憂鬱だ。
こんなに天気がいい日だと言うのに、何でこんなに憂鬱にならなきゃいけねぇんだ。
アカデミーを卒業すれば、この仮の姿ともおさらば出来ると思っていたてぇのに、何で俺はこの眼鏡かけてさらに前髪で顔の半分を隠さなきゃいけねぇんだ?
前髪切らなくって、本当に良かった。
切っていたら、大変な事になってたよなぁ……。
もっとも、ここ暫く前髪で顔を隠すなんて事してなかったから、すげぇ邪魔。
それすらも、俺の憂鬱をさらに引き上げている原因かもしんねぇ。
もっとも一番の原因は、今向かっている先にあるけどな……。
「ねぇ、今日からこの班に新しい子が入るって言っていたわよね?特待生の下忍??下忍認定試験免除で、さらに体が弱いから、任務にも制限がかかるんでしょ、そんな子が忍者なんて務まるのかしら……」
集合場所で担当の上忍が来るのを待っていたいの・シカマル・チョウジは、昨日その担任上司から聞かされた事を思い出していた。
いのは、正直言って不満だと言うように口を開く。
「でも、免除されるぐらい特別な力があるって事だよね。確か、僕達とクラスは一緒だったんでしょう?」
「確かにそうらしいけど、記憶にないのよね。名前はなんとなく聞いた事あるような気がするんだけど……」
目の前で話される内容を聞きながら、シカマルはただ空を見上げる。
青空を横切っていくのは、白い雲。風に流されてゆっくりと動いていくそれを、何時ものように眺める。
「ねぇ、確かシカマルは一度話しをしていたよね。どんな人だった」
ポテトチップスを片手に、チョウジが話しに加わらない親友とも呼べる相手へと声を掛けた。
「ああ?別に普通だったぜ」
だが、そんな問い掛けにさらりと言葉が返される。
そして、視線はまた空へと向けられた。
「そんなので分かる訳ないでしょう!大体、もう直ぐ時間だって言うのに、アスマもその子も遅すぎるわよ!!」
そんなシカマルの態度が気に入らなかったのだろう、いのが文句を言い始める。
それは何時もの事なので、シカマルもチョウジも言葉を返す事はしなかった。
「…あの、えっと、ここが、下忍10班の集合場所でいいんでしょうか?」
しかし、それに新しい声が掛けられて、全員が驚いて振り返る。
そう、足音はもちろん気配さえ全く感じる事が出来なかったのだ。
既に下忍としてそれなりに頑張っている自分達を相手に、気配を感じさせなかったその人物は、薄茶色の長い前髪が顔の半分を隠していて、クロブチの分厚い眼鏡を掛けた少年。
身長は、150前後でぶかぶかの黒いTシャツに膝までのズボン。何処にでも存在しそうな地味な格好に、スタイル。
「何、もしかしてあなたが、?」
「あっ、はい、今日からご一緒に任務をさせていただく事になりました。です」
あまりにもぱっとしない少年に、いのが信じられないと言うように問い掛ける。
どう見ても、特別にすごい力を持っているようには見受けられない。
いのの問い掛けに、頷いて少年が頭を下げた。
「おう、みんな揃っているな!」
呆然と少年を見詰めている中、木の葉と共にこの班の担当上忍である猿飛アスマが姿を表す。
「お前が、だな。俺がこの班の担当上忍の猿飛アスマだ。こいつ等は、俺の事呼び捨てにしているから、お前も好きに呼んでいいぞ」
「分かりました。では、アスマ上忍、これからご迷惑お掛けいたしますが、宜しくお願いいたします」
現れて直ぐに、立っている少年へと声を掛ける。
声を掛けられた少年は、もう一度先程と同じように頭を下げた。
「お前等もちゃんと自己紹介しろよ」
そして、呆然としている自分の教え子へと声を掛ける。
「あっ、それは大丈夫です。同じクラスでしたので、皆さんの事は存じております。皆さん、有名でしたから」
