「ナルト!」

 名前を呼ばれて振り返る。
 振り返った先には、同じ班であるピンク色の髪の色をした少女と、シカマルと同じ班であり幼馴染だと言う自分とは違う金の髪をポニーテールしている少女。

「サクラちゃんに、いのだってば?」

 相手を確認して、思わず首を傾げてしまう。

「みたいだね……ああ、そうか…」

 首を傾げた俺に、隣にいたが俺に頷いて返してから、気が付いたと言うように笑みを浮かべた。
 その笑みの意味が分からずに思わずを見る。

「探したわよ!って、も一緒だったの?あんた達って、本当に仲いいわよね」
「でも、探す手間が省けてよかったわ」

 だけど、へと問い掛けようとした言葉は、自分達に走り寄ってきた二人によって遮られてしまう。

「何、どうしたんだってば?」

 楽しそうな二人に、訳が分からずに思わず素で焦ってしまう。
 こんな二人には、要注意だと言う事を身をもって体験しているから……。

「はい、これを渡したかったのよ。って、先に言っておくけど勿論義理よ、義理!」
「そうそう、お返しは3倍返しだからね」

 身構えた自分に、二人から同時に手渡された小包。

「なんだってば?」

 突然渡されたそれに、意味が分からずに首を傾げてしまう。
 にも、自分と同じ小包みを渡していた二人が、分からないというように呟いた俺を驚いたように見る。

「呆れたわね。あんたってば、今日が何の日だか、覚えてないの?」

 そして呆れたようにいのが盛大なため息をつきながら言ったその言葉に、頭の中で今日の日付を思い出す。

「えっと、今日ってば、2月14日だってばよね?」
「そうよ。今日は、バレンタインデーよ!」

 日付を呟いた俺に、いのが勢い良く何の日かを教えてくれた。
 そして言われて漸く理解する。
 ああ、今日ってバレンタインデーだっけ……自分には関係ないからって、すっかり忘れてた。

「って、事は二人とも、俺にくれるんだってば?」
「だから、渡したんでしょう。さっきも言ったけど、義理よ、義理!私たちの本命は、サスケくんなんだから!」

 渡された小包と二人を交互に見れば、呆れたようにサクラがキッパリと言い切る。
 まぁ、義理なのは分かってるんだけど、初めて貰った事に、俺は素直に感謝した。

「あ、ありがとうだってば!俺ってば、初めてチョコ貰ったってばよ」
「ボクも、同じです。有難うございますね」

 素直にお礼を言った俺に続いて、もフワリと笑顔で礼を述べる。
 そんな俺達に、満足したような表情を見せる少女二人。でも、本当に嬉しいと思ったのは嘘偽りない事実。お陰で、の笑顔も見れたし。表でも、素の笑顔を見せるのって、すっごい貴重なんだからな!

「まぁ、喜んで貰えて良かったわ。来月、お返し期待してるわよ!」

 ニッコリと笑顔で言いたい事だけを言ってから、二人は来た時と同じように走去って行く。

「……まさか、貰えるとは思ってなかったってばよ……」
「本当、女の子って、義理堅いんだね……」

 貰ったモノを手に持ったまま、小さく息をつく。
 パワーに押されているとそう思うぐらいの二人の勢いに、正直言えば疲れたと思うのは許されるだろうか。
 勿論、もらえた事が嬉しかったのは、嘘偽りない事実だし、の貴重な笑顔見れて幸せ実感したのも本当だけど、あのパワーにだけは、どうしてもなれる事が出来ないんだよな……。本気で、サスケに同情出来るぐらいに……。
 慌しく去っていったその後姿を見送って、俺は小さく息をつく。そして、先程が、二人に言ったその言葉を思い出して、首を傾げた。

「そう言えば、も、初めて貰ったんだってば?」
「……女の子相手から貰ったのは初めてかな……毎年『夜』がチョコレートのお菓子を沢山作ってくれるからね…今年は、ナルトも食べさせられるから、覚悟した方がいいよ」

 俺の疑問に、クスクスと楽しそうに笑いながら言われた言葉に、思わず想像出来てしまって胸焼けしそうになる。
 『夜』って、時々加減と言うものを知らなくなると、その身をもって経験しているから……。


 それから、家に帰ればの言った通り、『夜』が沢山のチョコレート菓子を準備していて、家の中は甘い匂いが充満していた。
 家にいたシカマルが、眉間に皺を寄せていたのは別の話。