珍しく下忍担当の任務も上忍としての任務もなく、のんびりと里の中を歩く。

 紅班とカカシ班は、今日も任務があったはずだ。
 そう考えながら、加えていたタバコの灰を携帯灰皿の中に入れた。
 自分の教え子の中で唯一の紅一点に指摘されてから、こうして携帯灰皿を持つようになった自分を思い出して、思わず笑ってしまう。

「アスマ上忍!」

 笑った瞬間、後ろから声を掛けられて、思わずドキリとしてしまった。
 って、全く気配感じなかったぞ。

「……か?今日は任務休みだぞ」

 気配を感じなかった事から、誰に名前を呼ばれたのかが分かり、振り返りながら声を掛ける。

「はい、分かってます。あの、これを渡したくって、探していたんです」

 俺の言葉に頷いて、は手に持っていたそれを差し出す。俺は、それを素直に受け取った。
 渡されたのは、可愛らしいといっていいファンシーな封筒。

「何だ?」
「それは、中を見れば分かります。後、これも……すみません、ボクは参加出来ないんで、先に渡しておきますね」

 疑問に思って問い掛けたそれに、がキッパリと返事を返して、更に綺麗に包装された小さな箱を差し出された。

「それじゃ、ボクはこれで」

 それを自分が受け取ったのを確認してから、は満足そうに笑みを浮かべてぺこりと頭を下げるとそのまま走り去っていく。
 って、体弱いのに、そんなに走って大丈夫なのか?
 遠去かって行く後姿を見詰めながら、そんな心配をしてしまうのは、教師としてなのか、大人としてなのか良く分からない。
 見送っていた後姿が見えなくなってから、一つため息をついて渡されたそれに視線を戻した。

「で、結局なんだったんだ?」

 疑問に思ってそれを口に出すが、あいつが言ったように渡されたこれを見れば分かるらしいので、素直に封筒の中身を出す。
 中に入っていたのは、これまた可愛い封筒。そして、そこに書かれている字は、どう考えても俺に灰皿を持たせる原因を作った少女の字を読んで、思わず口元を手で隠してしまった。

 ああ、そうだった。

 すっかりと、忘れていた。
 もう、この年になると、気にも止めていなかったのだが、こんな風に祝われるのは、正直照れくさいが、嬉しいものだ。

「……まったく、この年で誕生日会をされるとはな……」

 中に入っていたのは、誕生日の祝の言葉と宴をするから何時までにその場所に来いと言うものだった。
 そして、がくれたモノは、名前の知らない宝石。
 多分、俺の誕生日石と言う奴だろう。
 今度会ったら、何の石なのか聞いてみるか……。

 そんな事を考えながら、約束の時間までの暇を潰す為に里の中を歩く。
 折角だから、可愛い教え子達の為に、俺からも何か差し入れするのもいいだろう。
 そんなことを思いながら……。