だが、アスマのそれは、少年の言葉によって遮られた。確かに、同じクラスであったのなら、知らない方が可笑しいだろう。
もっとも、自分の教え子達の様子を見ると、知っていると言うようには見受けられないが……。
「ボクは、休みがちだったので、知らなくっても仕方ありません……下忍になるのも、ご迷惑をお掛けすると思ったので、お断りしていたんですけど、火影様から要請を受けまして、今日から下忍となりました。これからご迷惑をお掛けすると思いますが、宜しくお願いいたします」
「ちなみに、こいつの下忍認定試験は今まで前例はなかったんだが、筆記だけだ」
「筆記?そんなのサクラの方が上でしょう」
アスマの様子から、少年が困ったように口を開いて事情を説明する。
それを聞いて、アスマが付け足した言葉に、いのが呆れたように口を開く。
「いや、こいつはその春野よりも上だ。その頭脳だけなら、もしかしたら俺よりも上かもしれねぇな」
「そ、そんな事ありません!ボクは、体が弱いので、本を読む事しか出来なかっただけですから!!」
いのの言葉を否定して、言われたアスマのそれに少年が慌てて否定する。
そんな姿を見ていると、やはり頭がいいようには見受けられない。
「だから、こいつにはお前等の任務効率を上げるためにどう動くかを考えてもらう」
「戦略担当かよ」
「そうだ。お前でもその役は十分なんだが、お前は面倒臭がりでちっとも動かねぇから、こいつに任せる事にした」
アスマの説明を聞いたシカマルがボソリと呟いた事に、呆れたようにため息をつく。
そんな言葉に、シカマルは大きな欠伸を一つ。
「めんどくせぇから、楽が出来るつーなら何でもいい」
そう言って、直ぐ近くの木陰へと座り込んだ。
だらけ切ったシカマルの態度に、何時もの事ながらアスマは盛大なため息をつく。
「おい!これから任務だてぇのに、お前は……と言いたいが、今日は、火影様からの伝令で急遽7班カカシチームとの合同演習へと切り替わった。まぁ、…と、だったな……こいつの実力を見る為の演習だと思ってくれ」
「え〜っ、それならそのまま集合場所に行った方が早くサスケくんに会えたのに!!」
ポンッとの肩を叩いて言われた言葉に、いのが早くも文句を言う。
愛しのうちはサスケに会えると分かれば、彼女の行動は誰いりも早かった。
「ほら、早く移動するわよ!」
場所も聞かずに動いたいのに、座り込んでいたシカマルも重い腰を上げてゆっくりと歩き出す。
「そんなに慌てなくとも、カカシの奴が遅れてくるだろうからな。集合の指定時間にはまだ十分時間もあるぞ」
「問題はそこじゃないのよ!サスケくんが待ってるんだから!アスマ、集合場所は何処なの!!」
のんびりと歩く自分の上司に向かって、いのが睨みをきかせる。
そんないのの態度にアスマは苦笑を零して、待ち合わせの場所を口にした。
「第2演習場だ」
「第2ね!先に行くわよ!!」
場所を聞いて直ぐに、いのが走り去っていく。
それを見送りながら、残された男達は小さくため息をついた。
――
いのを見送りながら、ゆっくりと歩くシカマルはさり気なくの隣に立つと心話で相手へと話し掛ける。
――シカマル、あの山中のお嬢さんは相変わらずうちはサスケ一筋なのか?
名前を呼ばれて、はこっそりとため息をつきながらも、シカマルへと同じように声を返す。
当然のように返された声に、シカマルは「めんどくせぇ」と言いながらも小さく頷いた。
――何時もの事だつーの。着いた先で春野と喧嘩してるんだろうぜ、サスケを挟んでな。
呆れながら呟かれる言葉に、は思わず苦笑を零す。
それは、うちはサスケに対して、同情せずには居られなかった。
――それにしても、今の遣り取りだけで疲れた……表であんなに喋った事一度だってねぇよ、俺!
