『の作ったケーキが食べたい!』
事の始まりは、『夜』のその言葉が原因。
それに、一瞬驚いたような表情を見せたが、は何時もの笑顔で頷く。
「そんじゃ、明日のお茶会は俺のお手製で決定!って、事でシカマルとナルトは強制参加も決定な」
「はぁ?」
何時ものように我が家同然と寛いでいた俺とシカマルは、その言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
いや、別に参加が嫌なわけじゃない。
の作る菓子が上手いのは何度か食べたので知っている。
そんなに甘いモノが好きじゃねぇ俺やシカマルでさえも、の作る菓子は正直言って好きだ。それは否定しねぇ。
だけど、明日は普通に下忍の任務がある日なのだ。
「残念だが、俺等は、明日任務だつーんだよ。おめぇもそうだろうが……」
小さくため息をついて言われたシカマルの言葉に、俺も大きく頷いて返す。
『えっ?そうなの??』
それに『夜』が残念そうに表情を曇らせる。も同じように残念そうな表情を見えせるから、ハッキリ言って心臓に悪い。
俺は、のフワリと笑う笑顔が好きだから……。
「んな顔すんじゃねぇよ。ナルトが困ってんだろうが!」
そんな俺の心情を察して、シカマルがポンッとの頭に手を乗せて慰めるようにポンポンと叩く。
確かに困ってたのは本当だけど、そう言う風にと簡単に触れ合えるシカマルに、少しだけ嫉妬してしまうのは止められない。
俺は、自分からに触れる事は出来ないから……。それは、俺自身が、スキンシップに慣れていない為……。
「おう、分かった!なら、明日任務がなくなれば、問題ないんだよな!」
シカマルに慰められて、顔を上げたが嬉しそうに言った言葉に、俺とシカマルは一瞬意味がわからなくって、思わずを凝視してしまう。
「っと、待て!お前、何するつもりだ!!」
慌てたシカマルが驚いて、に問い掛ける。それに、がいたずらっ子のような笑顔を見せた。
「『夜』も、みんなでお茶する方がいいよな?」
『勿論!だってね、人数が多い方が楽しいもん』
そして、言い出した張本人に、笑顔のまま問い掛ける。勿論、返されたのは楽しそうな言葉。
それに、俺とシカマルは同時に頭を抱えてしまう。
『楽しそうだな。オレも手を貸してやるぞ』
「って、『昼』!そこは仲間になるんじゃなくって、二人を止めろ!!」
唯一ココで救いになるはずだった相手からのその言葉に、思わず声を荒げてしまうのは、許されるだろう。
確かに、下忍として面白くもない任務をするよりは、と一緒に楽しいお茶会のほうが何倍も魅力的なのは認める。だけど、それじゃ、忍としては許されないのだ。
「んじゃ、任務に関しては、『夜』と『昼』に任せるな!俺は、お茶の準備バッチリするから!」
楽しそうに笑いながら言われた言葉に、もう何も返すことが出来ない。
きっとじーちゃんは、明日頭を抱えるだろう事を考えて、俺とシカマルは同時に重たいため息をついた。
そして、翌日。
任務が流れたと言う話を聞かされて、突然の休みに7班と10班の下忍が首を傾げたのは、当然だろう。理由を知っている自分達だって、どうしてこんなにスムーズに事が運んだのか疑問だ。
「聞いてもいいか……」
だから、お茶会と言う『夜』の言葉通りに目の前に並ぶクッキーやケーキなどの見事なお菓子と暖かな湯気を見せる香り高い紅茶を前に、思わず口を開いてしまっても仕方ないだろう。
『なんだ、器のガキ?』
「どうやって、任務なくしたんだ?」
『え〜っと、すっごく簡単だよ。先回りして全部任務終らせただけ。それなら、三代目にも怒られないでしょう』
俺の質問に『夜』が嬉しそうに説明する。
確かに、じーちゃんには怒られないかもしれないけど、それっていいのか??
「報告書は昨日の内に提出済み。三代目は呆れながらも許してくれたぞ」
って、それで良いのかよ!
まぁ、そのお陰で、こうしてが作ったケーキが食えてラッキーなのかもしれないけど…。
シカマルも諦めているのか、それとも、任務がなくなって素直に喜んでいるのか何も言わずに紅茶を飲んでいる。
「ナルト!これ食べて、俺が作った新作!!ナルトがコーヒー好きだからモカケーキ作ってみた!感想聞かせてな!」
そして、薦められるのはチョコレートケーキのようなケーキが一つ。
嬉しそうに説明された言葉に、俺は一瞬驚いたけど、無邪気に笑うに素直にそれを口にした。
食べて広がるのは、コーヒーのちょっとした苦味と何とも言えない甘さ。
「美味い……」
口に広がるそれは、初めて味わう贅沢。
コーヒーが好きじゃないが、俺の為に作ってくれたモノ。
ポツリと呟いた言葉に、俺の大好きな笑顔が目の前にある。
「うん、ナルトにそう言って貰えて良かった。最近、ナルトもシカマルも疲れているみたいだったからな。だから、無理してこんな時間作った。迷惑だったか?」
そして、続けて言われた言葉に、驚いてを見る。
確かに、ココ数週間、昼も夜もギッシリと詰まった任務に疲れていたのは否めない。
それは、シカマルも同じだ。の言葉に驚いている。
こんなに、無茶な事をさせてしまうほど、心配を掛けていたと言う事。
「迷惑な訳ないだろう!……有難う、」
食べさせてくれたのは、沢山の優しさ。
少しだけ甘めに作られたモカケーキは、自分達の為。
偶には、こんな日もいいかと正直に思えるそんな時間だった。