テレビを見ていると、この時期になると怖い話と言うモノが頻繁に特集が組まれるようになる。
 だからと言う訳じゃないと思うんだけど、何もここでそんな話しなくってもいいじゃねぇかよ。


「やっぱり、キャンプと言ったら怪談話でしょう!」

 爽やかな笑顔と共に、その笑顔とは似合わない言葉を聞いて、俺はピキリと固まった。
 いや、そんな道理は聞いた事ないから……。

「階段だってば?」
「そう、怪談よ怪談!」

 女の子二人は、楽しそうに笑いながらナルトに返事を返している。
 俺の気の所為だろうか、今ナルトが言ったのって、明らかに言葉のニュアンスが違ったように思うんだけど、誰も突っ込まないって事は、やっぱり気の所為??

「折角の3班合同キャンプ。ここは親睦を深める為にしっかりとお話しましょう」
「い、いのちゃん、サクラちゃん、本当にお話するの?」

 楽しそうな二人と違って、今回初めて一緒に行動する事になった8班の紅班の一点である日向ヒナタが、恐る恐る質問。
 いや、何かヒナタ見てるとこう小動物思い出すかも……ビクビクとしてる姿が、構いたくなるって言うか……じゃなくって、今はそんな話じゃないよな。

「で、でも、女の子達はその、そろそろ自分達のテントに戻らないと……」
「何言ってるのよ!こんな時でもないと、サスケくんと一緒に居られないじゃない!!」

 慌てて言った俺の言葉に、いのがサスケの腕に抱きつきながら返事を返してくれた。って、それが本音かよ……。

 いののその行動に、サクラも空いている方の腕に抱き付く。そして、何時ものようにサスケを間に挟んでの喧嘩が始まった。
 いや、うん、サスケはかなり迷惑そうだって事、気付いてあげようよ二人とも…。

「んで、親睦深める為に怪談かよ。まぁ、夏の夜にはピッタリだから俺は別にいいぜ」

 小犬を頭に乗せて、こちらも8班である犬塚キバが、楽しそうに口を開く。その隣では、同班の油女シノも無言で頷いていた。

「だから、階段ってなんなんだってばよ!大体、ここには、階段なんてねぇてば」

 そんな何時もの情景が繰り広げられている中、ナルトが分からないと言うように声を荒げる。

「いや、おめぇが言ってるのとは、明らかにちげぇだろう。怪談つーのは、ホラー話。ようするにだ、こいつ等は、めんどくせぇが、こわい話をしようつーってんだよ」

 分かっていないナルトに、シカマルが呆れながら説明。

 って、もしかしてナルトって、怪談を別変換してたのか?
 やっぱりニュアンスが違うように聞えたのは、気の所為じゃなかったって事だな。

「えっ?そうなんだってば?だって、いのが階段って言ったってばよ??」

 シカマルの説明を聞いて、ナルトは不思議そうに首を傾げている。
 いや、確かに言ったけど、変換間違ってるぞ、ナルト……。これじゃこわい話じゃなくって笑い話だと思うのは、俺だけか?

「誰が、階段なんて言ったのよ!私が言ったのは怪談よ、怪談!!もう、気分壊れるじゃない」

 まだ納得出来ないと言うようなナルトに、いのが呆れたように盛大なため息をつきながら突っ込みを入れる。

「う〜ん、ナルトらしいんだけどねぇ」
 そんないのとナルトの様子に、ほのぼのとお菓子を食べながら言うのは、俺の癒し的存在、秋道チョウジ。

「俺は、そんな事に興味はない。お前等で勝手にしろ」

 いのとサクラに挟まれていたサスケは二人の腕からスルリと回避して、その場を去ろうと立ち上がった。

「って、サスケお前ってば、こわい話ダメなんだろう!」

 そんなサスケに気付いて、ナルトが元気良く突っ込み。
 いや、俺的にもこわい話を聞きたくないから、この場から去ろうとしたんだけど、今のナルトの言葉にそれが出来なくなってしまう。

