疲れてそのまま帰りたい気持ちは隠せないけど、まだ始まったばかりだと言われて、しぶしぶナルトの後に付いて向かった先に居たのは、うちはサスケを真中に言い争っている春野サクラと中山いの。

 それを見た俺の感想としては、うちはが気の毒だとそう素直に思ってしまう。

「おい、ウスラトンカチ!」

 四人揃って来た俺達に気付いたうちはが、するりと二人の女の子から逃げてこちらへと近付いてくる。

 ウスラトンカチって、誰の事だ??

「俺はウスラトンカチじゃねぇってばよ!」

 うちはの言葉が理解出来ずに思わず首を傾げた俺の耳に、ナルトの声が響く。

 うちはって、ナルトの事ウスラトンカチなんて呼んでやがるのかよ!!こいつ、口悪い……。

「んな事はどうでもいい。何勝手に居なくなってんだよ、このドベ!」

 ナルトの文句もそのままに、うちはは不機嫌そのままにナルトを睨み付けている。
 待たされている上に、あんな風に絡まれていたら、機嫌悪くなっても仕方ないかもしれないけど、だからってんな事言うか普通!!

 どんどん、機嫌が下降していくのが自分でも分かる。
 一度も話しなんてした事ねぇけど、うちはの噂ぐらいはいくら鈍い俺でも知ってるくらいこの里では有名な一族。
 いや、この里に住んでいて、うちはを知らない奴は、モグリだと言うぐらい有名な一族だ。
 悲劇の一族だか何だか知んねぇけど、だからって、人の事馬鹿にする権利は誰にもねぇはずだぞ。

――、落ち着いとけ。めんどくせぇから、サスケに喧嘩売るんじゃねぇぞ。あんなのは、日常だから無視しときゃいいんだよ。

 不機嫌になっていく俺に気付いたシカマルが、そっと心話で話し掛けてくる。
 それに俺は、チラリとシカマルへと視線を向けてから、ニッコリと笑顔。
 その笑顔をシカマルがどんな風に受け取るのか知らねぇけど、いい笑顔でない事は自分自身が一番よく分かっている。

「お話中すみません。本日アスマ上忍担当の10班に配属させて頂きました、 です。ナルトくんは、態々、僕達を迎えに来てくれたんですから、そんな風に言わないで下さい」
「ああ?何でお前が10班に居るんだよ……」

 ナルトとうちはの間に入るように、ニッコリと笑顔で挨拶すれば、話を邪魔されたうちはが不機嫌そのままに俺の事を睨みつけてきた。

 って、人の話聞いてなかったのかよ!今日から10班に配属になったってちゃんと言ったつーの、この馬鹿!!お前の方がよっぽどウスラトンカチじゃねぇかよ。
 内心で文句を言いながら、顔には笑顔を貼り付ける。

「言った通り、今日から配属が決まりましたら、うちはくんが存知上げてなくても仕方ないですよね」

 ニコニコと笑顔を見せながら、さり気なく嫌味を言う。
 その嫌味に気が付いたのか、うちはの表情が一瞬険しくなるけど、知るか。人の話を聞いてない方が悪いつーの!
 それに、ナルトへの暴言は、許せるもんじゃねぇんだよ!

――えっと、が、何か怖いんだけど……。

 後ろでナルトがシカマルへと心話で話し掛けているのが聞えてきたけど、無視。
 許せないモノは許せない!

「あ〜っ、睨み合っているところ悪いんだが、カカシの奴は当分来ねぇだろうし、先に演習始めるぞ」

 不機嫌そのまま、ニコニコと笑顔を浮かべたままうちはを見ていた俺に、アスマ上忍が呆れたように声を掛けてくる。
 それに、今にも俺に対して文句を言おうと意気込んでいたうちはは、その言葉を口にする事は無かった。

「ち、ちょっと待ってください!サスケくんの前にいるその子は……」

 そんなアスマ上忍に、春野が慌てて声を上げる。
 山中…じゃねぇ、いのと話していたから、俺の言葉聞いてなかったのかこいつも……頭良くっても、使いこなせなきゃ意味ねぇぜ。

「こいつは、うちはに対して言っていたように、今日から俺の班に配属が決まった だ」
「なんで、こんな中途半端な所属なんだ……こいつは、下忍紹介の時には居なかったぞ」

 ポンと俺の頭に手を乗せて、アスマ上忍が俺の事を春野に紹介してくれる。
 だが、その言葉に、不機嫌そうにうちはが、口を開いく。

「特別な事情って奴だ。まぁ、それは火影様にでも聞いてくれ。それじゃ、時間が勿体ねぇから演習始めんぞ」

 本当に面倒なんだろう、アスマ上忍が説明と言って良いのか簡潔に話して、先を促す。
 うん、まぁ、間違いじゃねぇと思うんだけど、その説明じゃ二人とも納得しねぇと思うんだけど……俺的には、そんなの嫌いじゃねぇんだけどさぁ……。

「そ、そうだってばよ!早く演習始めるってば!!」

 完全にうちはへの怒りが削がれた俺は、小さくため息をつく。
 そんな風に考えている俺の耳に、ナルトの声が聞えてきて、思わず首を傾げた。
 何か、ナルトが怯えてるような気が……気の所為か??

