流れていくのは、人の想い。
 その灯された明かりは、死者を導く灯火。

「見た目は、こんなにも綺麗なのにな」

 死者を慰め送り出す。
 迎えた死者を、今度は送り返す為の明かり。

?」

 流れて行く光を見詰めながら、ポツリと呟いた俺のそれに、直ぐ傍に居たナルトが不思議そうに俺の名前を呼ぶ。
 それに、視線を向けて複雑な表情で笑みを見せた。

「何でもないよ」

 迎えられて、今度は送り出される死者達。
 では、迎えられもせず、送り出されもしない者達はどうするのだろう?

 俺は、自分の肉親を迎えもせず送り出してもいない。
 もっとも、そんな事出来る筈もないから……

 俺自身が、この世に存在しては可笑しい存在なのに、そんな不安定なモノが死者を迎えて送り出す資格などありはしないだろう。

「まーた、くだらねぇこと考えてんだろう」

 複雑な表情で笑みを浮かべた俺に、ナルトとは反対側に立っていたシカマルが呆れたように俺の頭を軽く叩いて口を開く。

 下らない事。
 確かに、下らないと言えば下らない。

 そんな事考えても、答えが出ないのは、俺が一番良く分かっていのだから……

「……シカマル」
「綺麗なら綺麗でいいじゃねーかよ。そこで余計な事を考えてんじゃねーぞ」

 そっとシカマルに視線を向ければ、苦笑交じりに言われる言葉。
 本当こう言う時人の気持ちを良く理解している事で……

、何を考えてたのか分からないけど、俺はちゃんと親父の事認めて迎えたから、今度は送り返さなきゃいけないんだよな?」
「そうだな」

 数日前に、ナルトに言ったのは、俺。
 ナルトの新しい家に、ちゃんと迎え入れてあげなきゃいけないのだと
 だから、今日は迎え入れた彼等を送り返す日。

 ああ、確かに彼等はここに来た。
 うん、全然、俺の事は恨んでなかったよ。

 だからこそ、思うのだ。
 今、こうしてのうのうと生きている自分の事を

「だったら、来年はの両親の事も迎えてちゃんと挨拶したい」
「へ?」
「だって、今年の迎え火は俺の分しか準備してなかったよな?だから、来年は、の分も準備しようよ。俺の事、紹介してくれるんだろう?」

 ああ、本当に、四代目、あんたの息子は何でこんなに俺の事を癒してくれるんだろう。
 あんたがした事は間違っていなかったよ。
 そりゃ、確かにナルトの人生を狂わせちまったかもしれないけど、だけど、今、こんなにも九尾は穏やかにナルトの中に存在する。

「有難う、うん。来年は、ちゃんと俺も迎えなきゃだな」


 送り出すのは、柔らかな炎。
 そして、送り出すからこそ、また迎えることが出来る。

 何時まで続くのか分からないけど、それが生きている人間の勤め。

 今、俺も生きているのだとそう言ってくれる人が出来たから、来年からはちゃんと迎えてみよう。

 そして、この灯篭で送り出したら、あの人達は何て言うんだろうな。

 流れて行く灯篭の光を見詰めながら、思わず笑ってしまった。
 来年は、今年以上に賑やかになりそうだ。