それから、任務終了までは、3時間もの時間が掛かってしまった。
見付けたのは、サクラ。
「うん、間違いないみたいだね。それじゃ、今日はこれで解散」
サクラから渡されたそれを見て、満足そうに頷くバカカシが、任務終了の言葉を口にする。
「もう、これなら、午前中だけで終わってた任務じゃないの!カカシ先生、遅刻はしないで下さい!」
時間を確認して、見付けたサクラがバカカシに対して文句を言う。
確かに、その通りだから、俺もサスケも大きく頷いた。
「う〜ん、それは無理な相談だね……明日は、9時に集合だから、遅れないように」
「それは、先生だってばよ!」
何が出来ない相談だ!普通は、それが当たり前だろうが!何で、こんな奴が担当上忍なんてやってられるんだよ!
何度じーちゃんに文句を言っても、改善されないし……本気で、奇襲を仕掛けてもいいか?
笑って誤魔化しているバカカシを前に、俺達3人はそんな上忍を睨みつけた。
「ナルト!」
その瞬間、聞えて来たその声に、驚いて振り返る。
えっ、何でがここに来るんだ??
「?」
突然の事に驚いて思わず信じられないと言うようにその名前を呼ぶ。
「漸く見付けた。もう任務は終わったの?」
駆け寄ってくるその姿に、思わず今までのイライラがスーッと薄れていくのが分かる。
なんて言うのか、フンワリと幸せな気持ちになるのは、俺がの事を本当に大好きだと思うからなんだろうか?
「うん、今終わったってばよ」
「そう、良かった。皆も、お疲れ様」
の質問に答えれば、フンワリ笑顔で労いの言葉。
「それで、どうしたんだってば?」
「うん、それが、知り合いの人から沢山のかぼちゃをお裾分けしてもらったから、プリンを作ってみたんだけど、一杯出来たから、みんなにお裾分け中なんだ」
だけど、どうしてここにが来たのかが分からなくって、俺が素直に疑問を口にすればニッコリと笑顔で理由を説明してくれた。
ああ、森の皆がまた出来たモノを大量に持ってきたんだなぁなんて、思って思わず納得。
「かぼちゃを一杯貰ってプリンを作ったって事は、パンプキンプリン?」
のその言葉に、サクラが質問。
ああ、そう言えば、プリン作ったって言ってたから、かぼちゃ=プリンって事は、それしか思い付かないよなぁ……。
「うん、春野さんも良かったら持って帰ってくれる?」
「いいの?」
「勿論」
サクラの質問に、頷いてさり気無く質問。
まぁ、の作ったお菓子が貰えるなら、喜んで貰うだろう。
「家の人とも一緒に食べてくれると嬉しいな。本当に、一杯作っちゃったから……」
言いながら、は初めから準備していたのだろうそれをサクラへと差し出す。
「有難う。の作るお菓子って、好評なのよね」
差し出されたそれを、サクラが嬉しそうに受け取った。
紙袋の中には、きっと人数分のプリンが入っているのだろう。
「そう言ってもらえると、嬉しいな。良かったら、うちはくんも持っててくれる?」
「ああ」
の言葉に、サスケも素直に頷いて渡されたそれを受け取る。
って、の差し入れだけは、本当に素直に受け取るよなこいつ。
「後は……」
「カカシ先生は、貰う資格ありません!」
そして、続けてが口を開こうとした瞬間、サクラの声がそれを遮った。
思わず、サクラ良く言った!と褒めたくなるほどのその言葉に、言葉を遮られたが驚いて、首を傾げる。
「確かに、ウスラトンカチに貰う資格はねぇ」
「えっと……」
サクラに続いてサスケも、当然と言うように口を挟む。
それに、は状況が読めずに、俺に助けを求めるように視線を向けて来た。
「そうだってばよ!4時間以上も遅刻してきたカカシ先生には、のお菓子貰う資格はねぇってばよ!!」
の視線を受けて、俺が元気良くその理由を口にする。
「……4時間?」
俺のその言葉に、信じられないと言うような表情で、がバカカシを見た。
「え〜っ、何でそんな酷い事言うかなぁ、この子達は……」
「どっちが酷いんだってば!」
「え〜と、確かにナルトの言う通りですよ。カカシ上忍、それは待たせ過ぎです」
俺の言葉に、サクラもサスケも大きく頷いている。
そんな俺達を前に、バカカシが傷付いたフリをするのに、逆に突っ込めば、もキッパリと同意してくれた。
「あ〜っ、分かった、分かった。まぁ、のプリンは残念だが、今日はここまでだ」
「あっ!カカシ上忍、明日カカシ班の任務はお昼どうなんですか?」
全員からの非難の言葉に、素直に引き下がったバカカシが、その場から姿を消そうとした瞬間、慌ててが呼び止める。
「んっ?明日の任務は、昼必須だ。皆、忘れるなよ!」
呼び止められたバカカシは、それだけを言うと姿を消した。
「もう、そう言う事は、始めっから言ってくれればいいのに……が聞いてくれなかったら、抜きでくる所だったわ」
「本当だってばよ……でも、、どうしてお昼のこと聞いたんだってば?」
「だって、ナルトって、パンばっかりでしょう?ついでだから、一緒に作って上げようと思って」
ニッコリと笑顔で言われたそれに、顔が熱くなる。
って、何でそう言う事をサラッと言えるんだ?
