そんなこんなで、作戦会議中。
 いや、何と言うか俺ってば本当に、墓穴堀の大天才なのか?!

「で、どうすんだ?」
「何時ものようにあんたが作戦考えなさいよ」

 シカマルが不機嫌そうに問い掛ければ、山中のお嬢さんがキッパリと返す。

 うん、俺は黙って従うから、シカマルくんがサクサクと決めちゃってください。
 どこか遠い目をしながら不本意だけど、作戦会議の輪に加わってる俺の内心はそれに尽きる。

「そんなんじゃ、意味がねぇだろうが。こいつは、戦略担当で俺等の班に入ったつーんだから、こいつに決めさせちまった方がいいだろう」
「そうだってば!アスマ先生も言ってたってばよ!だから、ここはが作戦考えるべきだってば!」

 いや、何でそこで、『だから』で締め括られるんでしょうか、教えてくださいナルトさん……。

 俺ってば、見学人のはずだったのに、何でこんな事になってんだ?
 俺が、ナルトとシカマルを同じ班として考えたのが間違いなのか、そうなのか?!

、何か考えないってば?」

 自分の疑問に答えてくれる人など居ないと、分かっていても考えずには居られない。
 そんな中、俺へとナルトが問い掛けてきた。
 その目は何処か嬉しそうに見えるのは、決して俺の気の所為ではないだろう。

「……あの、ボクはそんなに皆さんの事を知っている訳じゃありませんから、作戦を考えるのには向かないと思うんですけど……」
「そりゃそうよね。皆下忍になって数ヶ月は経っているんだから、お互いの性格や能力を知っている訳だけど、今回初めて演習に参加している人間にそれを求めるのは酷ってものよ。だからやっぱりシカマルが作戦考えなさいよ」

 山中のお嬢さんが、俺の言葉に納得してくれてシカマルへと命令口調。
 でもそれは、俺にとっては有難いお言葉なので、内心ではお嬢さんの言葉に大きく頷いていた。
 そんな俺を知ってか知らずか、シカマルは盛大なため息をつく。

「あ〜っ、つーってもな、俺もこいつの能力を知っている訳じゃねぇから、どう使うかなんて分かる訳ねぇだろうが……」

 そして、俺を指して頭を掻く。

 うん、表のシカマルは、俺の事を知るはずがないつーのも、本当の事。
 だって、表の俺は、体が弱くって、演習には殆ど参加していなかったのだから、能力を知っている方が変だ。
 いや、うん、体力ねぇけど、クナイ投げは人並み位の命中率は見せていたし、体術も殆ど不参加だったけど、何回かは参加した事がある。
 だから、俺の能力を知っているのはイルカ中忍ぐらいかも知れねぇけど……って、ここに居ない人を頼っても、意味がないって事は、俺自身が一番良く分かっているんだけど、表の俺の能力って全くそんな設定を考えてなかった。

 その事実に気が付いて、俺は内心冷や汗をかく。
 だって、下忍になる事なんて考えてなかったんだから、そんな設定必要なかったんだよ!!

「ご、ごめん。ボクやっぱり皆の足を引っ張るよね……アスマ上忍に話して、見学させてもらうから……」

 事実に気付いて、俺は慌てて言い募る。
 このまんまじゃ、本気で役立たずなのは目に見えて明らかだ。

「何言ってやがんだ。もう決まっちまったんだから、めんどくせぇつーっても参加は必須だろうが……」 

――どうした、諦めたんじゃねぇのかよ?

