満月の深夜0時に二つの鏡を合わせると、魔界に通じ小悪魔や小妖精を呼び出せる。
そして、呼び出したそのゴブリン達が自分の願いを叶えてくれるらしい。
よくある話。
だけど、気まぐれな小妖精や、悪戯好きの小悪魔を仰せる事が人間に出来るモノなのだろうか……。
呼び出した人間は、果たして無事に自分の願いを叶える事が出来たのだろうか……。
「つーか、んなモンは試した奴にしか分けるわけねぇだろう」
俺の疑問に、シカマルが呆れたようにため息をつきながら正論を説く。
確かに、試さなければ分からない事。
「んじゃ、試して……」
「っと待て!自分で試そうとしてんじゃねぇだろうな!!」
ポツリと呟やこうとしたその言葉は、シカマルの声によって遮られる。
「だって、試さなきゃ分からないって言ったのはシカマルだろう」
信じられないと言うようなその事に、思わず首を傾げて問い掛ければ盛大なため息。
「んな面倒なことしてんじゃねぇつーの!大体、叶えて貰いたい願いもねぇくせに、んなバカな事考えんじゃねぇぞ!」
そして、何時もの口癖と共に言われたその言葉に、俺は少しだけ困ったようにシカマルを見た。
「……一つだけ、叶えたい願いはあるんだ……」
「ああ?」
シカマルに話をした事はないけど、そう、俺には一つだけ叶えたい願いがある。
だからって、呼び出した小妖精や小悪魔が叶えてくれるような願いじゃない事は、自分が一番わかっているのだ。
だけど、何かに願いたい程叶えたい事がある。
「だからって、てめぇは分かってんだろう!呼び出した奴じゃその願いが叶わねぇつーことを!」
まるで俺の心を読んだようなシカマルのその言葉に、俺はただ困ったように微笑を返した。
分かっている。
それが、誰かに叶えて貰えるような願いではないと言う事に……。
「それでも、何かに願いたいのかもしれない……」
叶えられないと分かっていても、縋りたいとそう思うのは、俺が弱いからだ。
だから、もう一つ願おう。
強くなりたい。
負けない心を、持ちたい。
「……あわせ鏡なんてしねぇでも、何時かその願いは叶うんじゃねぇのか」
「シカマル?」
スッと前を見た俺に、シカマルがフッとその表情に笑みを浮かべて口を開く。
突然のその言葉に、俺は意味が分からずその名前を呼んだ。
「この先、お前が望む世界を、あいつが作ってくれるんじゃねぇのか。この里一番のドタバタ忍者がよ」
楽しそうに言われたその言葉に、俺は驚いて瞳を開いた。
俺の願い。
それは、彼が。この里で受け入れられる事。
何よりも、彼の両親の意思を継いでくれる事こそが、俺の一番の願い。
「シカマル……」
「それに、裏じゃ、あいつに敵う奴はいねぇんだぜ。そう遠くねぇ未来に、お前の願いは叶うんじゃねぇ」
楽しそうに言われるその言葉に、俺は漸く笑みを浮かべた。
そうだった。
確かに、俺と違って彼は、誰よりも強くそして、先を見ているのだ。
「!」
笑みを返した俺に、遠くから名前を呼ぶ声が聞えて振り返る。
自分の方に笑顔で走ってくるその姿を見つけて、俺も自然と笑顔を作った。
「ほら、希望が走ってくるぜ。んな、くだらねぇ事考えてねぇで、あいつを支えてやる事だけ考えんだな」
言われた言葉に、俺はただ笑って頷いた。
そう、走ってくるのは俺達の希望。
下らないことに願わなくっても、彼が居ればきっと願いは叶えられる。