アカデミーでのあいつは、ジミで目立たない上に、休みが多い。
 1週間に少なくとも1日は必ず休む。
 下手をすると、1週間丸々来ないと言う時もある病弱設定振り。
 いや、そんなんじゃ、忍なんて無理だろう!

「あれで、いいのかよ……」

 今日も、休みのために空いている席を見ながら思わず呟いてしまう。

「……の事か?」

 俺の呟きを聞き逃さずに、周りには聞こえない声でシカマルが聞き返してくる。

「そうだ。あれじゃ、忍になるのは、止められるだろう、普通!」

 だから、俺も周りには聞こえないように言葉を返した。
 忍は、体が資本の仕事だ。なのに、病弱設定って、駄目だろう、普通は!

「あ〜、それは、あいつの場合仕方ねぇんだろう。めんどくせぇが、それだけ多忙って事だ」

 俺の言葉に、シカマルが何処か言い難そうに言葉を返して、盛大な欠伸一つ。

 それは、この話はここまでだと言う合図。

 多忙って、アカデミーのガキに昼間も任務させてんのかよ、じーちゃん!って、俺も時々やってけど、こうも頻繁には流石にない。

 暗部の仕事は、基本的に夜が多いのが普通だ。
 それに、もし昼間に仕事が入った場合、俺達は影分身を残して行くから、アカデミーを休む事にはならない。

 そう言えば、あいつは、何で影分身を残して行かないんだ??

 疑問に思った事は、止めど無い。


 何で、そんなに仕事をしているのか?


 何で、影分身を残さないのか?


 何で、病弱なんて、設定なのか……。


 ……本人に、聞いてみるか。



 疑問に思った事は、直ぐに解決しねぇと気がすまない!
 幸いな事に、俺の家とあいつの家は、しっかりと繋がっていて、夕飯は一緒だ。<ウチの子参照>

「なぁ!」
「ん?」

 風呂に入ったのだろう、まだ少し濡れている髪をそのままに『夜』が準備したご飯を食べている相手を呼ぶ。
 呼べば、不思議そうに顔が向けられた。

「なんで、影分身つくんねぇの?」

 んで、不思議そうに見詰めてくる相手に、ストレートに質問を投げ掛けた。俺の質問に、は一瞬考えたが小さく笑う。

「……ああ、ずっと、疑問だったんだ。答えは簡単。影分身作るほどのチャクラをずっと保てねぇから」
「はぁ?」
「忘れてるかもしれねぇけど、影分身って、一応禁術に入ってんだぜ。それは、チャクラを大量に必要とするからだ。だから、俺はそれを維持できねぇんで、やらない」

 言われるまで、忘れてた。確かに、影分身は、かなりのチャクラを必要とする。それは、普通の奴にとっては、容易く遣えないという事だ。
 自分が遣えるから、すっかり忘れていたが、一応禁術の一つだったな。

「えっと、んじゃ、なんで、病弱なんて言う設定なんだよ。忍には不向きって言われるの分かってんだろう」
「う〜ん、病弱って言う設定は、俺が下忍になるつもりがねぇから」

 続けての質問に、サラリと言葉が返ってくる。だが返された言葉に、俺は驚いた。

「どう言う意味だよ!お前、忍になる為に、アカデミーに居るんじゃねぇのか?!」
「う〜ん、俺がアカデミー行くのは、ナルトが居るからで、忍になる為じゃねぇよ」
「えっ?」
「それに、の仕事は、表の忍としては、やってけねぇんだ。何時舞込んでくるか分かんねぇから……」

 少しだけ困ったような表情で言われた事に、言葉を無くす。こいつは、一族の生き残り。
 一族の仕事は、『払い屋』。そして、神の守護。それは、何時その仕事が舞い込んでくるのか分からないと言う事。

「だから、今だけ自由気ままなアカデミー生って訳だ」

 いや、仕事してんだから、自由気ままじゃねぇじゃん。
 そう、こいつが多忙なのは、忍の仕事だけではなく、一族の仕事もこなしているからだ。
 こいつは、3足草鞋で生活している。
 だからこそ、一番重要視されていないアカデミーが疎かになるのだ。

「でもな、学校行ってねぇけど、一応アカデミーの成績は、パーフェクトよ、俺」
「はぁ?」
「だって、筆記で、春野サクラと同等だもん」
「し、知らねぇ〜っ!!」

 なんで、休みが多い奴が、んなに出来る設定なんだよ!
 普通、有り得ねぇだろう!!

「病弱設定ってのは、休んでる時には、本しか読むもんねぇって設定でもあんだよ。だから、筆記だけ出来る訳」

 ナルホド、ちゃんと考えている訳だ。



 今日、疑問に思って、こいつの事を一つ知った。
 興味を持つと言う事は、相手の事をちゃんと思っている証拠。
 俺は、やっぱり、目の前の相手を、相当気に入っていると言うことだろう。

 そして、質問した事に、ちゃんと答えてくれた事が嬉しかったのは、自分だけの秘密。