれば、当然のように返されたそれに何処か納得したように呟かれる言葉。

 えっと、デーチモとかプリーモとか、本気で良く分からないんだけど……
 誰か、分からない俺にも説明してください。


「流石はプリーモだな。もう状況を把握したようだぞ」


 えっ?状況把握って、さっきツナが言った様に、この人がご先祖とかそんな内容の事を……


「って、この人ま、まさか、幽霊とか!!」
「違げーぞ、バカは、黙ってろ」


 ビクビクと質問した内容は、リボーンによって否定されたんだけど、思いっきり呆れられてるんですが
 だって、本気で状況分が分からないんだから、仕方ないじゃんか!!


「残念だが、私は生きているようだな……と言ったか、驚かせたようですまない」
「えっ、いや、俺がただ怖がりなだけだから……えっと……」
「ダメ、エスプレッソ作ってお前の部屋まで持って来い」


 驚いた俺に、謝罪してくれる。

 ああ、やっぱり悪い人には思えない。
 でも、そんな相手の事が何も分からなくて名前を問い掛けようとしたその言葉はリボーンによって遮られてしまう。


「あれ?俺の部屋って……」


 だけど、最後に言われた言葉が余りにも珍しかったので思わず首を傾げてしまった。
 何時もなら、綱吉の部屋なのに、なんで俺の部屋なんだろう。


「お前に階段を上らせるのは、綱吉がうるせぇからな」


 その疑問には、あっさりとリボーンが答えてくれた。

 ああ、確かにその通りだね、うん。
 俺の部屋なら、階段の上り下りしなくっていいもんな。


「何勝手な事言ってるんだよ!の部屋に得体の知れない奴を入れるなんて許せる訳ないだろう!!」


 だけど、リボーンのその言葉に綱吉が文句を言う。
 確かに、得体の知れない相手かもしれないけど、こんなにそっくりなんだから、他人だとはどうしても思えないんだけど
 だってね、綱吉とは髪と瞳の色がちょっと違うだけなんて、どう考えても他人の空似で終るものじゃない。

 ああ、でも、明らかにマントの人の方が年上だけどね。
 何ていうか、10年後のツナにそっくりなんだよ!


「大丈夫。ツナの分も飲み物作るから、俺の部屋に行ってていいよ」


 だから確信もって、この人が危険じゃないと分かるから、俺は笑ってツナに声を掛けた。
 そうしたら、盛大なため息をつかれちゃったんだけど、なんでだろう?


「……もういいよ……に手を出したらさっさと追い出すからね」
「…………………一応、覚えておこう」


 だけど、諦めたように言われた言葉に続いてしっかりと口を開いたツナの言葉に首を傾げる。

 えっと、手を出すとか、一体どうしてそんな話になってるんだろう。
 しかも、マントの人、どうしてそんなに長い沈黙が!


「おもしれぇな」


 いやいや、全然面白くないから!

 なんか、ツナとマントの人の間に火花が見えるし、このマントの人の殺気、ツナの殺気と一緒なんだけど!!
 寒いから、二人が睨み合ってるだけで、本当に寒いから!!

 俺は、自分の身が可愛いので、さっさとその場を離れる事にした。
 だって、その場に居たら凍死しそうなぐらい寒かったから……

 本当、夏には冷房要らずだよね、近くに居ると精神的ダメージが大きいのをガマン出来ればの話だけど……






「お待たせ」


 エスプレッソを3人分作って、自分の分はちゃんとミルクティを入れて自分の部屋に入れば深刻な表情で3人が話をしていた。

 な、何だろう、なんでこんな深刻な状態に……俺が居ない間にどんな話し合いが

 そう言えば、俺はマントの人の名前まだ聞いてないんだけど……プリーモって言うのが名前じゃないよね?
 だったら、ツナの事をデーチモ何て言わないだろうし
 そもそも、プリーモとか、デーチモって何だろう、多分異国の言葉だと思うんだけど、それが何処なのか俺にはさっぱり分からない。
 ツナには分かってるみたいだけど


「有難う、


 俺の声に気付いたのか、ツナが顔を上げる。
 お礼の言葉で、ハッと我に返り、持っていたそれを出されているテーブルの上に乗せた。


「ボーっとしてたみたいだけど、大丈夫?」


 そんな俺に、ツナが更に声を掛けてくる。

 俺、そんなにボーっとしてたのかな?
 自覚はあんまりないんだけど、確かに考え事をしていたのは確かだ。
 何て言うんだろう、綱吉とマントの人が一緒に居る事にとてつもない違和感を感じてしまったのは否めない。
 どうして、そんな風に感じてしまったのか分からないんだけど


