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君さえいれば
窓から差し込むオレンジ色の光は美しく、所々赤く見えるそれが赤い果実のように見える。
応接室へ注がれる光を背負うようにして座る雲雀を、
は神々しそうに眺めていた。
呆けたように見てくる
を、気遣わしげに雲雀は目を上げた。
「なに?」 「ううん、何でもない」
そう言いながら
は、書類整理に戻る。
慌てたように再開された作業に雲雀は、別段気にするでもなく再び手を動かした。
は、そんな雲雀の様子を横目に見ながら内心で胸をなで下ろす。
正直、
は雲雀が苦手だった。
威圧するような瞳と他人の視線など気にせず行動する態度と動作に、ただただ
は萎縮するばかりだ。
そんな
が雲雀のいる風紀員に入ることになったのはこの学校に、双子の兄と共に入学したときだった。
兄は自分とは全く違い、勉強もスポーツも並以上で、喧嘩も強い。
そんなことから兄は、他校の生徒相手に大立ち回り、連戦連勝を重ねてきた。
当然、弟ということで
も他校から喧嘩をふっかけられることが多々ある。
その時はいつも兄が助けに来てくれていたのだが、そんな兄を格好いいと思う反面、足手まといな自分をいつも責めていた。
背中に隠れるだけな自分は、勉強も運動も並以上しなければ追いつかない。
何でこんなにも違うのだろうと責めて悩んでいたときに、雲雀に出会った。
名を馳せていた兄にどうやら喧嘩をしに来たらしく、
はその少し離れた場所で兄の鞄を手に持ちながら立っていた。
ただ胸が詰まるほどの静寂を抱きしめながら、二人を凝視していた。
兄には戦って欲しくはなかった。
兄が怪我をしたりして、平気な顔をしてくるのが苦しかった。
その時は、ただ無我夢中で
は兄と雲雀の間に分け入ったのだ。
当然後ろでは、驚きに目を見張り、息を止める兄と対峙した呼吸すら出来ないほどの殺気を込めて睨む雲雀。
ガタガタと震える足下、泣き出しそうになる弱い心。
じっと見上げる
を雲雀は何を想ったのか興ざめとばかりに、背を向けた。
そのまま崩れそうになる
を後ろで兄が支える。
すると、くるりと雲雀が振り返った。
意気消沈してしまった
は、不意打ちに振り向かれたのでただぽかんとする。
そして何を思ったのか、雲雀は
を風紀員に入れると言い出したのだ。
もちろん兄は反対したが、
は入ると言った。
入ることで、兄がもう怪我をしないのならいいと思ったからだ。
そして、現在に至る。
の主な仕事は、雲雀の傍にいて書類の整理をしたり、お茶を運んだりと言った雑務全般で、見回りと言った狩りには参加させられずに済んだのはホッとした。
周りの風紀員が
に対して何を思っているかは分からないけれども、こうして雲雀と二人だけで取り残されるとどうしていいか分からなくなる。
ただずっと無言でいるのは、耐えられなかった。
気の知れた仲ならいい。
無言でもいられる自信が
にはあった。
あまり人と話さず、引っ込み思案な
にとって気の知れない雲雀との時間は苦痛以外の何者でもない。
ため息をつくほど消沈しまった
は、ようやく半分ほど片づけた山を丁寧に正した。
ずっと下を向いていたために首が痛く、背中も痛い。
両腕を伸ばしながら、ちらっと外を見れば、そこには墨を流したような暗闇だった。
星が瞬き、腕に填めている時計を見れば6時を挿している。
何も言わずこんな時間になってしまっては、心配性な兄がココに乗り込んでくるに決まってる。
兄は、
が風紀員に入ってからというもの、元々過保護だったものに拍車がかかった。
門限厳守で、何があっても5時に帰ってこいというもの。
自分の娘を大事にする父親のような兄を
は、微笑ましく思いながら携帯を取り出した。
「沢田綱吉に電話するの?」 「!!」
心臓が飛び出そうなほど驚いて、
は雲雀を見る。
不機嫌そうに眉を寄せてくる雲雀に、
は無言で何度も頷く。
「送るよ」 「へっ!?」
何とも間抜けな声を上げている
を余所に、雲雀は流れるような動作で立ち上がり、スタスタと応接室の戸を開け放った。
「あの・・・」
どうしたらいいのか分からない
が、雲雀の背に声をかける。
「何してるの、早く来なよ」 「はっ・・・はい!!」
直立不動になって
は慌てて、傍に置いてあった自分の鞄をひっつかむと雲雀の後を追った。
***
そして今、
は雲雀の運転するバイクの後部座席にいる。
ギュッと雲雀の腰にしがみつきながら
は、見上げる。
風が彼の黒髪を靡かせ、
の一つに三つ編みした髪の毛も後方へ流れていく。
二人ともヘルメットはしておらず、
は自分ら中学生だよね、バイクなんて運転出来るのとか思いながらしがみついていた。
すると、急にスピードが落ちコンビニの前で立ち止まった。
「えっ・・・えっ!」
意味不明なまま、止まられ、雲雀は
の腕をふりほどくと一人店内へ入っていく。
後を追おうとした
を手で制止ながら、バイクから降り、一人それに寄りかかりながら待つ。
昼になれば燦々と輝いていた太陽も沈み、夕日も落ちた闇の世界は、比べものにならないぐらい風が心地よかった。
さきほども風を切っていたので、汗はかかずに済んだ
はふぅっとため息をついた。
流されている自分がいると思いながら、再び携帯を取り出した。
もちろん、雲雀に止められた結果になってしまった兄への電話だ。
ぎこちない操作で、携帯をいじりながら
