任務も終わって、急いで里へと帰るその道。
シカマルは、ふと思い出して口を開く。
「そう言やぁ、明日っからの奴が下忍任務に加わるらしいぞ」
突然のシカマルの言葉に、全力疾走と言う訳ではないが、それなりに急いでいたナルトの足がピタリと止まる。
「そ、そんなの俺は、聞いてない!!」
「俺も、今日アスマから聞いたつーの」
ナルトが突然立ち止まった事で、シカマルも同じようにその場に立ち止まれば、行き成り大声で文句が言われる。
それにシカマルは、ため息をつきながらも返事を返した。
「なぁ、それって、合同任務か?」
「いや、んな事は聞いてねぇ、多分通常任務だと……」
そんなシカマルの態度など全く気にもしないで、ナルトが問い掛ければ、否定される言葉。
それに、一瞬膨れ上がる殺気。
その殺気に、シカマルは言葉を続ける事が出来なかった。
「じっちゃんの奴、約束破るつもりだな!」
顔は笑顔で、それでも綺麗な殺気を放つナルトを前に、シカマルは複雑な表情を見せた。
「あ〜っ、何だよ、その約束てぇのは……」
しかし、気になるその言葉に、面倒臭そうに問い掛ける。
「約束は、約束だ!」
「いや、んなんじゃ、分かる訳ねぇつーの……」
問い掛けた自分に返されたのは、意味の分からない当然と言えば当然な答え。それに突っ込んで、シカマルは呆れたように、ため息をつく。
「今すぐじっちゃんの所に文句言いに行くぞ!」
そして、決めたとばかりにまたその足が動き出す。
「いや、俺は帰って寝てぇつーの」
「ほら、シカマル行くぞ!!」
言われた言葉に、シカマルが小さく文句を言うが、勿論聞き入れられる事はなかった。
完全に無視されて、先を促され、あれよと言う間に、無理やり瞬身の術によって引きづられたシカマルは、気の毒だったかもしれない。
「じっちゃん!どう言う事だよ。の下忍任務の初回は、絶対に俺の班と合同って約束してただろう!」
火影室に窓から忍び込んだ瞬間、殺気全開状態で、ナルトが三代目相手に文句を言う。
突然の来訪に、三代目は驚きながらも、言われた内容に頭を抱え込んだ。
「仕方あるまい。今回は、急じゃったから、今度の時は、合同……」
「駄目だ!約束は約束だからな、の初任務は、合同任務。それが出来ないんなら、合同演習だ!」
何とか納得してもらおうと口を開いた三代目のその言葉を遮って、バンッと机を叩きキッパリと言葉を返すナルトに、三代目は困ったような表情を見せる。
無理矢理連れてこられたシカマルは、そんな目の前の遣り取りを聞きながら、『約束』の内容を理解した。
確かに、そんな話をしているのを聞いたような気もする。
事実、自分はと同じ班になったが、ナルトがそんな約束をさせた理由が分かるだけに、複雑な気持ちは隠せない。
漸く、表でも係りを持てるようになるのだ。
だから、出来るだけ早く会いたいと思うのは仕方ないだろう。
ずっと待ち望んでいただけに、その我侭は当然の内容。
勿論、火影を脅してまでの内容かどうかは、謎だが……。
「じっちゃん、約束守らないって言うのなら、俺は暫く仕事ボイコットするからな!!」
そして、最後とばかりに言われたそれに、ピシリと三代目が固まったのが分かった。
木の葉の里最強の『光』が任務ボイコットしたら、大変な事になるだろう。
だが、その相棒は、その言葉に仕事が休めると素直に喜んでいたのは、彼の心の中だけに留まった。
「そ、それは困る!」
「イタイケナ子供相手に、横暴な任務量渡しといて、何言ってる!だったら、ちゃんと約束守れ!!」
ナルトの言葉に慌てる三代目に、冷たく返されるそれ。
それに、三代目は考え込む。
「………分かったわい。約束通り、明日は合同演習に切り替える。これで文句はなかろう!!」
「分かればいいんだ。それじゃ、ちゃんとアスマとカカシに言っとくけよ!」
納得した三代目に、機嫌良くナルトが言葉を返す。
それに、三代目は、疲れたようにただ素直に頷いた。
そんな遣り取りを黙ってみていたシカマルは、盛大なため息を付く。
気持ちは分からなくもないが、こんな面倒な事は、自分なら絶対にやらない。
もっとも、それをナルトに言えば、同じ班だからだと返されるだろう。
本当は、表では一番に話をしたいのだ。
それが望めないのなら、せめて同じ日に話が出来るようになりたい。
裏だけでは満足できないからこそ、そう思うのだ。
こうして、次の日。
の下忍第一日目は、七班との合同演習となった。
突然の変更となった理由を知っているのは、三代目火影、そして、その三代目を脅した相手と、それに巻き込まれた者の、たった三人だけである。