聞こえてくるのは、子供達の賑やかな声。

 まぁ、それはそうだろう。ここは、子供達が忍者になるために通うアカデミー。
 俺は、そんな子供達の声を聞きながら、ゆっくりと本の頁を捲った。

 ここは、人の出入りの少ない図書館。

 今日のように良い天気の時は、特に人気のない場所。
 それを証拠に、今この場所に居るのは、自分を含めて数人だけ。

 それも、個々に自分たちの時間を楽しんでいるから、周りの人間など気にしていないだろう。
 外では、賑やかに笑い合う子供達の姿。だが、内では、こんなにも静かな時間が流れている。

 まるで、裏と表のように違う世界。

 そう、あの少年のように……。


「今日も、任務あるんだろうなぁ……」

 表の君は明るく笑う少年。ドベと言う仮面を被り、元気に走り回っている。
 裏の君を知っていても、きっと同一人物だなんて、分からないだろう程に、違う姿。

 イルカ中忍に追い掛けられながら笑っている金色に気が付いて、俺は読んでいた本を静かに閉じてその色を追う。
 笑いながらも逃げているその姿は、疑いようもないほど子供らしい。

「願わくば……」

 その笑顔が本物であって欲しいそう思う。

 例え演技であったとしても、彼が傷付く事がない事を心から願いたい。
 まだ、君の隣には居られない自分だけど、それだけを願っている。
 表でも、裏でも、君という光が失われないように……。
 そして、願わくば、君に嘘偽りなどない笑顔を……。

「……何時か、本当に笑ってくれる事だけを……」

 呟きがチャイムの音に掻き消されてしまう。

 少ししか居なかった子供達も、その音にそれぞれ立ち上がって部屋から出て行く。
 それを見送りながら、今だに走り回っている金色に視線を向けた。


 今、こうして少しでも君の傍に居られるように……。

 表でも、そして、裏でも、何時か君と一緒の時間を過ごせるよう、一緒に笑える事が出来るように……。

 それが、願い。