「あれ?」
何時ものように戻ってきた家で違和感を覚える。
『お帰り、ナル』
出迎えてくれるのは、黒猫の姿をしている『夜』。
「た、だいま……」
それにぎこちなく返事を返したのは、違和感が何か分からなかったから……。
『どうしたの?』
キョロキョロとその違和感の理由を探そうと辺りを見回している俺に、『夜』が不思議そうに問い掛けてくる。
「いや、何か可笑しくねぇ?」
その問い掛けに、なんと返していいのか分からずに、でも疑問は拭えないのでそのまま問い返す。
『えっ?ボク、何か変??』
だけど俺の質問に、『夜』は全く違う心配で返してきた。
自分を振り返るように質問してくる『夜』に、俺は思わず苦笑を零す。
「そうじゃなくって、なんて言うのか……違和感が……」
何がどう可笑しいのか分からないけど、違和感が拭えないのだ。その原因が今だに分からないから、俺は素直にそれを口にした。
『違和感?………ああ、もしかして、『昼』が居ないからじゃないの』
そして、『夜』から返された言葉に、俺は思わずポンッと手を叩いた。
この時間に戻って来た時、『夜』がキッチンでお茶の準備をしている事は良くあっても、『昼』の姿が見当たらないと言う事は殆ど無い。
それに、『夜』がこの場所に居るのに、お茶の準備がされて無い事に違和感を覚えたのだ。
「今日は、お茶の準備しないのか?」
違和感の理由が分かって、俺は満足して頷いてからソファに座って『夜』へと質問。
『今日はね、『昼』が準備してるんだよ』
「『昼』が?珍しい……」
『もう直ぐ準備終えてくると思うから、楽しみにしててね』
何処か楽しそうにしている『夜』に、俺は訳が分からないと言うように首を傾げてしまう。
滅多に無いこの状況は一体どう言う意味があるんだろう?
「そう言えば、も居ない」
『は、『昼』と一緒にお茶の準備をしてるよ』
まぁ、姿が見えないからそうだと思ったんだけど、やっぱり『夜』が楽しそうにしている意味が分からない。
『出来たぞ!』
状況が分からずに首を傾げている中、突然乱暴にドアが開いてその頭に巨大なお皿を載せて入ってきた『昼』の姿に俺は思わず呆然としてしまった。
その巨大なお皿に乗っているのは、これまた巨大なホットケーキ。
『わ〜い、『昼』有難うねvv』
そんな巨大なモノをドンと机に置けば、嬉しそうに『夜』が『昼』にお礼を言う。
「な、何でこんな巨大なホットケーキが・……」
だけど、やっぱり状況の分からない俺は、ただ目の前に置かれているそれにただ驚いて問い掛ける事しか出来ない。
『今日はね、ボクがちょっと我が侭言ったの。『昼』の作るホットケーキが食べたいって』
そんな俺の質問に、『夜』が当然のように返してくれるけど、それでもやっぱり訳が分からない。
『昼』のホットケーキが食いたいって、それで何でこんなに巨大なホットケーキが出てくるんだ??
「ナルト帰ってきたんだ。調度良かったな。『昼』特性のホットケーキが出来たところだから、一緒に食おうぜ」
訳が分かっていない俺に、お茶の準備をして入ってきたが楽しそうに声を掛けてくる。
『昼』特性のホットケーキ??いや、確かに特性って言うか、特大だけど、なんでこんなに大きいんだってばよ……。
『あのね、このホットケーキはね。『昼』がの為に作ったんだよ。昔がまだ小さかった時にね、絵本を読んでたの。絵本の中でね小さなねずみが作ってたのはカステラだったんだけど、字が読めなかったはね、それをホットケーキだと思って、こんな大きなホットケーキ食べたいって言ったのが始まり』
当時を思い出しているのか、楽しそうに言われる言葉に思わずを見れば顔を少し赤くして照れているのが分かった。
そっか、にもそんな時期が合ったんだなぁなんて、変な事に感心してみたりして……。
「それで、俺の為に『昼』が作ってくれたのが始まり。んで、時々このホットケーキが食べたくって作ってもらうんだよな。食べてみろよ、お勧めだから」
そう言ってフォークとナイフを渡される。
それを素直に受け取って、俺は目の前の巨大なホットケーキを一口に切って食べてみた。
確かにが進めるだけあって、すっごく美味しい。
『器のガキ、滅多に無いことだから、味わって食うんだな』
感心していた俺に、偉そうな『昼』の言葉が聞えてきてそちらを見れば、少しだけ照れているという珍しい『昼』の姿を見ることが出来た。
違和感を感じたこの日。
少しだけ、また彼らに近付く事が出来た。