「な、んでも、ないんだけど……俺、まだマントの人の名前とか聞いてないなぁと、思って……」
「そう言えば、まだには名前を言ってなかったな。私の名前は、ジョットだ」
「ジョットさんですね。でも、どうしてあの場所に?」


 今更と言われるかもしれないけど、漸く一番初めに質問しなきゃいけない事を質問する。
 だって、コレでもずっと疑問には思っていた事だから


「さぁな、お前に呼ばれたのかもしれない」
「はぁ?」


 だけど俺の質問に帰ってきたのは、フッと微笑を浮かべたマントの人改めジョットさんのとんでもない言葉だった。

 いやいや、俺は誰も呼んでませんから!
 ましてや、ジョットさんの事知らないのに、どうやって呼ぶんですか!


「……に手を出したら、追い出しますから」


 そっとジョットさんが俺の方へと手を伸ばそうとしたその瞬間、綱吉の低い声と伸ばされた手が叩き落とされる。
 叩き落された手は、テーブルの上にゴンと言う音を響かせた。


「ツ、ツナ!!」


 突然の綱吉の行動に、逆に俺の方が驚いてしまう。
 いや、俺に手を出す事はないから、何も手を叩き落さなくてもいいと思うんだけど……


「大丈夫だ。それにしても、ガードが固いな。デーチモ、そんなに大切なのか?」
「大切だよ。世界で一番ね」


 ツナとジョットさんの間で主語のない会話が繰り広げられる。

 えっと、大切って、この場合俺の事なんだろうか?
 もしそうだとしたら、ツナが俺の事を一番大切だと思ってくれている事になるんだよね。
 それは、すごく嬉しいかもしれない。


「そうか……私にも大切な存在が居たんだがな……」


 ツナの返事にジョットさんが何処か遠い目をしながら呟いた言葉は悲しみを帯びていて、一瞬かける言葉を失ってしまう。

 居たって事は、過去形?
 だったら、今は?


「……ジョットさん……」

 だから、俺が出来たのは名前を呼ぶ事ぐらい。


「やはり、は似ているな……」


 名前を呼んだ俺に対して、ジョットさんが真っ直ぐに見詰めてくる。

 似ているって、それはジョットさんの大切な人と?


「だからって、はあげませんから!」
「いやいや、俺はモノじゃないから!」


 何処か懐かしそうに俺を見詰めるジョットさんに、綱吉が俺の事を抱き寄せてしっかりと釘を刺す。
 だけど、俺はモノじゃないから誰にもあげられませんから!


「それは、残念だな」
「で、話を戻すぞ。プリーモ、どうやってここに来たんだ」


 否定した綱吉のそれに、笑みを浮かべながら全然残念そうに見えない表情でジョットさんが口を開き、それに続いてリボーンが少し不機嫌そうにジョットさんへと質問する。

 ああ、俺が来る前には、そう言う話をしてたんだ。
 そりゃ、深刻にもなるよね。
 だって、ジョットさんが帰れるかどうかは、かなり切実な問題だもんな。


「何度も言うが、リングが光って気が付いたらここに居たんだ」


 リボーンの質問に答えながら、ジョットさんが指に嵌めているリングを見る。
 それは、何処かで見た事のあるリング。


「リング?それって、もしかしてツナ達が持ってるボンゴレリングの事?」


 つい最近、騒動になった元凶でもあるそれを思い出して苦い表情をしてしまうのは止められない。
 だって、このリングの所為で、ツナ達が大変な目に合ったばかりだから


「ボンゴレリングを知っているのか?」
「この間、いらないのに押し付けられたんだよね」


 俺の問い掛けにジョットさんが驚いたように質問すれば、ツナが首から提げているボンゴレリングを取り出してジョットさんに見せる。

 えっと、ツナが持っているのは、確か大空のリングだったかな?
 ジョットさんと同じモノに見えるのは気の所為だろうか?