「本当に、アツアツだわ。それじゃ、私は先に帰るわよ。、これ有難う」
「うん、春野さん、気を付けてね」
「はいはい、本当に、何時になったら名前で呼ぶのかしらね」
の言葉に、ため息をつきながらサクラが呆れたように言ったそれは、何時まで経ってもサクラとサスケの事を苗字呼びするへとの非難の言葉だった。
「……ごめん…」
そんなサクラの言葉に、が申し訳なさそうに謝罪する。
「気にしてないわよ。それよりも、ナルトは、に迷惑掛けるんじゃないわよ!」
「分かってるってばよ!」
それに明るく返して、更にお姉ちゃん風吹かして、俺にまでしっかりと釘を刺す。
「俺も先に帰る。ウスラトンカチ、その言葉違えるなよ」
しっかりと返事を返した俺に、サスケまでもが声を掛けて来て、ブスリとした表情を返した。
もう、文句言うのも馬鹿らしくなって、俺はただサスケを睨みつけるだけで終わらせる。
その直ぐ近くで、が苦笑を零した。
「明日遅れるなよ」
そんでもって、一言多いサスケがまたそう言うもんだから、俺がムキになって返事を返すしかない。
そのまま去って行くサスケを見送って、俺は盛大なため息を付いた。
「お疲れ様、ナルト」
誰も居なくなった瞬間、がもう一度労いの言葉を口にする。
「……本当に、疲れた……」
「そりゃ、4時間も待たされればなぁ……疲れるって」
ぐったりとした俺を慰めるように、がポンポンと頭に手を乗せてくる。
「んじゃ、疲れ次いでに上忍待機所に付き合ってもらえるか?本当はカカシ上忍に頼むつもりだったんだけど……」
「って、、どれだけ作ったんだ?」
そして、続けて言われたその言葉に、俺は呆れたようにを見る。
「う〜ん、大きいのを4つに小さいのを30個ぐらい?」
「……かぼちゃプリンの店でも開くのか?」
質問されたそれに返された答えに、思わず呆れたように聞き返してしまう。
「確かに、作り過ぎてるかもしれないけど、お裾分けで貰った量を知らないから、そんな事言えるんだぞ!」
俺の呆れたようなそれに、が反論とばかりに口を開いた。
そう言えば、森に居る奴等って加減ってモノを知らなかったんだよな……。いつもお裾分けって持って来られるのは、際限なかったような気がする。
「あ〜っ、まぁ、それなら仕方ないかも……んじゃ、それ持って、上忍待機所に行くか……」
それを思い出してため息をついて、俺はが持っている荷物を取り上げて、先に歩き出す。
「ナルト!」
荷物を取り上げた俺に、が慌てて名前を呼んで追い掛けてくる。
「早く帰って、が作ったかぼちゃプリン一緒に食べるんだろう?」
「えっ?」
そんなに、俺はクルリと振り返った。
「ナルト?」
「俺の分は、家にあるんだよな?」
言われた言葉の意味が分からないと言うように、が不思議そうに俺を見詰めてくるのに、笑顔を見せながら絶対にそうだろう事を確認するように質問を口にする。
質問された瞬間、の顔にフワリと俺の大好きな笑顔が浮ぶ。
「勿論」
顔の半分が隠されていて分からないけど、いつも見ているから直ぐに分かる俺の大好きな笑顔。
「んじゃ、早くこれ届けて、帰ろうってばよ」
だから、俺もとびっきりの笑顔を返す事が出来るのだ。
この大切だと思える人が、笑顔を見せてくれる限り……。