誰だろう、寒い日にアイスを食べるのが通だ何て言った奴は……。
 いや、うん、そんな事言った人が居るのかどうかは知らないんだけど、兎に角、何でこの寒い中、俺はアイスクリームなんて食べているんだろうか?

 その原因は、バカカシにある。うん、間違いなく、こいつの所為だ!

「カカシ先生!何でアイスなんて買ってきたのよ!そうじゃなくっても、私達先生が来るのをこの寒空の下で待ってて体が冷えてるんだから!」

 サクラが貰ったアイスを食べもせずに文句を言う。
 うん、それには激しく同意する。何時ものように遅刻してきたバカカシは、何故かアイスクリームを持って待ち合わせ場所に来た。
 遅刻してきた理由が、そのアイスを買っていたからと言うのだから、本気で殺したくなると言うものだ。

 んなもん買ってないで、さっさと来やがれ、この腐れが!!

 と、心の中で文句を言っても許されるだろう。
 だが、そんな事を表のナルトが言える筈もなく、ぐっと堪えて渡されたアイスを素直に食べる。

 ……本気で寒いぞ。

「何でって、何時も待たせて悪いかなぁと……」
「だったら、ホットの飲み物とか差し入れてください!」
「分かった、んじゃ夏に……」
「夏はアイスでいいんですよ!」

 目の前で繰り広げられている漫才を何処か遠くに感じながら、俺はこっそりと息を吐き出す。

 本気で、こいつ抹消していいか?
 いや、そうしたいけど、流石にじーちゃんが許してくれないよな……。
 なんて、考えているのも秘密だ。

「全く、何で夏と冬で差し入れが反対なんですか!」

 ブツブツと文句を言いながらも、サクラも貰ったそれを食べ始める。
 まぁ、滅多にないバカカシからの差し入れなのだから、食べなきゃ損って所なのだろう。

「ひどいなぁ、文句いいながら食べるなんて……」

 本当に、そう思ってるのか、全く気にした様子も見せないまま口を開くバカカシに、この場に居た全員が殺意を抱いたのは言うまでもない。

 俺も、本気で殺気出しそうだったぞ、今……。

「おい!何時まで待たせるつもりだ」

 そんな中、突然の声が聞えてきて、全員が振り返った。

「あ〜っ、そう言えば、今日はアスマ班と合同演習だったね。いやぁ、すっかり忘れてたわ」

 こっちに向かってくるアスマ率いる10班のメンバーの姿が見えた瞬間、思い出したとばかりに言われたバカカシの言葉に、再度殺意を抱いてしまう。
 んな大事な事を毎度毎度忘れてんじゃねぇぞ、この腐れ外道が!!

「あ〜っ、お前等このクソ寒い中に何でそんなモン食ってんだ?」

 心の中で最大限の文句を言った瞬間、聞えて来たシカマルの声に不機嫌そのままに顔を上げる。

「……カカシ先生が、差し入れに持って来たんだってばよ!」

 そんなシカマルに、俺は表口調で文句を口にする。

「え〜っ、いいなぁ」

 そんな俺の言葉に、チョウジが羨ましそうに見詰めて来た。
 いいのか?本当に羨ましいのか?

「…それは、気の毒ね」

 思わずそんなチョウジに内心突っ込んでいた俺に、いのが気の毒そうにポツリと呟いた。
 普通の反応は、それだよな。何が悲しくって、この寒空の下でアイスクリームなんて食わなきゃいけないんだよ。
 そうじゃなくっても、寒くて凍えそうな思いしてたって言うのに!

「えっと、ナルトこれいる?」

 そんな俺に、がスッと差し出してくれたのはホッカイロ。
 寒さに強い俺でも、流石にアイスを食った所為で、体が極端に凍えていたから、差し出されたそれは本気で有り難い。

「サンキューだってばよ、!」

 本気で感謝しながらそれを受け取れば、サクラから、一人だけ何貰ってるって言う文句が聞えて来た。
 それに対して、は何処に持っていたのか後2つのホッカイロを取り出して、サクラとサスケに渡している。
 ……正直言って、の半分でもいいから、バカカシが常識ある行動をとってくれると有り難いんだけど……。

 そんな事を望むのは、贅沢な事なんだろうか……。

 まぁ、差し入れられたアイスクリームは、美味しいモノだったけどな…。
 俺的には、やっぱりアイスは夏に食うもんだと、そう心から思ったのは言うまでもないだろう。