「ウスラトンカチ、誰に向ってそんな事言ってるんだ!」
「サスケに決まってんじゃねぇか!だって、ここから逃げ出すって事は、怖いって事だってばよ」

 ナルトに言われたそれに、サスケは予想通りの反応を返す。
 いや、そう言う所は本当に負けず嫌いだよなぁ……。うん、年相応って言うか、子供らしいと言うか……。

「誰が、怖いんだ」
「サスケが、怖がりだって言ってんだってばよ!」

 こちらも、何時ものように言い合いに発展したナルトとサスケを前に、俺は小さくため息をつきながらそんな二人を見守った。

「これだけ人数居りゃ、誰か一人は怖い話も知ってんだろう!」

 だけど、既に回りの人達は怪談をする気満々らしく、キバが嬉しそうに口を開く。

「そうねぇ、とか、何となく知ってそう」

 話しに加わらずに傍観をしていた俺に、突然いのが声を掛けてきたので、驚いて顔を上げた。

 つーか、多分当てずっぽうだと思うんだけど、しっかりと確信をつかれた気分だ。
 俺って、そんな雰囲気を持っているんだろうか??

「えっ、僕ですか?僕は、その件に関しては、怖い思いをした事がないので……」

 いのに声を掛けられて、俺は慌てて返事を返す。

 まぁ、それは本当の事だ。
 本当の恐怖を知っているからこそ、俺にとって幽霊なんかでは、怖いと思えないのだ。

 心霊体験と言うのであれば、山のように経験はしてるけど、怖い思いをした事がないと言うのは、本当だからな!

「その件ではって、それじゃ幽霊話は何かあるって事?」

 慌てて返事を返した俺の言葉に、いち早く反応を返してくれたのはサクラ。
 いや、確かに、その件ではって言ったけど、そんな突っ込みしなくっても……、深い意味があった訳じゃないかもしれないだろう。

「そうねぇ、確かにそう言ったわね。って事は、知ってるんでしょうこわい話!」

 女の子は、基本的に怖い話が好きなのだろう。
 でも、怖い話をそんなに嬉々として聞かれる日が来る事になろうとは……。

 それに、俺は言ったよな。その件に関しては、怖い思いをした事がないと!
 そんじゃ、俺が話すのは怖い話じゃねぇって事にはならないのか??

 そう思ったが口に出す事はせずに、俺は小さくため息をついた。
 きっと、ここで言い訳しても、あれやこれやと話を聞きたがる事は容易に想像出来る。
 だったら、そんな馬鹿な事を考えた者達に、その恐ろしさを知ってもらえばいい。

 そう、本当の怖い話を、知ってもらえばいい事だ。

「……そうですね、それじゃまずは、こわい話をする前に、実は僕には一般的に言われている、霊感と言うモノがあるんです」
「れ、霊感って、って見えるのかよ!」

 思いついたら即行動、後はその恐怖に、彼等を導いてやればいい。
 そう考えて、口を開いたそれに、一番に反応したのはキバだった。

 勿論、言った言葉は嘘じゃない。
 一族である俺に、霊感が無かったら、仕事になんねぇつーの。

「はい、実は子供の頃からそう言うのをずっと見てきたんですよ」

 ニッコリと爽やかに言う事じゃないとは思うんだけど、そう言った俺の言葉にナルトとシカマル、そしてチョウジ以外の人間が息を飲んだのが分かった。

「そうなんだ。やっぱりって、只者じゃないと思ってたんだ」

 驚きも見せずに、誰も言葉が出ない状態の中、何時ものようにお菓子を食べながら感心したように返してくれたのはチョウジその人である。
 いや、普通はそんな感心して言う事じゃないと思うんだけど……。

「そ、それじゃ、ってば、ゆ、幽霊が見えるんだってば?」

 本当はその事実を知っているナルトが、恐る恐る質問してくる。
 律儀と言うかなんと言うか、ナルトって偉いよなぁ……。なぁんて感心しながら、ナルトのその質問に頷いて返しす。

「はい、今も見えますよ」

 ニッコリと笑顔を見せながら、しっかりとトドメの言葉。
 それにビクッと肩を震わしたのは、女の子3人と、男子数名。

 まぁ、そりゃそうだろう。面白半分で話をしようとしていたのに、ここに見える奴が居たとすれば、話が変わってくるのだ。
 こわい話をする時には、気をつけた方がいいって事、思い知らせてやろうじゃねぇか。