だが、それはほんの一瞬の事で、その次には疲れたように文句を言う。
の文句に、手を突っ込んだまま気ダルそうに歩きながら、シカマルは思わず苦笑を零す。
確かに、今まで一度として、が誰かと話をしている事を見た事がないので、それを否定することは出来ない。
普段なら、当たり前な事でも、慣れない行動は、疲れてしまうのは当然だろう。
「えっと、僕の事は知っていると思うんだけど、やっぱり自己紹介しておくね。僕は秋道チョウジ、宜しくね」
の文句に気付くはずのないチョウジが、お菓子を食べながらも声を掛けてくる。
それに、は一瞬で意識を切り替えた。
「勿論知っています。倍化の術で有名な秋道一族でしたよね。改めて宜しく、秋道くん」
チョウジに声を掛けられて、は少し驚きながらも、それでも和やかに返事を返す。
「俺は、奈良一族のシカマルだ」
「影を操る事で有名な一族でしたよね。宜しく、奈良くん」
そして同じようにシカマルが自己紹介をする。勿論、同じ歳では一番自分の事を知っている相手でも、表では、初めての自己紹介。
だから、ニッコリと笑顔を見せて、好感良く挨拶するのは基本。
「ああ、俺の事はシカマルでいいぜ。めんどくせぇが、同じ班になったんだからよ」
「うん、そうだよね。僕の事も、チョウジでいいよ」
表面上は面倒臭そうに頭を掻きながら伝えたシカマルのその言葉に、チョウジも同じように頷いて言葉を返す。
そんな二人を前に、今度は嘘偽りなく本来の自分の笑顔を向ける。
「分かりました、シカマルにチョウジですね。改めて、宜しくお願いします」
ふんわりとした笑顔で名前を呼ばれ、思わずチョウジが驚いてその足を止めた。
「どうしたんですか?」
突然立ち止まったチョウジに、は不思議に思いながらも、同じように足を止めチョウジを振り返る。
「な、何でもないよ。ねぇ、って、笑うとふんわりした空気になるんだね」
「はぁ?」
――おいおい、素が出てんぞ。
思いも掛けなかった突然の言葉だっただけに、思わず素っ頓狂な声を出してしまう。そんなに、シカマルが苦笑しながらも突っ込みを入れる。
シカマルの言葉に、は慌てて表情を元に戻した。
しかし、言われた内容が理解できずに、どうしても頭がうまく働かない。
表の顔で、そんな風に言われた事なんて一度もないから……いや、その前に表では、誰とも係りを持った事がないから、どう反応を返せばいいのか分からない。
「えっと、チョウジ、くん、それって……」
「チョウジでいいよ。うんとね。の笑顔って、ふんわりしているなぁって、シカマルもそう思わない」
驚いた為に思わず『くん』付けしたに、チョウジが笑いながらもしっかりと訂正して、更にシカマルへと同意を求める。
「ああ?言われてみりゃ、そんな感じだな」
――……そんな感じってどんな感じだよ!!
チョウジに問い掛けられた事に、シカマルが少し考えるような素振りを見せてから同意する。
それに、は心話で文句を言った。実際に口に出さなかったのは、感心出来る事かもしれない。
勿論、それが聞こえたシカマルはだけに分かるように、こっそりと笑みを浮かべた。
「お〜い、そこでほのぼの話しをするのはいいんだがな、早く行かねぇと、面倒な事になるぞ」
その笑みに、文句を言おうとした言葉は、呆れた様に聞こえて来たアスマの声によって邪魔されてしまう。
「ああ?何だよ、集合時間までまだあるんじゃねぇのか?」
アスマの言葉に、シカマルが面度臭そうに頭を掻きながら歩調そのままに問い掛ける。
「時間はあるんだがな、いのの奴が煩せぇだろうが」
「う〜ん、そうかもしれないけど、折角同じ班になったんだから仲良くしたいと思うのが普通でしょう」
「で、ですけど、山中さんは先に向かって居るんですから、待たせるのは可哀想ですよ」
シカマルの言葉に盛大なため息をつきながらもアスマが返事を返し、チョウジがそれにゆっくりとした口調で言葉を返す。
そんな彼等に、は慌てて口を挟んだ。
「あ〜っ、それに関しちゃ気にするな。いのの奴は今頃、春野とうちはの取り合い中だろう……あいつも気の毒にな」
慌てて言われたの言葉に、アスマがタバコの煙を吐き出しながらも説明する。
そのアスマの行動に、の表情が一瞬だけ複雑なものへと変化した。