「大空のリングが二つ揃っても何も起きないようだな」


 ツナが取り出したリングを見て、リボーンが残念そうに呟く。

 いや、何か起きたら大変なんですけど!
 でも、リングが光ってここに来たのなら、またリングが光らないと戻れないって事なんだよね?
 なんでリングが光ったのか理由が分かれば一番早いんだけど、その理由が分かっているんならこんなに苦労しない。


「ジョットさんが、ここに来る前は、どちらに居らっしゃったんですか?」


 だから少しでも手掛かりが掴めればと思って、質問。


「私が居たのは、イタリアの路地裏だったな」


 あれ?日本に居たとかなら、まだ話が早いのに、よりにもよってイタリアの路地裏って……


「……イタリアから日本に来たんですか?それは、かなり遠いですよね……」


 その前に、ジョットさんが俺の先祖だと言うのなら、過去の人な訳で、そう考えると時間まで飛び越えてき事になるんだ。
 そんな摩訶不思議な事が起こるんだから、世の中って本当にすごいよね。


「そうだな……日本には、何度も行きたいとは思っていんだが、まさか未来の日本に来る事になるとは思いもしなかった」


 思わず呟いた俺のそれに、ジョットさんも同意して小さくため息をつく。
 そう言えば、ジョットさんは名前からして日本の人じゃないと思うけどすっごく綺麗な日本語を喋ってるんだけど


「ジョットさんは、イタリアの方ですか?」
「そうだ」


 思わず疑問に思った事を率直に質問すれば、当然のように頷いて返される。

 そうだよね、容姿や名前を考えれば、日本人だとは思えない。
 いや、俺もツナも十分色素は薄い方だけどね。


「とっても日本語がお上手ですね」
「ある人と話をしたくて、覚えたからな……」


 だからこそ感心したように言えば、何処か遠くを見るようにジョットさんが理由を教えてくれた。

 ああ、誰かと話したいから日本語を覚えたんだ。
 すごい努力家だよなぁ……俺も、出来ればイタリア語覚えたいんだよね。
 でも、英語さえまともに話せないのに、イタリア語はかなり遠いんだよなぁ。
 一応、ツナとリボーンに教えてもらっている最中だけど、今はまだ日常会話もままなりません。


「そう言う人がいるなら、にちょっかい出すのやめてくれます」


 ジョットさんに感心していた俺は、再度ツナに抱き寄せられる。

 あれ?なんで俺ツナに抱き寄せられてるんだろう??


「それとコレとは話が別だ。は、私が想いを寄せる人に良く似ている」
「代わりなんて、許せる訳ないから」


 訳が分からずに、首を傾げる俺を腕にしたまま綱吉とジョットさんの間で火花が見えるのは気のせいだろうか!
 大体、代わりとか一体どういう事なんだろう。

 それよりも何より、なんでツナはこんなにも不機嫌なのか教えて欲しいんですけど


「リ、リボーン」


 状況が理解できないから、一人暢気に俺が入れたエスプレッソを飲んでいるリボーンへと助けを求めるように名前を呼ぶ。

 本気で、なんでこんな状況になっているのか説明してもらいたいんですけど!
 だって、ジョットさんがここに来た原因を探しているんじゃなかったんだっけ?!


「知らねぇな。自分で何とかしろ、ダメ


 だけど、リボーンから返されたのは無常な言葉。
 いや、ダメダメだから何とも出来る訳ないんですけど!本気で助けてください!


「……仕方ねぇなぁ……綱吉、睨み合っていても解決出来ねぇぞ。プリーモを戻さねぇ事にはこの状況が続くだけだからな」


 心の中で助けを求めた俺の声を聞いてくれたのか、リボーンが盛大なため息をついて助け舟を出してくれる。


「分かってる。さっさとプリーモには戻ってもらわないとな」


 リボーンの言葉に、綱吉も頷き同意の言葉を返した。

 あれ、でもプリーモって、ジョットさんの事なんだよね?
 なんで、ツナもリボーンもジョットさんの事をプリーモって呼ぶんだろう。

 プリーモって、一体どう言う意味……多分、イタリア語だって言うのは話の流れで何となく分かったんだけど

 プリーツは、スカートのヒダの事だったっけ?
 そう言えば、デーチモって言うのも言っていたような……デーモンの親戚?いや、デーモンって悪魔だし!

 あれ?なんか思考が違う方向へ、俺なにを考えてたんだっけ?


