帰ってきて欲しい人なんて居ない。
 だって、俺はずっと一人だったんだから……。



「これが、迎え火?」

 お盆と言う事で、何処もその準備がなされている。
 死んだ人間を出迎える為の火を灯す。

「一応行事だからその準備に今日から灯すんだよ」

 俺の質問に、は笑顔でそう言って灯されたのは一つの綺麗な細工のされた提灯。
 ポワリと灯されたその明かりは、ぼんやりと暗闇の中浮かび上がる。

「今日から里のどの場所にも見られる光景だな」

 灯された明かりを見ながら、が何処か複雑な表情で呟いた。
 こんな明かりで死んだ人間が戻って来られるんだろうか?

「本当は、これはナルトの為の提灯」
「えっ?」

 灯されている明かりを見詰めていた俺は、突然言われたその言葉に、意味が分からずにを見た。

「この明かりを頼りに、ナルトの両親がここに来てくれればいいなぁって……迷惑な事かもしれないけどな」

 俺の視線に、が困ったような笑顔を見せながら言ったその言葉に、俺は瞳を見開いてを見詰める。

「四代目も、その奥方も、帰って来にくいのは、迎え火準備してない所為かもしれないだろう」

 フワリと笑うに俺は何て返していいのか分からずに、ただその姿を見詰めた。

 ずっと一人で誰も迎え入れる人なんて居ないと思っていた俺に、そんな事はないのだというように言われたそれ。
 そう、確かに俺はずっと一人だった。
 だけど、だからって俺を生んでくれた両親が居ない訳じゃないのだ。

「……俺にも、迎えなきゃいけい人が居るんだな……」

 ずっと一人で生きてきたから、そんな簡単な事にも気付かなかった。
 だけど、それを気付かせてくれた人が居る。
 その人は、今の俺にとって誰よりも大切な人。
 自分に帰る場所を与えてくれた人だ。

「勿論。だから、一緒に迎えてやろう。ここがナルトの新しい家だって、教えてあげなくっちゃな」

 人を温かくしてくれるようなそんな笑顔で言われた言葉に、俺もただ笑顔を返す。
 灯された光は、ただボンヤリと暗がりの中浮かび上がっている。
 だけどそれが、大切な誰かを迎える為のものだと言う事を教えてくれた。

 なぁ、俺を生んでくれた人達。
 俺は、今幸せだから、だからそれを見に帰ってきてくれよ。
 迎え入れる為の準備をちゃんとするから……。

 
 迎え火は、大切な人を向けるための明かり。
 今の俺にも、帰ってきて欲しい人が居るのだとそう思い出させてくれた事に感謝しながら、大切な人と一緒に待っていよう。
 俺をこの世界に生み出してくれた人達を……。