下忍になって初めての誕生日会は、シカマルの家で開かれた。
毎年恒例になっているそれは、私の家とシカマルの家で交互に開かれる。
去年が私の家だったから今年は、シカマルの家。
だけど今までとは、ちょっと違う誕生日会だった。
何時ものように女友達は私が呼んで、シカマルは男友達を誘う。
今年この誕生日会に集まったメンバーは、ルーキーと呼ばれている同期の下忍全員。
幼馴染のチョウジは勿論、サスケくんまで来てくれたのは本気で嬉しかった。
そんなことを思い出しながら、皆がくれたプレゼントを確認していた私は、一つのプレゼントでその手を止める。
。
下忍試験を免除された特別な下忍。
私達の班に入った彼は、サクラよりもその頭脳が上だって言われてた。
それを認めた訳じゃないんだけど、確かに彼は不思議な子なのは本当。
上忍にも感じられないくらいの気配の消し方は、正直言って尊敬出来るほどの実力者。
その彼が私にくれたのは、宝石のネックレス。
それも、付いている石は少し変わった色をしている。
紫と黄色?
それは、綺麗な不思議な石だった。
これって、高いんじゃ……。
綺麗なプレゼントは嬉しいんだけど、高価なものなら貰う訳にはいかない。
そう思って、私は明日の任務の時に話をしようと決心して、その日はもう寝る事にした。
何時ものように待ち合わせ場所に来たに挨拶をすれば、普通に返される返事。
それに、満足して私は口を開く。
「そう言えば、貰ったプレゼントって、宝石だったんだけど、あんな高価なモノ本当に貰っても良かったのかしら?」
本当はこんな事言い難いんだけど、こう言う事はきちんとしなくっちゃいけない。
だってがくれたものは、紫と黄金が一つになった不思議な宝石。
花の事なら自信があるんだけど、宝石の事はそんなに詳しくない私でも、珍しい石だって事だけは分かった。
「えっ?宝石?ああ……僕がプレゼントしたのは、誕生日石だよ。そんなに高くはないモノだから、安心して」
私の質問にが一瞬不思議そうな表情をしたけど、それは直ぐに納得して小さく頷くとニッコリと笑顔で返された。
「誕生日石?」
「うん、花にも誕生日花ってあるように、石にもその誕生日石って言うのがあるんだ」
だけど言われた聞きなれない言葉に、私は首を傾げて聞き返す。
そんな私に、は簡単にそれを説明してくれた。
確かに、誕生日花って言うのは私も良く知っているから、誕生日石と言うのがあっても不思議はないと思う。
私はそれに納得して一つ頷く。
「それじゃ、私にくれたのって……」
「いのの誕生日石は、アメトリン。アメジストとシトリンが交じり合ったちょっと変わった石なんだけど、判断力を養い、高度な癒し効果を持つんだ。誕生日石を身に付けてるとお守り効果もあるから、身に付けてくれると嬉しいんだけど……」
「ふーん、詳しいのね。でも、そんな事聞いたら、大事にするわよ。有難うね」
私の誕生日石の説明をしてくれたに、笑顔で礼を言えば、フワリとした笑顔が返された。
あら、この笑顔はちょっと高感度UPかも……。
なんて言うのか、庇護欲をかきたてられるって言うのか、なんだからふんわり出来るわね。
見せられた笑顔に、ちょっとだけへの認識を改めた私は、ふとあることに気がついた。
「そう言えば、シカマルにも同じようなの渡してたわよね?あれも、誕生日石なの?」
「うん、シカマルの誕生日石は、ダイヤモンド。宝石の王様って言われてるよね」
疑問に思った事を問い掛ければ、はそれに答えてくれる。
「ダ、ダイヤモンド!って、それってかなり高いんじゃないの?!」
宝石に詳しくなくっても、ダイヤなら誰でも知っている宝石の名前。
それだけに、高いと言う意識が強い。
「そうでもないよ。ダイヤもピンからキリまであるからね。流石にそんなに高いものはプレゼント出来ないから……」
私の驚きの声に、が苦笑しながら答えてくれる。
それにしても、シカマルの誕生日石がダイヤなんて、ちょっと意外かも……。
「で、ダイヤの効果って?」
だからダイヤの持つ意味に興味を引かれて、再度へと質問。
「効果って言うか石の意味は……永遠の絆、不屈、無敵なんて言葉があるかなぁ……」
興味心身で訪ねたそれに、がちょっと笑いながら説明してくれる。
だけど言われた内容に、私は思わずシカマルへと視線を向けてしまった。
『永遠の絆、不屈、無敵?』何かイメージと違うんだけど……まぁ最後の無敵って言うのは、ある意味無敵かもしれないわね……。
あの達観したような姿は、ある意味無敵だわ……。
「いの?」
「なんでもないわ」
ちょっとだけその言葉に納得していた私は、不思議そうに名前を呼ばれて、笑顔を見せた。
そう言えば、宝石の意味って言うのは、ちょっとだけ花言葉に似ていて、少しだけ興味を引かれる。
「は、宝石とか詳しいの?」
「うん、好きだから……それに、石は相性が合えば力をくれるんだよ」
ちょっとだけ宝石に興味を持った私がに質問すれば、少しだけ俯いた表情で小さく頷いて返す。
「そうねぇ、パワーストーンって言葉もあるみたいだから、何かしらの力があるのかもしれないわね……それじゃ、がくれた誕生日石はちゃんと身に付けなきゃだわ」
「うん、いのの事守ってくれるようにお願いしてるから……」
私の為にが選んでくれたそれを大切にしようと心に決めた私に、またがふわりと笑う。
そして言われたそれは、なんて言うのか女の子にはぐっと来るような言葉。
「……これで、顔が良かったら…」
そんなセリフを笑顔で言われたら、ぐっと来ない女の子は居ないでしょう。
もっとも、これがサスケくんみたいなカッコいい男の子なら、即アタックしちゃうわよ!
でもね、前髪で顔の半分かくしてる上に、分厚い眼鏡かけてるような子じゃ、その効力は半減。
まぁ、ほんわかとさせてもらっているんだけどね。
「いの?」
思わずそんな事を考えてた私は、再度不思議そうに名前を呼ばれて我に返った。
「な、何?」
「アスマ上忍来たみたいだけど……」
「あ、あらそう、分かったわ!」
自分の思考に沈んでて気付かなかった事に、ため息をついてしまう。
なんて言うか、って言う子の意外な面を見れたって気分だわ。
「そ、それじゃ、今日も任務張り切って行くわよ!」
そんな心情を隠すように何時ものように大声を出す。
本当、意外な事よ。
あの姿で、女心をバッチリ理解してるなんて!
あれで、本当に見目も良かったら、何人の女の子が騙されてたんだろう。
いえ、誑し込まれるに違いないわ。
良かった。
ある意味この姿なのは、本当に良かったわよ。
そう思わずにはいられなかった、今日だったわ。