大体、気付かない。
まぁ、そう言うもんだよな。
何がって、祠とか塚の事。
だから、いのがそれに気付いたのにはちょっと驚いたんだ。
「庚申塚だわ」
ちょっと驚いたように言われたその言葉に、意外だと思ってしまった。
チョウジやシカマルは気付くだろうけど何も言わないから、いのが感心したように呟いた事に驚かされた。
そう言うのには、興味ないと思っていたから
「いの、庚申塚知ってたんだ……」
「何、私の事バカにしてるの?」
だから思わず素直に口に出してしまったら、ギロリと睨まれてしまった。
別段バカにしたわけじゃなかったんだけど、本当に意外だったから
「えっ!違うよ、そう言うのあんまり気にしないと思っていたから……」
「確かに、昔はあんまり気にしてなかったんだけど、最近そう言うのが気になるようになってきたのよね」
『どうしてかしら』と、続けたいのにまたしても驚かされてしまう。
もしかして、俺がこの班に入った影響が出てしまっているのかもしれない。
いのに気付いてもらえた事が嬉しかったのだろう、今だって、そこに祭られている小さな神が手を振っているのが俺には見えるから
「小さいことに気付く様になることは、いい事じゃねぇか」
そんないのにアスマ上忍はいい事だというければ、本当にいいことなんだろうか
だって、小さい事に気付くという事は、それだけそちらの世界を垣間見てしまう事にも繋がってしまうのだから
「それもそうね」
アスマ上忍の言葉に納得して、満足そうに頷くいのを前に複雑な表情をしてしまうのは、止められない。
ああ、もうそろそろ、潮時なのだろうか。
表には、もう居られない。
俺が、居る事で歪みが出来るから
「?」
小さくため息をついた俺に気付いたのだろうチョウジに名前を呼ばれて顔を上げる。
「顔色悪いけど、大丈夫?」
顔を上げた俺に、さらに心配そうに質問してくるチョウジに曖昧な返事を返して、もう一度詰めていた息を吐き出した。
楽しいとそう思える、当たり前の日々。
だけど、それは俺にとっては偽りの世界。
自分の体に対しての違和感。
だからこそ、もう表の世界には居られないとそう思ったのだ。
いのに認めて貰えたことが嬉しくて、手を振っている小さな神を見詰めながら、俺は心の中で決意した。