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・・ふいに風がやみ

辺りに音が消え失せた

その時だった

・・・・・俺は

一生、忘れられないであろう、光景を見た

 

夜桜、後編

 

 

 

 

リィー・・・・ン・・・

 

 

 

どこからともなく、小さく、鈴の音が聞こえた

真の無音だからこそ、聞こえた

小さな小さなその音は、少しずつ大きく響いてくる

 

・・・・リーン・・・

 

 

・・・リーン・・・

 

 

・・リーーン・・

 

 

 

 

ふわり・・

 

 

まさにふわりと、

どこからともかく彼女は現れた

瞳と同じ、ふかい・・けれども美しい蒼の着物を身に纏った彼女は

・・・本当に、人かと・・そう、問いたくなるような

・・・そんな雰囲気を纏っていた

 

 

けれども・・

・・・それは・・・

息をするのも忘れるほど

・・・・・美しかった

 

 

 

 

風の声と共に歌い

 

 

 

花の舞と共に舞う

 

 

 

静かな、けれども良く通る声で、ナルトは歌い始める

 

 

 

風に私の歌を乗せ

 

 

 

リーンと、また鈴が鳴り、シカマルはナルトの手首に結んであるものだと気付いた

 

 

 

花と私は舞を舞い

 

 

 

一夜の夢に花 添える

 

 

 

また、リーンと鈴が鳴って、ナルトは静かに舞い始めた

 

 

 

月の光の導きに

 

 

 

星の光の導きに

 

 

 

私は今 感謝しよう

 

 

 

この淡き光が

 

 

 

私をここへと導いた

 

 

 

その舞いは風のように軽やかで重さを全く感じさせず

それなのに、どこか落ち着いていて

穏やかな小川のようでもあった

 

 

 

呼び声こたえ

 

 

 

私は歌う

 

 

 

一夜の夢に

 

 

 

感謝の歌を

 

 

 

誘いにこたえ

 

 

舞いを舞う

 

 

夢の月夜に

 

 

喜び込めて

 

 

 

シカマルはナルトの舞いに釘付けだった

初めて聞くその歌声はとても綺麗に澄んでいて

初めて見るその舞いは、

・・とても、幻想的だった

 

 

 

風の声と共に歌い

 

 

花の舞と共に舞う

 

 

風に私の歌を乗せ

 

 

花と私は舞を舞い

 

 

一夜の夢に花添える

 

 

 

桜の精に祝福を

 

 

シャララーン、という鈴の音と共に

ナルトの舞いは静かに幕を閉じた

 

 

 

 

ぱちぱちぱちぱち

「綺麗だったわよ、ナル」

「ああ、見事だったぞ」

キュウとコオが戻ってきたナルトに拍手と賛辞の言葉を贈る

「・・へへ///ありがと」

少し、照れたように頬を染めて笑うナルトだったが

ふと、シカマルの方へ近寄っていき、小首を傾げる

「・・・シカは?・・どう・・だった?

おれ、・・ちゃんと、上手くできてた?」

「・・あ、ああ」

滅多に見ることのない美少女姿のナルトに

シカマルは赤くなってどぎまぎしながら何とかそう答える

・・先程の、ナルトの舞いは本当に美しく

舞っているナルトが・・・人ではない

・・・・天女のように見え、その余韻がまだ抜けていなかったのだ

「・・・?大丈夫?顔、赤いけど・・」

こてん、と首を傾げて、顔をのぞき込んでくるナルトに

シカマルは慌てて

「大丈夫っ、何でもねぇからっっ!」

「・・・そう?ならいいんだけど」

小首を傾げつつもそう言うとナルトは、さて、後一仕事・・と言って

再び桜の木の方に歩いて行く

 

 

その後ろ姿を見つつ、シカマルはため息をつく

「どーだ、綺麗だっただろ?」

自慢げにそう話しかけてくるコオにシカマルはゆっくりと頷く

「・・・何か・・ナルじゃないみたいだった

・・いや、ナルじゃないってのはおかしいな・・

・・そう、人・・・じゃない、天女か何か・・みたいだった」

今の舞いを思い返してそう言うシカマルにキュウは誇らしげに話す

「当たり前よ、舞いを舞っているときのナルには人の気がないわ

だからあんなに神秘的に感じるの

・・・そして、・・だからこそ、精霊や神を慰め癒すことが出来る

・・・・・一族最後の舞い手なの」

一族最後の舞い手・・少し悲しげに行ったその言葉に、シカマルは引っかかりを覚える

 

 

・・・一族最後?・・それって・・・

「ナルの一族は、神、精霊をなぐさめ、その加護を得、里を厄災から守っていたんだ

・・だが、今はもう、ナル以外には残ってない

ほら、里の祭りの時、舞い手が舞うだろ?