「ちょっと、アスマ先生、そんな説明じゃ分からないわよ!!ちゃんと説明してください」

 必死で演習を始めるように促しているナルトに、春野が予想通り納得してないと声を上げる。
 うん、普通はそうだろう。うちはも、春野の意見に賛成なのだろう頷いているのが見えた。

「説明ってもなぁ……こいつの頭が予想以上の出来で、そのまま埋もれさせちまうのが勿体無いつー意見から、俺の班で預かる事になった。は体が弱い事はお前等も知っているよな。その為、下忍つーっても、こいつは特別制度が設けられた下忍特待生ってやつだ」

 面倒だと言いながらも、しっかりと説明したアスマ上忍に、思わず拍手を送りたい。
 いや、表の俺のキャラじゃねぇから、心でしっかり送っただけだったけどな。
 アスマ上忍の言葉に、今度こそ二人とも納得したらしく意外だと言わんばかりの視線を俺に向けてくる。

「アスマ上忍の言うように、体が弱いので迷惑を掛けると思いますが、宜しくお願いします」

 そんな二人の視線を受けて、俺はぺこりと頭を下げた。そんな俺の急変した態度に、慌てて春野が頭を下げ返してくる。うちはは、俺を敵とみなしたのか、視線を顔ごと反らした。
 別に、俺もうちはの事を敵とみなしたから、嫌われても問題ねぇんだけどよ。人が挨拶してるてぇのに、無視かよ、本当にむかつく奴。

「理解したみてぇだから、今度こそ演習を始めんぞ。てぇもな、内容考えてねぇからなぁ……」
が入ったんなら、まず2班で別れて鬼ごっこでもしてもらえば、負けた方に が手を貸すって言うのはどうよ?」

 考えているアスマ上忍に言葉を新たな声が訪ねた。
 まぁ、気配は感じていたから驚かねぇけど、んな事より先に言う事ねぇのかこの上忍……。

「カカシ先生、遅いってばよ!!」
「今日はそんなに遅れてないでしょ」
「30分でも遅刻は遅刻です!」

 姿を現したカカシ上忍に、ナルトが直ぐに文句を言う。それにカカシ上忍は笑いながら、返事を返し続いて春野が文句を返した。
 いや、見事な連携プレイ。流石、日常なだけはあるな。うちはまで真顔で頷いているのにも、思わず感心させられた。

「今日は、頑張って早く来たのに、酷いと思わない」
「あ〜っ、酷いのはお前だ…ちょっとは早く来てやれよ」

 7班の冷たい態度に、カカシ上忍がアスマ上忍に文句を言うが、俺もアスマ上忍の意見に賛成だ。
 ナルト、気の毒だなよなぁ、こんな上忍で……。

「そんな事はもういいですから、早く演習を始めちゃいましょう!」
「そうだな。時間の無駄だ。そのウスラトンカチが言った方法でいいから、とっとと始めるぞ」

 って、上忍相手でもウスラトンカチなのか……う〜ん、カカシ上忍相手なら、その言葉間違ってねぇかも……。

「そうだってば!演習始めるってばよ」

 ナルトも元気に宣言。
 あ〜、やっぱり表のナルトって一生懸命で可愛いかも……勿論、本当のナルトも、すんげぇカッコ良くって可愛いんだけど……。

「んで、班は、このまんまで良いのかよ」
「ん〜、そうだね。やっぱりこのまんまじゃ面白くないから、公平になるように分かれてみようか……」
「どうやって?」

 俺の思考なんて誰も気付かずに、話が進んでいく。
 シカマルがまず質問すれば、拗ねていたと思われていたカカシ上忍がサラリと言葉を返し、それにいのが疑問を口にした。

「あの、えっと、こう言う分け方はどうですか……まず、春野さんと、シカマルくんを別の班にしてそれぞれ、能力を振り分ければ……」
「……どうして、その二人を別けるのか聞いてもいいかなぁ〜」