「ダメだな」


 自分の思考に対して疑問に思った瞬間、呆れたと言うようにリボーンがポツリと呟く。

 えっと、もしかしなくても俺の思考読んでたんだ。
 なんかショックかも……


「どうしたの?」


 落ち込んだ俺に気付いたツナが、心配そうに質問してくる。
 でも、今だに俺はツナの腕の中に居るのは、どうしてだろう?


「ううん、何でもない……そうだ!やっぱり、原因を探すなら現場に戻るのが一番だよね。俺、まだ倉庫の掃除も終ってないから何かないか調べてくるよ」
「えっ、ちょっと、!」


 そうだよ、どうして俺はそんな初歩的なことに気付かなかったんだろう。
 定番の事だったよ。

 ジョットさんがここに来た時倉庫に居たんだから、倉庫の中に何かあるかもしれないって事だよね。

 後ろからツナの声が聞こえたような気がしたけど、自分の考え付いた事に満足していてので思いっ切り無視してしまった。
 ごめん、ツナ、ワザとじゃないから許して





 それから、片付けをしながら何かないかと思って探してみたんだけど、コレと言って何も見つからなかった。

 う〜ん、俺の勘では何かあると思ったんだけどなぁ……
 結構片付いてきたけど、やっぱり何も見つからない。


!」


 どうしたものかと考えていた俺は、自分を呼ぶ声が聞こえて倉庫の中から顔を出せば直ぐそこにツナとリボーンの姿。


「どうしたの?ジョットさんは、一緒じゃ……」
「プリーモなら、もう帰ったぞ」


 だけど、一人だけ姿が見当たらない事に疑問に思って問い掛ければ、リボーンがあっさりと返してくれた。

 俺は、必死でここを掃除しながら何かないか調べていたのに、ジョットさんはもう帰っちゃったんだ。
 それって、ただの気まぐれだったんだろうか、それとも10年バズーカーと同じような原理だったのかな?


「何かないのかを、頑張って探してたのに……」
「オレは引き止めようとしたんだけどね、が聞きいれてくれなかったんだよ」
「えっ?ごめん、気付かなかった……でも、母さんに頼まれてた倉庫の掃除も大分片付いたから良かったんだよね」


 さよならも言えなかったことが寂しくて、ポツリと呟いた俺にツナがため息をつきながら言葉をくれる。
 それに素直に謝罪して、苦笑しながら綺麗になった倉庫を見てちょっと満足。


「母さんがご苦労様って、今日はの好きな物を作るって張り切ってたよ」
「本当!それはちょっと嬉しいかも」


 満足気に言った俺に、ツナがクスリと笑いながら母さんが言っていた事を教えてくれる。
 それが嬉しい内容だったから素直に喜びを言葉にすれば、またしてもツナに笑われてしまった。

 どうせ、俺は子供ですよ!


「ダメ、倉庫には何もなかったのか?」


 ツナの態度に少しだけ拗ねた素振りを見せた瞬間、リボーンが質問してきた。
 言われた内容に、一瞬意味が分からなかったけど、確かに俺はその為に掃除してたんだっけ……


「気になるような物は、何もなかったよ」
「そうか……」
「リボーンは、何か気になる事でもあるの?」
「いや、何もなければ、いいんだ……もしかしてと思っただけだからな」

 俺の言葉に何処か納得していないと言うような表情をしているリボーンに質問すれば、まるで自分を納得させるように呟かれる言葉。

 もしかしてって、やっぱり何かあるって事なんだろうか?

 俺が、何か見逃した……
 でも、本当に何もなかったような気がするんだけど……


、取り合えず誇りまみれになっているからお風呂に入った方がいいんじゃない?直ぐに入れるように準備しておいたから」
「あっ、うん、有難う、ツナ……それじゃ、お風呂入ってくるね」


 リボーンの言葉が気になって、倉庫の中を見詰めていた俺にツナがお風呂に入るように薦めてくれる。
 それに素直にお礼を言って、オレはもう一度だけ倉庫を見てから家の中へ入る事にした。


「プリーモが言っていたリングは、なかったみたいだね」
「ああ、ダメが気付かなかっただけって事も考えられるが、どうやらまだ見付ける時期じゃねぇみたいだな」


 だから家の中に入った俺は、ツナとリボーンがそんな会話をしていたなんて知らない。





 だけどその後、俺は何かに導かれるようにここで一つのリングを見つける事になる。


 それは、もう少し先の話。