は耳に押し当てる。
ワンコールしてすぐに、兄の声が聞こえてきた。
『
、今どこなの!?何時だと思ってるんだよ!!』
耳を離さなければならないほどの大音量で言ってくる兄に、ひたすら謝るしかない。
「今・・・雲雀先輩と・・・あっ!」
終わらないうちに携帯は高く上へと上げられてしまう。
雲雀は
の携帯を世にも五月蠅いものだと言う視線で、耳にあてた。
「君・・・五月蠅いよ」 『雲雀・・・お前、
に何してるんだよ』
電話越しからでも分かるドスの利いた声に、内心辟易しながら雲雀は言う。
「君、声変わってるよ」 『五月蠅い』
短く切って捨てた綱吉に、双子の弟へ向ける感情のあまりの違いに面白みを感じながらも、胸に沸々とした黒い感情が頭を擡げるのを感じる。
「まぁいいよ。もう少ししたら開放してあげるから」 『ちょ・・・っ!!』
五月蠅い声をこれ以上聞かなくて済むとばかりに通話を終了し、
に手渡した。
「あの・・・つっ!・・・・兄は?」
思わず常日頃呼んでいる呼び名で、呼びそうになり慌てて
は訂正する。
「君には関係ないことだよ。それより・・・コレ」
そう言って雲雀が出してきたのは、唐揚げだった。
「お腹空いてるでしょ?」 「えっ!!・・・・まぁ・・・はい」
何とも歯切れの悪い返答を返し、雲雀は楊枝で刺されている唐揚げを一つ、
へ差し出した。
おずおずと言った表現が似合うほどの動作で、それを受け取る。
パク。
ネズミがついばむようにして、食べる
に雲雀は何とも言えない気持ちで見ていた。
対する
は、やはり居たたまれず下を向く。
そして、雲雀も一つ口に放り込む。
妙な視線を感じて見れば、
が半分ほど残っている唐揚げを手に、ぽかんとしていた。
目が合えばすぐに反らされた。
それが何とも気に食わず、ぐいっと
に顔を近づけた。
「!!!」
心臓が口から出そうなほど
は驚いて、固まる。
目をこれ以上開けれないとまで開けて、凍ったように立ちつくし固まる
。
対する雲雀は、このままキスしたらどんなふうになるだろうかとふと、考えた。
ついっと手が伸ばされる。
は意味が分からないまま、雲雀になされるがままだ。
鼻と鼻が付きそうなぐらい近づけさせたとき、横合いから見知った声が聞こえた。
「
!!」
肩を大きく上下させながら息をする双子の兄−綱吉−がもの凄い形相で立っていたのだ。
「あわわわっ!!」
雲雀から引き離され、
は綱吉の後ろへと隠される。
「いいところなんだから、邪魔するのやめなよ」 「生憎ですが、
は俺のですから」
ニッコリと誰もが見れば、ノックアウトするようなとろけるような笑みを浮かべてはいるものの、見るものが見ればそれは背筋が凍るほどの代物だった。
頭一杯に疑問符を浮かべる
には、兄の後頭部と今にも襲いかかりそうな殺気を放つ雲雀の顔が見えた。
「まぁ・・・いいよ。次は邪魔しないでね」 「邪魔するに決まってるだろう?」
高圧的な笑みを見せると、雲雀は無言でバイクに跨ると、すれ違いざまに
を見た。
怯えている草食動物そのものだとばかり思っていた彼。
それなのに、胸に巣くうこの感情だけは名を付けることができない。
苦しいような嬉しいようなこの感情の名を。
走り去る雲雀を二人は見送ったあと、先を歩く綱吉を
は慌てて追った。
「待って!!」 「あっ・・・ゴメンね」
いつもの兄に
は安堵する。
さっきの兄は兄でいて兄ではないような気がしたから。
「つーくん、あのね・・・雲雀先輩は・・俺に」 「唐揚げ買って貰ったんでしょ。見てたよ」
次の言葉に詰まった
に、綱吉は両手を強く握りしめる。
彼は知っていて
にキスをしようとしたに違いない。
この少し遅れて歩く大切な弟に、自分以外が手を出すなんて考えたくもない。
「
は・・・雲雀さんのことどう思う?」 「ひっ・・・雲雀先輩のこと!?えっ・・・あの・・・怖い」
明らかに動揺した
に、一抹の疑問が湧いたらどうやらそれは違うようで、ただ単に
は彼が苦手なのだろう。
「俺には・・・つーくんがいれば・・いいよ」
ギュッと服の裾を掴む
は、若干顔が赤かった。
何を心配することがある。
何を不安になることがある。
この10年、俺がいなければ何も出来ないと安易に仕込んできた
を誰が手放すというのだ。
「うん・・そうだね」
そう言って、
に言い聞かせた不安を解消する方法として教えたキスをしてやる。
触れ合うだけのものだった。
ただ単なる興味があった。
性の興味がたまたま弟へ行って、そしたらもうどうにもならないほどまでに、愛しく、手放したくはないと思ってしまったのだ。
キスをするとき、息を止めるのは
の癖だ。
それが愛おしくて、綱吉は
を抱きしめる。
誰にもあげないよ?
この世でたった一人の愛する人を。
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幻日天化ーげんじつてんかー 三島さまよりお祝い小説頂いてしまいました。
リボーンの男主人公の夢小説です!!
我が侭言って、ツナさんと雲雀さんで主人公の取り合いをお願いしたのですが
ヒバさんがかっこよくて、素敵です!!最後にツナさんが全ておいしいポジションなのがつぼでした。
この話しの元が知りたい方は、今すぐ三島様のHPにレッツゴーですよ!!
素敵な小説、本当に有難うございました。
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