 そんな俺に、表では頭を掻きながらため息をつきつつ、心話でシカマルが問い掛けてくる。

「そうだってばよ!折角の演習なんだから、皆でがんばるってば!」

――そうだな。もう諦めるのが早いって。

 シカマルに続いて、ナルトまでもが声を掛けてくるが、それは複雑な心境のまま心の中だけでため息をついた。

――俺、下忍なんて考えてなかったから、表の俺の能力なんて知らねぇんだよ……。

 内心盛大なため息をついて、俺が慌てた理由を二人に話す。
 それに一瞬ナルトとシカマルが、動きを止めたのが分かったけど、仕方ねぇじゃんか、俺ってば下忍になる気全くなかったんだぜ。

――筆記は、春野を上回る堂々の一位だつーのに、そう言えば実技の方は殆ど不参加だったもんな。
――そうなんだ?俺、の事知らなかったから分からないけど、でも卒業試験には受かってるんだよな?
――一応…分身の術は基本の基本だったから、少ないチャクラでも何とかなるしなぁ……。

「そうよねぇ、助っ人て言うくらいなんだから、サクラ達に勝てるだけの能力を持っているって事なんでしょう。やっぱり負けたくないから、居てもらわなくっちゃね」

 内心の俺達の会話を知らない山中のお嬢さんまで、しっかりと俺が抜ける事を反対してくれる。

 いや、助っ人じゃねぇから、どっちかと言えば足手纏い……。
 体弱い人間、遣おうとすんじゃねぇよ!

「諦めて、参加してもらうぜ。んじゃ、めんどくせぇが、今回は俺が作戦を考える。しっかり聞けよ。んで、お前は気が付いたところで意見を言ってくれ」

 人に反論できないように話を纏めたシカマルが、しっかりと軍師の表情をする。
 いや、うん、聞くのはいいんだけど、意見って……だから、俺がそこでスラスラ言っちゃうとやばいんだって、俺は誰の事も詳しく知らない設定なんだぞ!

「まずは、こいつにも分かりやすいように、お前等と俺の得意な忍術を説明してやる」

 内心文句を言う俺に、シカマルがまるで聞いていたかのようなその言葉。

「そうね、私は相手の心に入り込む術が得意かしら……他の術はまだ修行中だけど、これだけは成功率は高いわよ。一応アカデミーのくの一クラスでは実技はトップクラスだったわ」

 シカマルの言葉に頷いて、いのが自分の事を説明してくれる。
 流石に詳しい術の内容は、説明されないけどそれだけ分かれば十分だ。もっとも、彼女の父親とは何度か任務を一緒しているので、扱っている秘伝の術についても良く知っている。

「んじゃ、次は俺だってば!俺が得意なのは、『影分身』だってばよ。んで、後は『お色気の術』火影のじーちゃんや、イルカ先生はこの術に弱いんだってば」

 いのに続いて、ナルトも元気良く説明。

「お前なぁ、自分からんな事バラしてどうすんだつーの……術の名前教える奴がいるかよ……」

 だけど、しっかりと術を教えてくれたナルトに対して、シカマルが呆れたようにため息をつく。

「何でだってば、普通は教えないと分からないってばよ」
「あのなぁ、味方だからつーって安心してんじゃねぇよ。どこからその情報が漏れちまうか分かんねぇんだぞ」

 シカマルに呆れられたような態度を見せられて、ナルトが不機嫌そうに反論。だけど、そんなナルトに忍びとしての教えを説くシカマル。
 微笑ましい目の前の遣り取りに、俺は笑みを浮かべた。

「確かに、術を教えてくれたのは僕のことを信じてくれているって事だから、嬉しいんだけど、でも、シカマルの言う通りそれは危険な事だから、気をつけた方がいいよ」
「そうなんだってば?」

 楽しそうに二人の遣り取りを見ていた俺は、それでもナルトに対して優しく言葉を掛ける。
 そんな俺に、ナルトが不思議そうに聞き返してきた。だから、俺もただ笑顔で頷いて返す。

「うん。自分の術を教えるって事は、逆に弱点を教える事に繋がるんだよ。だから、この場合ナルトが得意とするのは、相手を撹乱させたり誘惑させる術が得意って事になる」
「お、俺の術ってば、相手を撹乱させたり誘惑させる術なのかってば?!」
「まぁ、大ざぱに言えば間違いじゃねぇな。誘惑つーのには、疑問がある気もすっけどよ」

