ボンヤリと昇ってくる太陽を見ながら、そっと息を吐き出す。

 自分は、一体何時までこの太陽を見る事ができるのだろうか?


 いや、違う。

 きっと、見続けていく事に変わりなんてない。だけど、今こうして一緒に居る人達と、何時までこの太陽を一緒に見る事が出来るのだろうか?

 永遠なんて、有り得ない。
 だからこそ、何時かは終わりが来るのだ。

「明けたわね」

 ポツリと聞えて来たその声に、誰ともなしに頷いて返すだけ。

 誰もが、今年初めて昇ったその光に見入っていた。
 誰が言い出したのかなんて、もう覚えていない。
 それさえも、大した事じゃなかったのかもしれない。

 それでも、今こうして一緒に過ごしている事は、正直言えば奇跡に近い事。

「俺ってば、絶対に火影になるってばよ!!」

 昇った太陽に、突然大声を上げたナルトの声にギョッとする。

「急に大声出すんじゃないわよ!この馬鹿!!」

 そんなナルトをいのと春野が咎めているのが聞えてきて、思わず苦笑を零した。

「…でも、朝日に願い事するのは、いい事だと思う、よ」

 いのと春野に怒られているナルトを庇うように、モジモジと小声でボソボソと日向のお嬢様が口を開いた。
 それを聞いて、いのと春野は、ナルトを開放する。

「まぁ、確かにそれもそうね」

 なんて納得している姿を見て、更に苦笑を零した。


 今、ここに居るのは今年いや、去年下忍になったルーキー10人。
 担当上忍は、任務があるからと今ここには居ない。

 俺も、本当は不参加予定だったのだが、何故かここに居るのは、いのと春野の迫力に負けたから…じゃない。

 本当なら、奉納の舞を舞う為に、今頃山篭りで身も凍るような滝に打たれているはずだったのだが、どう言う訳か今年は奉納舞の日が2日ずれた。

 だから、今日の夜から俺は山篭りに入る事になっているので、こうして仲間とも呼べる者達と交流を深めている。

「でも、よくが参加してきたよな。絶対不参加だと思ってたぜ」

 そんな事を考えていた俺の耳に、犬塚の意外だったと言うような声が聞えてきて、一斉にみんなの視線を貰ってしまう。

「そうだよね。くん、体大丈夫?」

 それに続けて、日向嬢が心配そうに声を掛けてきた。

「うん、大丈夫だよ。そうだね、僕もこんな風に朝日を見れるなんて、思ってなかったよ……」

 だって、本当なら今頃冷たい滝に打たれている時間だったはずなのだ。

 だから、朝日を見るのは、一人で……。誰かと一緒に見る事なんて、有り得ない。
 誰かと一緒に見る朝日がこんなに綺麗なものだなんて、初めて知った。

「俺ってば!と一緒に初日の出見れて嬉しかったてばよ!」

「うん、僕も皆とこうして見られて嬉しかった」

 もう二度とある事じゃないと思う。

 来年には、皆も下忍じゃなく中忍になっているかも知れない。
 そうなると、こうして一緒に朝日を見る事は出来ないだろう。

 そして、何よりも、こんな奇跡のような時間は、自分にはもう二度と持つ事は出来ないだろう。

 だって、自分の時はもう……。

 最後にこんなにも素晴らしい時間が持てた事が、何よりも嬉しい。

「そうね、今更だけど、明けましておめでとう!今年も宜しくね」

 そう言って差し出されたのは、いのの手。それに、俺は笑って同じ言葉を返した。

 先の事なんて本当は分からない。
 もしかしたら、また同じ時間が持てるかもしれない。
 だけど、今この時は一瞬だと分かるからこそ、大切な時間。

「明けましておめでとう。今年も、宜しく」


 だからこそ、今を笑顔で、迎えよう。

 その時その時を後悔しない為に……。