何が悲しくって、待ち惚けしなきゃいけないんだ?
今日は、達アスマ班は任務休みだって言うのに、俺達バカカシ班は任務。しかも、担当上忍は相変わらず来やがらねぇ……。
「何時もの事だけど、カカシ先生遅いわねぇ」
もう何度目になったのかも分からないサクラのその呟きに、俺とサスケが同時に大きく頷く。
たく、何であんな奴が担当上忍なんてしてやってるんだ?いや、そもそも忍びとしても駄目すぎるだろう。
「もうお昼よ……」
空を見上げて言われたその言葉に、俺も同じように空を仰ぐ。
今日の集合時間は、8時だったよな。それなのに、今の時間は……。
「もう12時過ぎてるってばよ!カカシ先生ってば、何やってるんだってば!!!」
4時間の待ち惚け。
本気で殺ってもいいか、あいつ。
「そうねぇ……流石に、お腹空いたわ……先にお昼食べちゃいましょうか」
今までの経験から、2時間ぐらいなら何とか許せるようになった自分が悲しすぎるが、流石に4時間待たされると、本気で殺りたくなってくる。
「そうだな……効率を考えるとその方が良いだろう」
ポツリと呟いたサクラの言葉に、サスケも同意。
まぁ、確かに飯を先に食っておけば、任務を直ぐに始められるので、効率はいい。それは認める。
認めるけど、この待ってる時間で確実に任務終わらせられるだろうが!!
「……そうだってばね。お昼先に食べるってばよ!」
腸が煮え繰り返るような激情を何とか落ち着かせようと、俺もサクラとサスケの言葉に賛同する。
全員の意見が一致した事で、俺達は各自持ってきた弁当を広げる事にした。
「今日は、ちゃんとお弁当持ってきたのね」
俺が、朝に持たされた弁当を広げていれば、サクラが感心したように声を掛けてくる。
それもそうだろう、俺は大概弁当を持ってこないで、パンで済ませているのだから……。
流石に、弁当まで準備してもらうのは気が引けると思っていたからなのに、からは弁当が必要な時にはちゃんと知らせろと言われてしまった。
今日も、何も言わなかった筈なのに、何故か弁当が準備されていたのには、驚かされたけど……。
「そう言えば、にお弁当の事質問されたんだけど、まさかそれってが作ったとか?」
言わなかったのに準備されていたお昼に疑問を感じながらも、作ってくれた事が嬉しくって、箸を持った俺に、サクラが疑問に思った事を質問してくる。
「……えっと、確かにこれはに貰ったんだけど……なんで、サクラちゃん分かったんだってば?」
「だって、あんたが作るにしては、ちゃんと作ってるし、合同任務の時、あんたと、さらにシカマルのお弁当の中身が一緒と来れば、作ったのはしか居ないでしょう」
質問された内容で、何でが弁当を準備していたのか理由が分かったんだけど、サクラがこれをが作ったと思った理由が分からなくって問い掛ければ、サラリと理由を口にする。
そう言えば、俺とシカマルの弁当もが準備してたな。合同任務は大体が弁当準備してくれるので、中身が同じなのは仕方ないだろう。
だけど、だからって、が作っていると思うのはどうしてなんだ。シカマルの両親が作ったとは思わないものなのか??
「どうして、そこでしか作る人が居ないんだってば?シカマルのお母さんが作ったかもしれないってばよね?」
「そんなの簡単よ。だって、前にシカマルのお弁当見た事あったけど、完全和食だったのよ。だけど、今のあんたのお弁当もそうだけど、バラエティ豊富じゃない。だからよ」
素直に疑問に思った事を問い掛ければ、キッパリとサクラが疑問に答えてくれる。
なるほど、やっぱり女ってそう言うのちゃんとチェックしてんだなぁ、何て、ちょっと感心してしまう。
「それに、って、料理とかするのが好きなんでしょう?良くお菓子とかも差し入れするって、いのから話し聞いてるもの」
『しかも、それがそこらで売ってるのよりも美味しいって言うから、羨ましいわよね』と続けて、サクラは弁当の中身を口に入れる。
「俺も、あいつが作るモノなら、食べられるな……」
サクラに続いて、サスケも話しに加わってきた。
確かに、合同任務とかでが差し入れするお菓子を、甘いモノが嫌いだと言うサスケもちゃんと食べる。
俺も、そこまで甘いモノ好きじゃないけど、確かにの作るお菓子なら、平気で食べられるから、甘さ控えめって奴なんだと思う。
「そうなのよね……サスケくんだけじゃなくって、あのカカシ先生まで絶賛よ。信じられないわ」
まぁ、確かに、の作るモノだから、当然だろうけど……が作るのを、あのバカカシが食べるのは何か気に入らない。今だって、こんなに生徒待たせやがって!
って、思い出したら、またむかついて来た。
折角が作ってくれた弁当なのに、バカカシの所為で満足に味わう事も出来なくって、更にバカカシに対しての怒りがこみ上げて来た時、漸く散々人を待たせていた馬鹿上忍が姿を見せる。
「もう昼食べたみたいだな。なら、早速任務を……」
「任務よりも先に、遅れて来た事謝ってください!」
「そうだってばよ!下らない言い訳は言いから、ちゃんと謝れってば!!」
現れて早々、何時もの言い訳もせずに任務に入ろうとしたバカカシに、サクラと俺が文句を言う。
「あ〜っ、ごめんね、今日は……」
「言い訳はいらねぇってばよ!それに、全然気持ちが篭ってねぇってば!!」
俺達の文句に、バカカシは表面上の謝罪を口にして、余計な言い訳まで付け足そうとしたから、慌ててそれを止めれば、ヒドイとか言って打ちひしがれている。
4時間以上も人を待たせる方がよっぽどヒドイだろうが!
「もう、それは良いですから、今日の任務はなんですか?」
3人が3人共、そんなバカカシを前に盛大なため息をついて、それでも話が進まないからと、代表してサクラが質問。
「うん、今日の任務は、失せモノ探しだよ」
サクラが質問すれば、あっさりと復活したバカカシが任務の内容を説明する。
って、本気で、この4時間で終わるような任務じゃねぇかよ!
その内容を聞きながら、バカカシに殺意が浮んだのは、仕方ない事だろう。
任務内容は、失せモノ探し。
探すモノは、ハンカチ。
って、んなもん新しいの買えば済むだろうが!下忍に依頼する内容かよ。その依頼料で、新しいのが幾つか買えるだろうが!!
バカカシの説明を聞きながら、内心でそんな事を考えて盛大にため息をつく。
本当なら、今頃はの家で、のんびり至福の時間が持てたかもしれないのに………。
今頃、の家で当然のように読書をしているだろうシカマルの事を考えて、眉間に皺が寄ってしまう。
なんで、は俺と一緒の班じゃなかったんだろうか……それもこれも、全部このバカカシの所為だと言う事を思い出して、ますます殺意が湧く。
本気で、暗殺してもいいか?なんて、じーちゃんが聞いたら、間違いなく拒否される事が分かり切っていることを考えて、任務をこなす為に、重い足取りで歩き出す。
表の馬鹿なフリが出来ないぐらいに、イライラがピークに達してるんだけど……。
あ〜っ、マジで夜道の襲撃を仕掛けてもいいか?
このイライラを何処にぶつけて良いのかも分からずに、俺は誰も周りにいないことを確認して、今度は口に出して大きく息を吐き出した。