「やっぱり、申し訳ないと思うんだけど……」
外を見て、ポツリと呟かれたの言葉に、俺は思わず顔を上げた。
「何が?」
部屋の中は、暖炉のお陰でとても暖かい。
何時も思うんだけど、この暖炉って、誰が管理してるんだろう??
って、話がズレた。
「んっ、何でも……」
「無いって言うのは、聞かないから!」
心の中で考えていれば、がちょっと困ったような表情で決まりの言葉を言おうとしたから、慌ててその言葉を遮る。
俺に言葉を取られたが、罰悪そうにまた視線を窓の外へと移した。
今日は25のクリスマス。
世間では、どっかの神様が生まれたとか言うけど、そんなモノ俺達には関係ない。
だって、今日は俺が傍に居たいとそう思える大切な奴が生まれた日だから……。
今、ここに居るのは俺との二人だけ。
シカマルは、用事があるとかで夕方には来る事になってるけど、今この場には居ない。
確か、シカマルの分もちゃんと休み貰ったはずなんだけど……多分、暗部の方じゃなくって、解析とか戦略の方で何か問題起きたんだろう。
まぁ、あいつの頭なら全然問題ないだろうけど……。
それに、あいつが来るって言ったら、何を置いても来るだろう。
あいつにとっても、は、大切な奴だから…。
後、ココの住人である2匹は、夜の準備に勤しんでいる。
今回は、『昼』がやる気になってるみたいだから、俺がが変な行動しないかの監視役になった。
うん、監視居ないと、の奴こっそり抜け出して仕事の一つでもじーちゃんに貰いに行きそうだからなぁ…。
じーちゃんには、ちゃんと釘刺してるけど。
「……こんな寒い日に、皆は仕事してるのに、俺はこんなに幸せでいいのかなぁって……」
そんな事を考えていた俺に、ポツリと少しだけ困ったように言われたリョクトの声が聞えてきて思わず顔を上げた。
「…ナルトが居て、シカマルが居て、『昼』と『夜』が居てくれる。みんなで、俺が生まれた日を祝ってくれるって事が、こんなに幸せな事なんだって、漸く分かったんだ」
「」
少しだけ照れたように言われたそれに、俺は思わずの名前を呼んだ。
「有難う、ナルト。大切な事を思い出させてくれて」
フワリと俺の大好きな笑顔で言われたその言葉に、一瞬なんと返していいのか分からなくなる。
あれ?でも、それって、俺がに言う言葉じゃなかったっけ??
「って、何でそこでがお礼言うってば!それは、俺のセリフ!!」
だって、今日と言う日にが生まれてきてくれたからこそ、この時間があるのだ。
だから、お礼を言うのは俺の方で……。
「たまには、生まれてきた方が御礼を言っても可笑しくないだろう?」
ぺロッと舌を出しながら楽しそうに言われたそれに、俺は複雑な表情を見せた。
でも、確かに、が自分から生まれてきた事を認めてくれたのは本当に嬉しい。
「そう言う問題じゃないって……でも、がそう思ってくれただけでも、すっごい進歩」
だって、はこの里の亡霊で、祝われる権利なんて無いってそう思っていた人だから。
本当に、俺と同じ。
俺も、自分が生まれた日に九尾を腹に封印されて、ずっと生まれてきた事を否定されてきた人間なのだから…。
だから、知らなかった。
自分が生まれてきた事で、今大切だと思える人達に出会えたと言う当たり前の事を……。
「……」
「んっ?」
「俺が、一番だよね?誕生日おめでとう!そして、生まれてきてくれて、有難う」
だから、そんな大切な事を教えてくれた人へ、思いを込めて、生まれてきた事を感謝しよう。