「えっと、教えるのは問題ないんだけど……うちはくんに食べてもらいたいのなら、お勧めはしないよ」

 行き成り女の子2人に連れてこられて、俺は複雑な表情を浮かべながら返事を返した。
 偶々今日は俺の居る10班とナルトが居る7班とで、合同任務になったのだが……。
 まぁ、内容はゴミ拾いだったんだけど、範囲が広いから2班合同。
 それが、この2班になったのは、ナルトが何か手を回してるのかもしれないけど……。

 んで、折角の合同任務って事で俺は、季節外れだというのに大量に貰ったりんごを消費する為にアップルパイを差し入れに持ってきたのが今ここに連れてこられている理由。
 俺の言葉に、女の子2人は、一瞬その動きを止める。

「で、でも、あんたの作った奴は食べてたじゃないの!」

 だけど、動きを止めたのは本当に一瞬の事で、いのが不満気に口を開いた。
 いや、まぁ、確かに食べてたのは本当だけど、俺が作ったのはそんなに甘くしてないから……。
 りんごも旬から外れてると蜜も少ないって事で、アップルパイにしたんだし…。
 だって、砂糖と煮ちゃえば、りんごの風味は大事かもだけど、甘さは調節できる。

「えっと、今回作ったのは、かなり甘さは控えめにしたからだと思うけど……それじゃ、質問するけど、2人は、お菓子作りは得意な方?」

 だけど、そう言うのはお菓子を作り慣れてないと難しいだろう。
 俺の質問に、2人がうっと言葉に詰まった。
 これは、どちらも不得意って所だろう。

 そう言えば、春野は良くクッキーを作ってるみたいだから、まだ何とかなるかもしれないけど、い、いのの場合は作らない方がいいんじゃないだろうか??
 って、いのにでも簡単に作れるようなレシピを考えないといけないのか?

 そ、それって、かなり大変な事なんじゃ……。
 そう思って返事に困っていた俺は、じーっと見詰めてくる2対の瞳に見詰められて、思わずため息をついてしまった。

「……分かったよ、それじゃ、今度レシピ持って来るね。誰にでも簡単に作れるように頑張ってみるから……」

 幸い、まだ貰ったりんごは残ってるから、分量なんかもきっちり量ってそれの通りに作れば誰でもちゃんとした物が出来るように書かなきゃいけないんだよな……。
 味見は、ナルトやシカマルに任せよう!

「本当!お願いね」

 頷いた俺に、2人は口を揃えて、語尾にハートマークさえ見えそうな勢いで、しっかりとお願いされてしまった。
 その勢いに、俺はただ頷いて返すことしか出来ない。
 嬉しそうに離れていく2人を見送って、俺は盛大なため息を付く。

 あの2人のパワーに、毎度振り回されているうちはに、本気で同情してしまう。
 いや、何時も気の毒だなぁとは思ってはいるんだけどな……。

?」

 ため息をついた瞬間、恐る恐ると言う様子で名前が呼ばれた。

「ナルト」

 その声で、喜んで振り返る。いや、なんて言うか、あの2人を相手にした後は、癒しが欲しいと正直に思ってしまったから……。

「話終わったんだってば?」
「……うん…」

 心配そうに質問された内容に、俺は小さく頷いてもう一度ため息をついた。

「何か、疲れてるってばね?大丈夫だってば??」
「まぁ、それなりに……」

 心配そうに質問されて、俺はもう一度ため息を付いて俺が今精一杯返せる内容の言葉を呟く。
 思わず素の口調になってしまったのは、俺の心情が余計に伝わるだろう。

 その後残っていた任務はボロボロで、アスマ上忍と事情を知らないチョウジに心配掛けてしまいました。あの、うちはまで心配していたぐらいだから、かなり酷い状態だったのだと思う。

 それから何とか家に帰って、いのや春野に渡すレシピ作りを頑張った。

 ああ、本当に頑張ったと思う。

 こうこと細かく誰が作っても同じ味になるようにそれで大量にアップルパイを作りまくった。
 その成果としては、貰ったりんごが全部なくなったのと、ナルトとシカマルが、暫くりんごは見たくないと言う状態になった事だろうか……。

 そして、俺は一つ心に決めた事がある。そう、合同任務の時には、出来るだけ差し入れはしないようにしよう、と……。
 また、同じ目に合うのだけは避けたいから……。

 俺が渡したレシピで、二人がアップルパイを本当に作ったのかは知らない。