あれにゃかなり、驚かされたさ。
暗部での初任務だと言う相手とコンビを組む事になったつーのに、渡されたのはSランクの任務。
火影様も何を考えているんだと思ったが、組んだ相手は自分以上に強者だった。
そいつは、初めての任務とは思えないほどの手際の良さで、正直言って俺の方がサポートに回っていたつー感じだ。
んで、任務も終って、後は報告書を出せば終わりだという段階にきて、そいつが行き成り倒れちまいやがった。しかも、変化の術が解けるボンッと言う音と共に一瞬だけ白い煙がそいつを包む。
んでだ、その煙がなくなった後には、自分の息子と同じぐらいの奴が、肩から血を流して倒れていた。
正直言って、その怪我を何時負ったのかさえ俺には、分からない。だが、そのガキの顔を見た瞬間、俺は思わず笑っちまった。
そのガキの顔は、忘れられない相手を思い出したから……。その時のガキが、生きていてくれたのだと知って、正直嬉しかったのだ。
あれは、俺達上忍にとって、決して忘れられない真実。
例え任務だったと言っても、抵抗もしない相手をこの手で殺めた過去の忘れられない出来事。
なのに、そのガキは、俺達がした事を知っていたにも関らず、全てを流しやがった。
「あの事を奈良上忍が、気にする事はないよ」
あの時向けられた紺と金の瞳が忘れられない。
真っ直ぐに見詰めてきたのは、忘れられない相手と同じ顔。違うのは、その瞳の色だけ…。
その時、初めて自分の罪って奴が許されたのだと知れた。
九尾を守護する一族だと言う一族。
その九尾が里を襲ったと言う事で、俺達上忍に、その一族を滅ぼせと命令が下った。
一族は、払い屋にして術者の家系。だから、Sランクの特別任務だったのだが、一族の者は、何の抵抗も見せずに俺達に簡単に殺されていった。
そして、最奥に居たこの一族の当主は、座って俺達を待ち望んでいたのだ。
その当主の姿に、一瞬見惚れたのは、多分俺だけじゃねぇだろう。
一族の女当主は、まるで天女のようにこの世のモノとも思えねぇぐれぇーの人物だった。
そして、俺達を見て微笑んだ女に、自分たちが何の為にここに来たかを言えば、フワリと柔らかな笑みが浮かぶ。
「全て分かっております。私達は、九尾様をお守りする事が出来なかった。それに、私達は術者。先見の力を持っているのです、だからこの事も予知しておりました」
笑顔のまま言われた言葉に、何も返す事が出来ない。
自分達の死をも分かっているのに、目の前の相手は逃げる事もせず真っ直ぐに自分達を見詰めてきたのだ。
先見が出来るのなら、自分たちが来る前に逃げる事も出来たはず。それなのに、この一族は誰も逃げる事無く、自分たちに何の抵抗も見せず殺されたのだ。
呆然とする俺達に、当主は優しく微笑む。
「ただ、お願いがございまする。この腹の子が生きておりましたら、どうか宜しくお願いいたします」
三つ指を突いて深々と頭を下げるその姿に、何も返す事は出来ない。
「……お前さんは、今俺達に殺されちまうんだぜ、それなのに、腹の子供が生きてるなんて……」
「この子には、守護者がついております。それに私は一族の当主。は術者の家系にございます。私には、この子の未来が見えますゆえ」
寂しそうに微笑みながらの言葉に、初めの言葉が思い出される。
家は、払い屋にして術者。そして、先見の力を持っているのだと……。
優しく自分の腹に手を添えて、ゆっくりと目を閉じる姿は、清らかで全てを見通している者の姿。
「貴方様のご子息には、私の子供の事を、お頼みいたします」
もう一度頭を下げながら言われた言葉に、驚いて言葉に詰まる。
俺には、確かに数ヶ月前に息子が生まれていたからだ。同僚にだって知っている奴は少ないてぇのに……。
ここで、殺されると言うのに、その自分を殺す相手に、願いを託す。
「……分かった…もし、お前の子が生きていたら、俺達は全力で守ろう」
最後の願いを俺達は叶え頷いた。
それに、女当主は礼と幸せそうな笑みを浮かべて、俺が最後を下した。
ハッキリ言って、あんなに気分の悪い任務は後にも先にもあれだけだろう。
何の抵抗も叫びもせずに殺されていった一族。
表には決して知られていないが、かなり古い一族だと言う事は聞かされている。
それなのに、九尾の守護をしていたという事だけで滅ぼされたのだ。
九尾が里を襲ったのだって、本当は……。
あの一族は、間違いなく使命を全うしていたと言うのに……。
そして、数年後。
俺はあの時の腹の中に居た子供に出会った。
まさか、暗部として一緒に任務をする事になるなど考えてもいなかったが、忘れるはずなんてねぇ。あの時の天女のような綺麗な顔を!
あの言葉通り、その子供が今、自分の息子と共に居る。
この里の真の英雄と共に……。