タバコと言うものに免疫がない分、どうしても好きにはなれないし、下手をするとそれで咳を起こす事もあるのだ。
だから、それが思わず表情に現れてしまう。
「おい、アスマ、こいつ体が弱いんじゃねぇのか?だったら、タバコは不味いだろう」
そのの表情に気が付いたシカマルが、眉間に皺を寄せて盛大なため息をつきながらも、アスマへと咎めるように問い掛ける。
「おう、すまん、すまん。今度からは気を付けねぇといけなかったな」
「あっ、すみません。ボクの所為でご迷惑をお掛けする事に……」
シカマルに言われて、慌ててタバコを持っていた携帯灰皿に押し付けるアスマに、は慌てて謝罪した。
本当に、タバコが駄目なだけに申し訳ないと言う気持ちはうそ偽りのない事実。
そんなにアスマは笑顔を見せて、その頭を少し乱暴な動作で撫でる。
「まぁ、こればっかりは仕方ねぇ事だからな、気にすんじゃねぇぞ」
突然のアスマの行動に、は驚いてされるがままの状態で固まってしまう。
正直言えば、こんな風に大人に触れられた事などなかったから、どう対応していいのか分からないのが本音。
「禁煙出来ていいんじゃないの、アスマ先生」
満足するまでの頭を撫でたアスマが灰皿を胸ポケットに仕舞うのを横目に、チョウジがニッコリと笑顔で言葉を告げてくる。
「確かに、いのも同じような事言うと思うぜ」
チョウジの言葉に、シカマルがニッと笑顔を見せながら、ここに居ないいのの事を口に出した。
何時も何時も『禁煙しろ』と口うるさく言うこの班の仕切り屋でもある少女の事を思い出しながら、アスマは盛大なため息をつく。
「ああ、確かに否定できねぇな……」
言われた事を素直に聞き入れて、複雑な表情を見せるアスマに、シカマルとチョウジは笑みを浮かべた。
は、撫でられてぐしゃぐしゃになってしまった髪を整えながら、そんな3人の様子をただ静かに見詰めてしまう。
――どうした?
そんなに気が付いて、シカマルがこっそりと声を掛ける。
――お前の班って、何時もこんな風なのか?
――ああ?今日からは、お前の班でもあんだろうが。まぁ、大体こんなもんだぜ。アスマはああ見えても面倒見がいいしな。
声を掛けられて、思わず聞き返してしまう。
それに帰ってきたのは、当然だと言うシカマルの言葉。
今まで裏の姿しか見た事のない自分だからこそ、何もかもが初めての事で対応に困ってしまうのは否定できない。
――なんか、シカマルが普通の子供に見える……。
――ああ?そりゃ、嫌味かよ……。
だから素直に自分が思った事を言えば、シカマルに睨まれてしまった。
決して嫌味で言った訳ではないそれに、はただ笑みを浮かべて返す。
「やっとで来たってばよ」
暫く、のんびりと話をしながら歩いていたら、前方から良く知った声が聞えて来て、全員が一斉に顔を上げ、声の主を見る。
前方に見えているのは、金色の髪と派手なオレンジ色の服を着た下忍一番と言われるだろう程のドタバタ忍者、うずまきナルト。
「ああ、ナルトじゃねぇか」
それに、一番に反応したのはシカマル。
大きく手を振っているナルトに、面倒臭そうに小さくその名前を呟いた。
「遅いってばよ!いのから今日が合同演習になったって聞いたのに、他のメンバーが来ねぇから迎えにきてやったてばよ!」
並んで歩いて来るメンバーを見つけて直ぐ、ナルトは走り寄って来ながらも文句を言う事を忘れない。
「そりゃすまなかったな。ところでうずまき、カカシの奴はもう来てんのか?」
「カカシ先生はまだだってばよ!サクラちゃんといのの二人がサスケを挟んで喧嘩してるから、俺ってばすげぇ暇だったんだってば……ところで、シカマルの隣に居る奴って、誰だ?」
そんなナルトに、アスマが素直に謝罪して7班の担当上忍の確認する。
聞かれた事にナルトは元気良く返事を返し、そして、今初めて気が付いたと言うように、シカマルの隣に立っているを見た。
「こいつは、今日から俺等の班に新しく入った……」
「です。宜しくお願いします」
ナルトの質問に、シカマルが名前口にしようと呟かれた言葉は、その本人によって遮られる。
「?って、俺達と同じクラスだったあの、だってば?あれ?でも、下忍になったなんて聞いた事なかったてばよ」
の言葉に、ナルトが驚いたように声を上げ、しかし、下忍班分けの時にその姿を見なかった事実を思い出して、一人首を傾げてしまう。