 何も考えてないって事はないと思うけど、俺が思わず声を掛ける。
 俺の言葉に、一瞬考えるような表情をしてから、カカシ上忍が質問してきた。

「春野さんとシカマルくんは、僕から見てなんですが、作戦を考える能力が高そうだからです。だから、まず作戦を立てられる二人を一緒にするのは、どうかと思ったんです」

 カカシ上忍の言葉に、キッパリとした言葉で返す。

「ああ、まぁ、間違いじゃねぇなぁ……ついでだ、今回の班分けは、お前に任せる」

 ニヤリと笑ったアスマ上忍の言葉に、俺は自分の失態を漸く理解した。
 黙っていれば、少しでも喋らずに済んだのに………。

――お前、時々本当に馬鹿だよなぁ……。
――がどんな班分けするのか、楽しみだ。

 自分の失態に内心頭を抱え込んだ俺の心に、シカマルとナルトが、しっかりと言葉を伝えてくれた。
 んな事、自分が一番分かってんだよ!!そりゃ、シカマルさんに比べれば、誰だって馬鹿だつーの!!
 自棄になって二人に聞えないように文句を言いながら、小さくため息をつくと自分の考えた事をそのまま口にした。

「僕の意見としては、春野さんの班には、チョウジくんとうちはくん。シカマルくんの班は、後のメンバーで……」
「って、待て!んな偏ったメンバーでどうしろつーんだよ!!」

 自分の考えを言った瞬間シカマルからクレーム。まぁ、そうだよな。
 俺的に考えても、本当はうちはをシカマルの班に入れたいと思ったんだけど……何か嫌だったんだよなぁ、ナルトとうちはを一緒の班にするのが……。

 バランス的に考えると、かなり偏ったメンバーになる。
 うちはとチョウジは、どちらかと言えば攻撃系。ナルトも一応攻撃系と言えるかもしれないけど、表ではドベで影分身しか取柄がない。いのもどちらかと言えば、諜報系に向く能力は持っているけど、攻撃系にはかなり弱いと言える。
 だからこそ、シカマルの文句は当然と言えば当然だろう。

「確かに、ちょっと偏ったメンバーになったけど、何か考えがあるのかい?」

 シカマルの文句に、カカシ上忍が質問。う〜ん、別に考えはねぇんだけど……ただ、ナルトとうちはを一緒の班にしたくなかっただけだつーっても、納得してくれる訳ねぇよなぁ……。

「いえ、考えがある訳じゃないんです……ただ、チョウジくんは、人を見る目が誰よりもあると思ったので……外見に囚われずに、春野さんをサポートしてくれると思いまして……いのさんを春野さんの班に入れなかったのは、女の子二人になるとどう考えても春野さんの方が大変だと思ったんです……す、すみません、こんないい加減な理由で……」

 あっ、今気付いた、俺シカマル達も、『くん』『さん』付けしてんじゃんか。
 苗字で呼んでないだけ、偉いかもしんねぇけど、後で絶対突っ込み入りそうだよなぁ……。

 おずおずと理由を話しながら、内心では違う事を考える。
 まぁ、んな事を真剣に考えるような内容じゃねぇしな。

「ん〜、謝る事は無いんだけど、それじゃちょっと偏り過ぎちゃうね。ナルトとサスケを入れ替えた方がいいかな」

 内心ため息を付いた俺の耳に、カカシ上忍の訂正が入る。
 言われた事で、分かった事。そう言えば、ナルトとシカマルを引き離す事なんて考え付きもしなかった。
 俺の頭では、二人はワンセットってインプットされてるみてぇだなぁ。
 まぁ、俺的には、どんなメンバーになっても見学だけだろうから問題ないだろう。だって、体弱い俺が過酷な演習に加われるはずがねぇもんな。

「ちょっと待て、折角だから、が考えたメンバーでやるつーのはどうだ。まぁ、それじゃ流石にシカマルが気の毒だろうから、そっちのチームにこいつを入れて、4対3って訳だな」

 自分には関係ないだろうと内心思っていた俺の耳に、アスマ上忍から信じられない提案。

 って、俺も演習に加わるのか??
 さっきのカカシ上忍の話では、俺初めは加わらなくっていいはずじゃ……。
 な、何か嵌められたような気がするのは、気の所為か??

――あ〜っ、も参加決定だよね。
――面白くなるな。

 内心疑問を感じている俺に、ナルトとシカマルの声が聞えてくる。


 ちょっとまて、俺は、体弱い足手まといの設定のはずだろうが!それが何て、サポート要因として参加しなきゃなんねぇんだよ!!!!