「?」
立ち止まって空を見上げた目の前の相手に、その名前を呼ぶ。
どこか遠くを見詰めるその瞳を見て居たくなかったというのが、正直な気持ちだけど……。
「……んっ」
俺の呼び掛けに、は空から顔を逸らす事無く、小さく返事の言葉を返してくる。
「どうかしたのか?」
何時もなら、俺が呼び掛ければ振り向いてくれるのに、今日は振り返ってくれない。
それに、俺は不安な気持ちを隠せずに、問い掛けた。
「……今日って、三代目の誕生日だったなぁと……」
問い掛けた俺に、は少しだけ迷った素振りを見せたけど、漸くその視線を空から俺に向けてくれて、少しだけ困ったように答える。
言われて、俺も思い出した。
確かに、今日はじーちゃんの誕生日。
もう、この世にじーちゃんが居なくっても、じーちゃんが生まれてきたと言う大切な日。
「……忙しくって、忘れてた……」
本気で五代目火影が扱き使ってくれるので、時間の感覚を忘れていた。
まぁ、そのお蔭で、良くと任務出来るようになった事は正直嬉しいけど……。
「だよなぁ……んじゃ、今日帰ったら、お祝いしなくっちゃだよな!」
ニッコリと嬉しそうに微笑んで、が口にしたその言葉に、俺も自然と笑みを浮かべて勿論異存はないのでそのまま頷いた。
『!そろそろ時間だぞ』
その時、偵察に出ていた『昼』が戻って来て声を掛けてくる。
何か、暗部の姿をしている時でも、暗部名を呼ばずに名前を呼ぶのがすっかり定着してるように思うのは気のせいじゃないと思う。
もう、も半分諦めているんだろう、この頃は何も言わなくなった。
「了解!それじゃ、早く任務を終わらせて、帰ってパーティしなくっちゃな!」
『なんのパーティだ?』
『昼』の言葉に返事をして、嬉しそうに言われたそれに、『昼』が意味が分からないと言うように聞き返してくる。
「今日は、じーちゃんの誕生日だから……」
その質問に、俺が変わりに答えて、先ほどがしていたように、空へと視線を向けた。
今はここに居ない大切だった人の誕生日。
例え姿はなくっても、あなたがこの世に生まれてきた事を、心から感謝しよう。
あなたが、ここに居た証として…。