不思議そうに言われた言葉に、その場に居た者達は同じように苦笑を零した。
それもそうだろう、実際に下忍になった者もそうでない者も、一度は班分けの時に顔合わせをしているのだ。だからこそ、その場に居なかった者が今こうして下忍になっているという事は、異例の出来事といってもいい。
「こいつは、特別試験で下忍になったんだ。だから、普通の下忍とは違う扱いをされる」
「特別試験?」
自分の疑問に答えが返ってきて、だが言われた言葉が理解出来ず、ナルトは素直に首を傾げた。
「特別試験なんて、そんな大袈裟なモノじゃありません。ちょっとした筆記試験でしたけど、そんなに大した問題ではありませんでしたから……ボクは、皆さんと違って体が弱いと言う事で、特別な試験だとは伺っていましたけど、それが、下忍特別試験だとは知らなかったんです」
不思議そうに問い掛けるナルトに、は困ったように説明をする。
確かに、試験は受けたのは事実なのだが、それを下忍特別試験だと聞いて受けた訳ではない事もしっかりと説明。
「筆記試験?それって、ってば、すげぇ頭がいいんだってばよ?」
の説明に目をキラキラさせて質問してくるナルトに、思わず自然と笑みを浮かべてしまう。
コロコロと表情を変えるナルトを見ているのは、本当に楽しいと素直に思える事。そして、純粋に見詰めてくるその瞳は、決して邪険に扱う事など出来ない。
「そんな事ありませんよ。ボクの頭なんて人並しかありません」
クスクスと楽しそうに笑いながらも、嬉しそうにナルトへと返事を返す。
笑いながら言われたその言葉に、ナルトは少しだけ残念そうに項垂れて見せる。
それを、他のメンバーはただ黙って見守っていた。
――、それってば、凄い嫌味だってばよ……。
しかし、楽しそうに笑いながら言われた言葉に、ナルトは心話でへと声を掛けた。
――そうか?でもなぁ、俺よりもシカマルの方が頭いいだろう。俺は、嘘は言ってねぇぞ!
突然声を掛けられても、はしっかりと胸を張って言葉を返す。
――嘘もなにも、中忍つーよりもありゃ上忍用の筆記試験をあっさり万点取ってやがる奴が何貫かしてやがる。
――そうだな。普通の下忍には、絶対に無理と思うぞ!あれって、サクラにも解けないと思うぜ。
胸を張って言葉を返すに、シカマルが呆れたように返し、ナルトもその言葉に同意して内心大きく頷く。
表ではほのぼのと話をしながら、裏では何時ものような会話を広げる。勿論、そんな事後の二人が気付くはずもない。
「それじゃ、早く行かないと今度はいのが怒り出しちゃうんじゃないかな」
チョウジが、楽しそうに笑いながらも、先に進む事を促す。
それに、全員が同じ意見を持ったのだろう静かに頷いて、止まっていた足を動かした。
「お、俺ってば忘れてったてばよ!、俺は、うずまきナルト!将来火影になる男だってば!」
そして、動き出してから初めて自分が名前を言ってない事を思い出して、ナルトが自己紹介をしてへと手を差し伸べた。
「うん、改めてボクは、。宜しくね、うずまき君」
「だぁ!うずまき君って誰の事だってばよ!俺の事はナルトでいいってば。俺も、の事名前で呼ぶからな!」
差し出された手を握り返して、も改めて自分の名前を伝える。
そこで呼ばれた名前に、ナルトが笑顔で宣言した。
「……分かった。宜しくね、ナルト」
言われた言葉に、ニッコリと笑顔を浮かべて、再度その名前を呼ぶ。
表では初めての自己紹介。
裏では当たり前な関係も、表ではここから始まる関係。
――……ナルトが、表口調で話てるってのは、新鮮なんだけどなぁ……俺、今だけで喋り疲れた……なぁ、まだ喋んないとだめか?
表面上は仲良くなれた事に嬉しそうに笑い合う二人だが、そっと心話で呟かれた言葉に、ナルトとシカマルは顔を見合わせて同時に苦笑を零してしまう。
――まだ、始まったばかりだってばよ、!
――だな、めんどくせぇとか言わずに、頑張れ。
そして自分に返されたのは、冷たいとも取れる優しいお言葉。
確かに、まだ今日は始まったばかり。
――俺、今すぐ、下忍辞めてぇかも……。
ボソリと呟いた言葉は、空しくも聞き入れてくれる人など誰一人居ない。
今日から、下忍としての新しい日々がここから始まった。