「人を呪わば穴二つ」なんて言う諺がある。
他人を呪って殺そうとすれば、自分もその報いで殺される事になるので、墓穴が二つ必要になるぞと言う意味。
結局、人を陥れようとすれば自分にも悪い事が起こるという例えだな。
そんでもって呪いの代表と言えば、丑の刻参り。
でも、これってかなりの根性が必要だと思うのは俺だけだろうか。
人間、そんな事までして誰かを呪いたいと思った時点でもう既にその考えは、人じゃねぇと思うんだよなぁ……。
で、なんでそんな話を突然しているかと言うとだ。
「俺、丑の刻参りの現場見ちまった……」
ボソリと呟いた俺の言葉に、ザッとみんなの視線が向けられた。
その視線が、非常に痛いんですけどね……。
「お前、何でそんな面倒な事……」
俺の言葉に一番に口を開いたのがシカマルで、呆れたように言われた言葉はまぁ、予想通り。
『だから、お前の周りに不穏な気が纏わり付いているんだな』
そして、次に口を開いたのは『昼』で、気が付いてるのなら何とかしてもらいたいんですけど……。
『本当、何時の間にそんなの見に行ってたの?』
続けて『夜』が不思議そうに問い掛けてくる。いや、そんなの好きで見に行った訳じゃないから。
「、大丈夫なのか?」
最後に心配そうに問い掛けてきたナルトに、俺は思わず抱き付いてしまう。
「俺の事、本気で心配してくれるのは、ナルトだけだ!!!」
いや、皆が心配してくれてるのは分かるけど、こうやって言葉にして心配してくれるのはナルトだけなのだ。本当、俺の心のオワシスだよな。
『バカな事言ってないで、さっさとその気を浄化して来い』
ナルトに抱き付いた俺に、『昼』が呆れたようにため息をつきながらもっともな事を言う。
『それで、相手には気付かれなかったの?』
続いて『夜』も、心配そうに質問してくる。
「う〜ん、微妙って言うか、気付かれる事はねぇと思う……」
「なら、まだ大丈夫じゃねぇのかよ」
『夜』の質問に、俺は複雑な表情を見せながら素直に言葉を返す。
俺の返事に、シカマルがホッとしたように返してきた。
うん、確かに俺は間違いなく大丈夫だと思う。思うんだけど、丑の刻って、誰かに知られてしまうと、呪いはその人に返ってしまうのだ。
「、それって……」
小さくため息を付いた俺に、ナルトが不安気な瞳で見詰めてくる。
俺が心配している事が分かったんだろうナルトに、俺は少しだけ困ったと言う様な視線を返した。
「そう、俺に危害が及ぶ事は無いんだ。だけど、決行していた相手はまず無事じゃすまねぇだろうなぁ……」
そう、その事が俺にとって何よりも、心配な事。
『だろうな。お前には呪いなど関係ないが、決行していた相手が生身の人間であるのなら、人に見られた事によって、その呪いは全て自分に返る』
俺のその言葉に、『昼』がしっかりと言葉を続けた。
自業自得だとしても、呪いを返された人物はただではすまないだろう。
勿論、呪いが達成されたとしても、呪いなんてモンは全て自分の身に振り返ってくるものだから、碌な目に合う事は無いのだが、返された呪いよりは遥かにマシだと言える。
『でも、それは自業自得だよ。「人を呪わば穴二つ」昔の人は、上手い言葉を残したよね』
俺が心配する事じゃないと分かっていても、心配せずにはいられない。
そんな風に考えていた俺に、『夜』がまず一番初めに思っていたそれと同じ事を口にした。
確かに、その通りだと思う。思うんだけど、そこまでして、誰かを呪いたいと思えるその執念だけなら、凄いと思えるのだ。
それと同時に、やはり怖いと思う。
それほどまで、人を恨む事が出来るなんて……。
「、お前はいい加減ナルトを離してさっさと穢れ落として来い」
ぞっとする人の想いを感じて俺が小さく震えた瞬間、小さくため息をついてシカマルが声を掛けてきた。
そう言えば、まだナルトに抱き付いたままだった。
「ご、ごめん、まだ抱き付いたままだった!」
シカマルに言われて、慌ててナルトから離れる。
不穏な気を纏ったまんまナルトに抱き付いていたりなんかすると、それを嫌う九尾に怒られるかも……。
「だ、大丈夫だってばよ。それよりも、はシカマルが言うように浄化して来た方がいいんじゃないのか?」
心配そうに謝罪した俺に、ナルトは少しだけ赤くなった顔で心配そうに顔を覗き込んできた。
確かに、このまま人の邪念纏ってたくはねぇからなぁ……。
「んじゃ、穢れ落としてくる。『夜』悪いけど手伝ってくれるか」
『うん、いいよ』
ナルトの言葉に素直に従って、ソファから立ち上がり『夜』へと声を掛ければ素直に頷いてくれる。
「んじゃ、行って来ます!」
リビングに残ってる皆に手を振って、そのまま部屋を出て行た。
が部屋から出て行くのを見送ってから、一つの疑問。
「で、ってば、何時の間にそんなの見たんだろう?『昼』は、一緒じゃなかったんだよね?」
『オレは見てないぞ』
疑問に思ったそれを、ナルトが素直に『昼』へと質問すれば、キッパリと返される言葉。
「丑の刻って言やぁ、深夜の1時から3時の間じゃねぇのかよ」
「普通は、そうだよなぁ……でも、ってそんな時間帯に出掛けないよね?」
シカマルから、当然とばかりに言われたそれに、ナルトも更に疑問を口にして首を傾げる。
そう、そんな時間帯に、が外に出る事はまずない。
だけど、『昼』や『夜』が言うように、不穏な気と言うモノを纏っていたとすれば、がその現場を見たと言うのは嘘じゃないって事で、なら、どうやってその現場を見たと言うのかが分からない。
「……う〜ん、謎、だってば……」
丑の刻、さては、どうやってその現場を見たのか!
戻ってきたにそれを訪ねれば、答えは意外な程簡単なモノだった。
「迷惑な事だけど、真実の瞳が発動したんだよ。見たくはなかったんだけど、見えたモンは仕方ねぇだろう!あんなのは、不可抗力だ!!」
穢れと言うモノを落としてすっきりしたらしいけど、そんなモンまで見せてくれる瞳の能力に、誰もが同情したのは言うまでもないだろう。