 しっかりと優しく説明すれば、表のナルトが驚いたように聞き返してくる。今度それに答えたのは、俺じゃなくってシカマル。
 う〜ん、確かに『お色気の術』は、誘惑って言うイメージじゃないかも……悪戯メインの術なのは確かだよなぁ……。

「あんたってば、の言葉には、素直じゃない」

 感心しているナルトに、いのが意外と言うように言葉を掛けてくる。
 確かに、表のナルトにしては、すっごく素直に俺の言葉を聞いているように思う。でも、俺もそんなに表のナルトを知っている訳じゃないから、こんなもんだと思ってたんだけど……。

「サスケくんには、文句ばっかり言うのに、に対してはそんな事ないじゃない」

 言われた意味が分からないというようなナルトに、いのが続けて口を開く。
 あ〜っ、確かに、サスケに対してナルトは反発する態度を見せていた。
 でもそれは、自分の事を馬鹿にされれば、誰だって同じような反応をすると思う。
 ちゃんとした説明を受ければ、それは素直に聞き入れられるもんじゃねぇのか?

「当たり前だってばよ。サスケは、俺の事馬鹿にしてるけど、にはそれがないってば!」

 俺が考えていた事を、そのままナルトがいのへと返す。

「まぁ、普通はそうだろう……って、話が逸れてっぞ、時間ねぇから先に進むぜ……俺は、奈良一族つー事で、知ってたみてぇだし、説明はしねぇ。んで、お前が得意な事はなんだ?」

 ナルトの言葉に納得して、シカマルが頷くと話が元に戻される。
 そして、向けられた質問に、俺は小さく息を呑んだ。
 これは、俺に自分の能力を今ここで決めろと言っている。
 決まってないのなら、さっさと決めるしかないのだ。

「……僕は、アスマ上忍のおっしゃっていたように、筆記ならこの中では上位に入れると思います……クナイに関しては人並み程度だし…体術に関しては、人並みには動けるんだけど、体力がないから、足手纏いにしかならないかも……」
「んな事は聞いてねぇつーの……術では、これってのはねぇのか?」

 真剣に見詰めてくるシカマルに、俺は息を飲む。

 術……いや、それこそ本気で何にもねぇかも……―夢楽死葬―は、絶対に使えねぇし、『渡り』も同じ。
 禁術どころか、この里の人間誰も使えない術を遣う訳にはいかない。

「……僕のとりえは、完全に気配を消す事が出来るぐらいかな……術に関しては、チャクラの量が極端に少ないから、役に立たないと思う」

 意を決して、それだけを伝える。
 それぐらいしか俺には使えるモノがないと言う事を思い知った気分だ。
 本気で、なんかの術の練習した方がいいかも……xx

「気配消すのが得意って…それだけなの?」
「……多分、アスマ上忍やカカシ上忍にも分からないぐらいに消す事が出来ると思う」

 呆れたように言われたいのの言葉に、俺は困ったようにそれでも精一杯の言葉を返す。

「そんな風には、見えないってばよ……だって、の気配ちゃんとあるってば!」

 自分にも分かるぐらいだと呆れたように言うナルトに、俺は困ったようにナルトを見る。
 表の時は、出来るだけ気配を出すように頑張っているけど、俺は気配を消している方が楽なのだ。
 だから、こう言って置けば、普段からも気配を消す事が出来ると思ったから得意な能力と言う事で話をした。

「今は、気配を殺してないだけだよ。でも、普段から気配を消す事に慣れているから、皆には先に教えておくね」
「へぇ〜、そりゃ、便利じゃねぇかよ。使い方によっちゃ、戦力になるぜ」

 説明しながら、苦笑を零した俺に続いて、シカマルがニヤリと笑顔。
 いや、何かその笑顔、すっごく怖いんですけど……体力ねぇ、新人に何させるつもりだよ!

「んじゃ、大体作戦も決まったつー事で、説明すんぜ」