『ドーナッツパーティしよう!』

 突然言われたその言葉に嫌な顔をしたのはシカマル。
 って、『夜』の突拍子のない発言には大分なれてきたつもりだけど、なんで、ドーナツパーティなんだろう??

「悪いが、俺はパスだ。んな、めんどくせぇ事してられるか」

 当然のように返してシカマルは持っていた本に視線を戻した。

『シカ、強制参加だから、否は聞かないからね』

 だけど、そんなシカマルに、『夜』はニッコリと笑顔で拒否は認めない。

「なんで、行き成りドーナツなんだ?」

 だから、俺も素直に自分が疑問に思った事を口にする。

『うん、あのね、今日偶々買い物に言ったらドーナツ屋さんの商品が全て100円で売られてて、それ見てたら食べたくなっちゃったの』

 俺の質問に、『夜』が嬉しそうに理由を教えてくれる。

 ああ、そう言えば商店街のドーナツ屋がそんなセールしてるってサクラが話してたっけ……。

 その内容に、俺は素直に納得した。

『それで、にドーナツを作らせていたのか?』
『うんそうだよ。大丈夫、甘いモノだけじゃなくって、色々作ってもらってるから!でも、ドーナツって揚げ物だからちょっと脂っこいのが難点だよね』

 そんな『夜』に、『昼』が呆れたようにため息をついて口を開く。
 その手には何時ものように湯のみ。

 何時も思うんだけど、『昼』も『夜』も猫舌じゃないのかなぁ?

「えっと、それじゃは、ずっとドーナツ作ってるんだ……」
『うん、もう直ぐ出来るから、皆に飲み物のリクエスト聞きにきたんだよ』

 疑問に思った事は聞いちゃいけないことのような気がして、俺は全く違う事を『『夜』』に問い掛ける。
 それに、嬉しそうに返事が返された。
 ああ、だから、の姿が見当たらなかったんだ。

「……俺は、コーヒーのブラック」
 納得していた俺と違って、一番に自分の希望を口にしたのはシカマル。その目は、しっかりと本に向けられたままだ。

『オレは、そのまま緑茶でいい』

 次に『昼』が、返事を返す。

『分かった。それじゃ、ナルはどうする?』
「えっと、俺もシカマルと同じコーヒーで、砂糖無しのミルク入りで……」
『了解!んじゃ、直ぐに準備してくるね』

 俺の注文を聞き終えると、そのままその姿が一瞬で消えてしまう。
 えっと、それだけの為に渡りの能力使うって……。

「たく、余計な事を……ありゃ、容赦なく作られてんだろうから、覚悟しとけよ、ナルト」

 消えてしまった『夜』に、思わず呆れていた俺を前に、シカマルが深いため息をつきながら声を掛けてきた。
 覚悟?一体何の覚悟が居るんだろう??

「シカマル?」

 疑問に思って、その意味を聞くために名前を呼んでみるが、それ以上シカマルは口を開く事はなかった。

 一体、どう言う意味なんだろう。
 『昼』に聞こうにも、こちらもどこか不機嫌そうで声を掛けることが出来ない。

「お待たせ!」

 だけど、直ぐにその理由を知る事になった。

 た、確かに覚悟が居るかも……。
 目の前に並べられたそれは、お店でも開くのかと言うような種類豊富なドーナツの数。

、これ、全部作ったんだってば?」

 思わず聞いてしまった俺は、間違ってないだろう。
 だって、それだけ凄い量だったのだから。

「勿論!毎年恒例だよな、『夜』」

 俺の質問に返されたのは、ニッコリ笑顔のの言葉で、言われたその内容に、俺は自分の耳を一瞬疑ってしまった。

「毎年恒例?」
「ああ、ナルトは知らないんだっけ?おう、毎年この時期にドーナツ屋が100円セールやるのに合わせて、家でもドーナツ作るんだよ何か急に食いたくなるんだよなぁ」

 と言いながら、目の前にあるドーナツを一つ手に取って口に運ぶ。
 って、毎年この量を作ってるのか??

「……だから言っただろうが、覚悟しろつーって……まぁ、今年もチョウジの奴が喜ぶだろう。余ったら届けてるみてぇだしな」

 そう言ってため息をつきながらも、シカマルも目の前のドーナッツを一つ手に取って口に運ぶ。

 ああ、あれってカレーパンだ。
 って事は、全部ドーナツって訳じゃないのかも……。

 シカマルが食べているモノと同じモノを手に取って、口に運ぶ。
 って、中に入っていたのは餡子。

「あっ、言い忘れてたけど、この辺アンドーナツとカレーパンが混在してるから気をつけろよ」

 食べてから、複雑な表情をした俺に気付いて、が忠告してくれるけど、もう少し早く教えてもらいたかったかも……。

 甘くないのを想像してたから、余計に複雑な気分だ。

 でも、まぁ、の作ったドーナツは美味しかったら良しとしよう。

 ああ、でも、来年もこの時期にドーナツパーティが開かれるのかと思うと、ちょっとだけ複雑な気持ちなったのは、内緒の話だ。