「い、今、何て言った?」
ニッコリと笑顔で言ったの言葉に、俺達の代表としてサスケが質問する。
正直言って、ビクビクしているのが楽しかったりするけど、それはまぁ秘密だ。
「だから、今も見えますよって」
そんなサスケの質問に、は変わらない笑顔でサラリともう一度同じ言葉を繰り返した。
勿論、俺とシカマルはそれが嘘ではないと知っている。
だって、は、一族で術者にして払い屋なのだから、見えなければ仕事が出来ないだろう。
「ちょ、ちょっと、見えるなんて聞いてないわよ!」
ニコニコと笑顔のに、チョウジとシカマルそして当人であるを外して思わず輪になってコソコソ話。
俺も無理矢理キバに引きヅリ込まれたので、それに強制的に参加する事になる。
そしてそんな中、一番に口を開いたのはいの。
それは、考えても居なかった事への苦情。
「い、今も、み、見えるって、やっぱりここにも居るって事だよね……」
そんないのに、ヒナタが恐る恐る口を開けば、他のメンバーが動きを止めた。
そりゃそうだろう、確かに今も見えているって事は、ここにそう言うモノが確実に居るって事だ。
「ど、どうすんのよ!」
「ど、どうするって、何が居るのか、気になるじゃねぇかよ!」
確かに、見えなければ気になってしまうのが人間の性。
もっとも、気にはなるのが本音だけど、出来れば俺もあんまり知りたくないと言うのが正直な気持ちだ。
「大丈夫だよ。ここに居るのはみんな気のいい人達だけだから」
コソコソと話をしている俺達に、心配するなと言うようにが声を掛けてくる。
「って、達なのかよ!!」
だが言われた言葉に、一番に反応を返したのはキバ。
いや、気持ちは分かる。分かるんだけど、人の隣で大声出すんじゃねぇってばよ!!
「うん、やっぱりサスケくんは、女性に人気があるんだね。数人の女の人がサスケくんの傍に居るよ」
そして再度爆弾発言をかましてくれたは、ずっと笑顔のままだ。
いや、そんな事にこやかに言う事じゃないと思うのは、俺だけだろうか??流石に、こればっかりはサスケが少しだけ気の毒に思えた。
それを聞いた瞬間、全員が一斉にサスケから離れたのだから……。
そう、ザッと音が聞えそうなほど見事に。
「サ、サスケくんの傍に数人の女性……いやぁ〜嘘よ!!」
一番に逃げたくせに信じられないと言うようにいのが声を上げる。
言われた張本人は、固まって動けないようだ。
その表情は、この世の終わりと言うように見える。
「あんまり騒がない方がいいよ。何事かって、みんなが集まってくるからね」
いのの叫び声に、が更に楽しそうに口を開く。
それに、全員が慌てて口を閉じた。
「彼等も好奇心は旺盛だからね。やっぱり、賑やかにしちゃうと見学に来るんだよ」
いや、だから、それはニコニコと笑顔で言う事じゃないってばよ。
「わ、私達、そろそろ自分達のテントに戻るわね」
身の危険を感じた女の子達は、慌ててテントから出て行こうと立ち上がる。
まぁ、普通はそれが正しい判断だろう。
出来れば、俺もここから離れたいと思うくらいなんだから……。
「あっ!今は出て行かない方がいいと思うよ。悪戯好きなのは、中には入ってこないからね」
だが、テントから出て行こうとした女の子達をの声が引き止めた。
「い、悪戯好き??そ、それって、今出て行ったら私達に危害を加えるって事?」
「そう言う訳じゃないけど、刺激は少ない方がいいと思うからね」
笑顔を崩さずに、が更に続ける。
いや、そんなこと言ったら、出て行けないと思うし……。ってば、本気で楽しんでるみたいだ。
「お前、そんな嘘言って楽しいのか!」
楽しそうな笑顔を絶やさないに、サスケが流石に声を荒げる。
「嘘?どうして、嘘だと思うの?」
だがサスケのそれに、は不思議そうに返した。
確かに、嘘だと否定できる要素は何一つ存在していない。
しかも、俺はが本当にそう言ったモノが見える事を知っているからこそ、嘘じゃないと断言できてしまう。
「確かに、そいつは嘘を言は言っていない。虫達が何かに反応しているからな」
「赤丸も、なんかに怯えちまってる」
疑問形で返したの言葉に反論しようろしたサスケの言葉を遮ったのは、虫使いと犬使い。
やっぱり動物はそう言うのには敏感なのだろうか?
シノとキバの言葉に、サスケはただ複雑な表情を見せるだけ。
そりゃ、二人の言葉はのそれを肯定しているようなものなのだから当然だろう。
「そ、それじゃ、私達テントに戻れないじゃない!」
「何とかできるんでしょう!!」
困惑しているいのとサクラがそれぞれへと詰め寄った。
「あ、あの、くん、このままじゃ困るから、何とか出来ないかな……」
最後にヒナタがオズオズとへと声を掛ける。
「お〜い、いい加減にしとけ。確かにそいつには見えるかもしんねぇけど、俺達には見えねぇんだから、何されても分かんねぇだろうが」
「そうだね、は一言も、僕達にも見えるなんて言ってないよ」
そんな切羽詰ったような状態で、今まで話しに全く参加していなかったシカマルが面倒そうに口を開く。
それに続いてチョウジまでもシカマルに賛同した。
「……そ、それはそうかもしれないけど、居るって分かったら、怖いじゃないの!!」
確かにシカマルとチョウジの意見は間違いではない。そう分かっていても、いのの叫びの方が理解出来た。
そう、見えないと分かっていても、今ここに居るのだと言う事が分かっていればやっぱり怖いものだ。
まぁ、そこがの策略だと言えるんだけど……。
「居るも居ねぇも、見えねぇ俺達には分かんねぇ事だろうが……、からかい過ぎるなよ」
「………ごめんね」
シカマルがため息をつきながら咎めるようにに言えば、素直にが謝罪する。
「えっ、て事は、私達には何の危害もないって事?」
素直に謝罪したに、サクラが恐る恐る問い掛ける。
それに、はただ頷いて返した
「結局、幽霊なんて見えない人にとっては無いモノと同じって事だよ。だから、気にしなくっても問題ないから」
最後に心配ないと言うように言葉を続けた。
それからもう一度だけ謝罪したに、全員がその場に力なく座り込んでしまう。
今となっては、何処までがからかっていたのか分からないけど、結局、ここには何にも居ないと思っていいのだろうか?
見えなければ、居ないと同じ。確かにそれは、正論だ。
だけどこれだけは言える、下手に知らない世界には、首を突っ込むものではない。
それは、ここに居るみんながそう思った事だろう。