あれはその名残って訳だ」

シカマルの様子に気付いたコオはそう言ってから

シカマルを見て、ニッと笑った

「来いよ、ナルの最後の仕上げだ」

 

 

 

 

 

・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・ ・・・

 

 

 

 

 

シカマルたちがナルトの元へ行くと

ナルトは舞いを舞っていたときのような柔らかな物腰でお辞儀をしていた

「今のが、私の貴方に対する感謝の気持ちを込めた舞いです

・・気に入って頂けたでしょうか?」

桜の木にむかってそう、普段は使わない丁寧な言葉で話す

 

 

その時、

さらり、と風が吹き

ふわり・・、と美しい女性が姿を現した

限りなく白に近い淡い桃色の、

まるで今ここで咲いている桜の花のような色の髪をした女性は優しく微笑んだ

『えぇ、とても、・・貴方のおかげで尽き掛けていた力が少し戻りました

・・・・・ありがとう』

 

 

その言葉と同時に桜の精の背後にある木が姿を変える

美しい桜の木は消え失せ

かわりにあったのは・・・

焼け焦げた・・・・変わり果てた桜の木

 

 

「!」

「・・・今までのは、この桜の精が見せてくれた幻・・・一夜限りの花だったのよ」

驚いているシカマルに、そう、小さな声でキュウは言った

 

 

 

 

『私が、まだつぼみの時に、私は忍びどうしの争いに巻き込まれました

忍びの放った火のジュツによって、私は、木やつぼみは燃え上がりました

なんとか、私は生き残ることができましたが

もう花を咲かせるだけの力はなく、半死半生の状態でした

・・・でも、私はもう一度花を咲かせたかった

それが、たった一夜だけでも

だから、私は力を使い、呼んだ

・・そして、貴方たちが来てくれた

・・・・・とても、嬉しかった

 

 

 

・・・・・・ありがとう』

 

 

そう言って、微笑むのと同時に

桜の精はすぅ・・・と姿を消していった

・・・・・後に残ったのは

焼け焦げた桜の木

 

 

 

「死ん・・・だ・・のか?」

そう、おそるおそるシカマルは聞く

その言葉を聞いたナルトは振り返るとシカマルの腕を取り、桜の木に近づく

「うぅん、ほら、シカ見て」

ナルトの指さした先には

1枚の、小さな若葉が芽吹いていた

「きっと、またいつか、今日みたいな花見が出来るときが来るよ」

「そっか」

そう言って、2人は笑いあった

 

 

 

 

 

おまけ

「そういやさ、さっきキュウの言ってた“賭けに勝った”って、あれ、一体何だったんだ?」

帰り道、シカマルはそう、ナルトに問いかける

「・・・・あ〜、・・あれね

あまりにも、キュウが舞い見せて、歌ってってうるさかったからさ

だまらせるために賭けしたんだよ

舞いや歌って単語を先に言った方が負けってな

んで、俺が負けたら、舞いでも歌でも見せてやるってことで

それからは、しつこく言われなくなって楽だったんだけどな〜」

「で、めでたく私が勝ったわけvv」

はぁ、とため息をはくナルトとにこにこと笑って言うキュウに

シカマルは苦笑する、それから少し、今あったことを思い返して

「・・・でも、・・本当にすごかったと思うぞ

俺も、また見たいと思ったしな」

そういうと、ナルトは軽く目を見開いた

・・・そして

「・・・・し、シカだったら・・歌、で良かったらまた歌ってやるよ

・・・今度は、シカのために」

「え・・」

そう、言い終わると、ナルトは真っ赤になった顔を隠すように

スピードを格段に上げ、先に走っていった

「あ〜っっ、インずるいっ!

私、そんなこといってもらったことないのに〜!!」

ナルトの言葉に驚いているシカマルに

嫉妬したキュウが絡んでまたひと騒動起きたのは

夜空の月だけが見ていた

 

 

 

 

 

                   

 

                                                    fin

 

 

あとがき

おまたせしました!・・・そして、こんな駄文に長々とお付き合いいただきありがとうございました

なんとか、夜桜終わった〜っ!・・・すごい駄文だけど・・・・・(汗)

こんなんでも、貰ってくれると嬉しいです(ぺこり)

白ネコモカ様より、相互お礼に頂きました。

最後にシカさんがオイシイ!

ナルさんに、歌を歌ってもらえるなんて、本当に何て羨ましい!!

コウとキュウがずるいと言うのは当たり前ですよ!

本当に、素敵な小説有難うございました。

私は、あんな駄文だったのに、良かったんでしょうか??